2007年01月04日

バンジージャンプ Vol.2

重力に魂を惹かれた人々・・

PONが死刑台への階段を昇り切ると
入れ替えに青白い顔をした
若い女性が係員に付き添われるように
降りていった。
そう、ここは「ギブアップ」有
あくまで本人の自由意志で
「ギブアップ」を宣言するまで
係員は根気よく物好きなお客に
付き合ってくれる。

世の中でも五本の指に入るくらい、
かなりどうでも良いことに深刻
かつ物好きな連中が
連日順番を待っているのだ。
PONもその一人だった。

「自分の順番はなるべく先のこと
 であって欲しいなあ」
そんなかすかな願いを無視するように
PONの前のお客(30代の男性)は
あっさりと床下へ姿を消した。

で、一歩前進。
手すりにつかまりながら
おそるおそる覗き込む。
すかさずぶわっと吹き上げる風。

うお!高けぇ!!

先に落ちていった男性は
奇妙な声をあげながら
豆粒になって落ちて行く。

下に敷いてあるデカイ、エアマット
すれすれまで下降したところで
おもむろにゴムの反動で上へ引っ張られ
二回目の持ち上がりに入る。
そして彼は空中のある一点で
「ピタッ」と停止した。
そうか、あの瞬間に「正気」でいられれば
いわゆる「無重力状態」を体感できるんだ。
こんなときに限って頭のどこかが妙に冷静。

下のほうではしゃいだ感じの男の声が聞こえる。
もう何度目かのゆり戻しも終わって
無事に地面へ着地したのだろう。
「いいなあ。あの男性は。
 もう山場を越えたんだ。
 俺なんかこれからだぜ?」


「はい、お客さんの番です!」
そんな爽やかにいうなよ。

前の人が着けていた
「バンジーひも」やらなにやら、
各種アタッチメントを二人がかりで
取り付けてもらいながら
いろんな説明をたくさん
受けたような気もするが
なんも覚えていない。

「飛ぶか、飛ばないか」

心の中はそんだけだ。

こんなときこそ普段は眠っている
「男の意地」が働いた。
ここまできた以上、
ニヤニヤしながら見上げている
仲間たちに見せ付けてやらねばならない。
「棄権」はありえないのである。

日本は各地で
「お客さんを危機から守るため」
というよりは
「担当者が絶対に責任を取りたくないから」
という、どちらかといえば
後ろ向きな理由から
「過剰」に安全になっている。
高いところ、崖っぷちには皆、鉄柵だ。
たとえ落ちたくても
結構苦労しなければならないのが実情。
でもここでは「落ちろ」という。
大丈夫だという。

丈夫(だと思う)なゴム紐が
体に接続されてはいるが
頼るものが何にもない怖さ。

結局、落ちてしまえば一瞬だった。

確かにビビッたが
地球の引力は
そんな思いとはまったく関係なく
万人平等に大地へと引きずり込む。

一歩その向こうへ踏み入れてしまえば
もう人間の意志など関係ない。
後は墜ちて落ちて行くだけ

このアトラクションのキモは
ただひとつ。
「その先」へ足を踏み入れるまでの
ココロの葛藤。

これを楽しむのだ。

今でも覚えているのは空の青さ
急激に迫ってくる大きなエアマット
(エアマット自体が馬鹿でかかったので
 地面までの距離感はそんなに感じなかった)

「うぉお〜」

と、勇ましいんだか、チキンなのか
よく判らない。ジャンプしている最中に
ずっと発声していた自分の声
(これも後で仲間たちに馬鹿にされた)
だけだった。

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posted by PON at 21:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 想ひ出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする