「たった一人の生還―
「たか号」漂流二十七日間の闘い」
佐野三治著。新潮文庫。
・・まあつまり、内容は題名通りです。
<あらすぢ>
それは一瞬の出来事だった。巨大な崩れ波
「たか号」の転覆、そして艇長の死。
残された6名は救命ボートに乗り移り、
あてどない漂流が始まる。
こうして栄えある国際外洋ヨットレースは
一転、直面する死との凄絶な闘いが
幕を開けた…。極限状況の27日間を
必死に生きぬき、ただ一人生きて
還った者として、あの海に今も眠る
仲間たちのために、すべてを
書き綴った海と死と生命の記録。
何気なく取ってしまった一冊。
事故のニュース自体は、当時
見た覚えがあるが
ニュースが決して報道し得ない真実
というのだけが持つ「重み」は
ひしひしと伝わってきます。
失礼ながら、作者はこれまで一介の
アマチュアヨットマンであり、会社員であり
当然、小説家ではなかったわけですが
そんな彼が書いたこの本が
その辺の2流小説家が
たとえば想像で書いてみた話なんかよりも
よっぽど心に響くのは
本当に「真実」だから。
それから作者が助かったあとの
マスコミ騒動の描写も
むべなるかな、という気がした。
「それで残された皆さんは
何を食べてしのいできたのですか?」
新聞記者の質問が心に残る。
要するに記者たちは下世話な回答
「仲間たちの死体を食べることで
生き抜いてきたのでは?」という
自分達の勝手な想像を彼(生存者)に押し付け、
当の彼からそんな言葉が出てくることを
待っているのである。
ホント「人」じゃない。
自然の脅威とはいえ、作者の目の前で
人が次々と死んでゆく、という
本来、厳粛でなければならない
特に今回のような事故に対する
このあたりのマスコミの度し難さ、浅はかさは
ある意味、「みもの」ですらあると思う。
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