2008年10月04日

「自衛隊よもやま物語」比留間 弘

「自衛隊よもやま物語」
比留間 弘 著 (光人社)

光人社の○○よもやま物語シリーズ。
近所の公立図書館の「リサイクル本」。その2。
タダで入手するも、図書館のハンコが押してあったり
BOOKOFFに転売できないのが残念。

あらすぢ
自衛隊の前身、警察予備隊に入って21年、中隊長から
はじまった私の自衛隊生活は、事故に始まって事故に
終わった。それは隊員ばかりではなく、御大御自身も、
身をもって範をたれた。おかげで事故中隊という称号
をいただいたくらいだ。本書は、とっておきの隊内
生活を洗いざらいにぶちまける自衛隊物語。

大戦を生き残り、自衛隊創成期から工兵隊一筋、
昭和42年に中佐で退役した自衛官の職場の思い出話。
資料性は、ほぼゼロ。読み物としてもあんまり
面白くなかった。残念。(当然ながら、作者の任期中
に戦いとかまったくないからね)

旧軍が大暴走の挙句消滅してしまい、その後始末に
生き残った一部の軍人が食うために再結集。
時代とともに警察予備隊→防衛隊→自衛隊へと
変化していくが、そんな自衛隊創成期に自衛官
だったヒトの話。

軍人としてのプライドはアメリカにズタボロにされ
物資もなく軍としてのやり方や武器はすべて米軍の
お下がり。正直、何もすることはないのだけれど、
とりいそぎ軍人らしく振舞わざるを得ず、ひたすら
訓練(らしきもの)の日々。

本来は消耗品であるはずの「武器弾薬車両」も、
一度無くしたら次に手に入れられるのはいつか分からん
てんで、とにかく大事に使う。そんなお役人的体質が
自衛隊内で育ってゆく過程が分かる。

自衛隊の皆さんのご苦労とともに、日本の社会が
いろんな意味でそんなもんだったんだ・・というな
空気が感じられる点は評価できる。

製本もフォントも古く、また作者直筆の加藤芳郎氏の
ような古臭いイラストも、時代を感じさせるのに
ヒトヤク買っている。

平時でも、結構、ヒト(自衛隊員)って死んでいるのな。
ちょっとびっくり。
作者は工兵隊の人間なので、道なき道を進むことが多く
(なぜならその「道」を作るのが彼らの仕事だから)
雪で隠れた道を踏み外しジープが落ちて同僚が死亡、
同じく仮設陸橋から転落して、ブルドーザーのキャタピラに
巻き込まれて・・等々。戦争はないけれど皆一種の戦死
である。

そうだ、面白かったエピソードがひとつだけあった。
戦車(当時は特車と呼んだ)は重いので、工兵が
橋を架設して渡河するのがそれまでの軍事常識だったが
冷戦真っ只中のヨーロッパではそんな悠長なこと
していられない!ってなわけで、最前線の戦車は
走りながら直接「河に乗り込む」らしいって話が伝わってきた。
当時の自衛隊のお偉方も、無視できなくなったらしく
まず実験してみよ、という命令が工兵隊に下る。

とりあえず、浮力を計算してみて、戦車を浮かすことの
できそうな空のドラム缶を戦車の周囲にくくりつけた。
それを演習場の池にクレーンで、投入するという荒業。
紆余曲折を経て、とりあえず浮くには浮くという報告書を
上層部に提出したところ、その後まったくその件に
ついては何も言ってこなかったって話。



なんたるアバウト。素人がまず思いつくことを
そのまま実行してしまった。大掛かりな子供の遊び。
体系的な軍事的学問がまったくなく、ノウハウもないの
だからやむを得ないとしても。

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posted by PON at 21:00| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | 読書(歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする