2009年12月04日

ルパン三世 GREEN VS RED

「ルパン三世 GREEN VS RED」

いつの間にか、夏休み恒例
金曜ロードショー「ルパン三世TVスペシャル」
の地上波放映がなくなってしまい、
この作品もOVAとして発表された。
そういえば、自分もここ数年
ぜんぜん新作を見ていない。
ルパンではもう客を呼べないのか。
あるいは山田康雄氏がなくなった時点で、
アニメルパンの命も尽きていたのか。
クリカンも頑張ってはいるけれど。

あらすぢ
今日も世界中で活動をするルパン三世。
しかし、それはほとんどが違う格好、違う顔、
違うジャケットを着ていた。
何十人のルパンを海を越えて捜査していた
銭形は、それはすべて偽者だと感づいていた・・・・。
いったい本物は何処に?

東京の寂れた街。夢も希望も無く、ただ毎日を
漠然と過ごすしかないラーメン屋のアルバイトで
生計を立てる青年ヤスオは、恋人である人気
レポーターのユキコからも愛想をつかされつつ
あり、叶う事の無い「刺激」を求め続けていた。
しかしそんな時店に残っていた緑色の
ジャケットとすったワルサーP38を切っ掛けに、
彼の人生は大きく狂い始めて行く事になる。

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「うる星やつら」という、なんでも呑み込める
懐の深い原作から、オシイ監督が名作
「ビューティフルドリーマー」を作った様に
おなじく基本的には何でもありの「ルパン」から
やはり同系統の作品が生まれた。
観念的、哲学的。完全にお客を選ぶ。

少なくとも、夕方5時30から
ランドセル放り出して再放送で楽しんだ経験が無かったり
ルパンをまったく見たことがない人に、
最初に見せる内容でないのは確か。

ルパンはスキだという御仁であっても
この映画の評価は、うーんと唸ってしまうか
まったく受けつけないか、のどちらかだろうなあ。

「ビューティフルドリーマー」も公開の頃は
原作者がだいぶご立腹であったり
(映画第1作オンリーユーの方が
 原作者ウケもよかったらしい)
駄作だ、ワケわからん、とさんざんと
コキおろされた(オシイ作品はみんなその傾向)

ルパンでいえば、もはや文句いう人も稀な
「カリオストロの城」すら、公開当時
ボロクソにけなすファンも多かった。
(ルパンは、あんな少女にうつつを抜かす
 甘ったるいオトコではない!ということらしい)
ま、批評なんてモンは時代によって変わるので
それは今更のハナシなのだが。

【劇中のサッカー中継でアナウンサーが・・】
「こうして新しいヒーローが生まれるのです!」

テレビ第二シリーズのいわゆる赤ジャケット
ルパンで「死の翼アルバトロス」と
最終回「さらば愛しきルパンよ」を
世界のミヤザキ監督が製作したのは有名な話。
あの最終回も、ニセモノのルパン一味が暴れまくり
銭形に変装してた本物のルパンが姿を現し
コトの収拾に動き出すのは、話の2/3過ぎてから
だった。

あるアニメ評論家によれば、ミヤザキ監督は
ポップコーンで宇宙へ行ってしまうような
低級お子様路線で人気を取った、赤ジャケット
ルパンが嫌いだったらしい。
だから最終回において、これまで100余話
やってきたテレビ第二シリーズのドタバタ話は、
すべて最終回のルパンのニセモノ達が
やってきた事にするという、
思い切った挙にでたのだとか。

(これは公式設定ではないけれど、ジブンが作る話に
 なにかしらのメッセージを埋め込む事が
 得意のミヤザキ監督のことであるから
 結構ありがちだと思う)

【劇中のニュースで・・】
「ルパンの一斉検挙です!」

以下ネタバレ。
アニメルパンの作画が異なるのは歴代の製作者が
違うのだから当然なワケなんだけど
この作品では、作品ごとの顔やジャケットの違いすら
実は意味があることにしてしまった。

「ルパン」の名は、個人名というよりも
その時代、もっとも優秀な「自由人」に
与えられる(勝手に奪う?)称号
だったのである。

まだかけ出しの緑ルパンが次元達と仕事をしている
ところに、赤ジャケットルパンが颯爽と登場する。
(演じるはクリカンなんで、たぶんホンモノ。
 かつて次元達と大暴れしたルパンで大物クラス
 なんだろう)

次 「おー、久しぶりじゃねーか・・。元気そうだな」
赤ル「よーくゆーぜ」
五 「とうに死んだものと・・」
赤ル「バカいえ! おまえらこそこんなの(緑ルパン)に
   騙されやがって」
五 「そこにいるのはまぎれもなくルパン・・」
次 「ホンモノかどうかは問題じゃねぇ。
   組んだら他のどんなヤツとやるよりオモシれえ。
   そういうヤツの事をいうんだろ?
   ルパンってやつは・・

次 「そいつは、おめーよりもおめーらしいかも知れんぜ」
(この間、赤ルパンは緑ルパンに背中を見せ続け
 緑ルパン完全無視。何たる余裕。)

なんと次元と五右衛門(あと不二子)が見込んだ
男がルパンだった!

途中ででてくる紅屋の主人もかつて一時代を築いた
元ルパンのようだ。
「男は男に生まれるのではなく男になるのだ
 ルパンもまた然り」

それと、銭形。今回もかっこいい!!
アニメではデタラメでマヌケの象徴。
ルパン達がハードボイルド(斬ったハッタの世界)に
行ってしまっても、我等がノホホン世界に
引き戻してくれるそんな存在なのだが・・
ここの銭形(だけ限らず近年のゼニガタはみなその傾向)
はカッコよく描かれている。

確かに、ルパンこそ捕まえられないけれど
ルパンでも命の危機を感じるシチュエーションに
付き合いながら、かならず生還。
時にはルパンの手助けまでしてしまう銭形。
相手が超人間級のルパンだからマヌケに
みえるだけで、彼は充分すぎるほど
有能な警官なのである。本当は。

その大きな背中。敵のエージェントの発砲に
たじろぎもしない。こんなところにも
彼が無数の鉄火場をくぐってきた事がわかる。

【報道レポーターに向かって】
「さがっていなさい。軍は国民ではなく
 国家を守っているんだ」
このセリフにゼニガタの警察に対する
矜持を感じる。

【次元】
「きかねー名 だな・・」

BGMやセリフ、画面構成のあちこちに
これまでのルパン作品からのオマージュが
散りばめられ、探すのも一興。
ジャズアレンジのルパンBGMもかっこいい。
ルパンにはジャズが似合う。



次元、五右衛門、不二子、銭形の
ベテラン声優各氏の衰え知らずに感銘。
(山田氏が亡くなる直前のルパンの声も
 かすれていて、聞いてて可哀想だった。
 銭形の納谷吾郎氏も一時期苦しそうだったが
 復活された様子。)

ベテラン健在だけに、ラーメンズが演じるヤスオや
ヤスオの彼女役といった若手?の演技のヘボさが
際立ってしまったけど。

ルパンに限らず、旧来キャラのすべてで
声優の後継者を求めているのかもしれない。
禅譲ではなくその座を奪え!と。

原作 - モンキー・パンチ
監督・絵コンテ・演出 - 宮繁之
脚本 - 大川俊道
音楽 - 大野雄二

キャスト
ルパン三世 - 栗田貫一
次元大介 - 小林清志
峰不二子 - 増山江威子
石川五ェ門 - 井上真樹夫
銭形警部 - 納谷悟朗
ヤスオ - 片桐仁(ラーメンズ)
ユキコ - 平野綾

難点は絵はキレイなんだけどキレイすぎる点。
それと話を読み解くのが醍醐味なんだけれど
説明不足で解かりにくい点。
セリフが聞き取りにくい点。
そんなところ。

独りで何度も見返して
新しい発見を重ねてゆく、味ある作品だった。

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posted by PON at 21:49| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画(ラ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする