講談社文庫 1995 ISBN:4-06-263098-2
また、東南アジアのねっとりした熱気に
つつまれたカオスな社会の小説を読むのかと、
マフィア、麻薬、売春、児童売買に暴力
社会の腐敗、賄賂、色、欲、欲・・
正直ウンザリしたPONがおりました。
特に氏の「闇の子供達」を読んでしまった後
ですからね。キツイです。
でも上司が面白いよっと、PONの机の上に
投げ出していった小説ですから、読まないわけ
にも参りません。
それに作者の「真保裕一」氏ってどこかで
聞いた事あるような名前だし・・というわけで
ページを開いてみました。
<あらすぢ>
公正取引委員会の審査官伊田は汚職の嫌疑を
かけられた。何者の策略に嵌り事件に巻き込
まれたのだ。ある所からの誘いによって彼は
フィリピンへ行くことになる……。
ODA(政府開発援助)プロジェクトに関する談合
事件をマニラで調査する伊田の身に危険が
迫る。期待の乱歩賞作家が放つ長編推理
サスペンス。
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面白いんだけれど、ちょっと長いかな。
「マニラ」って読んだだけで生水禁止。
ヒッタクリやボッタくり注意、ってな感じですよ
あたしゃ。
それじゃあまりに先入観ありすぎですか?
どーもスミマセン。
よくこのブログでお役人さんのことを
叩いておりますが、少なくとも小説の上では
そんなお役所世界に生きていながらも
決して、自分たちの棲息する世界を
「良い」と思う役人ばかりではないんですよ。
中には、ともすれば流されそうになる現実
のなかで、ひとつづつ高みを目指そう
(少しでも日本を良くしよう・・)と
ホンキで動く方もいるって話です。
少なくとも小説の上では。
「現実と妥協するか?己が正義を貫き続けるか」
主人公である「公正取引委員会」審査官
伊田は、社会正義をもっとも手っ取り早く
実現できそうな職場ということで現職についた。
彼なりにベストは尽くしてきたが、
生来器用な生き方は出来ない性格のうえ
「公正取引委員会」の追求から、
巨悪はつねに逃げ去り、末端部の力なきものへの
イジメだけで幕が引かれてしまう毎日。
政治家の横槍やそれにべったりな上司の妨害
いろいろある業界の大人のお約束などに
振り回される主人公は、見えない力に
ハメられ、失職してしまう。
正義感と無力感の間で苦悩し、なかば自棄に
なる主人公。題名は「取引」であるが、
もはや公正な舞台での「取引」が出来なくなった
伊田の下に、正義を貫くやり方は正面からだけ
ではない、という話が飛び込んでくる。
・・伊田は己の正義を貫き通せるのか?
彼は、この間まで役人だったその辺にいる
イチ日本人であり、知性と英語力はあるが
東南アジアの混沌社会にありがちな暴力などが
でてくると、007のような爽快な解決など
望むべくも無い。
そこで、というわけではないが、タガログ語も
話せない彼の前に、反発しつつも最後はヨイ相方になる
現地の男が登場する。強いていえばフィリピン人の
ドズル中将。(フィリピン警察所属なんで
中将ではなく警部か?)
国家間に厳然と存在する、経済格差にモノを言わせ、
シモの処理(性欲やらなにやら、とにかくイヤなこと)
を押し付けようとするとロクなことがない。
しかしドロドロした欲望を抑えることの出来ぬ人間の
なんと多い事か。
かくして発展途上国にはギラギラした欲望だけが
吹きだまる。
うーん。自分はあまりオススメしない。
面白くて最後まで読めてしまうけれども
たまたま入手でもしない限り
それほど無理に読まんでも・・といった感。
それにしても、海外駐在のビジネスマンって辛い。
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