「降伏の儀式」
降伏の儀式 上下巻
ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル著
東京創元社 創元推理文庫SF
SFファンには言わずもがな。超有名な小説
「降伏の儀式」であります。ずっと気になって
いたんだけども、市立図書館にあったんで
只ならまあいいかなと。
<
あらすじ>
"1990年代、とある天文台が観測した謎の光点。
それは地球に向けて接近する、一隻の巨大宇宙船
だった。かくして人類は、初の地球外生命到来の
瞬間を待ち構えるが……奇妙にも、異星船は
地球からのメッセージになんの返答もよこさない。
彼らは一体なにを目論んでいるのか?
SF界きってのベストセラー・コンビが放つ
超本格的地球侵略SF大作。星雲賞受賞。"
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最初から
ネタばれ全開です。長いです。
>彼らは一体なにを目論んでいるのか?
といわれても、もうオチは見えているのだが。
子象に似た異星人(フィスプという)が
地球を侵略しにくる。土星で機を伺い
一気に地球侵略開始。何も知らない人類は
途中の宇宙ステーションで歓迎しようとするが
捕虜にされてしまう。彼らの地球侵略の方法は
単純。地球に大質量の「隕石」を落とす。
俗に言うシャアの反乱である。ウソだけど。
2センチ厚で上下巻。長い、長すぎる。
要らないところを
はしょって全一巻にまとめられる。
場面描写はざっくりと分けて・・
・米国政府の人々
・ソ連政府の人々
・ソ連製宇宙ステーションの人々
(→後に「捕虜たち」になる)
・米カンザス州の生き残りの人々
・侵略者側の人々このうちまず「ソ連政府の人々」の人物
描写なぞいらん。ソ連政府なんぞ
外部から見た、協力してくれるのかどうか
よく解らない組織・・程度でかまわないと思う。
(この小説は1988年に書かれたもので
疑り深く、秘密主義で「えばりんぼ」の
「ソ連」が健在なのです)
米カンザス州の生き残りの人々の様子や
バイクで走り回り、最後は乗り組み員になる
ところなんか全部不要。
長々と読まされるからこそ、
下巻の残数十ページあたりで
ようやく人類(実質メリケン人のみ)側反撃に
Yahoo!(実質メリケン人読者のみ)となる訳。
カタルシスってやつ。最後に爆発する高倉健さん。
・米国政府の人々やっぱ人類側のキモなんで
米国政府は外せない。
宇宙人との外交計画、防衛、そして反攻計画
あたりの描写はやっぱ一番読みたいところ、
というか唯一物語を進めてくれる連中ですし。
米国政府は宇宙人問題に対する諮問機関として
国内の
著名なSF作家達を招集しますが・・
いくらなんでも自分達を持ち上げすぎでしょ。
ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネルさん。
・ソ連政府の人々「ソ連に何かあったとき、あの国が真っ先にやること
といえば決まってる。「動員」さ」
ソ連側の書記長やら人民会議議長など要職の人間が、
アメリカに都合よく途中からめちゃくちゃ物分りよく、
洞察力のある人物たちに代わってくれる。
なもんで、内部的には色々あったようだけど、
少なくとも人類にとって致命的な反発をせず
米国に同調。米国以外で唯一宇宙人とやりあう
国力(つまり核兵器)を見せ付けてくれる。
そのうちソ連自体が小説に出てこなくなるけど。
それと○○スキーとか、××チェフ、△△ネンコ等々、
ロシア人には悪いが、個人的にロシア人の名前って
ぜんぜん覚える気がせず、非常に読みにくい。
なもんで人物の読みわけもできない。
登場人物がみんな同志か、さもなくばKGBでいいです。
・ソ連製宇宙ステーションの人々(→後に「捕虜たち」になる)
「大航海時代、白人達の乗る帆船を南太平洋の
原住民たちが丸木船でもいいから、外洋で
迎えていれば、もう少しまともな出会いに
なっていたと思うんだ(意訳)」
宇宙人が訪問してくるなら、座して待つより
少しでも外に出て歓迎した方が馬鹿にされない
だろうという理屈で、宇宙ステーションは
ソ連製ながら、アメリカ下院議員の
でしゃばり男がアメリカ特使として乗船する。
人類初の宇宙人との接触者なので、どんな
宇宙人なのか知りたい読者側からにしても、
彼らの驚きや知り得たことは、そのまま
読者の喜びにはなる。
(なんかマクロスの輝たちを思い出してしまった)
彼らの存在もその内、だんだんどうでもよくなる。
一緒につかまったソ連人とは喧嘩ばかりだし。
(最後に大活躍するんだけど)
・侵略者側の人々なんと敵側宇宙船内で殺人(象)事件ミステリー
までおきる始末。内容が盛りだくさん杉。
ソ連内部の描写やカンザス生き残り人民の描写
よりは読んでいてよっぽど楽しかったが。
一番重要なこととして・・もっとも
熱く、かつ楽しめるはずの
バトルシーン描写が
へボ杉。これ致命的だよ。
ほとんど結果しか書かれていない。
SF侵略小説の要諦であるというのに。
それと邦題の「降伏の儀式」がなあ。いまいちかなと。
なんか食指動かないし。
原題は「Footfall」
意味としては「足音、歩み」。
これが「降伏の儀式」になるのは、
フィスプの降伏儀礼が
「相手の胸に足をおろさせること」これは彼らが象タイプの生物から進化したかららしい。
確かに「降伏」とその考え方ってやつは、
この宇宙人どもの根源に通じるものがあるんだけれども
小説内では「蹂躙」とも訳されており
彼らの繰り出す
最終兵器の名称でもある。
結局は巨大隕石。
一方で彼らは何故か南アフリカ共和国を端とした
アフリカ一帯への降下・侵略も開始する。
最新アメリカ兵よりも、動物相手に巧みに狩りをしてきた
マサイの戦士たちのほうが戦果を上げているのには苦笑。
フィスプ戦士も、ジャングルでベトコンに
酷い目にあった帰還兵のように
ヤサグレる連中が続出。
彼らの地球侵攻方法。
武装した小象兵で、アメリカの農村一帯に
ハングライダーで降下するのです。
想像してみてください。みるからに
アホだから。
まあ、
おバカSFだったんです。
インディペンデンスデイやディープインパクト
アーマゲドンも結構影響を受けたんではないでしょうか?
更にネタばれは加速します。
人類側が切り札として総力を挙げて製造するのが
宇宙戦艦「大天使(ミカエル)」人類の希望である宇宙戦艦を、横から見て
絵文字で簡単に書き表すと
⌒
⌒ ⌒
↑U↑
⌒⌒⌒
こんな感じ。マジ。
「⌒」部:子象型侵略宇宙人のビームをはね返す傘。
「U」部:操縦席兼戦闘ルーム
「↑」部:NASAの誇る現役
スペースシャトル4機を武装して搭載
「コロンビア」「チャレンジャー」
「アトランティス」「ディスカバリー」
(シャトル事故が起きる前にかかれたので
全部現役なのれす)
あまったスペースには
「ストーヴパイプ」と
呼ばれる簡易宇宙戦闘艇を複数搭載。
ガンダムで言えば「ボール」
ただしこいつの装備する砲は
アメリカ海軍戦艦アイオワ級の40センチ砲。
弾頭は通常に非ず・・。 宇宙戦艦ミカエル本体の武装もやっぱり原爆。
正確に言えば原爆爆発で発生する
ガンマ線相手にぶつけるガンマ線レーザー。
レーザーを相手にぶつけるには反射鏡が要りますが
これも一発撃つごとに鏡が吹き飛ぶ
使い捨て兵器。
ミカエルの傘内には、人類が自滅のために過去
営々と作り上げてきた原爆が豊富にストック
されてますんでご心配なく。
「⌒⌒⌒」部: キモはここ。この宇宙戦艦、エンジンがありません。
エンジン部には、大きくて丈夫な「おわん」があるだけ。
どうやって打ち上げるのか?
答えは簡単。
おわんの中で原爆をサクレツさせるのです。
当然、発射基地といいますか拠点だった街は壊滅します。
さらには地球環境にも相当の影響が。
けど、いいんです。人類危急の時。
少数の犠牲は多数の幸福の為に無視されるのです。
もう
原爆万歳、ブラボゥ核兵器の世界です。
絶対、日本人には書けない小説でしょう。
とにかく笑える。発想が小学生だから。
このミカエルの活躍シーンのために
ツマランページを我慢して読んできた
そんな感じすらします。
すげい、ミカエルだ・・↓
http://www.up-ship.com/apr/michael.htm文字通り「なりふり構わぬ」人類側の反撃に
ついに・・・でも人類も負けたようなもんかな。
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posted by PON at 21:00| ☀|
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