2010年10月12日

「蝿の王」田中 啓文

どうもPONです。長かった残暑がようやく終り
ようやく秋かと思えば通り越して
冬になりそうなイキオイですが
皆様、いかがお過ごしでしょうか?

さて秋といえば「食欲」と「読書」ですが
溜まっていた「読書感想文」を
リリースしようと思います。
一部、マンガも混じりますが
まあお気になさらず。

12日「蝿の王」 田中 啓文
13日「震源」真保裕一
14日「感染」仙川 環
15日「クーデター」楡 周平
16日「沈黙の教室」 折原一
17日「迎え火の山」熊谷達也
18日「漂白の牙」熊谷達也
19日「検察捜査」中嶋 博行
20日「アトムの最期」 手塚治虫
21日『篤姫』と島津・徳川の五百年〜
22日「病葉(わくらば)流れて」
23日「幽霊人命救助隊」高野和明
24日「閉鎖病棟」帚木 蓬生
25日「セルラー」(小説版)
26日「神の獣」 巴 啓祐

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「蝿の王」 (角川ホラー文庫) 田中 啓文 (著)

普通、小説「蝿の王」といえば
ウィリアム・ゴールディング作の方だと思います。
少年士官候補生たちが遭難して南の島へ。
まして思春期の「少年」ともなれば。
少年たちに派閥が生まれ、人間性を失い
どんどんカオスに突入してゆく様を描いた小説。

基本は十五少年漂流記なんだけど
人間ってあんな「よいこ」ちゃんじゃないよな?
作者の底意地の悪さが光る作品です。

作者は、読者のうちの何人かが映画化までされた
あの作品と間違えてくれないかしら・・と
「角川ホラー文庫」に収録される際に
「ベルゼルブ」→「蝿の王」改題した
とのことだけど・・
さすがに間違えねーだろ。それは。

あらすぢ
ある遺跡で無数の赤子の骨とひとつの壷が
発見された。その封印が解かれたとき、人類は
未曾有の危機を迎えた。
突如、東京では児童殺人が頻発する。そこには
必ず虫が大量発生するという怪現象が…。
その最中、ひとりの少女が身に覚えのない妊娠を
する。彼女の頭の中では、「自分の子を産み、
「ベルゼブブ」からこの世を救え」という声が
響きわたる。ベルゼブブとは?
前人未到の伝奇ホラーの扉が開かれる。
内容(「BOOK」データベースより)

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ネタバレでいきます。

まず、主人公はビッチな女子高生。そののカレシ
(キーパーソン)は芸能人であるという設定がちょっと謎。
それも人気アイドルグループではあるのだが
一番人気の無い存在であるらしい。
それでも腐っても芸能人。オンナには困らないハズなのに
これまた特別美人というわけでもないビッチの
マジ彼氏であるあたりが、なんとも謎。
(あんまりその設定が活かされていない)

「神」陣営と「魔」陣営が、いずれはアーマゲドン
で雌雄を決するなんてキリスト教には伝承があるけども
実はそこに「正邪」なんてものはなく、たまたま
今のところ、我々が「神」と呼ぶ陣営側が覇権を
握っているに過ぎない。
我々が「神」とよぶ陣営の「神」の使いは使徒「天使」だが
「魔」陣営にとっての使徒は「虫」だ。
人類は、覇権を握った側が、都合で作り出す
勢力維持のための便利な「コマ」に過ぎない。

だから、もしアーマゲドンで「魔」陣営が勝利すれば
神の「しもべ」である天使は、闇に隠れざるをえず
天使は虫に替わって、犬の落し物!の廻りを飛び回り
次の勝利の機会をうかがうのだ。

「虫は偉大だ。もし彼らが己のもつ能力を存分に使い
 地球の支配的地位に取って代わろうとしたら
 簡単に実現できるだろう。なぜそうならないか?
 それは虫がバカだからだ。
 バカのトップに神クラスの知的存在が
 就いたとしたら、どうなる?」

神は身勝手で、人類のコトなんかこれっぽちも
考えていない。彼が考えているコトは、自陣営の維持のみ。
神が主人公ビッチに与える試練は壮絶だ。
「神の子の嘆き」も少しは解ろうもの。

作者の田中啓文氏は、プレステのゲーム
「かまいたちの夜2」にシナリオライター
として参加していたらしい。
なるほど。通りで「ミミミ・・・」とか
美味しい果実が、実は「寄生虫」の卵で云々・・
の「底蟲村」の話とか、あのシュミの悪さ
通じるものがある。

また、この小説には、あるツインタワーの屋上で
団体が集会を開いていたが、悪魔の力をもって
一瞬のうちに建物が無くなり(文字通り跡形も無くなる)
人間たちがグシャグシャと地面に叩きつけられるという
シーンがあったらしい。
ツインタワーといえばそう、グラウンドゼロ。
書き上げてスグに「911」事件が起きてしまったため
惨劇の舞台をツインタワーから変更した。
併せて、読んでてウンザリする描写も、
幾分ソフトな表現に改めたらしい。これでもね。

作者もあとがきで「この作品を最初に書いていた
ころの自分は確かにどうかしていたと思う・・とまで
述べている。
とにかくエロ・グロ・汚いのオンパレード。
ドコまで気色悪い描写、胸糞悪いシチュエーションを
描写できるか、実験小説の面もあったのかもしれない。

登場人物の「メンチョーロー太子(たいし)」
(彼の壮絶な活躍は必見!)が、いいキャラであった。
初登場時の描写からして「顔は歩くキ×タマ」とか
書かれてしまっているし。

何故「顔がキ×タマ」なのかといえば
そんなこと(←見た目)を気にする余裕も無いほどに
人類を救おう(というか「神」陣営を守ろうと)と躍起になり
風呂も入らないことが祟って、全身皮膚病にでも
なってしまったからなのかも知れない。
(PON的ビジュアルイメージとしては手塚治虫氏の
 「火の鳥」にでてくる、鼻がブツブツの男
 あるいは映画「エレファントマン」)

さらに、物語終盤に超巨大な「蝿のコドモ」が一匹
途中で捕食した人間を体内で消化しつつ
新宿ビル群を練り歩く。まさにリアルモスラ。
馬鹿馬鹿しくもオゾマシイビジュアル
この小説は初めから自作品の映画化・ドラマ化なんか
とうに放棄していたことがうかがえます。



面白かったけれど、二度読みはしたくないし
ましてや人には勧めない。
なんかタンツボの中身見せつけられている様でね〜。
「蠅の王」、面目躍如といったところなんだけど。

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posted by PON at 21:00| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(ホラー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする