2010年10月15日

「クーデター」楡 周平


クーデター (宝島社文庫) 楡 周平(著)

「間違いや不正をうやむやなうちに
 終わらせてしまう社会ほど恐ろしいものは無い。
(中略)人々は無意識のうちに劇的な方法で
 歪みを正せる人間の出現を望むようになる・・
 ヒトラー、毛沢東・・独裁者とはまるで
 救世主が現れたかのように、はじめは熱狂的に
 迎えられるモンなんだ」

まあ、内容はこのセリフに集約されます。
シェーンコップ中将もさんざんヤン提督に
討論を持ちかけていましたしね。

この人の本は、
「フェイク」と「無限連鎖」を読んだ。
とても読みやすく、内容もPON好みであるので安心。
(「フェイク」はいまいちだったけども)

(コピー)「この国は一度潰すしかない・・・!!」
(俺)余計なお世話だっつーの。

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
謎の重武装軍団が日本海沿岸の原発を狙う。
機動隊は殱滅され、住民は一斉に避難。
折しも日本海では米原潜の頭上でロシア船が
爆発炎上。航行不能となった
原潜を挾み「北」と米日韓はまさに一触即発。
その時東京で、米国大使館と警視庁に同時爆破
テロ。さらに衆参両院に仕掛けられる青酸爆弾…。
誰が、一体何のために!?
安逸を貪る「虚飾の花・日本」を襲う未曾有
の危機。
各メディア騒然の問題作。

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〜危機に際しての独特な嗅覚

「日本に戻るたびに感じる違和感。死は一瞬のうちに訪れ
 ちょっとした運命の気まぐれが死と生を分ける。一見
 日本と変わらない生活をしているように見える国の
 人々でさえ、危険の兆候に敏感で、対処法を心得ている」

いきなりネタバレしてしますとですね。

オウム真理教よりも行動力と計画性のある
宗教団体、龍陽教(若干センベイ団体も入っているかな)
教祖が、物欲半分、ホンキの世直し半分で
腐った日本をクーデターで維新しようとする話。
そんな時、偶然日本海で北朝鮮VS米軍の
一触即発状態が起きてしまったんで
こりゃ幸い。神は我らを味方していると
北朝鮮にすべてを押し付けるように
ノリノリで計画を実行する。

日本の危機管理はいつものごとく。
政治家は身の保身に走り、なにも決定的な行動は
起こせず、現場だけが酷い目にあう。

名ばかりのスローガンで遅々として進まない改革
自分以外の連中はおいしい思いをしているように見え
なんて息の詰まる世の中・・そう思ってしまうとき、
いつの時代も人々が求めるのはドラスティックな改革を
鮮やかに実行できる英雄。

〜国家のリスクマネージメント

人、あるいは国家の運命というものは、周到に計算された
ものではなく、単なる偶然が左右する。火種はいかに小さくとも
条件が整えばいつでも大爆発の引き金になるものなのだ。

「危機が想定されていない?
「そう、すべての軍事的危機は事前に回避されるものであり
 そういう事態に陥らないようにすることが前提の国だからだ。
 リーダーがいないのだよ。あの国にはな・・。(中略)
 政治の世界には絶望的なほど、すべてに責任を持って
 事の解決にあたる信念を持つ人間がいないのだよ」

〜今回も第14普通科連隊の皆さんが活躍

本作の1997年作 クーデター(楡 周平)でも  
1998年作 宣戦布告(麻生幾)でも
日本海側の原発で警察力を上回るテロが発生するので
必然、金沢に駐屯する彼らが出撃する。

能登半島に最も近い自衛隊を出撃させようとしたら
待たせる実弾が無かった・・・
「自衛隊は原則として弾丸の備蓄を持たないのです。
 盗まれて極左過激組織にでも使われたら取り返しが
 つかないことを恐れてです」
「ただの一発もか?」
「はい。旧ソ連の侵攻を想定した北海道以外は」
「それでは演習はどうするのだ?」
「工場は演習スケジュールに合わせて製造し、
 その日のうちにすべて撃ちつくすのです・・」
 誰がこんな馬鹿げたシステムを作り上げたかって?
 それはお前ら政治家だ!
 幕僚は喉まででかかった言葉を飲み込んだ。

〜テロ最初の犠牲者、高木巡査に敬礼

運転席で黒く炭化していゆく警察官の姿が見えた。
(中略)自分達が行ったのは間違いなく殺人行為で
すべては新世のためだ・・この狂った世を正すには
多少の犠牲はやむをえない・・

〜こんな名前のレストランが!

ザ・クーデター(京都のレストラン)
(THE QUDETA京都)
どうも京都は「クーデター」(≒維新)と
縁が深いから・・ということらしい。



説明的なセリフがちっと多かったかな。
たとえば同一組織内で上官と部下の会話。
「我々がおかれている状況」なんてことを
上司が部下に懇切丁寧に説明してたりするけど・・

読者が知らないのはいたしかないが
そんな情報も知らないで
その組織に所属しているのだとしたら
これは問題がありすぎ。

あ、日本の組織が腐っていてもはや行動不能に
陥っていることを、小説で再現したかったのかもしれない。
まあ読みごたえに繋がるからヨシとしよ。

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posted by PON at 21:00| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(ミステリ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする