(PHP文庫) 半藤 一利 著
<あらすぢっつーか内容>
内容(「BOOK」データベースより)
日本海軍とは、いかなる歴史をたどった組織
であったのか。勝海舟による創始から、
日清・日露戦争の勝利で日本を世界の第一線に
押し上げた“栄光の明治”。軍縮条約に揺れた
“苦悩の大正”。そして、太平洋戦争の敗北に
より組織解体に陥ってゆく“悲劇の昭和”に
いたるまで、波瀾に満ちた興亡史を、代表的
人物の言動を中心にしながらドラマチックに
描き上げる。
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別に「ドラマチック」ではない。
あの時代のことを書けば自ずとドラマ性が増すのは
当然でして。
“栄光の明治”
“苦悩の大正”
“悲劇の昭和”
上手いね。帝国海軍の歴史(それはそのまま
戦前の日本の歴史でもあります)とは
まさにそういうことだ。
旧海軍が好きだからこそ「この辺どうにか
ならなかったのかよオイ!」といった
著者、半藤氏の気持ちが伝わってくる。
確かに、日清・日露戦争の勝利で日本を世界の
第一線に押し上げたのは“栄光の明治”だけど・・
・地方の犠牲と引き換え、軽工業(絹製品)で
コツコツ稼いだ金で、すべて外国産の艦船を
揃え、やっと勝った(武器が日本産ではない)
・諸外国には景気のいい事を吹聴し借金で戦争
やっと勝った。
・もう限界・・そんな時に政治(外交)がしっかりと
機能し、第三国(この場合アメリカ)に
仲介してもらい、やっと勝った。
当時の当事者(明治の政治家や軍人)は、日本が
神の国だから勝ったとか、そんなファンタジーではなく
とにかく「やっと勝った」に過ぎないことを
充分すぎるほど理解していた。
けど、そんなことを諸外国や国民に言えるわけがない。
更に明治の人間は沈黙を美とする。
結果、現実が下の世代に伝わらず、景気のよい
上っ面の言葉だけが「真実」になってゆく。
「やっと」勝ったのではなく「強い」から勝ったになる。
軍縮条約に揺れた“苦悩の大正”
・米国は行き詰った日露戦争を停戦仲介してくれたほどで
それほど仲悪くなかった。
・海軍が米国を仮想敵国としたのは、米国にウラミが
あったとかではない。どこでも「軍隊」ってヤツは、
オモチャ(武器)を買ってもらうため、予算のために
どこかしらを「潜在脅威」として吹聴せねばならぬ
モノ。それを後進たちはカンチガイしてしまった。
いつのまにか米国を「仮想敵国」ではなく
ホントの「敵国」と認識してしまった。
・軍縮条約とは、自国の軍備も確かに制約を受けるけど、
底なしの国力を持つ国(米国)も制約を設けるわけ
だから、考え方を変えれば無限に強くなる国を
自分の土俵に置いておけることになる。
これは、建艦競争で財布がスッカラカンの
日本にとって実は有利なことだった。
太平洋戦争の敗北により組織解体に陥ってゆく
“悲劇の昭和”
英米産の鉄クズ、油、技術をもって、英米と
戦うってんだから、いやはやナントモである。
誰かその矛盾を指摘できなかったのだろうか?
正確にいえば、見通せる人間も中には居たが
そういった人間は、非主流派か、社会的に権限がないか
もしくは、頭は廻らないのに血の気だけは無駄に多い連中に、
後から刺される危険をおそれもあり、黙っていた。
反戦争派とみなされた軍人のもとには、血判状が送り
つけられたり、暴漢がストーキングしてくる時代だ。
余計なことさえしなければ、軍人or政治屋は
世間では立派な人ってことで誉めそやされ
料亭飲み食いし放題、愛人作り放題。
そりゃあ黙っていた方がオトク。
「個人的に戦争には反対だし、負けるのわかってるけど
そんなことオレの立場から言えるかよ!
それに世論がそれを許さない」
当時の偉い地位にいたひとは
熱意の大小はあれ、俺は反対だったんだが・・と
似たようなことを言い残している。
いつの時代にも、個人レベルでみるとベターな選択を
重ね続ける人は存在するのに、最終決断できる地位に
たまたまバカが居ただけで、すべてが水の泡になる例が
ウンザリするほど本から見て取れ。
当時のメディアは「ラジオ」と「新聞」
その2大メディアが、あやふやな「民意」「世論」を
作り上げて社会を更に煽る。その方が売れるから。
「世論」なるものには気をつけたほうがいい、と
海軍さんの生き残りも書き残している。
結果を知っているから、偉そうなこともかける。
あの時代に自分がいたら、ジブンもその「世論」
なるものに同調していたかもしれない。
また、あの時代を教訓としてもなお、
今の政治・社会状況を見る自分の目は
正しいのか?いまだ迷う自分がいる。
不惑の年なのだがねぇ。
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