「オリオンよ森へ導け」
潜水艦映画にハズレなしという。
観る人によっては「戦争賛美映画」と
いわれても仕方ないかな
登場人物みんな、現代の日本人顔なのが
モウレツに違和感。
1945年にあんな顔キレイな顔立ちの日本人
いないだろ。艦長とか特に北川景子。
タカラヅカのキャストで演目が「ランボー」みたいな。
今回、自己犠牲の権化「柳葉敏郎」氏は
出てきませんでした。代わりに栄作くんが
戦死要員かと思っていたが・・。
<あらすぢ>
1945年夏、沖縄南東海域。日本海軍所属潜水艦
イ−77は米海軍の侵攻を防ぐべく、倉本艦長の
指揮の下、防衛任務に就いていた。イ−77は
倉本の的確な読みによって米軍の輸送艦を撃沈。
しかし同じく防衛任務に当っていたイ−81は
米海軍の駆逐艦パーシバルに葬られてしまう。
親友である有沢・イ−81艦長の最後のメッセージを
受け取った倉本は、パーシバル、そして敵艦艦長
スチュワートとの戦いに臨むが……。
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イー77は主人公艦。
特殊小型潜水艦(人間魚雷といった方が早い)
「回天」を3隻搭載。
一方、イー81には先輩で北川景子の兄が乗り込む。
計五隻が敵の沖縄への補給船ルートに展開。
タンカーを狙う。ここまで主人公艦は
敵潜水艦も一隻撃沈しているモノスゴイ船だ。
「よし、飯を食おう」
何かにつけて飯を食うことを奨励する艦長(演:玉木宏)
艦内緊張感の緩和と庶民派アピールは
欠かさない。でもなんか飯よりガムのイメージ。
そんな艦長、誰にでも丁寧語が逆に違和感。
艦長が最年少の少年兵にいう。
「俺も音楽家を志したことがあってな・・」
「そうなんですか?」
「ウソだよ・・」
ここ多分笑うトコ。
自分も「のだめ」観ましたしわかります。
敵対する米海軍の凄腕駆逐艦長がいう。
「日本海軍は誇り高い軍隊だ。
なにが彼らをそこまで狂わせた?」
それはなんか奇妙に買いかぶりスギです。
で、言わせていただきますけど・・
オマエらだろ!
炊飯長がドランクドラゴンのデブじゃないほう。
すげー、と思ったのは、これは絶対当る!という
イ−77必殺の一撃を、米駆逐艦艦長は
爆雷のほぼゼロ距離放出でしのぐトコ。
魚雷+自分とこの爆雷の爆発力で
むしろ被害4倍とかになりそうだけど
(劇中でも部下に反対されてるし)
直撃よりはいいという、とっさの判断。
「カイテンは使わんよ。それが奴の誇りだ」
安全深度を越えるのは、潜水艦映画では
お約束中のお約束。
モノ言わぬ船が悲鳴を上げる見せ場でもある。
パイプからの水、油の流出と
水圧でネジがハジケとび誰かが負傷。
そして電球が破裂してブラックアウト。
限りがある酸素、電池容量、兵の発狂・・。
回天はスクリューが一軸走行。
イー77は二軸。
敵を欺くため、おとりとして回天2艇を
無人で発射。敵の監視をだまくらかす。
太平洋戦争時の潜水艦は
「可潜艦」といわれるくらい、基本的には
その辺のフネとなんら変わらず
緊急時には潜ることが出来ますよ、という
レベルであるとされ、技術的な制限が多い。
最大潜行でも180〜200メートル。
今のは一応軍事機密らしいけど
400メートル前後かな?
(死ぬのを覚悟するなら倍までOK)
我々が思うほどに万能ではなく
例えば、「敵が来そうなところに
ずっと潜ってて、船のサイドに
魚雷が当てられれば楽勝じゃね?なんて
芸当は、じつは至難のワザだったのです。
また、日本海軍を除き、一般的に「駆逐艦」とは
「潜水艦」を殺すための艦種なんだけど
1対1で潜水艦と駆逐艦が戦ったら、
潜水艦に勝ち目はないのがジョーシキ。
だからこそ、大量破壊戦争の時代に
潜水艦は物語として、知力を尽くした
タイマンバトルが成立する最後の舞台なのだ。
(逆に言えば、現代の潜水艦は無敵すぎる。
兵員さえ気が狂わなければ
原子力でそれこそ半永久的に潜ってられるし
(炉の圧倒的なパワーで酸素も作れる!)
魚雷だって自動追尾装置付だし
海上の船ドモにミサイル攻撃だってできる。
それになにより持ってるからなあヤツら・・「核」)
「人間は兵器じゃない。たった一つの命だ」
いかにも戦後教育を受けた我々現代人が
言いそうなセリフを放つ艦長。
一方で、死んでしまった部下は
偽装(沈没したと思わせる)のため
艦外に射出する冷酷さもみせる。
水兵「海面に油と死体が浮いてきました」
艦長「ボタンは?」
水兵「は?」
艦長「制服のボタンはすべて閉じられているか?」
水兵「Yes」
艦長「奴はまだ戦う気だ・・」
死体とはいえ、五体満足が一体だけ
浮いてきたところで、果たしてどれだけ
敵を欺けるか疑問ではある。
後日談では艦長は、配下から犠牲者を出して
終戦を迎えたことを苦にしてか、
戦後は軍人会に顔を出すこともなく、
民間船のイチ航海士として生涯を終えた・・
と語られる。
それにしてもスゲイな昭和30〜40年代の
日本社会は。ひょっとしたらそういった
過去をもつ人間が、平気で職場で上司やら
経営者やらをやってたんだから。
頭上がんないよな。
その辺のおまわりさんだって、下手すりゃ
戦場で人殺した経験を持つ方がやってたんでしょ?
ところで魚雷の重さは何トンだろ?
エンドクレジットみたら
なんとこの映画は
「雷撃深度一九・五」を元に
「ローレライ」の福井晴敏氏が
「真夏のオリオン」の楽譜をキーに
脚色して別の作品としたものらしい。
毎度ながら、エセ人道主義だなあ。
軍事ロマンチシズムに毒されるんじゃない!と
ラップ少佐に言われてしまうぞ。
ごめん、笑ってしまった ↑
以前のレビュー↓
「雷撃深度一九・五」
それにしても北川景子さん。ズイブン長生きだね〜w
あの眉の根よせるところは何とかならんか?
キャスト - 真夏のオリオン
出演
玉木宏 (倉本孝行)
北川景子 (倉本いずみ/有沢志津子)
堂珍嘉邦 (有沢義彦)
平岡祐太 (坪田誠)
黄川田将也 (遠山肇)
松尾光次
古秦むつとし
奥村知史
戸谷公人
三浦悠
山田幸伸
伊藤ふみお
鈴木拓 (秋山吾朗)
太賀 (鈴木勝海)
吉田栄作 (桑田伸作)
鈴木瑞穂
吹越満 (中津弘)
益岡徹 (田村俊雄)
ディヴット・ウイニング (マイク・スチュワート大佐)
スタッフ - 真夏のオリオン
監督 篠原哲雄
監修 福井晴敏
脚本 長谷川康夫
飯田健三郎
脚色 福井晴敏
原作 池上司
福井晴敏
飯田健三郎
製作総指揮 市川南
佐倉寛二郎
撮影 山本英夫
美術 金田克美
装飾 尾関龍夫
音楽 岩代太郎
音響監督 橋本文雄
照明 小野晃
編集 阿部亙英
第二班監督 岡田俊二
SFX/VFX/特撮 松本肇
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