「この空はつながっている・・」
解約してしまった日本映画専門チャンネルだが
時々実施している客寄せの”無料放送”にて
放映していたので録画観賞。
ポリティカルやエコノミック
サスペンスドラマって奴は
映像化するに監督に相当の力量がないと
寝ちゃうんだよなあ・・とも思い
原作が亡国のイージスの福井晴敏なんで
ちょっと期待もするという・・複雑な心境で
観はじめたのだが・・やはり最初の二回は
気がつくと寝てしまっていた。
ってなわけで三度目の正直。
<あらすぢ>
終戦後、ひそかに回収されたというM資金と
呼ばれる旧日本軍の秘密資金。それをネタにした
詐欺を行い続けてきた真舟(佐藤浩市)は、
石(森山未來)という青年から彼が所属する
日本国際文化振興会なる財団の人間に会うよう
迫られる。だが、財団のビルに足を踏み入れた
瞬間、高遠(観月ありさ)が率いる防衛省
秘密組織の一団に襲撃される。石の助けを
借りて逃げ出した真舟は、そのまま
本庄(岸部一徳)という男に引き合わされ、
50億円の報酬と引き換えに某投資ファンドが
管理する10兆円ものM資金の奪取を持ち掛けられる。
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この手合いの映画を観て
登場人物の物言いとか行動、行動事由なんかが
理解できなかったりすると
”オレの読解力が不足してるのかな?”とか
”やっべ、今の主人公の行動が理解できないオレは
敵にバカにされる大衆側の人間だ・・”とか
妙に卑屈になりがちなPONだったりします。
が、少なくともこの映画に関しましては、
ご安心ください。
誰もがさっぱり理解できない内容に
仕上がっています。
理解できないのは、観客の頭が悪いのではなく
作品の出来が悪すぎなのです。
理解できなくて当然なのです。
いったいどの辺りが
出来が悪すぎるのか?詳細に解説されてる
ブログがこちら(ネタバレ上等)
この作者の世界は”亡国のイージス”も
そうだったけど、ポリティカルやエコノミック
あるいは軍事サスペンスということで、
出てくる人物誰もがスゲー組織をバックに持ち
不必要過ぎるほどの深刻な過去を背負い
もの凄い技術を持ちつつ
やらなくてもよい余計なニッポン革新を
断行したり、止めようとしたり、
暗殺したりされたり、と
我ら凡俗達のすぐ裏で暗闘を繰り広げており
それがとっても通常営業なようで厭すぎる。
そんな、感情なんて1ミリも入り込めないような
業界に、びっくりするくらい
”青臭い理念”や”理想論”が
(もうほとんど中学生レベルの理想論に近い)
現れて物語を動かしてゆくのだ。
「亡国〜」の方は、たかが大学の卒論で
自衛隊員の子息が「戦えない軍隊なんて
軍隊ではありません」と書いたことから
始まった事だし
この「人類資金」も、ネタバレしちゃうけど
日本の裏社会で代々”M資金”を運営してきた
一族の一番若い奴(スマップの慎吾ママ)が
単なる投機マネーに堕落してしまった
”M資金”のありようを嘆き、”M資金”
本来の役割であるらしい・・「困っている国や
組織に無利息で、ある時払いの催促なしで
融資、人類社会全体の発展のため役立てる」
へ方針転換を企てることから始まる大騒動だ。
「有りもしない”富”を流通させ
奪い合えと命じるのが」ルール。
欧米が生み出したこのルールに
日本も便乗、結果として国家を
破滅させてしまった、という反省から
慎吾のジーちゃんは金塊を奪取。
アメリカでも日本政府でもない
第三勢力として、”M資金”という存在を確立。
人類を発展させるため
貧乏(だが志を持った)人たちを
応援する資金にした。
それは戦後日本を復興させる原動力とも
なったのだが、何時の間にかマネーゲームの
原資に変わってしまった。
そんな風潮に孫の慎吾ちゃんは憤り、
更に「分かち合う」という新資本主義を
目指すまでに理想を進める。
しかしそうなると資本主義の恩恵を
最も受けているアメリカの親分さんが
黙っているはずないわけで、で・・。
なお”M資金”のMは
GHQのマーカス少将から採られたというのが
通説だが、慎吾ちゃんは
マンカインド=人類のMなんだと力説する。
「あらゆるところに”才能は”眠っている」
慎吾ちゃんの部下で、主人公の佐藤浩市を
助ける男(敵かな?味方かな?的ポジション)
セキ(演:森山未來)という男。
カペラ共和国(架空)なる東南アジア最貧国出身。
慎吾ちゃんは若い頃、オヤジと対立して出奔。
世界中をバックパックしていた時に、この国を
訪問、戦争孤児だった彼と知り合う。
セキは6ヶ国語を話し、格闘術にも精通。
経済学にも明るくその気になれば博士号を
取れるスーパーな野郎。
セキのように、生まれた国なぞ関係なく、
相応の教育と情報を与えればスーパー人間に
なれる素質の人はどこにでもいる。
それは国家も同じことで、本来”M資金”は
そういった境遇にあるものをバックアップする
為にあるんだと、慎吾ちゃんは目覚めた。
「人を互いに競わせ
数字だけの成長を強いる」
慎吾ちゃん、演技は頑張ってるんだけれどな。
世界中の投機筋≒報道機関の目を
「カペラ共和国」に向けるため、いきなり
株価操作を始める佐藤浩市たち。
いくら劇上でスーパーなキャラといっても
世界的には無名で、カペラ共和国の公務員でも
議員でもないセキが、何故か国連で代表演説
することになる。
物語後半はセキの国連演説をめざす主人公側と
阻止しようとする謎の一派とのドタバタが続く。
(この辺、Zガンダムの
ダカール・シャア演説を巡る
よく解からないゴタゴタに似ている。
あれも観客そっちのけで、登場人物だけが
演説を実現できないと地球が滅ぶ・・
それくらいの深刻さでドタバタやってた。
作者、ガンダム大好きだからなあ)
結局、セキは国連会議場の演台に立つが
はじめからセキの話を聞こうともせず
退席し始める大国代表たち。
ここにも実は敵の手が回っていて
大国の代表は事前に裏でイロイロゆすられたり
買収されており、積極的に退場する。
ところが発展途上国の代表はそういった
力が及んでいないから、退席しないのだった
(はじめから闇の勢力の相手にされていない)
主人公側も手をこまねいていたわけじゃない。
M資金にモノを言わせ、事前にカペラ国民に
大量のカメラ付き端末(PDA)をバラマキ、
彼らがとった他愛もない写真を
会議場のプロジェクターに映す。
自国民の笑顔あふれる写真を前に演説をぶつセキ。
それだけで何故か自席に戻ってきてしまう
代表たち。拍手喝采。
「世界人口の7割は電話もかけたことがない」
「すばらしいでしょ?ついこの間まで
電話をかけることも知らなかった国民に
情報革命を起こすこともできるんです!
このお金(M資金)には!!」
つまり、M資金は実在する、が一部金持たちの
マネーゲームの原資に堕するくらいなら
可能性を持つ発展途上国に投資すべきだ!
・・といいたいらしい。セキや福井さんたちは。
え?これで終わり?この映画のオチってコレ?
謎の女(一応ヒロインらしい)に観月ありさ。
そもそも出演の意図も行動原理すら謎の女だけど
(元慎吾ちゃんの彼女らしく、それでいながら
防衛省情報局(DAIS)諸属という)
彼女が所属する防衛省情報局は
今回、この映画に堂々とは出てこないが
作者(福井氏)の作品世界に共通して出てくる
架空の組織で、亡国のイージスでも出てくる。
そこの局長役として佐藤浩市が出演しており
また、内閣情報調査室(内調)お偉方として
岸部一徳も出演している。
せっかく共通の世界観なんだから
役者も共通にしておけばいいのに。
もっとも、彼らをこの配役にすると
今回はカメオ出演並みに顔を出さなくなってしまう。
というよりも、主役やる人が
いなくなっちゃいますがね。
殺し屋エンドーがカッコいいけど気持ち悪い。
(このひとも先祖代々殺し屋であるらしく
1945年の先代はトヨエツが演じてるのに
出演は最初の数分だけ。現代のエンドーを
トヨエツにやらせれば良かったのに。)
小説は映画と別でまだまだ
続くようです・・。
人類資金
監督:阪本順治
脚本:福井晴敏・阪本順治
原作:福井晴敏
製作:「人類資金」製作委員会
出演者:
佐藤浩市
香取慎吾
森山未來
観月ありさ
石橋蓮司
豊川悦司
寺島進
三浦誠己
岸部一徳
オダギリジョー
ユ・ジテ
ヴィンセント・ギャロ
仲代達矢
音楽:安川午朗
撮影:笠松則通
編集:早野亮
製作会社:КИНОキノフィルムズ
配給:松竹
公開:2013年10月19日
上映時間:140分
製作国:日本
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