2008年09月24日

「シリウスの道」藤原伊織

「シリウスの道」 藤原伊織

「なにかを選べるだけで恵まれているさ。
 恵まれすぎてる。
 そういうことさえ、はなっから
 あきらめるしかねえ人間もいた」

あらすぢ
東京の大手広告代理店の営業部副部長・辰村祐介
は子供のころ大阪で育ち、明子、勝哉という二人
の幼馴染がいた。この三人の間には、決して人には
言えない、ある秘密があった。それは…。
月日は流れ、三人は連絡をとりあうこともなく、
別々の人生を歩んできた。しかし、今になって
明子のもとに何者からか、あの秘密をもとにした
脅迫状が届く!
いったい誰の仕業なのか?離ればなれになった
3人が25年前の「秘密」に操られ、吸い寄せられる
ように、運命の渦に巻き込まれる―。
著者が知悉する広告業界の内幕を描きつつ
展開する待望の最新長編ミステリー。
内容(「BOOK」データベースより)

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この「あらすぢ」ちょっと大げさ
特にこのヘン↓
運命の渦に巻き込まれる―。

ホンの脇役であるのだが、話中に「つまみ」が
ホットドックしかないボロな「バー」が出てくる。
この行を読むまですっかり忘れていたのだが
自分は以前も上司に借りて、藤原伊織さんの
テロリストのパラソル」を読んでいた。
テロリスト〜の主人公が生活の根城にしていた
のが、そのバーなのである。なんか嬉しい。
刑事くずれの気のいい?ヤクザである「浅井」も
健在。世界のクロスワールド。ガンダムとかで
たまに見られる手法。

前作「テロリストのパラソル」は、一筋縄でない
青春時代(過去)を持つ男二人が、奇妙な出会いをして
過去を清算しようとする物語。
ネタばれだが主人公は元学生運動過激派、
協力することになる「浅井」も、警官くずれのヤクザ。
清算する過去は、爆弾テロで民間人を犠牲にして
しまったことであり、
更に言うなら主人公以上にそれを未だ引きずり
彼なりの論理から今でも爆弾テロを引き起こす
元親友。

それに比べると、同じ世界観の話ではあるが
この小説「シリウスの道」は「ハードボイルド
サラリーマン小説」である。小説に出てくる事件も
ちょっと小さい。もっとも一般人世界としては
充分大きな衝撃だけれど。

主人公「辰村」は、大手広告代理店の副部長。
仕事も出来て、美人の女上司にモテ、筋が通らないと
上司(社長でも)に平気で楯突き、信頼できる有能な
後輩、情報通で協力的な同僚と、おおよそサラリーマンが
あこがれる?環境の中、競合他社と、無能な上司と
戦いながらも、この会社は腐っている、こんな仕事
なんか、いつだって辞めてやるよ的スタンスで
勝手にやさぐれているのだが・・根本的には勤め人
なのである。

それなりにダークな過去を背負っており、腕っぷしも
立つのだが、かなしいかな、どこまで行っても、
所詮は元気なサラリーマンに過ぎない。切った
張ったを演じてきた彼(浅井)には遠く及ばない
あたりがなんとも。浅井元ヤクザは「闇の世界に
生きる男」の凄みをまざまざと見せつけてくれる。
まあ、この辺はボコボコにされるなかで辰村も
充分思い知ってはいるのだけど。

広告代理店の仕事運びが覗けて勉強になった。
よき人財は人財を呼ぶのだそう。
ひるがえって、今の自分は・・。

今となっては「テロリストのパラソル」の最後が
あんまり思い浮かばないのだが・・主人公は死んだ
んだったっけか?もう一度、パラパラとめくって
みれば、この小説ももう一味違って楽しめるかも
しれない。

小説を書きたい方は見本になさったら?といった
感じの文体、話の運び方は非常に読み易かった。
なんにも知らない戸塚という新人にむけて話すことで
広告業界に無知な読者に説明を入れ
株(デイトレ)についての知識は、デイトレで社員を
首になった不思議な派遣、平野が対応する。

ケチをつけるなら、登場人物がみんな出来すぎ。
敵であっても味方であっても。それからこの作者は
女性の書き方が相変わらず古い。

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ドラマ化もされたみたい。

大岡裁きをする社長は、正義の味方ではなく
組織の味方なんだな。主人公に理のあるうちは
良いが、敵に回すとめんどくさそう・・。
それから新人「戸塚」氏。出来すぎ。
新人たるもの、かく有りたいものだけど。



この小説の中のビジネスのように目から
鼻に抜けるやりとり、敵との打打発止、エッジ
ギリギリのところでのビジネスをやってみたい
気もちょっとした。
(具体的にいえば、実世界において、XXをやらせるなら
 奴に任せればはずれはない・・と誰かに言われる存在に
 なりたいのう)
とても胃が持たなそうだけれど。

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ネタばれ覚悟の書き出し

主人公が脅迫を受けたヒロインに言う。
「企業社会にはそういうところがある。世間でどんなに
 評判のいい企業だってユートピアじゃないんだ。
 組織に属している以上、どんなに人格者であっても、
 どんなに優秀な社員であっても対立する存在が皆無と
 いう環境はあり得ない・・」

マーケティングの基礎
「ネット証券に限らず、どんな業界でも全体のパイを
 広げる戦略をとるケース ―ネットでいえば新規
 ユーザーの獲得だが― はナンバーワン、それも
 圧倒的なシェアを持つ企業に限られる」

主人公がぽつりと言う。
「本来は、どんな仕事も地べたを
 這いずりまわるようなとこにあるはずなんだ」

デイトレに厭き厭きしつつある派遣「平野」がいう。
「偉い仕事って?」
「ネジを作る仕事が一番偉いと思う。すべては
 そこから始まるから。株の売買も広告も、人の労働の
 上前をはねる虚業に過ぎない・・」

「勝っちゃん、いまやっていること、あんまり意味
 がないとおもうとるやろ。しかし細かいところを
 ていねいにつくることが物事ではいちばん重要なんや。
 神は細部に宿ると偉い人がいうとる。」

「いまのまま半人前で安住したいってんならそれもいいさ。
 自分の言葉で考えろ・・恥を恐れたらおわりだ」

「赤の他人に自分の弱点を無条件で晒すことのできる
 人間は弱さからもっとも遠いところにいる」

「おれの癖、教えましょうか?」
「弱気なときほど虚勢を張らないとやっていけない
 部長みたいに自然にふるまえないんです。
 つまりは情けない男なんでしょう」

プレゼン特訓
「最大の欠点は、話が抽象的すぎるって点だな。
 数字の裏打ちがなけりゃ説得力ゼロだ」


posted by PON at 21:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書(ミステリ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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