2008年09月22日

「怪奇植物トリフィドの侵略」中尾明訳

怪奇植物トリフィドの侵略」中尾明訳 

PONは怪獣映画の影響大で、もともと不思議な
ものが大好きでしたが、学校というのものは
そういった「エンタ−テイメント」とは無縁の
無機質で朴念仁な世界。自分の家を出たらそういう
サブカルとは切り離して考えるものなのだと勝手に
思ってました。
それだけに、当時図書館でみつけた
あかね書房刊「少年少女世界SF文学全集」の存在には
衝撃を受けました。こんなところ(無機質な学校)
にも面白いもんがあるじゃん。しかも学校公認で、
無論ロハで借りていいの?ヤリーィってな感じでした。

「少年少女世界SF文学全集」は名前のとおり
古今東西のSF文学全集ですが、若干低年齢向けに
書きなおしてあり、低年齢者にはいささかまずい描写
もザックリカットしてある親切編集。挿絵なども、
1973年頃に出版された全集なんで、劇画レトロ
フューチャー的でありながらどこか突き放した
不気味さが存在し、それがこのシリーズの怖さに
拍車をかけておりました。

PONが最初に手にしてしまったのがコレ
「怪奇植物トリフィドの侵略」
ジョン・ウィンダム作 中尾明訳 
誰が作者かとか翻訳者は何者か?なんて豆知識は
後日知ったもので、当時はこの題名に既に
やられてしまいました。なにせ「怪奇」で「侵略」
ですから。

あらすぢ
ある夜、緑色の流星雨が流れ、世界中の人々がその
天体ショーを目撃する。歩行する食用植物トリフィドの
栽培場で働いていた主人公は、トリフィドの毒を持った
鞭で目をやられ、治療のために入院し目を包帯で覆って
いたために流星雨を目撃しなかった。その天体ショーの
翌日は主人公の包帯を取る日であったが、朝起きて周囲の
様子が違うことに気が付き自力で包帯を取る。流星雨を
見た人々は皆盲目となっていたのだった。主人公は、
誰も目が見えず絶望に覆われたロンドンの街の中を歩き
始める。ところが・・

もともとは、「トリフィド時代」とか「トリフィドの日」
とか呼ばれる小説で、SF映画として「人類SOS」
という題で1960年代にイギリスで映画化もしています。
いいなあ。題名がストレートで。

PON@小学5年生はマジにぶるるでした。
読後、人のぬくもりwを求めて、いつもなら
飯の時以外はあまり近寄らない我が家の「居間」へ
思わず行ってしまいましたもん。当然ながら
オヤジも、おふくろもいつものごとくだったんで
自分が生きている実世界は、まだ安心なんだなと
胸を撫で下ろしたものです。

獅子座流星群とか、○○年に一度きりの
天体ショーなんてときどき新聞とかで騒がれますが
とりあえず、この小説の影響がありまして
PONはそういう時、絶対にブームに乗らないように
しようと心に誓ったのであります。
具体的にいえば、皆が騒いでいても空を見上げるのは
やめよーってコトです。だって、流星群を見ちゃうと
失明しちゃうんですよ?リスクは最小限にしたい
じゃないですかw

後ですね、この小説の背表紙とかの表題は
カラフルに使い分けがなされているのですが
この「怪奇植物トリフィドの侵略」、色は
緑です。それも「ふかみどり」系。緑という色は
人の緊張感をほぐすのだとか、よく言われたり
しますがPONには通じません。
(ふか)緑=トリフィド のイメージが刷り込まれて
しまいましたんで。新緑の「緑」は大好きですがね。

このトリフィドって奴は、ソ連が遺伝子操作で作り出した
もので、こいつから良質の「食物油」が取れます。
そのために、牧場(トリフィドは動き回れる!)で
人類の管理下のもと家畜化していたんだけれども、実は
こいつは肉食。毒の鞭を持っていて、生物をしびれさせて
動物を捕食するというとんでもない奴。

こういう設定も大人になってから知ったんで、
このあかね書房版では、結構省略されてます。
何かの事故で目の手術をした主人公が、いよいよ
包帯を取る日に悲劇(流星雨を市民が皆見て、皆盲目に
なってしまった)が起こり、あたふたしている間に
なぜか、地下!から怪奇植物群が出現、人類ピンチ。
「生き残りVS無限増殖の植物群」だったと記憶します。

とりふぃど.jpg

本当の原作では、生き残りが結成するコミューンにも
様々な考えを持つ組織があり、弱者は生存の邪魔と
盲目市民は排除するタイプから、しっかり受け入れる派
まで、人のエゴとか、いざとなったら人はどう動くのか
のシミュレーション的描写もあったようです。

怖い植物と言えば、「マンドラゴラ」でも
「ワイアール星人」「ケロニア」「スフラン」でもなく
こいつにとどめを刺しますよ。今でも。



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posted by PON at 21:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(SF) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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