2009年01月12日

「千里眼 メフィストの逆襲」松岡 圭祐

「千里眼 メフィストの逆襲」

松岡 圭祐 小学館文庫
上司からの頂き物シリーズであり
千里眼シリーズであります。
「洗脳試験」に続いて読んでみました。

今度は暗黒面に支配された「ダーク岬美由紀」
ともいうべきキャラが、北の国からやってくる!

人の家にあがりこんで大きな顔をする国の組織
【人民思想省】に所属する彼女。

対話を求めればはぐらかされ
対立せざるをえないと感じると
すすんで敵対関係を選ぶ相手。
本質的に異なる人生観を身につけた
異星人のような彼女(北朝鮮の工作員)に
対して・・

あらすぢ
シーズン・オフの日本海海岸。父親の目の前で、
十三歳のひとりの少女が忽然と姿を消した。
海上には、時を同じくして朝鮮民主主義人民
共和国(北朝鮮)の不審船が出没していた。
それから四年。北朝鮮人民思想省工作員と
思われる謎の女が、千里眼・岬美由紀の前に現れた。
同時期、岬は奇妙な銃器事件に遭遇する。
その陰には、かつて岬を苦しめた
“メフィスト・コンサルティング・グループ”の
密使の姿があった。北朝鮮とメフィスト―。
二大マインドコントロール集団が
岬を、そして日本を襲う。

内容(「BOOK」データベースより)

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前に読んだ「洗脳試験」がオウム真理教ネタなら
今度は北朝鮮拉致事件。
作者は、その当時のタイムリーでセンセーショナルな
事件を作品に絡めている様子。

相変わらず、Wikiで調べたのだが
どうもこの「千里眼」シリーズは
小説発表→単行本発売→文庫化と経るたびに
陳腐化する時事ネタを書き直したり
展開を少々変えたりしているようで。
しかも時期によって「角川文庫」から発売されたり
「小学館文庫」から出ていたり。
なんか色々事情があるのでしょう。まあいいや。

文体は、変にまわりくどい表現や展開もないので
スラスラ読めて、ストレスなし。

それにしてもすごい。主人公、岬美由紀さん。
ヤクザ、チンピラレベルなら
阿修羅のごとくたたき伏せ、
強権を持つ悪辣な政治家、官僚には進んで刃向かい
弱者(本当に困ったヒトや老人、子供)には慈母のごとく。
それでいて28歳、だれがまあ見ても「美人」と
断定できる風貌とプロポーション。
F−15イーグルも大型バイクも乗りこなし
簡単な爆弾くらいなら解体可能。カウンセラーとして
数々の読心術もあって、なお独身。

最強でしょ。

こちらの方が先輩なんだろうけれど、福井春敏氏の
「亡国のイージス」にそっくりなフレイバー。
妙にミリタリーに詳しく、日本の政治と国防を
憂い、一般民とマスコミの堕落振りを嘆く。
ましてや今回はベースが「北朝鮮による拉致」だもんな。
ますます似ている。

こういった小説をネトウヨと同レベル。
文才のある軍事マニアが書いた小説
と断定するのは簡単なんだが、
あくまでフィクションで「エンターテイメント」小説に
過ぎないことを差っぴいても、常日頃、あまりに歯がゆい
日本の政治・外交を見せつけられてしまうと、
つい、こういったミリタリー小説で、溜飲を
下げたくもなるよ。

けど、それじゃあ、ひと昔前に南朝鮮で流行った
天皇家の一人娘が南朝鮮の青年と恋に落ち
 日本という国のあまりの酷さに

(あくまで南朝鮮から見ての話ねw)祖国を裏切る」
って小説「百済書記」を楽しんでしまう
あの国の思考様式と同レベルになってしまうし。
難しいところ。

せめて、かかった火の粉を振り払うことくらいは
堂々と行える国であって欲しい・・と思う反面
戦前、戦中のような国に戻るのも勘弁して欲しい
と願う自分は小市民であります。

助けて、岬二尉。



〜信頼できるハズの上司のセリフ
「裁判所がダメでも、そこまであやしいなら
 外務省が何らかの手を打つんじゃないのか?」
これだ―美由紀は内心悪態をついた。
誰かがなんらかの手を打つ。どうにかしてくれるだろう。
日本ではそういう責任のたらい回しが常識となっている。
息を潜めて楽観主義に徹していれば救われるに
ちがいないと信じている

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<今度調べておこう・・>

1)本物の航空自衛隊はスクランブル迎撃に
  わざわざ複座型のF‐15DJなんか
  使うのだろうか?
2)F‐15は空対艦ミサイルを
  装備できるのだろうか?
3)シンキング・オーソリティー観察
4)人民思想省
5)ムルシンスク博士
6)人がうそをつくとき肌が露出している部分を
  無意識に隠そうとする習性がある

〜東京カウンセリングセンターの理事にして
 カウンセラー業界のドンのおことば

「カウンセラーは泣いた子をあやすのが仕事。
 その子に勉学の機会を与えたり、しつけたり、
 将来の世話をするのは仕事の範疇ではないのよ」

〜嵯峨にとって「有意義な恐怖」とは
 カウンセリングにおいてクライアントを目の前に
 したとき、彼らの言動に対し恐怖を感じる。
 その時、自分は何に怯えたのか冷静に分析してみると
 自分は常識外のものとの出会いを恐れていることに気づく。
 なぜなら人はこうあるべきだ、こういう人間が正常だ
 という偏見があるから。そういう偏見を駆逐したとき
 相談者を理解できる第一歩が踏み出せる・・

〜人民思想省
 北朝鮮、中央人民委員会直属
 集団心理の把握と煽動に長けている。

〜こわっ
 飢えかけた人民は抵抗しようとするが
 その段階すら通り過ぎると、意識が朦朧とし
 暗示に反応しやすくなり、抑圧に抵抗しようとする
 意思すらもてなくなる。
posted by PON at 21:00| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(ミステリ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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