2008年10月25日

「リセット」北村薫

「リセット」北村薫著 新潮文庫

「―かの時に言いそびれたる―
  大切の言葉は今も―胸にのこれど」

これも上司からもらった本。
北村薫氏の本は初めて・・だったと思う。

これは北村薫「時の三部作」のひとつで。
「スキップ」「ターン」「リセット」
自分は、いきなり最終作から読むことになった。
もっとも、この三つは特に繋がっている
訳ではないようで、作者が「時と人」にこだわって
書いた一連の作品ってことらしい。

あらすぢ
遠く、近く、求めあう二つの魂。想いはきっと、
時を超える。『スキップ』『ターン』に続く
《時と人》シリーズ第三弾。

「・・・また、会えたね」。昭和二十年五月、神戸。
疎開を前に夢中で訪ねたわたしを、あの人は
黄金色の入り日のなかで、穏やかに見つめてこう
いいました。六年半前、あの人が選んだ言葉で
通った心。以来、遠く近く求めあってきた魂。
だけど、その翌日こそ二人の苛酷な運命の始まりの
日だった。流れる二つの《時》は巡り合い、
もつれ合って、個の哀しみを超え、生命と生命を
繋ぎ、奇跡を、呼ぶ。

************************

ちょっと読みにくいのが難点。

あまりに表現方法に凝りすぎていること、
(主人公に、わざわざ病床からカセットテープを
 用いて子供たちに遺言めいた思い出話を
 させるあたりとか・・)
時代感を出したいためか、その時代の子供文化を
作者が一生懸命、研究して散りばめたシーンが
各所に見られること。はっきり言ってその時代に
まったく興味のないPONのような人間には
読みにくいだけで。そんな、細々と昭和初期の
芦屋のハイソな生活、少女かるたや、
昭和30年代の男子小学生の生活のことを
記述されてもねえ。

各時代の子供文化のシーン描写中ともなると
作者がその描写に夢中になってしまい、
一部、物語の展開が止まってしまってます。
さらには詳細に記述しすぎて、興味を持って
よーく読み込まないと、せっかく物語のキーとなる
「歌」や「小道具」を読み飛ばしてしまうかも。

それだけ研究したんでしょう。だけに最後の
参考資料の数々はすごい。この小説は、当時の
子供の生活を凝縮したタイムカプセルとして成り立つ。

さらに、主人公のハイソな少女時代、
大人の情報の断片から、子供の視点で
大人の世界=太平洋戦争の推移が、
「他人事」として描写されているところには
「まあそんなモンだったんだろうな〜」と
素直に感心した。

その分、物語の構成は実はシンプルなんで、
タイムスリップモノにありがちな、
「一方その頃、もう一方の主人公は?」
といった頻繁な場面転換、時系列の変更が少なく
その点で読みにくさは多少緩和される。

この物語、はっきり言ってキモは、
悲恋の修一君と真澄さんが、実はなんども
「〇〇〇〇〇」って「〇〇〇」あう
という部分なんで、そのキモをひとつの
小説として完成させ、感動に結びつけるため
肉付けしつつ、細部に工夫を凝らした・・と。
そんな感じです。

「・・・いきなり、いなくなってしまうのは
 止めてほしい」


自分は一回読めばもういいか。

それにしてもずいぶんと、遠回りしましたなあ。
お二人さん。



ちなみに現在、船の資料館に二式大艇はないよ。

************************
管理人モチーベーション維持のため
クリックしていただけますと助かります!
  ↓ ↓ ↓
e8c67347.gif

「しし座流星群」
といえば、最近ドラマ化された「流星の絆」を
観たこともあって、同時期にこのワードが
PONの周囲に沸いたのにはちょっと驚き。

「自分の意見を言ったときには必ず
 人の意見も聞きなさい」という学校の教えは好きだった。

「忠勇、義烈、純忠、至誠、誠忠―と、
 厚化粧のような言葉が並べられました。
 どれほど多くの語を集めて追いかけても
 黄泉路へ去って行った方々に追いつきはしないでしょう。
 言葉を集めるか、あるいは沈黙に無量の思いをこめるかが
 残された者の礼だと思います」

「―我々は今、滅びの時を迎えているのだ、と」

「―帝国とは我々ではなかったのか。
 それなら、どうして皆な、帝国と共に滅びないのか」

「親は子供達のために、素敵な時代を残そうとするもの
 でしょう。わたし達の親の世代は、強い日本を
 渡そうとしたのね。「力」を。
 ところがうまくいかなかった。それを見ていた
 子供が、今、親になった。だから今度は、
 豊かさと文化を手渡そうとしている」」

「―豊かになれば堕落する。キリギリスさんのように。
 だからそれを支えられる文化という穀物を集めているの
 日本人というアリさんは。―本能なのね」

「会議は踊る」より
 リリアン・ハーヴェイの「唯一度だけ」
「ジャスト・ワンス・フォア・オール・タイム」


posted by PON at 21:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。