2009年08月19日

「帝都東京 隠された地下網の秘密」秋庭 俊

「帝都東京 隠された地下網の秘密」

秋庭俊 新潮文庫

「政府というのはウソをつくのも商売のうちらしく
 政治家も官僚もよく
 「寝た子(=国民)を起こす必要はない」という。
 これからなにかをするは、必要な手順を踏むしかない
 が、何も知らないことまで教える必要はない。
 黙っていることはウソをつくことにはならないのだ・・」

首都高や地下鉄が、たとえ一部、堀の端っことはいえ
皇居の敷地内を通過していることが、昔から不思議
だった。戦後、民主化がなされたとはいっても
今以上にまだまだ「皇室」やそれに類する崇敬の念を
持つ人達も多かったはずで、政府中枢ほど、そういった
人間は多かったのだと思う。なのにそのルートを選定
し、許可がでて、実行に移した・・。

首都高や地下鉄といった土木工事は、東京オリンピック
のために開発が集中し、政府中枢も国威高揚とその
イケイケ気分の中で、つい許可をだしてしまったのかな?
と、PON自身は適当に考えていたのだが、違ってた。

地下道は戦前からあったのである。
おそらく最初の目的は、VIPの移動・避難方法確保
のために。

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あらすぢ
我々は、果たして東京の真実の姿を知っているのか?
眼に見えぬ地下網の実態は、「帝都」時代から厚いベールに
包まれたままではないのか?限られた資料を細大漏らさず収集、
そして取材、分析することによって、地図には記載されない
地下鉄の存在が炙り出され、あるはずのない大地下網の存在が
明らかになってゆく。我々に残された最後にして最大の謎に
挑む、ノンフィクションの傑作。
内容(「BOOK」データベースより)

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作者が疑問に思ったものに、新規開通したとされる
地下鉄の駅構内には、昨日今日作られたとは思えない
年季の入った壁が露出していたり、ある日、安っぽい壁が
取っ払われ、その奥に地下施設が「完成」という名の下
それこそ唐突に現れた、なんて経験からだという。

戦前の地下鉄(都心の地下施設)といえば「銀座線」
くらいなもので、それまで東京の地下には何もなかった
というのが、政府、営団地下鉄(現東京メトロ)、
土木業界および日本の歴史の常識だけれども、
作者が持った、ホンのちょっとした疑問から調べて
ゆくうち、東京の地下は、トンネルだらけであった
ことが明らかになった(と作者は書いている)

第一次世界大戦で、飛行機が武器となりえる事が
明らかになり、世界最強海軍で守られているはずの
世界の中心、ロンドンでさえ、ドイツ飛行機による
空襲にあった(といっても、当時の性能では爆弾
数キロだが)これは、当時の為政者にかなりの衝撃
をあたえ、帝都の宮遇にそんなことがあっては
ならない・・てんで、関東大震災による帝都復興
という題目の元、ガンガン、トンネルを掘りまくった
らしい。それも市民には内緒で。

大正デモクラシーとかいわれても、データや議事録
の改ざんは当たり前。今よりも一層、市民には
お上のやっている情報が得られず、また「首都を守る」
という大義から、当時の政治家と官僚、実業家は結託。
議会の目をくぐりぬけ、時に「地下鉄工事」というのは
「下水道工事」という別の言葉で言い換えられることも。

お役所だけが勝手に使用している言葉がある。
「街路」もしくは「道路」。その言葉から
我々一般市民が想像するモノといえば
片側3車線くらいで街路樹が並ぶキレイな
大通りである。それは間違っていないのだが
お役所の概念でいえばコレだけではない。
「街路」もしくは「道路」には、道路、歩道
地下道、街路樹まで含まれるのである。

だから戦前の役所資料に「(仮)5号街路計画」なんて
計画があったとすると、市民を立ち退かせて環八道路
みたいのを造って土建屋を儲けさせているんだな・・
と思いがちであるが、しっかりと予算も取り、実際に
工事したらしいのに地上にはまったくその道路がない。
何十年間も計画中とされる道路(街路)なんてのが
実際に、たくさんあるのだそうだ。

戦前といえど、さすがに金のことなればシビアなので
まっとうなルートで道路予算審議にて了承されるわけだが、
了承されさえすれば、その後、計画が実現しようと
しなかろうと、何とでも説明できるのである。
作者の研究による当時の議事録では、政治家などは
巧妙に「街路」という言葉でたくみに説明してたりする。
竹下元首相ではないけれど「言語明瞭意味不明」って
奴である。
少なくとも嘘はついていない。
その代わり本当のことも言っていないが。

中にはワザとかどうかは判らないが「街路」という
言葉で「地上の話」と「地下道」を混同して、よく
判らないままにしてしまう人や組織もあったとか。

今も昔も、混同してしまうのはマスコミであり、
すべてを知った上で巧みに使い分けるのが政治屋。
役人や軍隊は、すべては国のためと口を閉じ
時の気骨ある「設計者」だけが、真実(東京の
地下は昔からトンネルだらけなんだよ!)という
メッセージを、業界紙や「東京市制史」とか
「東京の建築100年」とか、そういった、だれも
読まないような本に織り込んできた、という歴史。

そんな裏ワザを駆使して政府だけの秘密のトンネル、
緊急脱出路、地下道路もしくは政府高官や官僚のシェルター
としてガンガン掘られたとされる。
軍が力を持ち始めた昭和初期には、いよいよ加速
軍事独裁だからほぼ好き勝手。戦争中ともなると
ますます加速する。
戦後の軍消滅により、地下は迷宮と化してしまった。

そんな「地下道」の有効利用、それが民間の地下鉄
なのである。時々思いついたときの、政府専用地下室
もしくは地下鉄の開放。それが1998年の丸の内線
唐突な西新宿駅開業のようなコトにつながったりする。

あんまり金はかからない。既に完成しているからだ。
その代わり鉄道としては、結構無理がある。
鉄道建設は既に空いている地下室と地下室をトンネルで
結ぶ工事であるから、鉄道としては不自然なルートや
無理なカーブが続く。東京の地下鉄がやたらと線路を
きしませて走っているのもこの辺に原因がある。

かの大江戸線が開通するときも、地下鉄関係OB
だかが「昭和の宿題でしたから・・」と口を滑らした
こともあったらしい。

古来より、陸軍の仕事の半分は「トンネル掘り」
揶揄されるくらい、土木工事が大好きな団体。
大本営移転計画のあった松代や、硫黄島などの
大トンネルのような例が、実際にあるのに、帝都に
何もないのはおかしくないか?ってこと。

作者は、戦前の政府ならイザ知らず、戦後の政府も
その負の遺産を引継ぎながら、しかも市民に内緒で
コトを行っているのがどうにも許せないようだ。
(政府が専用地下鉄を持つことについては
 反対していないが、市民に隠し続けるという
 その姿勢は、民主主義の敵ではないかと)

この作者は、かつてどこかの記者だったようだが、
残念ながら今一歩のところで、司馬遼太郎にはなれない。
このヒトの「文」は非常に読みにくいのだ。

司馬遼太郎氏ならば、歴史小説を書く前に、学者も
舌を巻くほどの文献調査を行う。それは秋葉氏も
同様なのだが、司馬氏であれば、その歴史に
縁の深い著名人の人生も組み込み、その人生を語る
中から、日本の歴史を読み応えある小説にしてゆく。

それでも折につけ、土木設計者の友人やら地下業OB氏
などとの会話部分もあるのだが、これがまた何の説明も
なく、唐突に挿入されているため、作者が手に入れた
資料を解説をしているのか、推量しているのか、はたまた
単に回想なのか、いまいち判然としないのである。
アタマのよい読者ならば、ここまで書けばお解かりに
なるはず・・って、

わからんよ!

読者おいてきぼりで、この二人が地下網のなぞを
またひとつ暴いた!と勝手に大盛あがりなところは
今は亡き「マガジン」のキバヤシとその一族の会話
みたいで微笑ましくすらなった。



面白いが、とにかく文が読みにくい
(読者にわかってもらおう、とする意図にかけてる)
のが最大の難点。



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文庫本とはいえ、一応できる限りの図面を
展開して、持論がどれだけ正しいのか
主張しているのだが・・タダでさえ、東京の
地下鉄網に詳しくないPONには、何を言っているのか
わからん部分も続出。

が、文庫版の場合、あとがきにフォロー(出版後の
各界の反応など)があって、こちらが本文のわかりに
くさを多少救っている。っつーか、彼が全編に渡って
示した、秘密の地下道の根拠は確かに大事なのだろう
けれども、そんな読みにくい根拠を追っかけなくても
彼が言いたいことは、ほとんど「あとがき」に書いて
ある。

・・機動警察パトレイバーTHE MOVIE2にも
幻の「新橋駅」ってのが出てきてたなあ。
学生運動家のかおりを残す、オシイ監督にとって
国家の隠しごとには敏感なのかもしれない。
posted by PON at 21:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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