電車の中で拾ったんで読んでみた。
それにしてもだいぶキアイの入った文庫。
黄色ががって、重版してたけど昭和50年代だし。
<あらすぢ>
東京新宿で、中野区の区会議員の変死体が発見
された。捜査の結果、この事件の二カ月前に
焼身自殺した筑波銀行新宿支店長との関連が
浮かんだ。議員らにだまされ、二億円もの不正融資
をさせられたとの抗議の遺書。しかし銀行は、
スキャンダルを恐れ、事件をうやむやに処理
していた。現代の聖域、銀行の知られざる内幕に、
鋭いメスを入れた企業推理小説の傑作。
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昭和53年くらいの話なんで、
主人公は小説内で29歳だが、
今生きていれば60歳内外!もう定年である。
ネタバレになるけど、この頃の彼らの両親、
上司、上層部、社会を動かしていた面々ってのは、
大陸(オーストラリアでもアメリカでもなく
満州です)で、今では絶対体験出来ないような、
それはもう「様々」な経験を重ねてきた
人達なわけですよ。
判りますかね?この場合の「様々」って。
海千山千、多少の事じゃ動じないよなあ。
そんな連中が上の世代にいるんだもの・・
いわゆる団塊の世代って方々は、
(時にはイヤな思いをしながらも)彼らに
鍛えられ、日本を支えることができたわけだな。
昭和20年、終戦。軍部と政治家のお偉い方は
好き勝手やった末にあらかた死亡、
30〜40代の働き盛りも真っ先に戦死。
とにかくやらなきゃいけない事はたくさんあるのに
マンパワーが圧倒的に不足していて
ポストはあるけど成り手がいない・・
たしかにそんな時代が存在したんだと思う。
法律も社会的コモンセンスもゆるーい時代でしょ?
「昔、大陸でなんかやっていたらしい。
フシギに金持っている。戦後のドサクサで
業界に紛れ込んだ、ガラじゃないのに
何故か結構、美味しい地位にいるジイさん」
1980年代初頭は、それこそいろんな社会の
トップにいたんだろう。
戦争で清濁経験した人々が表社会、裏社会で
それぞれ偉い地位についていた時代が確かにあって
そんな時代は、いくら暴力団追放を叫んでも
意味がなかったと思う。
表のトップも、裏のトップも、たいして変わらない。
時と巡り合わせが違っていれば、どっちに
ころんでも、おかしくない人達ばっかりだったから。
表社会の人間は、生まれた時から「表」の人間と
いった棲み分けが、現代ではかなり明確だ。
表社会は、何十年もかけて裏社会との繋がりを
断ち切る(少なくとも見えなくする)努力を
してきたんだろう。これからも完全には
なくならないだろうけど。
・・てなわけで、何を言いたいのかというと
小説の、昭和53年に29歳だった主人公
彼より上の世代(部長とか社長級)は、
混乱の時代に鍛えられた一筋縄ではいかない
連中ばかりで、叩けばホコリだらけのひとも
多かったものと思われ。
そんな時代背景の「企業推理小説」ですから、
主人公が立ち向かう謎解きも大変です。
お疲れ様でした。
>現代の聖域、銀行の知られざる内幕
そんなに、当時(昭和50年代)の小説で
企業の内幕を描くモノって少なかったのだろうか。
オチを知ってもそれほどショッキングには
感じなかったけれど。
小説内では「携帯電話」も「インターネット」もなく
情報収集するなら新宿のスナックやらバー。
そんな時代を今では新鮮に感じます。
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