2010年01月02日

「下妻物語」(小説)嶽本野ばら

「下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん」
 嶽本野ばら著 小学館文庫

上司が貸してくれた本です。さすがにびっくり
しましたが。(これまでハードボイルド物が
多かっただけに)

あらすぢ
四方八方田んばだらけの茨城県下妻。そんな田舎
で浮きまくりのバリバリロリータ少女・桃子は、
大好きなお洋服欲しさに始めた個人販売で、これまた
時代遅れなバリバリヤンキー少女・イチコと出会う。
見た目も趣味も全く違うこの二人。わかり合える
はずはないのに、やがて不思議な友情が芽生えて…。
ギャグぶっちぎり!思いっきり笑ってほんのり泣ける
爆走青春ストーリー。刺激的でエンターテイメント・
センスがたっぷりなコマーシャルで知られる
ディレクター・中島哲也氏が惚れ込み、自ら監督を
名乗り出た素敵な映画化原作。

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面白かった。
映画、小説どちらから読んでもOK。

映画ではどちらかといえば、ヤンキーイチコからの
語り口だったと思いますが、小説は最後まで
ロリータ娘桃子からでした。
細かいジョークがあちこちにあり、ネタが解る方ほど
楽しめる仕掛けになっていますが、小説のほうは、
そのうちだんだん風化してしまうでしょうね。
唐獅子株式会社のように。

【ロココの精神・・なのだ】
街中でたまーに「ロリータ」ファッションをしている
女性を見かけてしまうと、何が好きでそんな120%
社会から浮いてしまうカッコをするのか、不思議で
仕方なかったワケですが、この小説でそのナゾが
氷解しました。

作者の嶽本野ばら氏は、こういう世界が大好きらしく
その持てる薀蓄をすべて小説で披露しています。
それもとっても解りやすく。
ロリータの服装の原点は「ロココの精神」
「他人の評価や労力を査定の対象とはせず、
 自分自身の感覚で、これは嫌い、これは好きと選別。
 労働は忌避する」そんな貴族社会で始まった
 究極の個人主義が、ロココの根底な様子。
中には、単に可愛いからという理由だけでロリータ
ファッションをする人もいるんでしょうけれど、

【ロココはどんな思想よりも
 パンクでアナーキーなのです】


【ご意見無用・・なのだ】

であるからして
誰がなんと言おうと、これが己の生きる道、
お指図不許可!であるならば、ロリータも
(イマドキ)ツッパリヤンキーも同じところに
立っているわけです。桃子(ロリータ少女)は、
冷徹な自己分析からロココなる境地に達しましたが、
イチコ(古いタイプのレディース)は若いうちの
感性だけで同じ境地(ご意見無用)に立っています。
イチコの場合は、これからも桃子のような
自己分析できないと思われますが、彼女
とにかくバカなので。

ラスト、桃子が元ヤンで、それなりの戦闘力を
持っていた・・という燃える展開を待っていたのですが、
火事場のバカぢからと、落語こんにゃく問答のような
勘違いから、何とかなってしまいました。
(これは映画もおんなじ)

それにしても、よく下妻や尼崎の住民から
クレームが来ないものだ。小説中にもあったけれども
彼ら(特にヤンキー)はネットとか難しいものを
読まないから騒がれないらしい。
それとジャスコも太っ腹だね。

以下、下妻近辺の人にしかわからないお言葉
いずれも小説に出てくる実在の店。
・粉とクリーム(通称「こなくり」)
 →うまいと評判のパン屋さん
・貴族の森 
 → 喫茶店チェーンなのだが
 最近経営者が変わった様子。名前が変わってた。

景気悪化は地方ではもう死活問題。

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