帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい) 新潮文庫
なんか、題名からして、富士Q系のああいった
ホラー系、もしくはサイコ系とか、そんなあたりを
想像してしまったんだけれど。
ここでは本来の語義「閉鎖病棟」における物語。
決してお仕着せのお涙ちょうだいモノではなく
作者のあたたかな視線を通し、社会は
「精神患者」と、ひとくくりにして隔離して
終わってしまいがちだけれど、彼らにも彼らの
生活があり、決して許されることのない過去が
あるにしても、それぞれに理由があるのだという
あたりまえの描写が伝わってくる。
こういうの読んでしまうと、機知外による
機知外な事件が起こるたび、危険人物は
みな病院に閉じ込めておけばいい!という
暴論におもわず頷いてしまいがちな
・・そんな常日頃の自分に
自信が持てなくなってしまいます。
<あらすぢ>
九州地方のとある精神病棟。患者たちは、それぞれに
退院できない理由を抱えながらも、互いに助け合い、
日々の瑣末な出来事に希望を見出しながら、明るく
暮らそうとしていた。しかし、皆で回復をあたたかく
見守ってきた通院患者の女学生に起きたある事件が、
やがては殺人に発展してしまう。殺人を犯した者、
それを知っていた者、彼らが守ろうとしたものは
何だったのだろうか。
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【入院患者仲間にもそれぞれ過去があり・・】
「患者はもう、どんな人間にもなれない・・
かつてはみんなは何かであったのだ。
それが病院に入れられたとたん、患者と言う
別次元の人間になってしまう。
そこではもう以前の職業も人柄も好みも、
一切合財が問われない。骸骨と同じだ・・」
「どげな親でも子を思う気持ちは強か
ばってん、子が親を思う気持ちは
天から地までの段階があるけね・・」
【病院の主ともいえる秀丸さんはつぶやく】
「刑務所の暮らしは、来る日も来る日も
自分のしたことを考えないわけにはいかないように
できとる。けどここ(病院)は違う。ここの
暮らしは楽しいけんね。ある日どっとツケが来るんよ」
【主人公に届く手紙】
「病院は天国ではありません。チュウさん、病院は
ついの棲家ではありません。いつかは自分の力で
飛び立たなければならないのです」
それにしても秀丸さん・・カッコいいです。
日本が敗戦しようと、その前からもずっと人は
生活してきたわけで・・まさに総力戦であった
あの戦争は人々の生活に大小さまざまな影を
落としていたんだなぁ。
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【先生のお話】
「精神病院への入院は大きく分けて3つあります。
心の病気により自分や他人を傷つける恐れのある患者を
強制入院させる措置入院、家族の要請による医療保護入院
そしてご自身の意思で入院する任意入院です・・」