2010年10月23日

「幽霊人命救助隊」高野和明

「幽霊人命救助隊」高野和明 著
(文春文庫)

救助成功!

作者である高野和明氏の作品では
以前に「グレイヴデッガー」なる小説を
読んだことがある。
ハードボイルド志向なのに
エンターテイメントなところがあり
(そんなバカな苦笑・・みたいに)
どっちつかずな小説だったと記憶している。
正直なところあんまり期待していなかったのだが・・

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の
男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、
アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、
天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を
救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊
だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる
怒涛の救助作戦。傑作エンタテインメント、
遂に文庫化。

************************

いやあ、これは面白かった。
あらすぢにある通りエンターテイメント小説。
純文学が好きな方には向かないかもしれないが
そういった御仁は、むつかしい顔で
その手の小説を読んでいてください。

はじまりは、そんなバカな。

天国とも地獄とも思えない空間で
呆然とする彼らの前に神が降臨する。

「知恵と慈悲と狡猾さえたたえたその笑みは・・」

その登場の仕方があまりにトボけていて笑える。

神は、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を
救えと命令する。何故か?とかそういうギモンは・・

「神の言うことに間違いはないだろう。」
裕一は宗教にはつきものの教条主義に自らをおいた。

の一文であっさりと片付けられる。
そうだ。神が言うのだから仕方ない。

ひょんなことから「幽霊人命救助隊」を
結成することになった4名の幽霊。
・老ヤクザ
・気弱な中年男、
・アンニュイな若い女
・東大失敗受験生

それぞれが
戦前〜60年代(戦前生まれ)
戦後〜バブル前夜(団塊の世代)
新人類代表であり唯一女性の視点を持つ
そして現代の若者
といった各世代日本人代表であり
それぞれが持つ知恵と勇気と知識で
自殺志願者の救命に奔走、
現代ニッポン社会に生きるってホント幸せなの?
と問いかけ、ニッポンを総括してゆく話。

神から支給された装備品は・・
ハイパーレスキュー隊のような
オレンジ色の制服に身を包み、背中には
ご丁寧にRescureの文字。
携帯電話:救助数カウント機能つき
メガホン:彼らが大声で叫ぶとこの世の人の深層意識に
     訴えることができる
暗視ゴーグル:死にたがっている人間を
       見つけることができる     

彼らは幽霊であるが万能ではない。
空気のようなもんで、無機物は通り抜け不可。
生身の人間に憑依、意思を読み取る事はできるが
完全にコントロールする事もできない。
(それでも単純思考な子供や、鬱の人間などは
 比較的操りやすいらしく、そそのかすことは出来る)

いったん部屋に閉じ込められてしまうと
自力でドアを開けることもできないのだ。
そんなときは近所の小学生に憑依
ピンポンダッシュさせて家の人に開けさせたり・・

「人と人の結びつき」「心身の健康」「経済」などの
 試練で人の心は試されることになる
「それでもこの世を好きでいられますか?」と。

自殺を思いとどまらせるには
どうしたらいいか?作者なりの研究結果を
エンターテイメント小説として
発表してみた感じ。

鬱、リストラ、借金、いじめ、また鬱、鬱、借金・・

「気取った挙句に自殺を美化してしまうんだ
 単なる心の病気だってのによ?」

「この国は、なにかあれば死ねばいいという
 危うい風潮が出来上がってしまっている
 ―すべては反省されぬまま、自殺行為が
 正当化される赤穂浪士だって、もうちょっと
 殿様が辛抱づよければ死ななくて済んだ。
 けど生き残っていたら彼らは英雄になれない―
 たとえ歴史に名を残さなくとも、何があっても
 生き延びる人間の方が崇高
なはずなのに・・」

「人はただそこに居るだけで良いんです。」

自殺はワガママです。死んで楽になるのは当人だけ」

幽霊4名は、現代ニッポンの最前線で擦り切れ
自殺を考えるまでに追い詰められた人々を救ってゆく。

中には、コレまでの経験から言えば間違いなく
「鬱→自殺コース」直行しそうな状況におかれている
にもかかわらず、なぜか自殺などまったく考えない
人間も存在する。
そんな人間の思考回路も見もの。

彼らこそは、したたか(「強か」と書く)なのだ。

それくらいでよいのかもしれない。

「深刻に死ぬより、軽薄に生きましょう」
 
未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである

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【自殺をしようとする男に干渉する】
「ここで飛び込めば楽に・・二一が二、ニニが四・・
 ああ、どうして俺はこんなときに掛け算を
 諳んじてしまうのだろう???・・二三が六」

【学校で「和」に溶け込めず苦しむ学生に】
「和の精神をことさら強調するのは、
 放っておいたら和を乱す民族だから!なの」

【そうなの??】
「テレビがいけないのよ。変身ヒーローが集団で
 戦うようになってから
 子供のイジメがひどくなったんだわ」

【貸すほうと借りるほうどちらがトクか?】
「サラ金の利息は、預金者が手にする利率の
 実に18000倍ですよ。預金者が銀行に預金をする
 とは、つまり銀行にお金を貸す事であるのに
 おなじ100万円に対して
 18万円と10円の違いですよ?」

【あとがき(養老孟司)】
「だからあなたに死なれて困るのは家族であって
 あなたではない。だから自殺はわがままなのである」
posted by PON at 21:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(ミステリ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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