2010年10月22日

「病葉(わくらば)流れて」白川道

「病葉(わくらば)流れて」 白川 道

「病葉(わくらば)流れて」幻冬社文庫
 白川 道(しらかわとおる)著

これまた上司から頂いた小説。
これを読んだばっかりに、上司は麻雀が
やりたくって仕方がないようですが
・・自分も読んでみましてよく解りました。

「absurde」(アプシュルド)〜カミュ
・・私は実存する

大和言葉っていうのか?日本語って
たおやかっつーか響きがいいな。
「わくらば」

・邂逅(わくらば・わくらわ)
 稀(まれ)にあること。偶々(たまたま)巧く
 巡り合わせること。偶然に。 
用例:万葉−八九二

和久良婆爾(ワクラバニ)人とはあるを

どうもこれは違う。・・関連はあるのかもしれないが
同音異義語かも。ここは漢字の通り
「病気」の「葉っぱ」なんだろう。
 ↓
 青葉の繁茂した中に、たまたま蝕まれて
 変色した葉を見ることがある。
 病みついた木の葉であり、朽葉であり、
 秋の落葉期を待たないで赤や黄色に
 変色している。こんな葉を
《病葉・わくらば》という。

・・ね、集団からはみ出たどこか普通ではない
はっぱのこと、それは小説で主人公がタビタビ指摘される

「あなたもこちら側の人間ね。今日つれてきた
 彼を親友だと思うなら、もう博打の世界に
 連れてきてはだめ。彼は世間の大多数とおなじ、
 昼のひなかで生きてゆけるタイプ」

ま、要はロクデナシ候補生ってことですよ。

あらすぢ
そして青春が終わり、明日なき放蕩が始まった。
競輪場のジャンが鳴り、麻雀牌の音がする。
血を騒がせるギャンブラーとの勝負に、
今日も日が暮れてゆく…。一時は株の世界で
巨額の資金を転がしたこともある著者の、
奇想天外な自伝的小説。

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麻雀必勝ノウハウというよりは、バクチを通した
人生哲学に終始。
私の記憶が正しければ・・のドサ健がなつかしい
阿佐田哲也の「麻雀漂流記」がありましたが
あの世界を楽しめる方なればこの小説もOK。
ポンとチーの区別もつかない方は
まったく読む必要はないです。

1945年に生まれた戦後第一世代の主人公
小説の時代は1963年。
>奇想天外な自伝的小説。
とあるけども、確かに奇想天外だ。
主人公はちっと恵まれすぎ。

たぶん、著者(以前は金融方面で稼いだことも
あるのだそう)の学生時代を、それなりに自伝した
モノと思われる。麻雀(やギャンブル全般)に
狂った勉強しない学生というところは事実だけど、
スグに誘ってくる女も、金がないと貸してくれる女も
ジブンを気に入ってくれるヤクザもそういるはずもなく
当時の生活を、かなり脚色してカッコよく
書いてみました・・そんな感じを受ける。

アトラクションのような身の安全を保証された、
ところで、社会のダークサイドを経験する主人公。

バクチを通して人生を知ってしまったと自認する
素晴らしい先輩方の懇切丁寧なレクチャーがあり
バクチでスッテンテンの男に即金で金を貸し
童貞を捨てたいと思うと、女性のほうから誘ってきて
夜の街で喧嘩すれば、仲間のおヤクザさんが
救ってくれる・・ありませんから。そんなの。

ついこの間(半年前)まで麻雀も知らない
受験生だったヤツが、会員制クラブでヤクザ相手に
高レート麻雀ってのは、何ぼなんでもあり得なさ杉。
であるからこそ、まあ読んでいて楽しいのであるが。
(主人公、ぜんぜん勝てないし)

小説内の魅力的な(一部そうでない人もいますが)
キャラが実在してたら・・

・主人公:18歳・・現在65歳

・永田:主人公に丁寧に麻雀と人生と解説するいい先輩。
    2浪3留らしいので当時27歳・・現在74歳

・テコ:美人喫茶とかいう喫茶のウェイトレス。
    主人公の筆卸し相手。主人公の3歳年上、
    1942年、現在68歳

・姫子:歌舞伎町の店のママ。主人公を気に入る。
    背中が菩薩な裏オトナ世界の指南役。
    空襲の焼け野原を見たとき小学生だったらしいので・・
    1934年生まれだとすると・・現在76歳  
・有坂:ヤクザ屋さん。ヤクザ相手にイカサマはダメです。
・ポン熊:ヒロポン中毒者

ヤクザやポン熊はとうにご臨終でしょう。
姫子あたりなんかこの小説の後、後の
ハツシバ社長、島耕作と懇ろになっていそう。

つい、そんな風に考えてしまう。
人に歴史ありとはいえ・・。
公営アパートで独り暮らしとか、古本屋の主人
とか、場末の飲み屋のママとか、そんな老後を
送っていそう。黙っていればその辺のジジババにしか
見えないが、皆そんな過去を背負っていたりね。

やくざを賛美するつもりもないけれど
筋さえ通せば、やっぱ頼りになるのは確かな様で。

【永田の博打指南】

「オレは麻雀のイカサマはルール外のことを
 やることだと思っている・・勝負事ってのは
 与えられた材料を最大限に使うことだ、牌が
 裏返っていたら覚えるのもいいし、積み込んだ
 っていい。でも牌を隠す、すり替えるって
 のはダメだ・・」 

「多面待ちが平気で単騎に負けるのが麻雀だ。
 確率論ではなくって、博打の時間とは
 瞬間的で一瞬の刹那的な時間なんだ。」

「いいか、初心者のうちは攻撃一本槍で行け。
 防御なんてものはカミソリのような攻撃力を
 身につけてからでいい・・」

「麻雀の神様は気紛れでな。技量の劣るヤツには
 「引き」という武器を与えた―
 人の捨て牌を喰えば、自分の引きは少しずつ落ちてゆく・・」

【姫子の大人への階段講座】

「大きな事をやろうとするときは理屈じゃないわ・・」

【お友達】

「女はいいが博打はダメって?」
「お国レベルになると滅ぼすのは女だが
 男をダメにする元凶の一番は博打なんだそうだ・・」

「博打なんて興味を持った人間だけがやればいい。
 けど俺が言いたいのは、意味が無いからといって
 博打を全否定するのはどうかと思うんだ。
 博打をやっていると人より早く年を取るという、
 どうしてだかわかるか?」

【おヤクザさん】

「坊主、気に入ったよ。博打事で仲間はできても
 友人はできないもんだ。そんなツラで近づいてくる
 やつがいたら一番警戒しな」

【ポン熊】

「キャキャキャ」
「ゼハハハハハハ・・」は黒ひげだった。

いい事も結構書いてありました。
「どんなに親しくっても、女とバクチは別。
 金は女から借りるな」とか。
「同じバクチ打ちから(麻雀で負けたのなら
 少なくともその負けた面子からは)
 金を借りてはいけない」
(バクチ打ちの仁義だとかなんとか)とか。

なんか「病葉(わくらば)」シリーズは
映像化したり、2やら3やらシリーズ化
したようだけども
・・自分はこの一冊読めばもういいや。

最後に、敬愛する漫画家「ジョージ秋山」氏
(浮浪雲の作者ですね)のひとことを。
「人生を学ぶとしたら先生からであって
 少なくとも「遊び」は先生ではありません。
 あれは友達です」

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・「初心者が上級者と戦うならば
「面前ダマテン」が一番なんだ」

・麻雀パイは全部で「136牌」
 有効牌数
 「136−(13*4)−14=70牌」

・ツモの回数
 チーポンがなければ親の東と子の南が18回
 西と北が17回

「マージャンできってはいけないのは入った
牌じゃない。それをまたいだ牌なのよ」
posted by PON at 21:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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