2010年12月30日

「東京島」桐野夏生

東京島 桐野 夏生

東京島 (新潮文庫)  桐野 夏生 (著)

木村多江で映画化らしいじゃないですか。
小説を読む前は、まあお色気要員として
妥当な所なんではないか?と
思っていたのですが・・
読み終わって思うに、そのキャスティングは
ちょっと違うのでは??とか思った。



あらすぢ
あたしは必ず、脱出してみせる――。
ノンストップ最新長篇!

内容(「BOOK」データベースより)
清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。
夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。
その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。
三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは
依然なく、夫・隆も喪った。だが、たった
ひとりの女には違いない。求められ争われ、
清子は女王の悦びに震える―。
東京島と名づけられた小宇宙に産み落とされた、
新たな創世紀。谷崎潤一郎賞受賞作。

************************

谷崎潤一郎賞受賞作品で、男大勢に女ひとりの
無人島が舞台となれば、自然に純文学的エロ小説となり
文明のない世界で繰り広げる女の情念と
男の嫉妬がなんかもーネトネトぐちゃぐちゃ・・
ま、そんなところなんだろうな、と勝手に
想像していたのだが、違ってた。

確かにエロの要素も避けては通れないので
あるけれど、あらすぢにある
「清子は女王の悦びに震える―。」
というのは若干の大げさ。話は清子全盛から
斜陽時代に差し掛かってくるところから
スタートするんで、思ったよりも
性を武器にしてウハウハって描写は少ない。

むしろ、生き残るために必死だった彼女が
「島」で女を武器にした我が世の春を
謳歌し過ぎてしまったがため
コロコロ変わる無人島の状況
(主導権を握る男が変わる)のなか、
その後始末に追われまくる話。
「蠅の王」みたいにあそこまで陰鬱な小説に
ならなかったは、作者の人柄か。

ちょっとネタバレ。

「未熟な集団がそのまま
 未開の生活を送っているのだ・・」

島には順にいろんな団体が漂着してくる。
清子夫婦、日本人ドキュンの団体、中国人ドキュンの
団体・・その都度島の勢力図が変わる。

作者も最後に主人公を「ワガママな女」と
身もフタもなく総括しているけれど、
女性の持つハングリーさタフさとかしたたかさは、
やはり女性にしか書けないんだと思う。
清子と比べてなんと男ドモのシンプルなことか。
したかかさといえば、漂着する中国人達もだが。

(ワタナベがムカつくけど。彼が語学の天才で
 その後、実は・・ってのが
 さらっと書かれていて笑えた。
 石なんかに当たんなよw
 あの卑屈さ矮小さが全然変わっていないのが
 かえって微笑ましい)

結局、文明を失った人間たちが文明を
復興?させるまでの「創世記」。
遭難により文明を失ってしまった人間の
文明シミュレーション小説だった。

それにしても桐野夏生さんの文章力、想像力には
プロの小説家の力を見せつけられた。
この小説の前に角川ホラー常連、吉村達也氏の
「マタンゴ 最後の逆襲」(既紹介済み)を
読んだのだけど、文章力ってのは単に
本の厚みで表現されるんではなくって
吉村氏の作品もあれはあれで楽しめたけど、
なんか「小説」とは違う。小説の形をした
説明文って感じだった、あっちは。



もし、PONが無人島に漂着したとして
なりうるとしたらば、登場人物でいえば
「オラガ」になるような気がします。
そういや清子の3番目のダンナ
おバカの「ノボル」はその後どうなったっけ?

もう一度読もうっと。

文庫: 372ページ
出版社: 新潮社 (2010/4/24)
ISBN-10: 4101306362
ISBN-13: 978-4101306360
発売日: 2010/4/24

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戦後、この話に似たことは実際にあったようで、
作者がモデルにしたのは間違いないでしょう。

アナタハンの女王事件

旧日本軍守備兵とひとりの賄いの女性が
太平洋戦争で南の島に取り残されたという実話。
救出された後、当然日本でセンセーショナルな
扱いを受けたのだが、彼女がすごいのは
自らがその再現劇の「主役」として
全国行脚をしたこと!
彼女はそれで食っていったらしい。
スゴイ。たくまし過ぎである。

「強かなる存在、汝の名は女性
 汝は被害者であるが故に・・」


posted by PON at 21:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書(ミステリ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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現代人の本質:東京島
Excerpt: 東京島 (新潮文庫)作者: 桐野 夏生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/04/24メディア: 文庫 「十五少年漂流記」、「ロビンソン・クルーソー」、「蠅の王」など、孤島への漂流ものは..
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