なんか長編感動ミステリーが読みたいぜぇ!
と「あらすぢ」に惹かれ、某三色中古本屋の
100円コーナーから購入。
<あらすぢ>
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
かつて、忽然と消息を絶った報和航空四〇二便
YS‐11機が突如、羽田空港に帰還した。
しかし六十八名の乗員乗客にとって、時計の針は
十年前を指したまま…。戸惑いながらも再会を
喜ぶ彼らと、その家族を待ち受けていた運命とは―。
歳月を超えて実現した愛と奇跡の物語。
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
大石英司(オオイシエイジ)
1961年生まれ。鹿児島県出身。経済誌の
ライターを経て小説家へ転身。日本冒険作家
クラブにおいて、長年幹事を務める
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この大石英司って作家は基本的に
「国際スパイ軍事政治小説」が主力製品であるらしい。
「謀略の○○便!連続爆破うんたら」とか
「国境突破せよ!」とか表題から命令されたり。
そんな作家が、自ら見た「夢」を題材にして
感動小説を書いた・・そういうことらしいです。
面白かったんだけれども
感動シーンへ持ってゆくための背景描写などで
ともすれば筆が暴走、飛行機の性能や、
日本の空の航空管制体勢について、
とくとくと書き始めちゃったりと、
ミリタリー小説作家の片鱗がそこかしこに。
「これはこれこれこうなのです。
ですから感動してください」
なんかそんな部分が見え隠れした小説だった。
知っている方ならば浮かぶでしょうけど
「黄泉がえり」と話の筋は一緒。
死者が復活した「理屈」が違うだけで。
事故死というのは、当然だけど
予告のある死ではなく突然死ぬ。
どんな善人でも悪人も関係ない。
まだまだ生き続けるつもりだったのに
連続する時間と人の縁をすべて
ブッタ切って死ぬ。
神とこの世の無慈悲を痛切に感じるけど。
大木はたとえ切り株になろうとも
地面に根付いていれば、周囲から
また若葉が息づく。
ようやく若葉が芽生えてきた周囲に
不可逆なはずの死者が帰ってくる話。
天才学者の予測によれば
3日後には過去の世界へ戻ってしまうらしい。
期間は3日。彼らは残された時間を
どう生きてゆくのか。周囲はどう受け止めるのか?
なんと残酷なんだろ。
最初、誤解していたのだが、小説では
YS‐11機に乗って死亡した六十八名
全員の内情が描かれるわけではない。
それだとトンでもないボリュームに
なってしまうからね。
そこは書き応えのある乗客および主人公周辺の
関係者にしぼった様子。
それでも搭乗客は、一風変わった名前が続き
職業も、天才演奏家、自衛隊のパイロット
親殺し企画者、駆け落ちカップル、天才テニス
プレイヤー、そして犯罪者とバラエティに富む。
以下ネタバレ少々。
涙腺がゆるくなってヤバかったのは
はじめてのひとり旅で飛行機に搭乗
事故死したはずの5歳児の帰還。
自分の息子とシンクロしてしまい
電車内で目が曇った。
息子の死を契機にその夫婦は離婚、
双方(特に父親)はどん底まで転落する。
そんな中に、10年前とまったく変わらない
ひとり息子が突然帰ってくるのだ。
「おとーさーーん」と
空港ロビーを無邪気に駆けながら。
ラスト、きずなの復活した親子3人で
約束していた富士山登山中、
「タイムリミット」がやってくるのだ。
「ねえ、おとうさん・・」
子供の問いかけに振り向こうとした瞬間
着ていたパーカーが「ぱさっ」と地面に落ち
子供は掻き消える・・。
俺があのオヤジだったら
もう立ち直れない。えぐえぐ。
それぞれに遣り残した宿題を終わらせて
乗客たちはまた元の世界へ戻ってゆく。
数年前にドラマ化したらしい。
その際はオチが変更になっていたそうだが
自分は、小説版のほうがいい。
その辺はさすが軍事小説作家。
※タイトル
そもそも、「神はサイコロを振らない」という
言葉はアルベルト・アインシュタインのものである。
1926年12月、アインシュタインからマックス・ボルン
に送られた手紙の中で、
"独: Der Alte wurfelt nicht."
日本語訳、「神は賽を投げない」と不確定性原理へ
の反論に使っている。
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戻ってきた乗客は
「オウム・サリン事件」と
「神戸・淡路大震災」が
起こる前にタイムスリップしたので
そんな大災害も日本の失われた十年も知らない。
ひとつ理解できなかったのは
乗客の一人にエンジニアがいて
できる限りのことをして
過去の災害を未然に防止すべく
通信文を送ろうとするのだが
なぜ成功したのか?その理屈がどうも・・
だって、未来の世界で入手したものは
なんであっても過去には持ち込めず
未来におきっぱになるらしい。
あの世界の科学では。
だから乗客たちにそのときが来たら
服だけを残して中身は消えるのだそう。
(じゃあ、乗客たちが未来で飲み食いして
吸収した栄養分とかはどうなるんだろ?)
だったら、いくら精巧につくられた
電波発信機だってタイムスリップした
瞬間に現代に残されてしまうじゃんなぁ・・。
あ、消失するギリギリに
発信した電波だけは一緒に過去へ戻ったとか?
まあいいか。
もう一度読んでみようかな。