2011年12月06日

「夜を賭けて」梁 石日

夜を賭けて (幻冬舎文庫) [文庫]
梁 石日(ヤンソギル) (著)

上司いただきました文庫です。

夜を賭けて.jpg

あらすぢ
廃墟と化したアジア最大の兵器工場・大阪造兵廠跡
の闇の中で残骸を掘り出す鉄泥棒アパッチ族と
警官隊の果てしない攻防がつづく。
そしてアパッチ族は北朝鮮へ、大村収容所へ…。
戦後50年を総括する書き下ろし長編。
内容(「MARC」データベースより)

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また「アジアンテイスト」か・・

いい加減もうウンザリと
読む前から気が萎えていたんですが。

梁 石日さん。申し訳ありませんでした。

ハズかしながら、社会・歴史は少々得意と
自負していた自分が恥ずかしくなりました。

「アパッチ族」とは、戦後、大阪にいた
一部の在日をそう呼称していたらしい。
アパッチ野球軍なるアニメがあったけど
たぶんその語源だとおもうが。

さらには「大村強制収容所」のことや
在日への根強い差別。
その差別は、云われなきが半分
云われても仕方ないところも半分。
そうでもしないと生きてゆけなかったということも
あるし、時代に翻弄されたというか
とにかくやるせない。

日本語をこれだけ操ることの出来る作者、梁 石日氏。
ご本人からすれば、冗談じゃないといわれるかもしれないが
パソコンはおろか携帯でしか情報発信できない
若い日本人よりよほど日本人だといえる。
ま、日本人だから何だってんだ、だが。

物語前半は、戦後ドサクサ時代に繰り広げた
在日朝鮮人の良くも悪くもパワフルな生活を。
後半は一転してラブストーリーになります。

殺人以外はほぼひととおりやってしまった主人公が
朝鮮人をゴミ扱いする日本人刑事によって
ブタ箱に放り込まれた挙句
釈放と同時にこんどは「大村収容所」に
収容されます。

在日の人にとって恐れられていた「大村収容所」。
悪名くらいは聞いていたけど。
「大村収容所」とは長崎の大村にありまして
正式には「大村入国者収容所」というらしい。
日本で不法在留と認定された在日朝鮮人が
次々と収容されたところ。
ここに送られるのも、送られた後ドコに連れて
行かれるのかも、すべては当時の役所
(入国管理庁や警察など)の考えひとつ。
彼らも「戦後のドサクサ時代」なわけで
「人権?ああん?ナニそれ?」な意識。

そんな所にぶち込まれた主人公。
同じ収容者からの壮絶なイジメ(っつーかリンチ)
刑務官は見てみぬフリだし、その刑務官も
時には取調べという名の拷問を行う。

収容所自体、もともといい加減な法解釈で
設立運用されている組織なんで
収容者もいつ釈放されるのか明確でなく
役人の気分によっては北朝鮮に強制的に
送り返されてしまう可能性もあり・・。
(→そうなったら待つのは死)

そこで、前半は顔見せ程度だったヒロイン「初子」が
自分の気持ち(主人公Love)に気付き、
主人公を追って大村へ。
収容所に駆けつけることの出来る長崎の夜の街で
働きつつ、人権派弁護士や
家族が同じ境遇にあっている在日朝鮮人と協力して
慣れない釈放運動(デモ行進など)を展開する。
最後に初子が見たものは・・って話。




デモ活動にもノウハウがあるんですな。

一回目は警備員にボコボコされた挙句
自然消滅だったので、
二回目は強力な応援を呼ぶ。
なんと九州炭鉱で働く労働者の皆さん。
炭鉱で鍛えた屈強な男たちが
スクラム組んでジグザグデモ行進。
共産系組織が人員の融通をしてくれたものだが
小説でこれほど頼もしく思えた「左翼運動家」も
珍しいと思った。

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いろいろあって、現在。
あの初子さんが、
大阪のオバチャン化していたのには大笑い、
と同時に「人に歴史あり」って感じました。
posted by PON at 21:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(社会) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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