久々の「大石」先生作品。
相変わらず文章が読みやすく、爆発シーンとか
人が死ぬ描写とか、客観的なモノの書き方は
ピカイチだと思う。
もし自分が小説家目指す気だったら
あの乾いた描写は、大いに参考にするな。
―「隣人愛」という言葉は、この日に死んだ。
<あらすぢ>
ある日、突然、殺人を選択する自由があなたに
与えられたら、どうしますか?謎の人物から
送られてきた爆弾。それを手に入れた人物たちは、
エゴと怨念を剥き出しにしていく。
元マラソンランナーの朝香葉子もまた、爆弾を
受け取った一人だった。しかし、彼女は何の
ためらいもなく爆弾を警察に届ける。犯人は
そんな葉子に、あるゲームを持ち掛けてきた。
人間の業を深く、そして鋭く描いたホラーの新境地。
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―殺人の道具が高度になればなるほど、
人を殺すということの実感は薄らいでゆく。
爆弾は13個。どちらかといえば、社会の底辺層で
生活しているが、犯罪に奔るほどではなく、ひとまずは
普通に暮らしている・・という、
いまの日本にありえそうな人々に配られる。
現状に汲々としている人間が
急に「力」を手にしたとき、人はどういった行動に出るか?
残念だったのが一点だけ。
太平洋戦争で地獄の戦場を生き抜いた老人が
自分だけが生き残った、という忸怩たる思いの中
自サイトに、自己の経験をすべてアップしてゆくのだが
彼の戦記に、違和感を覚えてしまった。
それはもう、なんども読み返してしまうくらいに。
「宙の一点に静止したヘリが壕からでた
日本兵を狙い撃ちにし・・」
「ヘリが辺りをまんべんなく機銃掃射し・・」
あれ?このじいさんの戦場はベトナムか?
ここのヘリって「縁(へり)」のことじゃなくって
やっぱりヘリコプターだよなあ。
太平洋戦争時に「ヘリコプター」は実戦参加していないはず。
あるいは、このじいさんの記憶力が
本人の悲愴な思いとは裏腹に、
かなりイイカゲンなものになってきている、という
ボケの描写だとか??
どうもPONにはワザとには思えない。
おそらく大石圭さんの穴なんだろう。
作者はミリタリー方面について
それほどご存じないのではなかろうか。
―この国は果たして守るに値する国なんだろうか?
かつて、この国を守るために多くの若者が無意味に死に、
いまの世代はその国で無意味に生きている。
そのやるせなさが小説のテーマであるのにちょっと残念。
だとしても、話の面白さは損なわれないけれど。
―人々は素知らぬ顔をして隣に潜む
恐ろしく凶暴な悪意を見た。
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相変わらずこの人の作品には
PONになじみである東海道沿線の地名と
風景描写がズバっと出てくるんで
ちょっと読んでてウツになります。
小説のヒロインのように、読んでいる自分こそ、
実は誰かに見られているような気がして。