2007年06月11日

「宣戦布告」 麻生幾

浅間山荘に突入したり
某国から静かに宣戦布告されたりと
「日本よ、もっと頼もしい御国であってくれ」
キャンペーンの一環と申しますか
そういう映画が連作された、
何かと忙しい時期でした。この頃は。

映画化もしたようですけども
文庫しか読んでいません。

<あらすぢ>
 原子力発電所が並ぶ敦賀半島沖に
北朝鮮の潜水艦が漂着した。
対戦車ロケット砲で武装した特殊部隊十一名が
密かに上陸、逃走する。彼らの目的は何か?
未曾有の事態に政府はなす術を失い、
責任のなすり合いに終始する。砂上の楼閣の
ごとき日本の危機管理を問う。

自分も身内に「K察官」がおりますんで
彼が矢面に立たされたように思え
読んでいて辛い部分がありました。

「そんなバカな事起きっこない」
「何が起きても、いつも、どこかで
 誰かが何とかしてくれる」


漠然とそう思ってろくにニュースも見ず
日々の生活に身をゆだねる・・
自分も含めて日頃はそんなモンですが、
そんな「バカな事」が実際に起きてしまったとき、

「誰か」が何とかしてくれるといっても
日本の社会は、「適切な誰か」を
「適切な方法で」事態の収拾に
当たらせる事ができるのだろうか?

ホント考え込んでしまう作品。

悲劇は日常の延長上で突然やってくる。
日頃は、港町で釣り人相手の民宿経営している
その辺のおばちゃんが、山菜取りの
山中で何もわからないまま殺される。

小説では、相手は少人数ながら
重武装な「殺しのプロ」
そんなのを相手に
セクショナリズムやら、政治的風合いから
戦いのプロ(自衛隊員)」ではなく
世界一軽武装な日本の
おまわりさん」が
前線に出る!このミスマッチが
引き起こす惨劇。

じゃあ「自衛隊員」なら死んでもいいのか?
訓練は充分なれど実戦経験はなく
撃たれれば血を流す人間。
「機動隊員」も「自衛隊員」も
普通の日本人。子供もいれば妻もいます。

続出する死傷者に、現場はいつしか
異常な精神状態に支配され
中央からの偉そうな命令を聞かなくなって来る。
ムクムクとクビをもたげる
「現場の判断」と「暴走」

一度、引き金が引かれたら
いかにその事態収拾が難しいか。
上から停戦命令が出ても、
そんなこと相手に伝わるはずもなく
応戦をやめた瞬間
撃たれるかもしれないのだ。

K朝鮮の工作員も冷酷だし酷いが
決して意味不明の化け物でもなければ
血も流す人間で、比較的平等に
書かれていたのは良かった。
生き延びる為に、必要と判断していることだけを
たんたんと実行しているのみ。
エライ迷惑だが。

もしかして、銃器を使ってまでして
彼らをここまで追い詰める
自分達の方が悪いのだろうか?
とさえ思えてくる。

「亡国のイージス」よりも
この作品内の人々のほうが
良くも悪くもその辺の「日本人」だらけなので
(不死身の工作員も先任曹長もいない!)
よりリアリティが感じられ
「国防」や「愛国心」について
身近に考えるきっかけになりそうではあります。



講談社文庫

こんな世界が実現しないように。

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「安保理」と「安部総理」は
ちょっと似てる。

あと、話中で余計なことする「外務省」には
かなりむかついた。

アメリカは「トップは優秀、下は困ったちゃん」
日本は「下は優秀、トップは困ったちゃん」

なんて言いますけど。
どうですかね。
ラベル:麻生幾 宣戦布告
posted by PON at 21:00| ☔| Comment(6) | TrackBack(0) | 読書(ミステリ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>北斗氏
HPへ行ってまいりましたが
一瞬、男かと思いました(失礼)

しかも「アンストール」
ヘタなところをクリックしたら
それこそヘタなことをされそうで
やっぱり一瞬怖かったw

それにしても
「月刊アウト」で通じる人も
いまどきほとんど居ないよなあ。
Posted by PON at 2007年06月16日 16:30
>作者が「元月刊アウトの編集スタッフ」で
>ありながら「元警察官」という、不思議な経歴
>にむしろ惹かれてしまいました。

そこが凄まじく謎なのですよ。
経歴から言っても本人談でも、50代ではないかと推測されるの
ですが・・・・・少なくとも40代後半かと。
ちなみに、○ップを狙え(これ自体がネタではありますが)など、
もの凄く沢山の所からネタを引っ張ってきていますので、
分かれば「にやり」と出来る事請け合いです。

>>後者は「最高のリアルが
>>向こうから会いに来る」とどうなるかを、
>おお?カッコいい言い回し。
>そのままオビの惹句に使えますね。

残念ながら、これはOPの歌詞そのままです(笑)
http://www.jvcmusic.co.jp/chiaki/
ここで試聴出来ます。
が、聴いたら最後ハマる事請け合いですので
ご注意あれ (^▽^;)
Posted by 北斗 at 2007年06月15日 21:39
>北斗氏

>鷹見一幸氏の「でたまか」シリーズ:
  角川スニーカー文庫

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B7%B9%E8%A6%8B%E4%B8%80%E5%B9%B8
作者が「元月刊アウトの編集スタッフ」で
ありながら「元警察官」という、不思議な経歴に
むしろ惹かれてしまいました。

>鬼頭莫宏氏の「ぼくらの」:小学館「月刊IKKI」

http://www.ikki-para.com/comix/bokurano.html
ほほう、面白そうで。
コミックだったんですね。
エヴァ+バトルロワイヤル
のような印象を受けましたが?
マン喫にあるかな。折をみて見てみよ。

>後者は「最高のリアルが
>向こうから会いに来る」とどうなるかを、
おお?カッコいい言い回し。
そのままオビの惹句に使えますね。

探してみますか。
Posted by PON at 2007年06月14日 12:05
>サンダース様

誠に手前味噌ではございますが
「情報、官邸に達せず」は
記事にしました。「ZERO」は
某三色古本100円コーナーに
いつも置いていないので困っていますw

>日米ともに役人の気質に
>大差はないと思われ・・・
「役人」って意味では洋の東西は問わず、か。
そうでしょうね〜。

それで苦労するのは現場ですか。
もっとも、今一番同情できない現場があります。
それは社会保険庁。
とりあえず、明日から「社会不安庁」に
改名することにします。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007061201000703.html

殴ってはいかんね〜。
気持ちはわかるけど
彼らの思うツボ。
ここは黙って?いびり倒さなきゃw
Posted by PON at 2007年06月14日 00:36
えーと、方向性は全然違うのですが、
鷹見一幸氏の「でたまか」シリーズ:
  角川スニーカー文庫
鬼頭莫宏氏の「ぼくらの」:小学館「月刊IKKI」
が個人的な注目株であります。

前者は「何が起きても、いつも、どこかで誰かが
何とかしてくれる」訳ではないという事を、
後者は「最高のリアルが向こうから会いに来る」
とどうなるかを、見せてくれていると思って
います。
勿論どちらも「空想世界」な訳ですが、
普段「棚に上げている」部分をついていると。

特に後者は最近出た「小説版」が一押しです。
精神状態が悪いと「鬱」になりますが(笑)
Posted by 北斗 at 2007年06月12日 20:49
これ、わしも読んだ〜
長弟が好きでいっぱい持ってるねん。「情報、官邸に達せず」とか「ZERO」とか。
読み終わった後は、
物語の余韻とともに、日本の無事前提の有事体制に不安を感じずにはいられない薄ら寒い一品だす。

犠牲を払うのは下っ端なんだから、
上にはせめて下がすっきり働ける体制を整えてもらいたいね。
日米ともに役人の気質に大差はないと思われ・・・
Posted by サンダース at 2007年06月12日 11:44
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