2007年01月15日

「ふたご」吉村達也

「だって遺伝子ってミーハーなんですもの」

角川ホラー文庫界の「赤川次郎」に
なりつつある「吉村達也」氏の書き下ろし。

<あらすぢ>
人気スターの安達真児は、美貌の妻・唯季を
殺した。資産家の娘に目をつけた彼は、妻が
邪魔になったのだ。しかし、妻にはユリという
名前のふたごの妹がいた。しかも彼女は、
瓜ふたつのレベルを超えた完全同一体。
その信じ難い事実を安達に告げた唯季の父は、
ユリとの再婚話を持ちかけてきた。半信半疑の
安達は、旧友の遺伝学研究者・村田和正を
訪ねるが、そこで衝撃的な仮説を示される。
染色体の世界に秘められた人類解体の設計図が
明らかにされる驚愕のラスト!

物語のラストが果たして「驚愕か?」と
言われると疑問が残るが。

「一卵性」と「二卵性」の違い。
我々が、日ごろ当たり前に思っている
「双子」と言う存在について
生物学的(遺伝子学)に改めて
「解かったような気持ちにさせる」本。
こんな話にでも出会わない限り
知りようも無かったであろう
「双子」に関する知識、
さらには「自己の存在」とは
「実在」とは?なんて哲学分野も
理解したつもりになれる。

人間が聞いている音は
耳にあるアンプの役割をする器官によって
22倍に増幅されている・・という
無駄な知識には感心した。
(騒音まみれの我々だが
 実は、かなりサイレントな
 世界で生きている)

物語の半分は、実際にある「双子の研究」とか
「遺伝子学」といった学術研究本の内容を
作者が解かりやすく書き下した上で
作中の登場人物に、状況に応じて
適度に話させている感じ。

単なる「軽薄馬鹿な色男」の主人公や
役所をフツーに早期退職したに過ぎない
「義父」が、時折すごいレベルの会話を
する科学者に平気で突っ込みすら
入れているあたり、凄いといえば凄い。

それから・・
この人が書く「女性」はPONにとって
ちょっと違和感がある。PONもそんなに
女性経験があるわけではないが
そんな言い回しはしないだろ?といった
「男」が考えた「女性」が結構
出てくるのにはちょっと。
(この作品に限らず)

遺伝子が、これまで営々と人類を発展させてきたこと、
そして、いよいよそのプロジェクトの方針変換を
至ることになった目的は、いまいちだったが
その発想(発展から集約へ)は面白かった。



吉村氏の作品は
一応、事件の原因をしっかりと書いてくれるから
(原因を納得できるものであるかどうかはさておき)
その点は好きです。
まあ、100円ならば買ってもいいかも。

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コンピュータを開発するに至った「人」と
「コンピュータ」の関係・・というのは
作者の裏テーマなのかな。

単に化学反応の世界、で済ますには
あまりにも出来過ぎている
「ミクロンの世界」だが
無垢な世界でもなんでもなく実は・・
というのは「パラサイトイブ」に似ている。

「神」とも言うべき遺伝子が考えた
人類という「種の幕引き」が
そんな手法で、本当に大丈夫なのか??
もうちょっとやり方があるんじゃないのか??
そんな感想がぐーるぐるでした。
posted by PON at 21:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(ホラー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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