2012年09月17日

二百三高地

「二百三高地」

BSのNHKでやっていたんで録画しときました。
中学生くらいのとき一気に観て
感動したんだっけなあ。

この映画、PON人生での初出は
骨岸無造(ほねきしむぞう)氏のせりふから。
ご存じないですかね。

漫画「3年奇面組」のガリ勉(←こういう
言い回しもしなくなったな。ビバ!ゆとり)
集団のリーダーが言うんですよ。
海は死にますか?」って。



なんだろうと思って、たどり着いた先が
この映画だったんです。

あらすぢ
今世紀初頭、近代化したとは言え、列強諸国に
比べ遅れをとる日本が、超大国ロシアに何故
戦争を挑んだのか。そして、その戦争を背景に、
政府、軍、民間といった様々な階級の人々が
いかに生きたかを描く。脚本は「仁義なき戦い」
シリーズの笠原和夫、監督は「さらば宇宙戦艦
ヤマト 愛の戦士」の舛田利雄、撮影は
「トラック野郎 突撃一番星」の飯村雅彦が
それぞれ担当。

************************

まずはじめに書いておきたいのは
自分のなかでの初日露戦争モノが
司馬遼太郎「坂の上の雲」だったので
100%司馬史観であります。

あおい輝彦の狂気の目がいい。

児玉源太郎役、丹波哲郎もかっこいい。
明治の軍人の象徴たる
裏が赤のマントをひるがえして
ってのが素敵。

明治天皇を演じているのは三船敏郎。
山本五十六を演じた回数なら
おそらく日本一の三船=明治天皇なら
そのまま前線に出ても充分やってゆける。

伊藤博文(演:モリシゲ)が
これがまたそっくりでさ〜。
(ムカシの千円札。小学生の頃
 千円って大金だったから、
 伊藤博文ってなんかワクワクします。
 すまんね、カノ国の連中)

で、悲劇とされる第三軍司令官
乃木希典将軍、演じるは仲代達矢。
「う、うん。」とか、気質が優しいからか
なんだか知らんが、切った張ったの戦場で
静かに微笑んでしまう司令官。
まちがっても猛将なんてはずがなく、
ホントなら隠居部屋で子供たちに
習字を教えているくらいが似合う男。

司令官は別に人格者でなくてもよいのだ。
部下に死ねと命ずるのが仕事だから。

乃木将軍の奥さん役、野際陽子さん。
鬼気迫るというか、深く静かに壊れてゆく姿を
目で演技(そらそうだ、日露戦争で
乃木夫妻は息子2人を失っているのですから)

ちょっと解説
【なぜ旅順要塞を攻撃しないといけないのか】

朝鮮半島の付け根のところに「旅順港」があって、
そこにはロシア極東艦隊が閉じ篭もっている
 ↓
ロシア極東艦隊をはやいとこヤッツケないと
ロシアの増援(有名なバルチック艦隊)が来ちゃう。
増援と合流したら、もう数の上で日本海軍絶望。
 ↓
(海軍からのお願い)
大変!早く要塞を落としてください
 ↓
旅順港への道ははロシア軍が
コンクリート&マシンガンで要塞化。
(なんたってロシア人は要塞が大好き)
 ↓
一方、他の日本陸軍は別の場所で
ロシアと決戦するために集結中
 ↓
ただでさえ陸軍は兵力不足なんで乃木第三軍は貴重。
 ↓
(陸軍からのお願い)
最悪、要塞は封じ込めとくだけでも
いいから早くこっちへ来てくれ!第3軍

てなわけで、児玉源太郎大将が
モタモタしている第3軍の乃木将軍に代わって
指揮を執りに来る。 

乃木将軍の指揮権を一時的にせよハクダツする・・
それは言葉にこそせずとも「お前が無能だ」と
言ってるに等しい。
(児)「貴様の気持ちを忖度する余裕はワシにはない。
    今のワシには日本が勝つこと、それだけだ」

・・そ。極端なことをいえば、
旅順要塞は無視したっていいのだ。
手順は問わないから、旅順の港にこもっている
ロシア艦隊を行動不能にさえしてしまえば事足りる。
日本は別に要塞が欲しいわけじゃないし。

それなのに、乃木将軍率いる第3軍の首脳部は
正面から要塞を落とすことにのみ
頭がいってしまった。

彼らがやったことといえば
べトン(コンクリート)で固められ、
機関銃がハリネズミのような敵要塞に
正面から生身で突撃!を命令した・・
ただそれだけだった。
100人が突撃して、99人が死んでいる間に
残1人が要塞にたどり着けばいい、という発想。
これじゃあ兵隊や武器がいくらあっても無理。

表題の「二〇三高地」。
名前もなく、便宜上数字で呼ばれてる山。
なんでここが激戦地になったかといえば
そこから、旅順の港が見えるのだ。

当時、飛行機はない。
砲撃の効果を確認できる高い山を確保できれば
修正しながら有効弾を港に送り込める。
児玉将軍は旅順要塞を落とすことではなく
港の艦隊を無効とすることを最優先したのだった。

正面からぶつかるばかりが能ではない。
要するに何を達成したいのか、
それが明らかにできれば
選択肢はいろいろあるのだ。

言うのは簡単だけど、もし自分が
あの場にいたら、伊地知参謀長のように
なっている可能性を否定できないな。

http://www.c20.jp/1904/12203ko.html
   ↓    ↓
>児玉がすごいというよりは、後世から見れば、
>どうしてこんなことがそれまでできなかったの
>だろうと思う・・・不可能を可能にするなどと
>いうむずかしいことを考える前に、
>可能を不可能にしている
>頑迷さを取り除くことを、まず試みるべき

休憩ありの長丁場、3時間の映画。



とはいえ、地獄の戦場では・・
郷里の子供たちに「広く万民を愛しなさい」
と教えながら戦場へ旅立った
ロシア好きの教員(輝彦)が、そのロシア人と、
眼をえぐり合うような死闘を繰り広げて
ついには相討ちしてしまう。

最後には、映画も描写を放棄し
黒い画面に
海は死にますか 山は死にますか
と黄字で殴り書き。
思わずつぶやいてしまったのは
うん死ぬよ、今の日本がそう」とか。



あんな地獄を見てきた人が
普通に復員して普通に豆腐屋やっているって、
それもスゲエ時代である。

エンドロール。
キャスト紹介が「政界、軍、民間、ロシア側」とか
不思議な区分で表記されていたのだが・・
大月ウルフさんがロシア側に
記述されていたのには笑えた。
だったら大泉晃さんは?

キャスト
出演
仲代達矢 (乃木希典)
あおい輝彦 (小賀武志)
新沼謙治 (木下九市)
湯原昌幸 (梅谷喜久松)
佐藤允 (牛若寅太郎)
永島敏行 (乃木保典)
長谷川明男 (米川乙吉)
稲葉義男 (伊地知幸介)
新克利 (相野田是三)
矢吹二朗 (久司大尉)
船戸順 (白井二郎)
浜田寅彦 (大迫尚敏)
近藤宏 (大島久直)
伊沢一郎 (友安治廷)
玉川伊佐男 (松村務本)
名和宏 (中村覚)
横森久 (土屋光春)
武藤章生 (竹下少佐)
浜田晃 (大庭二郎)
三南道郎 (金平又八)
北村晃一 (寺島大尉)
木村四郎 (津野田是重)
中田博久 (奈良少佐)
南廣 (軍曹)
河原崎次郎 (ガレ場の日本兵)
市川好朗 (志水実)
山田光一 (一戸兵衛)
磯村建治 (仁杉万吉)
相馬剛三 (豊島陽蔵)
高月忠 (七海周六)
亀山達也 (山岡熊治)
清水照夫 (原口浅太郎)
桐原信介 (兼松習吉)
原田力 (渡辺大佐)
久地明 (落合泰蔵)
秋山敏 (村井軍曹)
金子吉延 (喜多庄助)
森繁久彌 (伊藤博文)
天知茂 (金子堅太郎)
神山繁 (山県有朋)
平田昭彦 (長岡外吏)
若林豪 (上泉徳弥)
野口元夫 (大山巌)
土山登士幸 (鋳方徳蔵)
川合伸旺 (小村寿太郎)
久遠利三 (桂太郎)
須藤健 (松方正義)
吉原正皓 (寺内正毅)
愛川欽也 (卯吉)
夏目雅子 (松尾佐知)
野際陽子 (乃木静子)
桑山正一 (赤丸巡査)
赤木春恵 (木下モト)
原田清人 (神鞭知常)
北林早苗 (木下トミ)
土方弘 (木下喜作)
小畠絹子 (料亭の女将)
河合絃司 (金沢の小学校長)
須賀良 (若い衆)
丹波哲郎 (児玉源太郎)
石橋雅史 (福島安正)
村井国夫 (沖禎介)
早川純一 (横川省三)
尾形伸之介 (松川敏胤)
青木義朗 (井口省吾)
三船敏郎 (明治天皇)
松尾嘉代 (昭憲皇后)
内藤武敏 (ナレーター)

スタッフ
監督 舛田利雄
脚本 笠原和夫
企画 幸田清
天尾完次
太田浩児
瀬戸恒雄
撮影 飯村雅彦
美術 北川弘
音楽 山本直純
主題曲/主題歌 さだまさし
録音 宗方弘好
照明 梅谷茂
編集 西東清明
助監督 馬場昭格
スチール 加藤光男
SFX/VFX/特撮 中野昭慶

◆あらまココでも昭慶バクハツw。

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(伊)「おそれながら、我々も全力でやっております!
   しかし、大本営は我々第三軍の砲弾と兵員
   追加要請になんにも応えてくれなかったでは
   ありませんかッ」 

児玉大将はじっと、伊地知参謀長の顔を見つめ
(児)「なければ知恵を出すのが貴君ら幕僚の職務だろう」

ぐっ、と黙るしかない、第3軍の幕僚たち。
(児)「では、命令する。
    28センチ砲をここからここへ1日で動かせ」

(伊)「しかし、28センチ砲の支援でここの戦線は
   支えられています。支援がなくなると敵に
   突破される恐れがあります」

(児)「敵は要塞に籠もっているんだ。
    出てくるはずないだろう。
    出てきたらむしろ戦いやすいではないか」

(伊)「しかし、28センチ砲は基礎を
   べトン(コンクリート)で固め、そう簡単には
   動かせません」

(児)「尻込みしてないで1日で動かすんだ」

(伊)「し、しかし・・」

(児)「貴様の話など求めていない。
  これは命令だ。
  できないじゃない、ヤるんだ。

(伊)「しかし、味方にも射ち込んでしまいます。
    閣下は、天皇の赤子たる兵士をどのように・・!

児玉大将は怒鳴る。
  「その天皇の赤子を無駄に戦場に
   散らしているのは貴様らではないかッ!
posted by PON at 13:13| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画(ナ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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