「東宝特撮王国」シリーズかと思いきや
CS「エヴァ庵野監督がお勧め岡本喜八映画」
シリーズより。
思ったよりも展開がスピーディーで
長さの割りに、退屈することなく見ることができた。
これも岡本喜八監督の力量なんだと思う。
映画の手本。カット割りとかは非常にスタンダード。
その手の方向を目指す人には
勉強になるのでは。
日めくりカレンダーをめくって
日時がたつのを表現したり
地図の上を半透明な飛行機が移動することで
人物の移動を表現したりと、基本中の基本。
それと映画のかしこに、後の「エヴァ」が
劇中にいかにも1970年代の昭和のラブホが出てくる。
(シェードが安っぽい赤いビニールだったり)
あれなんか、有名な加治とミサトのラブホシーン
そのまんまだし。
映画の副題「Blood Type Blue」なんて
「使途のパターン青」であります。
残念なのは、音楽かな。
ええ?こんなシーンに
なんて緊張感のないBGM流しますか?
と思うところ、たびたび。
それにしても映画を眺めて思うのは
皆さん、亡くなってしまったなあ・・。
(1977年作品)
<あらすぢ>
1978年2月、京都国際科学者会議において、
UFO及び宇宙人の存在の有無について演説した
兵藤教授は、数名の外人に連れ去られた。
国防庁参謀本部の沖と原田は沢木のひきいる
UFOとその目撃者に対処するための特殊部隊に
転属された。沖は理髪店に勤める西田冴子に
ひかれていた。日本国営放送(JBC)の南一矢は、
五代報道局長の命をうけて、兵藤教授の失跡事件の
調査をはじめた。新人女優、高松夕子は、
JBCの大型ドラマのヒロインに抜てきされ、
幸福の絶頂にあった。一方、夕子の恋人、
週刊誌記者、木所は友人の南に
「夕子の血が青い」と相談するが…。
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まず指摘しておきたいのは
気味が悪いのは「青い血」じゃなくって
南君(演:仲代達矢)の「眼」だ。
それと事態の黒幕である「天本英世」と「岸田森」
最強のツータッグ。
「岸田森」だけならサンバルカン指令やSRI
なんで・・まだひょっとしたら、
悪の面を被った正義
なんてのもあるかもしれないが
「天本英世」がトップに出てきた時点でもう言い訳無用。
やっぱ「死神博士」であり「Dr.フー」
この人たち、宇宙人たちよりよほど気味悪い。
映画は、世界規模で展開する謀略の話と
世界的変動を悲劇で迎えるしかない一般民の話、
以上2本立てで進む。
世界的な謀略は、NHK報道部員南くん
(演:若かりしころの仲代達矢)が
一般民は、角刈りの国防隊員(演:勝野洋)と
竹下景子(若い・かわいい)が担当する。
勝野洋。国防庁というよりは七曲署なかんじだ。
それと小柄な小川直也に見えてしまう。
彼、主人公な割にそれ程「セリフ」がない。
かといって背中が語る演技力ってほどでもないし。
以下ネタばれ3行。
であるから、彼のラストの決定行動が唐突で
更にきびすを返して外に向かって突撃するのも
またかなり「唐突」に感じてしまった。
田中邦衛と竹下景子が兄弟ってのは
無理があるよね・・かなりね。
兄、邦衛が妹の恋人候補である主人公に
タバコの火を差し出すシーン。
ライターの火がボゥッ!!と
眉毛が焦げんばかりに。二人ともびっくり。
そら誰だってビックリするだろうが
そんなシーンを入れる意図が皆目不明。
そして世界的な謀略を追跡するパート。
NHK報道部員南くん。
失踪した毛利博士をどうやって探すのかと思いきや・・。
なんとNYで「聞き込み」
見つかるか!そんな手段で。
そんな手段こそ七曲署の刑事にやらせろって。
UFOはユーフォーじゃないのな。
登場人物みんなが「ユー・エフ・オー」と発音。
そんなところだけ皆さん細かい。
確かに、「ユーフォー」だとオカルト映画だけど
「ユー・エフ・オー」ならば一応、SF映画だと
強弁できそうな気がしなくもない。
キーパーソンたる木所(演:岡田裕介)が
大根も大根で。セリフ棒読みである。
誰だこの人?と調べたら、なんとライバル映画会社
東映の社長になってた。
どうやらこの人の親父も東映の社長で
その後、引き上げられて社長にまでなったらしい。
若いころはナイーブwな青年役として
名を馳せたらしいが、俳優以外の職につけて正解だ。
タバコがあちこちで演出に使われている・・というか
愛煙家には天国な時代だったんだな。
公私や時間なぞに関係なくみんなスパスパ。
ベッドでタバコを吸わないで〜である。
ジブンも過度の「嫌煙」の風潮には否定的であるが
あれが当時の世間の当たり前だったのだとすると
今のように、「愛煙家」が社会の隅に
追いやられるのも致し方ないかと思う。
結局、WHOからの要請を受け「禁煙」じゃなく
「人民の健康のために」血液検査が法制化される。
そこで動き出す社会運動、デモである。
官警が監視する中、不思議な歌とともにデモが行く。
「知らずに生きるは罪だろか〜
わが友よ、夢を見るな
ふるえて眠れ」
デモ隊は若者中心で、参加者のほとんどは
血液検査がもたらす恐ろしさよりも
国家権力が決めたことだから
とにかく片端から反対しているだけの模様。
それでいて、ある程度の真実はついている。
社会を上から牛耳っているジジイども
(公共放送の局長とか解説委員とか)が、
シュプレヒコールをあげる若者のデモ隊を
ビルから見下ろして言う。
「若者ってのはフシギですな・・
常に時代の変化をキャッチするアンテナを
持っているのか・・。
ピントがずれてはいるがね」
タス通信やらUPIやら世界中の報道社から
「アオイチノニンゲンガハッケンサレタ」
「アオイチノコドモガウマレタ」
とニュースが舞い込むが最後は一様に
「当局は完全にこれを否定した」
これをずっと続けていれば、
そのうち誰も気にしなくなるのだ。
それにしても東宝映画は
「ウチワ太鼓の宗教団体」が好きだなあ。
日本沈没にも首都消失にもでてきたぞ。
以下ネタバレします・・
最後まで宇宙人の意図は不明。
確かにUFOは集団で来訪しており
UFOから謎の光線を受けた人間は血が青になる。
その子供も「青い血」になる。
だからといって特殊能力が身に付くわけでも
化け物に変貌するわけでもない。
むしろ性格が穏やかで平和的になるらしい。
これだけなら「青い血は見た目に不気味だ」
という点以外、それほど敵視しなくても良い気もする。
でも世界の赤い血を持つ為政者はそうは思わなかった。
異質な存在は怪しい。
何か起きてからでは遅い
敵視して排除してしまえ!
世論誘導プロセスや、水面下でコソコソ話を進める
国家の体質(原発でもおなじみですな)、そして
協力するマスゴミのゴミぶり・・。充分現代にも通じます。
「秘密は漏れたのではなく
意図的に漏らされたのだとしたら・・」
失踪した毛利博士の言だが
なんかこの辺に「押井」節が感じられ。
オシイ監督もこの映画好きだと見た。
この映画は、特撮がほとんどないSF映画といわれる。
SWとかSFX映画真っ盛りな時代(1977〜)に
特撮の雄を自認する東宝があえての選択。
なんという反骨精神。
面白かったです。
あ、最後に青い血。
流れすぎだろ。あれ雪の上じゃないの?
あれこそ青い血の特殊技能なのかッ??
スタッフ
脚本:倉本聰
音楽:佐藤勝
撮影:木村大作
美術:竹中和雄
監督:岡本喜八
主題歌 [編集]『ブルークリスマス』
作詞:阿久悠
作曲:佐藤勝
歌:チャー(Char)
キャスト
沖退介(国防庁特殊部隊員)=勝野洋
西田冴子(麻布理髪店員)=竹下景子
西田和夫(冴子の兄)=田中邦衛
南一矢(国営放送JBC報道部員)=仲代達矢
南夫人=岡本みね子
南修(南の息子)=松田洋治
兵藤光彦(科学者)=岡田英次
兵藤夫人=八千草薫
木所(芸能記者)=岡田裕介
高松夕子(女優、木所の恋人)=新井春美
五代報道局長(JBC)=小沢栄太郎
竹入論説委員(JBC)=大滝秀治
沼田報道部長(JBC)=中条静夫
吉池理事(JBC)=島田正吾
鈴木理事(JBC)=松本克平
城制作局長(JBC)=永井智雄
原田(国防庁パイロット)=沖雅也
沢木(特殊部隊隊長)=高橋悦史
岡村(特殊部隊隊員)=潮哲也
相場修司(国防庁次官)=芦田伸介
宇佐美幕僚長=中谷一郎
特殊部隊師団長=今福正雄
特殊部隊司令官=稲葉義男
代議士風の男=天本英世
代議士の側近=岸田森
院長=神山繁
喫茶店の女=大谷直子
男1(地下組織)=草野大悟
男2(地下組織)=伊藤敏孝
麻布理髪店・店員=小鹿番
タクシー運転手=堺左千夫
中本助手=小川真司
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