2013年11月01日

「Opローズダスト」福井晴敏

「Opローズダスト」

「ガンダムUC」「亡国のイージス」
「ローレライ」の作者「福井晴敏」氏
待望の新作。

長い。文庫本3冊。
週刊文春では毎週6Pづつ連載され
書籍化にあたり、オープニングやエンディングを
書き加えたものらしい。
こういう小説は基本的には
一気に読むものだよな〜とつくづく思う。
週刊誌連載中、6Pずつ、毎週
楽しみにしていた読者って
果たしてどれくらいいたのだろうか?
大きなお世話だが。



あらすぢ
2006年10月、ネット財閥「アクトグループ」を
標的にしたテロ事件が発生。警視庁
公安四課所属の並河次郎警部補は、
防衛庁から出向してきた丹原朋希三曹と
共に調査に乗り出す。並河は朋希と共に
捜査を進めるにつれて、朋希の正体や
犯行グループ「ローズダスト」の正体、
さらには朋希と「ローズダスト」との関係や、
彼らのテロ行為の真意へと徐々に近づいていく。

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基本的には
「映画版パトレイバー2+ガンダム」かな。
ロボットこそ、出てきませんけど。 
イージス艦も出てきませんけど。

「ローズダスト」とは「新しい言葉」の象徴。
「新しい世代」を代弁する組織だが、
真相はテロリスト集団。
福井作品には基本である
「防衛省秘密諜報組織」DAIS所属の
工作員グループが、国(防衛省)に
裏切られたので逃走。行きがかり上
グループから外れてしまった主人公
「丹原朋希三曹」が、元親友でライバル
でもある「ローズダスト」の首魁と対決する。
で、大人世代の代表としてパートナーになる
のが「並河警部補」と。そんな感じ。

話は「古い言葉」世代と「新しい言葉」世代が
対立する構図。

なにかってーと
「ヒトの死による世直し」=革命ばっかり考える
「古い言葉」を使う世代(30代より上)
ガンダムでいえばシャア。
であれば
「新しい言葉」を使う世代は
「そんな大人、修正してやる〜」
主人公はカミーユ・ビダンである。



【組織の論理】
イチ市民やペーペーがエリート官僚のもとに
迷い込んだりでもしたら、エリート官僚は
「組織の論理」をまったく理解せず、
理解するアタマもなく、ただ気持ちの
赴くまま行動する輩を一方的にさげずむ。
(バカは黙って俺の言うこと
 聞いていればいいのに・・)

つまり、現代日本の社会体制
外交と軍事はアメリカべったり、
ただ思いつきでその場しのぎの行動、
官僚、組織は「3ナイ運動」
「決断できない」「責任取らない」「考えない」
ただ単純に、センセーショナルにしか
物事を伝えないマスゴミ・・

そんな腐ったニッポンの性根を
いちど痛烈に叩いて目覚めさせよーと目論む
「古い言葉」を使う世代(30代より上)
  VS
難しいことはよく解んないけど
「世直し」のために簡単にひと殺していいの?
西欧文明は、打ち続く戦争が市民や
国家体制が鍛えられてきた歴史があるが
だからといってそれがエライとも言い切れない。
ニッポンが「平和ボケ」っつーけども
平和ボケでも60年間、戦争は
なかったわけだから、そんな日本だからこそ
打ち出せる方向性もあるんじゃない?
「新しい言葉」を使う世代

が阻止しようとするのが主軸。

何かと言えば難しい小理屈
=「古い言葉」ばっかりならべながら
結論は「ヒトの死による世直し」しか出てこない。
そんな世代が作ったアニメが、いうなれば
「映画版パトレイバー2」であり
あの映画は結局、若い世代が
状況を阻止するだけで終わるけど、
この小説は「新しい言葉」を使う世代が
「古い言葉」を使う世代から
「そんなの青臭い理想論に過ぎない」
とバカにされながらも
より良い生き方=「新しい言葉」を
見つけ出そうと苦闘する話だった。



【対案無き否定】
父親が存在しない世界に
父親を求める甘えた国日本。

その辺はガンダム世界に通じる。

理念なき、守るものを認識していない
組織、国家が下手に「力」を持ってしまうと
結局その時になっても使いあぐねる、
それを為政者に見せようと
新しい言葉の体現者「ローズダスト」は
「状況」を作り出す。

・・話の「FinalPhaze」では
もう手加減せず、その牙を剥き出しにした
ローズダスト達。

彼らが引き起こすテロによって
状況鎮圧のため投入された自衛隊員が
戦闘する前なのに搭乗ヘリを撃墜されてしまう。
この間挙式したばかりの
新妻を一瞬思い浮かべながら。

そんな「状況」を作り出すテロリストに
「正義」など断じてない。


結局、よく回る頭と口で後付理由を
述べているだけで、ローズダスト連中の
真の目的は「復讐」したかった、
ただそんだけだ。
どんなにカッコつけても所詮テロリスト。
黙って独りで憤死していただきたい。

ローズダスト内には、世直しとか正義とか
もうどうでもよくって、リーダーに惚れたから
絶対服従、ってノリでテロ活動を行う
女テロリストも。
学生のスポーツ活動じゃないんだからさ。
キミの行動で人が死んでいるワケですよ。
そういう思考停止人間て、どこにもいるな。

あるいは「組織絶対」で、人間としてよりも
組織人としてしか動けない思考停止人間や
難しい言葉と概念、理屈に勝手に縛られて
動けない奴、こういう思考停止人間もいる。

作者は本当にガンダムが好きなんだな。
それもZガンダム。
Zの最終決戦では、これまた
信じられないことに
主人公+敵ボス2名+元シャアが
MSを乗り捨て、劇場で罵り合うシーンがあるが
それの再現。

ギレンのように一見スゴイこと言っているようだが
要はオレのために死ね、と。
ヒトの死によってしか世直しができない
所詮ローズダスト連も古い言葉の世代。

世直しなんて大きなお世話。
愚民だっていいじゃないか
世直ししたかったのなら
だったら「集まり」の方の壊滅を狙いなさいよ。
(「集まり」とは日本国の若手官僚や
 ITネット長者などが自然と集まった
 日本を右的に革新しようとする非公然組織)

最後、並河警部補は
自分の家族、一筋の希望を見出す。

ヒト、一人一人が少しずつの善意を発露すれば
世の中、まだまだ捨てたもんじゃない
、という
ごくふつーの結論。

並河警部補は
ローズダストで一番年かさの男に向かって叫ぶ。
「なんで止めなかったんだ!
 若者が逸って死を選ぼうとしているのならば
 止めるのが、俺たち「オトナ」の役目だろう!


小難しいリクツよりも
自分の心の声が「それってどうなの?」と思ったら
人として出なさいと。


とにかくローズダスト達は急ぎ過ぎた。
逆シャアと一緒だ。

いろいろ理由づけしてたけど
どんなにカッコ良い男であろうと
ローズダスト首魁の「一功」は
単に連続爆弾魔のリーダーに過ぎない。

巻末にある文春文庫エンタテイメントとして
ラインナップ紹介されている。
その中に「Opローズダスト」自身の紹介もある。
そのアオリ文句に一瞬、思考停止。

Opローズダスト 福井晴敏 上中下巻
「連続爆弾テロのリーダーと
 防衛庁官僚の因縁の対決」


ええ?文庫本3冊分も読んでしまったこの話、
客観的にはこんな数行で
まとまってしまう話だったのか!?
・・そうかも。

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posted by PON at 21:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(ミステリ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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