キャッチコピー
「これは”泣ける喜劇”か”笑える悲劇”か!?」
このキャッチコピーは言い得て妙。
クドカン作らしい、とても「いびつ」で「エグイ」喜劇。
設定もセリフ運びも
一筋縄で笑えない。
ただ間違いなく”ハムカツ”が食べたくなる。
なんだかんだ言っても
クドカン作品はそれなりに観ている。
「真夜中の弥次さん喜多さん」
「ゼブラーマン」
そして「なくもんか」
(舞妓Haaaan!!!は途中で挫折したものの
最近、ようやく観なおしました)
「あまちゃん」のヒットは、
”いやいや宮藤センセイ、それはちょっと
一般ウケしないでしょう。
こうしたらどうでしょう?”と
NHKの各氏がソフィスティケート。
クドカン脚本のエグミを薄めたため、
ようやっと一般的にウケる作品になったのではないか?
そんなことを考えてしまった。
この「なくもんか」も一般的への
過渡期の作品に感じた次第。
<あらすぢ>
兄東京の下町、「善人通り商店街」にある
「デリカの山ちゃん」は毎日行列のできる
超人気惣菜店。その店を切り盛りする
「二代目山ちゃん」こと祐太(阿部)は
「究極の八方美人」とよばれるほどの
働き者で親切な男。商店街の住人たちは
何か困ったことがあれば祐太に頼み、
祐太もいやな顔一つせず引き受けていた。
祐太は8歳のときに父・下井草健太(伊原)に
店に置き去りにされて以来、店主夫婦に
わが子同然に育てられ今は故人となった
店主から40年間継ぎ足してきた秘伝のソースを
受け継ぐ立派な後継者となっていたのである。
************************
初代山ちゃん(演:カンニング竹山)には
一人娘がいる。彼女は学生時代
店のハムカツを喰いすぎて
見事な”おデブ”に成長するも
卒業するや失踪してしまう。
初代が死去、二代目山ちゃんとして、
阿部サダヲが順調に地域に受け入れられ始めた頃
突然店に子連れの美人がやってくる。
これがその一人娘(演:竹内結子)だった。
竹内結子ってキレイだな、と再認識。
猛烈なダイエットとプチ整形(当人談)の結果
華麗な男性遍歴と、結果として二人の子供を
引っさげての出戻りだ。
彼女は自らの過去をあまり語らず
「A4*10数枚」に及ぶ、お役所もびっくりの
小冊子を作成、山ちゃんに提出する。
これが”デジタル時代の驚異”って奴で
再生を一時停止して見てみると、
びっしりと彼女の男性遍歴が書いてある。
あまちゃんもそうだったけど、
クドカンさんもいい加減、小道具や小ネタに
凝りすぎ。
そんなこんなで、かしこに
唐突かつ変なシーンがあって、
その分映画がやや冗長に感じた。
たとえば阿部サダヲ演じる主人公
「2代目山ちゃん」が、無実の罪で
警察にしょっ引かれる。
これまでいろいろ世話になっただろうに
「善人通り商店街」の人々は
山ちゃんのことを遠巻きに見ることはあっても
ほぼ知らん顔。
唯一、皆川猿時さん演じる商店街のナジミが
少しだけかばうんだけど、
”指紋が出ました〜”と
鑑識が声を上げた瞬間、躊躇なく
コブシを阿部サダヲにぶつける始末。
結局、商店街の人たちは
彼の人柄に惚れていたわけじゃなく
単に便利だから山ちゃんを小間使いにしてた
だけだったのだ。
人間なんてひと皮むければ
醜くって、そんなもんだ〜。
何が「善人通り」だよ、と
クドカンさんが意地悪くニヤケル顔が
浮かぶよーで。
サダヲの母親なんか、死ぬまで元気そうな女性
だったのに、原付で爆走中
楳図かずお似のおじさん(演:藤村俊二)に
気を取られ、交通事故死。
ブラックジョークだとしても
果たして笑えますかね?こんなんで。
他にも・・あらすぢにもあるけど
サダヲは、初代から店舗だけでなく
「40年間継ぎ足してきた秘伝のソース」
も引き継ぐ。
この「秘伝のソース」にもクドカンの
冷ややかな視線は注がれている。
劇中にはソースを作るシーンもあるが
これがまあ、不二家のネ×ターとか
変なものを混ぜ合わせ、洗ったことのない
ツボに突っ込む”ヤミ鍋ソース”
そんなのを無批判で大事にしてる。
この先代ソースこそ「デリカの山ちゃん」を
繁盛させている”キモ”なのだと
サダヲも周囲も信じて疑わなかったのだが
竹内結子の連れ子たちが
「くさい、くさい」といって
サダヲ不在時に「ソース」を流しへ捨ててしまう。
当然”がっくり”するサダヲ達。
ところが、子供たちが学校給食から持ち帰ってきた
出来合いの「ソース」パック。
これをつけてハムカツを食べてみたら・・美味い。
っつーか秘伝のソースよりも
給食業務用ウスターソースで
食ったほうが、よほど美味しいことが判明。
あれほどこだわってた初代の「秘伝の味」とは
いったい何だったのか?という話に。
初代は味覚障害だったのか?
結局、下町で大繁盛のお店と
美味い美味い、と行列は出来ていたけど
誰一人、自分の舌で判断して買った者はおらず
”みんなが買うから”買っていただけだった。
てな風でありまして、基本的に「意地悪」な視線で
世の中を斜めに見ているよなあ。
クドカンって人は。
だったらこういう小ネタばっかりで
攻めて欲しかったが、下手に生き別れの弟との
出会いと和解を描いてしまうから
笑ったらいいのか泣いたらいいのか
ワケわからん作品となってしまったのだと思う。
クドカンがどこかで語っていたけれど
人間とは、必ず一つは妙なところに
コダワル癖を持っている、と言う。
その妙なコダワリを積み重ねると
厚みが出て、キャラとして一人立ちする
というのが持論なのだそうだ。
だから、彼の作品には、
設定はものすごく凝っているのに
名前すら決まっていないキャラもいる。
出戻りの彼女(竹内結子)。
もとよりこの店の正統な後継者は彼女なんで
山ちゃんは追い出されても
何の文句も言えないのだが、結局二人は
夫婦になり、子供も引き取る。
さあ、役者はそろった。
今度は生き別れの弟(演:瑛太)をめぐる
あれやこれやが続きます。
竹内結子の不倫相手で、子供二人の
実父の政治家役に、陣内孝則(特別出演)が
出ている。映画には関係ないが
彼の息子、相当のアホ息子みたいだね。
どこぞの”みの”や大女優の息子に比べれば
犯罪起こさないだけマシか。
ちょっとびっくりしたのは
初代山ちゃんの奥さんを、いしだあゆみさんが
演じていること。彼女、旦那が死んでしまうや
認知症にかかってしまう役どころ。
なに、彼女ってもう”ばあちゃん”役世代?
世間一般的に見て。
なくもんか
監督 水田伸生
脚本 宮藤官九郎
製作 奥田誠治
製作総指揮 飯沼伸
清水啓太郎
出演者
下井草祐太:阿部サダヲ
金城祐介:瑛太
徹子:竹内結子
金城大介:塚本高史
トシちゃん:皆川猿時
みどり:片桐はいり
下井草祐子:鈴木砂羽
山岸正徳:カンニング竹山
静花:山口愛
徹平:谷端奏人
桜井:高橋ジョージ
桂谷壮一郎:
陣内孝則(特別出演)
ボーダーシャツの男:
藤村俊二(友情出演)
中やん:小倉一郎
野口夫人:市川千恵子
加々美昌弘:光石研
下井草健太:伊原剛志(友情出演)
山岸安江:いしだあゆみ
祐太(中学時代):冨田佳輔
祐介(幼少時):加藤清史郎
刑事A:橋本じゅん
刑事B:小林正寛
ライブの客:西尾由佳理
(日本テレビアナウンサー)
音楽 岩代太郎
主題歌 いきものがかり
「なくもんか」
撮影 中山光一
編集 平澤政吾
配給 東宝
公開 2009年11月14日
上映時間 134分
製作国 日本
言語 日本語
興行収入 13.5億円
************************
管理人モチーベーション維持のため
クリックしていただけますと助かります!
↓ ↓ ↓