この作者は早世した天才だったらしい。
恥ずかしながら、お名前を知りませんでした。
あとがきを司馬遼太郎さんが書いています。
ってことはそれなりの方だったのでしょうね。
<あらすぢ>
逸見のり子という女性が、精神疾患専門医の秋葉に
耳鳴りの相談を持ち掛ける。逸見が神奈川県C市の
特定の場所に行くと、ごく小さい一定の音が聴こえ
るというのだ。逸見には絶対音感があり、その音は
「二点嬰ハ音」、すなわち「ツィス音」とのこと
だった。秋葉は自分には聴こえなかったが、聴覚に
敏感な患者で試験してみたところ、確かに聞こえる
という。秋葉は音響学の専門である日比野教授に
相談した。日比野教授はツィス音の調査を大々的に
行い、テレビの情報番組を通じてツィス音が聞こえる
人を募集したところ、大勢の人が名乗り出てきた。
ツィス音が聞こえるという人は、日を追って増えて
行き、やがて首都圏全体に広まって行く。
アメリカ西海岸でも音階の異なるフィス音が聴こえ
てきたという情報も流れてくる・・。
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1982年が初版のこの本。
作者に罪はないんだけど、とにかく
小説内の”ものの表現方法”にびっくり。
昭和の話とはいえ、あまりに描写が古臭すぎ。
男尊女卑だし
嫌煙権なんて言葉もなかった時代。
タバコは男の大人の特権
どこで吸おうと勝手だろ、といった感。
関係ないけど、自分が予備校に通っていた
1989年頃。東海道線の車内には
まだ灰皿が残っていたし、車内の隅に
「喫煙は2100以降でお願いします」
なんてステッカーが貼ってあったよ。
マジな話。
それに言葉狩りの犠牲者である
言葉達が次々と活躍します。
「つんぼ」に「びっこ」に「かたわ」・・。
主人公が本当に”つんぼ”って設定なんだから
仕方ないんだけど。
物語の後半、事態の収拾主体が
政府や東京都の手に移るのだが
担当課長なんか忙しすぎるからといって
カンフル剤代わりに覚せい剤打ってる。
いかに国家の緊急事態とはいえ
それがまったく警察沙汰になることはなく
むしろ覚せい剤打ってまで
頑張っている役人ってことになってる。
人が住めなくなった東京の留守番部隊として
警察や消防士、自衛隊と彼らをまとめる役人が
2000人位残留することになる。
そんな彼らの慰問として、
ストリップショーを開催するのだ、公費で。
現代小説というものは時代と共に
古びてゆくのがお約束・・とはいえ、
さまざまな点でいやいや、それはないだろ、と
ツッコミたくなった。
もちろん、昔のチビ黒サンボ騒動のように
魔女狩りなんかハナからするつもりないよ。
それに、社会の主力の世代がそろって
戦争経験者だ。1982年ごろの
時代設定なのだから、それでいいのだけれど。
この小説にある時代描写が
当たり前だった時代が本当にあったんだ。
かつてこの国に。
うーん。オチなんかのことを考えると
映像化は難しそう。
てなこと書いちゃったけれど
実はもう映像化済みだったりして。
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