2008年12月08日

「連合艦隊の最後〜太平洋海戦史」伊藤正徳

本日は太平洋戦争開戦記念日。
マスライです。

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太平洋戦争中の日本海軍連合艦隊
幾多の海戦を時系列順に解説した本。

とりわけ間抜けで謎とされる戦い。
レイテ沖海戦」について。

栗田艦隊、謎の大反転。

レイテ湾殴りこみ作戦
ヤクザじゃないんだから・・と思うかもしれないけれど
これは戦争も末期に、エリートの集団だったはずの
旧日本帝国海軍が立てた作戦。
ホントまっとうじゃない。

簡単に言うと、たくさんの島で成り立つ
フィリピンのレイテ湾に米陸軍の輸送船団が
集まっているという情報をキャッチした日本軍。
もうその頃には、古くて足が遅くて
あんまり役に立たなかった故に
生き残っていた戦艦だけで
高倉健さんばりに殴りこみをかけようというもの。

当然、アメリカ海軍自慢の高速空母艦隊が
待ち受けているに違いない。
空母戦闘機の援護のない戦艦なんか
殺られるのを待つだけ。

だから、艦隊を二つに分けて
「おとり」艦隊と「殴りこみ」艦隊とする。
トラの子の「空母」をたーくさん
「おとり」艦隊に入れれば
米軍はそっちを追っかけるに違いない・・

おとり艦隊はボコボコになるだろうが
その間に、戦艦群で殴りこみ、デイリじゃぁぁ!
あとは野となれ山となれヨイヨイ。

トラの子の「空母」をおとりにしていいの?
という至極まっとうな疑問をお持ちの方。
いいんです。
その頃はもう発進できる飛行機もパイロットも
なかったので。

そしてようやく
栗田艦隊、謎の大反転」の件。

栗田艦隊ってのは栗田健男提督が率いる
「殴りこみ戦艦部隊」のこと。
「おとり」艦隊が、作戦通りボコボコになって
時間を稼いでいる間、レイテ湾近くまで
なんと進入できちゃいました!

ケンカのため出払って留守の
敵側ヤクザの奥座敷にまんまと入り込んだようなもの。
あとは非戦闘員(輸送船とかタンカーとか)の
虐殺をすればよい。
このときレイテ湾の敵輸送船団をボコボコに
しておけば、米軍のフィリピンの攻略が
3ヶ月は遅れた、と後に言われている。
(それでもたったの3ヶ月でしかない・・)

戦艦大和を旗艦とする栗田艦隊は、
そこで小さな空母(護衛空母)を持った
アメリカの船団護衛艦隊を見つけ攻撃。
空母は大和の主砲でほぼ瞬殺。
まさに牛刀で鶏を割くようなもの。

・・にもかかわらず
何を思ったか、栗田司令官は
ここで全艦隊にUターンを命じ、
帰ってしまいました。
目の前に輸送船団がいたのに。
これが「栗田艦隊謎の反転」って奴です。
奥座敷の入り口で、命がけのピンポンダッシュ。

このとき、栗田提督が何を考えて反転命令を
行ったのか、戦後も生き残った提督は結局
何も言わないまま逝去されたので、謎とされている。

後からなら結果論として色んなことが言えます。
この謎の反転は、後の歴史家や光栄マニアw
からさんざん批判されることになりますが・・
いったい、栗田中将は何を考えていたのでしょう?

1)本当に戦争が下手な人だった?
 暗闇の中、さらに目隠しされて
 どこに穴ぼこがあるか分からない場所を
 宝物を抱えて進むことになったとき、
 あなたはどうします?

2)栗田提督が馬鹿な作戦に反対
  最後の抵抗を試みたから?
  この頃にはさすがの日本軍も、大和1隻より
  空母(飛行機多数)の方が強いこと。
  空母なしで戦艦が行くのは物が落ちてくるところを
  裸で歩くようなものと認識してました。

  戦艦艦隊が輸送船団ならびにフィリピン上陸中の
  米軍を叩くことはできるが、おとり艦隊を攻撃している
  米主力艦隊(含む空母)が戻ってきたら
  全滅は間違いのないところ。
  それがいつ戻ってくるかなんて解りません。
  まさに神経衰弱戦。そんななか
  部下を1人でも多く生きて帰そうと考えた?

3)「疲れてどうかしてたんだ・・

  と親しい記者にだけ、こぼしたことがあるそう。
  (後にそんな発言していないと言ったそうですが)
  案外、これが本音だったのかも。

自分も、なんで湾に突撃して一隻でも
多く沈めないんだ!と、無責任に思った時も
あったけれど、考えてみれば、死ぬほうとしては
たまらん話。
彼が馬鹿な作戦に反対して、あえて汚名をかぶり
艦隊を反転させた、というの考え方も有りでしょう。

責任を一身に背負って逝ってしまった栗田中将。
死ぬことも責任のとり方かもしれないが
生きながらにして黙して一生を終えるのも
また責任のとり方。

一方、勝算度外視の突撃といえば
日本一の武士、真田幸村

雑兵(庶民)にとって武士階級ほど
滑稽で、迷惑で、益にならない存在もない。
死ぬなら1人で死んでくれってのが
雑兵の本音だろう。
実際、名が残ったのは幸村だけだし。

勝新太郎の映画「雑兵物語
戦国時代のしたたかな農民兵(雑兵)の話。

コレに、ヤギのユキちゃんみたいな
アゴ髭の老「騎馬武者」がでてくる。

「貴公(勝新)はさっきから勇敢に闘ってる様子。
 よし真の武士道を見せてやる!共に死のうぞ!」と
老体に鞭打ちながらフガフガ戦っていたけれども、
エライ奴に目をつけられた・・勝手に死ねば?と
勝新が呆れるシーンの記憶がある。

その横で雑兵たちは、なるほどなるほど
それはぜひご教授ください、と言いつつ
テキトーに受け流し、
雑兵には敵にも味方にも死人が出ない。
まじめに死ぬのは武士ばかり。

「真田幸村」も、この老騎馬武者のようなもの
だったのかも。
そして栗田中将も、そうなる可能性が充分あったが、
自分の名誉を捨て、本来なら死んでいたかもしれない
何百人かの部下の命を未然に救い、 自分は
黙っていたのかもしれない。そう思っておこう。

あれ?本の紹介がまだですが・・まあいいや。
そういう本です。

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「くだらぬな。生きていればこそ
 復讐戦の機会もあろうに」


勝新が演じる雑兵たちは、
貧乏だがたくましく、したたかで
軍の配給にぎり飯を食べる為だけに
戦争に参加しているような連中。

主義、理想、カッコいい死に方なぞ
生きるための方便で、こだわっても
死ぬだけと身をもって知っているのだ。

画面左側から攻めてきて、丘の向こうへ消える。
自軍の戦況が悪くなると 背中の旗を敵軍に変えて
こんどは丘の向こうから敵軍として戻ってくる。
そんなシーソーゲームを何度も繰り返す。 
雑兵同士は戦っても、槍を合わせるだけで
絶対死なない。
向こうも雑兵だから。
posted by PON at 21:00| ☁| Comment(8) | TrackBack(0) | 読書(歴史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>北斗様

PONであります。

>え〜、実家にて荷物整理をしておりました
>ら・・・なんと実物が出て来てしまいました
それは、大事に保存していた方がよろしいかと。
そのうち、電子系歴史記念物に指定されますよ。
むかーし、何処かの博物館で、PC黎明期
〜ファミコンのような電子機器の実物が
ずらっと展示されていて面白かったです。 

>木屋通商株式会社
>KIYA Overseas Industry Co. Ltd.

>輸入シミュレーションゲーム
>(当然ボード版)の
>国内販売元であったようです。
なるほど。その辺でしょうね。
この「木屋通商株式会社」ってワードは
検索時に使えますな。「黎明期のPCゲーム」を
見たいときに。

>新年会は・・・どうすんでしょ?w
終了しましたw
今年も宜しくお願いします。
Posted by PON at 2009年01月17日 15:02
え〜、実家にて荷物整理をしておりましたら・・・
なんと実物が出て来てしまいました(爆)

木屋通商株式会社
KIYA Overseas Industry Co. Ltd.
検索してみると、かつてはホビージャパンと並んで
輸入シミュレーションゲーム(当然ボード版)の
国内販売元であったようです。

しかしまぁ、本体は既に無いのにテープだけ残っても・・・
と思いつつ、また大切に仕舞っておこうと思います。
ちなみに1982年時点で4600円というのは結構な価格。
どこで買ったのかは既に記憶にありませんが。

新年会は・・・どうすんでしょ?w
Posted by 北斗 at 2009年01月03日 00:49
>北斗様
PONでやす。来年も宜しく。
今回はどこでやるのかな新年会。
たしか前回の別れ際、誰かが「幹事」を
指名をうけていませんでしたっけ?(オレか?)

>え?そうだったの?とこちらが
>逆に驚いてますw
失礼しました。あれから更に調べたのですが
木屋通商とかいって、CSK―SEGAあたりで
開発していたソフトを秋葉に卸していた商社
だった模様。光栄云々は、たまたま一発目に
ひっかかった、2CHでの誰かのいい加減な
コメントをPONが見かけたから・・という
ものです。お騒がせしました。

>毎回飽き飽きする程空襲を受ける訳ですが、
>昔のソフトなので、「沈没するまでは
>微損でも大破でもフル戦力」だったのです。
たしかに、昔のゲームにはありがち。
HP1でも攻撃力100%。
そら最後の一兵卒まで戦わせたくなるわなw
光栄ゲームも、大戦略もいまだ
そういうところがある。
でもその辺はグレーにしておいて欲しいです。
そうでないと勝てないからね。

>榛名なんか、最終決戦まで無傷だった時も。
ほうほう。史実にしても最も使い勝手が
よかった戦艦は、外国で作られた決して
新しくはない船だった・・というのも
なんだかなぁ。それこそ日本の造船技術は
あのころ急激に発展したんでしょうね。

>怪挙も成し遂げましたw
たしかに・・「怪挙」ですの。
英霊も少しは浮かばれましょう。たぶん。
Posted by PON at 2008年12月27日 12:48
>るしは殿

どうもご無沙汰しております。
自分、るしは殿に謝らねばならぬことが二点。
1)るしは殿から薦められながらも
  食わず嫌いであった「トップ2」を
  なんとなく観たくなっている今日この頃。
2)クローバーフィールドを観ました!!
 情報シャットダウンということで、自分
 ねこめがねの記事もあえてスルーして
 おったのですが・・申し訳ありません!
 マジでこれはるしは殿と行っとくべきでした。
 (近日記事アップ予定です)

>なるほど!これが某トップの
>銀河中心殴り込み艦隊の元ネタなんですね!
・・指摘されて気がつきましたが、多分
  ガイナックスの内部の単に「ノリ」
  からきた言葉なんでしょうねw
Posted by PON at 2008年12月15日 12:54
>・・思わず調べてしまったのですが
>木屋ソフトってKOEIの前身だったのですね。
え?そうだったの?とこちらが逆に驚いてますw
木屋だったか木谷だったか検索しても分からなかったのに、
どこで調べたんですか?

>やっぱカセットテープ版ですか?
そりゃぁもうF○-7版ですからねぇ。
戦闘終了後に結果を算出する部分を
マージ(データ引き継ぎでのプログラム切替。
ホントは追加の筈なんですが)で読み込むのが
長い事長い事。

>ここで都都逸というのも非常に
>また貴殿らしいです。
何か、書き始めたら興に乗ってしまったのでw

>タコ殴りにされながらも、全滅させるくらいの
>戦力は残っていたわけですか?
毎回飽き飽きする程空襲を受ける訳ですが、
昔のソフトなので、「沈没するまでは微損でも
大破でもフル戦力」だったのです。
なので、運良く小破〜中破で艦艇が残った時は、
艦隊決戦を挑めば空母中心のハルゼー艦隊と
戦艦巡洋艦主体の栗田艦隊では、後者にも勝ち目があった訳です。
榛名なんか、最終決戦まで無傷だった時も。

なお、最高得点を叩き出した時は、旧式ながら戦艦巡洋艦を揃えた
キンケード艦隊も撃破し、(海戦に参加した)米国海軍全滅という
怪挙も成し遂げましたw
あ、「怪挙」は誤字じゃないですのでww
Posted by 北斗 at 2008年12月14日 05:25
>北斗氏

>久しぶりに聞きました、謎の「レイテ沖海戦」
はい、12/8と聞いて「真珠湾攻撃」と
来ないあたりがマスライのマスライたる所以
であると・・ああ自分でも何を書いているの
やらw

>むか〜しむかし、大昔。
>木屋ソフトなる所から、出ていましたる
>ウォーゲーム。
・・思わず調べてしまったのですが
木屋ソフトってKOEIの前身だったのですね。
めちゃめちゃ古くからのユーザーじゃ
ないですか。KOEIから表彰されても
おかしくないな。

>その名も「連合艦隊の栄光」
やっぱカセットテープ版ですか?

>・・・などと、都々逸風に書いてみましたが、
ここで都都逸というのも非常に
また貴殿らしいです。
(都都逸と独逸は似てますが)

>それでも、航空機にタコ殴りにされた
>栗田艦隊が、報復とばかりハルゼー艦隊を
>全滅させた時は、
タコ殴りにされながらも、全滅させるくらいの
戦力は残っていたわけですか?
メリケンのパイロットの腕がホント悪かったのか
帝国海軍の避け方がスゴイのか、
SIMのデータが甘かったのか
バグか・・

>あり得ないと思いつつ
じつは結構有り得たかもしれませんw
それかジパングばりに大和に原爆
(リセットスイッチとも言う)
搭載していたとか。
Posted by PON at 2008年12月12日 13:40
なるほど!これが某トップの銀河中心殴り込み艦隊の元ネタなんですね!
(今更とか言わないで〜w)
Posted by るしは at 2008年12月10日 15:25
久しぶりに聞きました、謎の「レイテ沖海戦」

むか〜しむかし、大昔。
木屋ソフトなる所から、出ていましたるウォーゲーム。
その名も「連合艦隊の栄光」
舞台は正にレイテ湾、かつての精鋭今いずこ。
我らは落ち目の日本軍。
敵はハルゼー、キンケード。
護衛空母も足したれば、戦比は何と1:6。
しかも特攻あるものの、航空戦比は1:10。
とてもじゃないが勝てやせぬ。

只唯一の救いとは、小沢も志摩も西村も、
栗田でさえも我が手足。
されば小沢が囮にて、ハルゼーどもを引き離し、
レイテ湾へと殴り込み。
連合艦隊最期の一戦。皆様とくとご覧あれ。

・・・などと、都々逸風に書いてみましたが、
悲惨な設定のゲームをよくもまぁやり込んだものだと思いますw
それでも、航空機にタコ殴りにされた栗田艦隊が、
報復とばかりハルゼー艦隊を全滅させた時は、
あり得ないと思いつつ拍手喝采したものですが。
Posted by 北斗 at 2008年12月09日 00:51
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