2008年04月08日

「アウトニア王国奮戦記 でたまかA〜B」

・アウトニア王国奮戦記 でたまかA 
 奮闘努力篇
・アウトニア王国奮戦記 でたまかB 
 純情可憐篇

鷹見一幸作 角川文庫

北斗氏から借りた「ラノベ」シリーズ第二弾。
A巻とB巻は立て続けに読んでしまったので
立て続けに一緒の記事にします。

あらすぢ
帝国の貧乏貴族に生まれたマイト・ガーナッシュは
帝国貴族のボンボンを卒業実技でボコボコにしてしまい
アウトニア王国と呼ばれる田舎星系に島流しにあう。
そこでヒロインに出会い、第二の故郷と思うように
なったアウトニアにて守ろうと決意する。
実戦経験は全くないけれど、戦う演技はうまい
(何故なのかは詳しく書かないけれど)
辺境、アウトニア軍を率いることになった主人公は、
隣接する敵性宗教国家のそのまた手先である
傭兵艦隊(正規軍ではないがそれでも自軍よりは
はるかに強い)と戦うことに・・。

************************

この作品の端緒は、ネット小説、自分が書きたい
スペオペ小説を好きにHPで公表しているうちに
話題になって?作品化したものであるようだ。
道理で。

まず登場人物名が違和感あるな〜と思った。
銀英伝のようにゲルマンやらなにやらで統一せよとは
言わないけど、友人知人?の名前のもじりらしき
キャラクターが多出。その内輪ぶりが少々鼻についた。

作者が触れてきたサブカル文化のエッセンス
(好きなシチュエーション、言葉など)を
散りばめまくった作品。もとはネットの同人誌的
小説なんだから、それは作者の自由だけど
統一感がないというか雑多な感じはどうしても
否めない。ジャンクパーツショップのような小説。

それがこの作品の魅力でもあると思うんだけど。

A〜B巻は、帝国と敵対する勢力との代理戦争
として勃発するアウトニア王国と傭兵艦隊との
戦いを手堅くまとめている。

作戦名「ギャラクシーハラスメント」

正面から戦うばかりが戦争ではないのだ・・ってことで
我々が想像する宇宙船同士の正統ドンパチ・・以外の
あらゆるやり方で、マイドとその仲間たちは
傭兵艦隊に戦いを挑む。
ヤン提督でいえば「まあこれは奇策でも戦略でもなく
【悪知恵】だね」という感じ。
アウトニア艦隊が全力で敵陣営に「嫌がらせ」をする様は
爽快だった。

「こういうこともあろうかと」
 が技術者の本懐よ。

さまざまな悪知恵のエピソードが並ぶが、
お気に入りをひとつ。
オンボロ民間船とは比べ物にならない
スピードを持つ軍艦から追跡を受けることになった
主人公一行。振り切ために実践した
「3枚のおふだ(やまんば作戦)」作戦が好き。

ネタばれだけども・・本物の姫を捕虜とすべく躍起に
なる敵軍に、複数の貨物コンテナを切り離す作戦にでる。
各コンテナには姫に似せたアンドロイドが搭載されており
仕方ないので敵軍は、発見するコンテナを次々に臨検する。
コンテナのアンドロイドにはある「プログラム」が
仕込まれていた・・
「進んで敵船に乗り込むこと」
「その辺のボタンを手当たり次第に押し、
 敵兵に抑えこまれそうになったら、
 真ん中で一番偉そうにしている兵士
 (それが上官である確率が高いからw)
 にしがみついてそのまま機能停止せよ」

・・まあなんてメイワクな軍事作戦?なんでしょう。



それにしても卒業試験でのちょっとした行為が、
因縁として、マイトの人生だけでなく、彼の周囲、
そして帝国までも巻き込んでいくことになるわけで
マイト自身は、かかる火の粉は振り払わなければと
自衛の戦いを続けるのだが、それが更なる戦いを生む。

そして、彼らは勝つ。勝つのだが勝ちの代償は
とんでもなく高くつく。
最後のほとんど投げ出したかのような
終わらせ方にはびっくりした。
作者が行の向こう側でニヤリと笑った顔が
見えたような気がする。
その笑いを読者が受け入れることが
できればこの作者の勝ち。

「アウトニア王国再興録」篇に続く。
以下、次号。

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posted by PON at 21:00| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書(SF) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>北斗様

>「王国奮戦記」があの終わり方をしたのは、
>(どこかの巻の後書きにあった筈ですが)
そうみたいですね。あとがきのどこかに
ありました。そのあと続くことになって
結構ビックリ・・みたいな。

>そこからは「ラノベ」ではなく、角川
>スニーカーでも異質の存在と
角川文庫も文庫界の中では、相当異質
だと思いますがねwそこで異質になるってことは
やっぱ、ラノベはラノベなのかもしれません。
我ながら良く判らないまとめ方ですが。

>ちなみに、このシリーズの歴史を遡る
>「銀星みつあみ航海記」シリーズも、
ほうほう。残念ながら、4月末現在未読です。
「ぼくらの」原作コミックを読むのに
忙しくって。
Posted by PON at 2008年04月28日 23:10
「王国奮戦記」があの終わり方をしたのは、
(どこかの巻の後書きにあった筈ですが)
「あそこで終わり」になった事もあるそうです。

で、数年の時を経て、「王国再興録」で文字通り復活する訳ですが、
そこからは「ラノベ」ではなく、角川スニーカーでも異質の存在と
なっていきます。

ちなみに、このシリーズの歴史を遡る
「銀星みつあみ航海記」シリーズも、同様の事情だとか。
なんたるかな。
Posted by 北斗 at 2008年04月13日 23:36
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