表題だけでも聞いたことのある方も
おられるのではないでしょうか。
戦争の記憶も生々しい
昭和31年に新潮社から発売された
戦争小説の傑作。
学校の国語の教科書にも採用されていたので
ここに紹介するまでもなく
お読みになられた方も多いでしょう。
自身も徴兵されて「海軍予備学生」として
軍隊生活を経験された阿川氏が
友人の残した日記をもとに
書き上げた小説。
戦争末期、「海軍予備学生」として
召集された学生が最終的には特攻隊として
死んで行くまでを描いている。
この作品はあくまでも「小説」であり、
登場人物が戦況といい、社会情勢といい
「当時の一般学生あがりでも
ここまで社会情勢を明確に
知っていたのか??」
と思わせるくらいの描写もある。
まあ小説であればこそだが
とはいっても少しも本作品の価値を
損ねるものではない。
PONが教科書で
この作品を知ったときは中学生でして
作品中で主人公の学友
(戦争に懐疑的でシニカルな物の見方をする)が
大学の先生にむけて書いた手紙がありまして・・
「特攻で出撃しても、エンジン不調を理由に
どこか南の島に不時着して、そのまま
いっそロビンソンクルーソーのように
戦争終結まで隠れて暮らせたら!
そんな誘惑に囚われている」(意訳)
のあたりを読んで非常に衝撃を受けた。
「学生の特攻隊員」の誰もが
従容として死を受け入れ
出撃していったわけではなかったのだ・・という事。
時代は変われど「生きたい」という
気持ちは少しも変わることはない、
彼らも普通の人間だったんだという事。
実に当たり前なことを
中学生のPONに気が付かせてくれた。
「海軍予備学生」は
初めから軍人を目指して
兵学校に入学した連中からも
軍上層部からも
理屈ばっかりで戦えない素人
としての扱いを受け、待遇面だけでなく
様々に差別されていた。
(訓練用の燃料や、使える機体の供給が
一番後回しなのに特攻の順番は
真っ先に廻ってきたり、
哨戒(偵察)も兼ねた訓練飛行では
一番、会敵しやすいルートを押し付けられたり・・)
もっとも「武人」扱いを受けなかった
「海軍予備学生」が
もっとも「武人」として
見事に散っていたという歴史の皮肉。
その無念さは如何ばかりかと思う。
彼らは皆、大学での教養があるが
「教養」は彼らを救済してくれず
「苦悶」が多くなるだけだった。
馬鹿な大人たちが勝手に始めた戦争を
「特攻」という形で
尻拭いせねばならなかった世代。
戦争ロマンチシズムとかネット右翼
そういうのではなく
むやみな戦争にはブレーキをかけ
彼が託してくれた未来に生きている
自分達は、彼らの思いを
無駄にしないようにしたい、という
当たり前の結論でありましたよ。
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