好きな人間にはおなじみのヒーローらしい。
私立探偵「浅見光彦」シリーズのひとつ。
このシリーズと主人公をこの小説で初めて知ったが
言われてみれば確かに「浅見光彦」って名前は
新聞のTV欄なんかで何度か見たことがある気がする。
あとで調べたら、水谷豊さんが「浅見光彦」を
シリーズで演じていたらしい。なるほどなるほど。
<あらすぢ>
始まりは、深夜不気味に鳴り渡った鐘の音だった―。
浅見家の菩提寺にある鐘に付着した血痕、その鐘の
模様痕をつけ、隅田川に浮かんだ男の変死体。
浅見光彦は、その死に秘められた人間の哀しい
愛憎の謎を追い、四国高松へ、そして越中高岡へと
向かう。やがて、被害者の美しい妹と共に辿り着いた
真実とは?浅見の推理が冴え渡る、傑作長篇。
内容(「BOOK」データベースより)
主人公浅見光彦は、名家の次男坊。
長男は警視庁でお偉いさんのルートを昇りまくっている。
一方、我らが浅見光彦は未婚でフリーのルポライター。
各地で探偵ごっこ(自称)をしている。
そんな次男を常日頃から歯がゆく感じている
気の強い母親。もともと争い事が嫌いな浅見光彦は、
母親に頭が上がらない。
(浅見は善意で警察に協力しているので、交通費の
やりくりも一苦労・・)
「前借りなどと、みっともないことはおやめなさい。
男子たる者が借金していいのは一生に一回だけです」
「はあ、それはどういう場合でしょうか?」
「決まっているでしょう、妻をめとるときだけです」
「―正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、
国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、
嘉村磯太三十七 ―これは太宰治の「津軽」の中に
出てくる太宰の独白のような言葉だが、
太宰は若くして逝ったそれらの文人たちよりも
長く生き永らえることを恥であるかのように、
そう言っているのである。
あと数年もしないうちに浅見も彼らの死んだ年齢に達する。
この世に何ほどのことも残さずに―」
野郎ひとりでは絵づら的に面白くないので、
2時間ドラマで事件を追う場合には
「いかにも」な相方の女性がつきものだ。
今回のやりそうでやらないキャラ、浅見光彦の相方は
被害者の妹「慧美(エミ)」。美人であるらしい。
結局小説ではプラトニックで終わるが。
なんていうのかな、小説自体は面白くてスッと頭に
入ってくるんだけど、人物描写と情景描写が
少々薄っぺらい感じに思えた。
こういった「地方巡業ミステリー」小説の
大家である内田康夫センセイに喧嘩を売っている
わけではなくて、センセイがワザとやっているように
思える。
つまり、TVドラマ化する時に誰が演じてもいいよう
最大公約数的書き方をしている。
今回登場するヒロインにしても、ひとこと「美人」であると
書いてあるが、どんな美人なのか、微に入り際に入り
「美人」を描写するわけはでなく、
例えば「誰もが振り返であろう「美人」である」
・・みたいな描写で済ます。
読者の想像に100%委ねているって感じ。
想像に委ねるわけだから、映像化して
ヒロインを誰が演じることなっても違和感がない。
同じく、主人公が泊まることになる宿泊施設にしても
単に「ホテル」としか書いていないから、ドラマの
プロデューサーがどこのホテルとタイアップして
映像化したとしてもまったく問題がない。
しかも高松なら「栗林公園」、尾道なら「因島」みたいに
映像にも困らない舞台設定。
なんてテレビドラマ思いの小説なんだろう!
最後には古都まで出てくるし。
2時間ドラマの原作はこう書くんだよ?と、
常に作者から問いかけらているような小説でした。
お手本。
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「ひょんなことから「鐘」に関わる羽目になったおかげで
知らず知らずのうちに「鐘」に関する知識が増えてゆく
必要は発明の母―というが、必要は有能な教育者でも
あるらしい」
「警察官のサラリーマン化。自分の判断で行動することを
しないで、まず仲間や上司に報告し、指示を仰ぐ。
これは平和なサラリーマン社会では常識だが、いわば
戦闘状態にある最前線とも言うべき捜査現場に、
そのまま当てはめる発想そのものがいかにも平和的だ」