2007年06月03日

「お見合い」吉村達也

「角川ホラー文庫」の
遠慮がちな大行進は続きます。

電車に乗ってこんなジャンルの本を読んでいると
客がみんな自分を見ているようで。
そんな自分に、畳み掛けるように
遥かアルファケンタウリから
「そんなジャンルばっかり
 乱読して、てめーが一番
 ホラーなんじゃないのか?」

電波が届いてきます。ええ。
どうしましょ?(苦笑)

「お見合い」 吉村達也

<あらすぢ>
大好きな史也と結婚する前に、一度だけ
「お見合い」というものをしてみたい。
満たされた恋で幸せな毎日を送る
滝真由子にとって、それは余裕の気持ちが
産み出したほんの遊び心。
 恋人の史也も、笑って賛成してくれた。
そして真由子は、親戚からきた見合いの話に、
ふざけ半分で応じることにした。
だが、お見合い相手の男は真剣だった。
真由子の魅力に一目惚れをした彼は、
思いつめた表情でこう言った。
「私はガムテープ男です。
 一度くっついたら離れません」。

omiai.jpg

うーーーん。
面白くなりそうな雰囲気は
漂っていたんだけど、作中で
とても頼りになりそうな
主人公(史也)の父親(理性と知性の塊)が
主人公のヘルプ要請によって
事態の収拾に立ち上がったときには
すでに残ページ数が2/3を
過ぎていたから。
「大丈夫なんかなこの先
 どう活躍するんだろ?」
と思っていたら、あらら??
話は結局、なるようになってしまって
作者もいいかげん物語を手放してしまった・・
そんな感じでした。

わざわざ正規の値段で購入してまで
読むほどのモンではないです。

文体は読み易かったけど
中身がどうも・・ってことで
「下の上」かな。

結婚を前にした「ビミョウな女心」
という奴は、比較的よく書かれていたと
思います。(あくまで男からの視点ですが)

ヒロインのデジャブ現象の謎は
かなり無理があった気がする。
それでもそんな真相を理詰めで
解き明かすことのできる、
主人公の親父には
もっと活躍してほしかった。
そうすれば結構面白い本に
なっていたと思う。

惜しい。



「他人のプライバシーを自分のそれと区別することの
 出来ない欠陥だらけの感情プログラム」

「プライドの高い人間に
 仲人口を頼んではいけない」

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2007年05月29日

「チューイングボーン」大山尚利

まいどおなじみ
「角川ホラー文庫」の一冊です。

チューイングボーン.jpg

<あらすぢ>
 “ロマンスカーの展望車から三度、
外の風景を撮ってください―”
原戸登は大学の同窓生・嶋田里美から
奇妙なビデオ撮影を依頼された。
 だが、登は一度ならず二度までも、
人身事故の瞬間を撮影してしまう。
そして最後の三回目。登のビデオには
列車に飛び込む里美の姿が…。
 死の連環に秘められた恐るべき真相とは?

「第12回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作」
なのだそうです。

つまらなかった。
何度か挫折しそうになったもの。

PONがホラー話を読むときは
感情移入した主人公の
ホラー体験にどきどき。
そして彼とともに、コトの真相が
次第に明らかになる段取りを楽しむ。

この作品の主人公「原戸登」は
大学まで出ながらフリーターに
甘んじている、少し引き篭り気味な奴。
貴君の、小説中でぶつぶつ言う
ひねくれた世界観なんか
はっきり言ってどうでもいいわけですよ。
行動なりなんなり起こして、
早いとこ話を進めてくれって
切に願いながら
(中盤までは半ば怒りながら)
読んでました。

文学に「エンターテイメント」
(≒わかりやすい)
は不要なのだ!
と思う方なら読んでもよろしいかと。

作者が変わった表現を作品で試み、
それを読み込めない自分が馬鹿なのか?
理解しづらい言い回しを
わざわざ書き連ねることで
悦に入る作者がヘンなのか?
けっこう微妙なところ。
京極夏彦に近い。
主人公も文体も「息苦しい」ので
時代の底辺層に生きる閉塞感は
うまく表現できていると思うが。

自分にとって定義がいまいちだけど、
「純文学」という分野は
わかる人間にだけわかればよい
難解な文体と思索こそが高尚として
わからない人間は排除して
自己完結しているイメージがある。
だとしたら、この小説は
「ホラー」というよりは「純文学」に近いと思う。

確かに「文章力」は有るかもしれないけど
「面白い小説が書けるか」とはまた別。
PON的スコープでは下の中。

林真理子はこの小説のどこを読んだんのだ?

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ネタバレ
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2007年05月21日

「ジュリエット」伊島りすと

「肉体は死体となった
 ・・雨水に溶ける。消滅する。

 −けれど。」


角川ホラー文庫シリーズお次は
「ジュリエット」伊島りすと氏です。

<あらすぢ>
 日本ホラー小説大賞。第8回大賞受賞作。
沖縄近辺と思われる孤島に、主人公親子が
やってくる。島にはバブル期に建設され、
ついに開業することのなかったゴルフ場があり、
主人公は管理人として住みこむことになった。
島ではタブーとされる「水字貝の魂抜け」を
家族全員が目撃したことをきっかけに、
彼らの周囲には不可思議な現象が起こりはじめる。


文体はたいしたもの。
この作者の経歴は調べていないが
新人とは思えない。
同人誌か、自分のHP上か、
はたまたラノベあたりで
細々と書いていたようなうまさがある。
しかし話は・・というと、
まあ一度読めばもういいかな?といった程度。

ホラー大賞に応募するから
とってつけたような「ホラー」「グロ」シーンが」
あったり。

一応、キーである「水字貝」参考までに。↓
スイジガイ



PON的スコープは
下の上。

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以下は半分ネタばれで。
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2007年05月11日

「初恋」吉村達也

「角川ホラー文庫」シリーズより。
「初恋」のご紹介です。

<あらすぢ>
職場結婚をし、平凡なサラリーマン生活を
送っていた三宅の前に、ある日突然、
中学校の同級生だった女性が現れた。
十六年前、一度だけキスをした相手である
彼女の愛が再燃したとき、恐怖の日々が…。

吉村達也氏の作品は2〜3作品を
これまで読んだが、今のところ
コレといってお勧めできる小説は無い。

これもね〜。なんつーか。
「コワイ」といえば「怖い」し。
自分の身に降りかかったりしたら
これほど怖いシチュエーションも無いとは思う。
けどねー。
純粋にホラー小説を楽しみたい人には
あまりお勧めできない。
単に読後、不愉快になりたければ読んでみても?

「ストーカー」なんて言葉が流行って
久しいが、昔は「ストーカー」なんて
無粋な言葉ではなく「純愛」と言ったもんだ・・

なんてうそぶいた経験をお持ちの
そこのアナタにはお勧めかも。

PONなんか単に「腹が立った」けど。
その理不尽さというか、渦中の「女」に。

けどね、何かの弾みで
「人は簡単に壊れる」モノなのです。
そんなところから
「明日はわが身」と言い切れなくも無いんだな。
この小説は。
(明日は自分が主人公に様な立場に置かれる
 かもしれない・・と言う意味合いではなく、
 誰もが小説の犯人である「女」のように
 なり得るということです。
 そこには男女の差は無く・・)



PON的スコープではこの小説の
デキは「中の下」。

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2007年04月09日

「究極の美味」雁屋哲

「究極のシェフは美味しんぼパパ」
という漫画がございましたが
この作品とは「おそらく」関係なく
縁もユカリも無いです。

国民的?グルメ漫画
「美味しんぼ」の原作者
「雁屋哲」氏の珍しい「ホラー」小説。
また、ここのところナリを潜めていた
「角川ホラー文庫」からの一冊です。

<あらすぢ>
 美食評論家 斉田は自分が中国の
皇帝として君臨する夢を度々みる。
が、いつもそれは忠義の大臣が
命懸けで用意した料理が運ばれ、
食べる寸前でさめてしまう。 
 そんなある日、斉田は晩餐会の席で
世界の超有名シェフの誰もがひれ伏す
悪魔的な魅力をもった中国人易牙と
知り合い魅かれていく。彼の導きで
斉田は「究極の美味」に近づく喜びに
酔いしれているが、それは2700年の
時空を超えた復讐の罠に
落ちることであった―。

bimi.jpg

ライフワーク「美味しんぼ」の
書きたくてもかけない「食のダークな部分」を
この小説だけにぶつけ、
「ガス抜き」をはかることで
また「美味しんぼ」の原作の戻っていった・・
そんな印象も受けました。

話としては、PONには
途中から想像がついたけど
まったく裏切ることなく
最後まで想像通りでして
それはそれで、いっそ
「すがすがしかった」です。

この小説の「キーパーソン」である
中国人「易・牙(イ・ヤー)」氏ですが
PONにとっては
ビジュアル的に「周大人」でした(苦笑)



あとなぜか「インディージョーンズ」に
助けを求めたくなったよ。

出来としては下の中。
最近、粗製濫造気味の角川ホラーシリーズ、
まあこういうものもあるってことで。
いつもの事ですけど。

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2007年01月26日

「鳥追い」和田はつ子

「角川ホラー文庫」にハマッてる。
名前の通り角川系の作家による
「ホラー」系の小説ばかりを
収蔵した文庫シリーズ。

背表紙が全部「黒」なんで
ブックオフの105円コーナーで
非常に探しやすい。
時々「光文社文庫」と間違えるが。
(こちらも黒の背表紙が多い)

ただ、無理やりホラー色の小説を
かき集めているところがあるので
当たり外れの差が大きい。

しかし、面白い小説に
ぶつかってしまったら最後。
あくまで通勤中の暇つぶしのはずだったのに
電車が自宅に到着してしまうことに
がっかりする自分が居たり。
本当に本末転倒。

ま、それとそれとして
角川ホラー文庫から
「鳥追い」 和田はつ子
を読んでみました・・が。

<あらすぢ>
食い破られた喉、貪られた臓器、
啜られた脳。女子高生の児島虹香は
ラブホテルで無残な死体となって
発見された。しかも死体に残された
体液は、未知の生物の物だった。
死を呼ぶ「お鳥様」の伝説が今、蘇る。

仮にもプロに向かってなんだが
この人、日本語がヘタだわ。
小池真理子さんや隆敬一郎先生作品のように
さくさく頭に入ってこない。

「鳥追い」ってなんだろう??
調べてみました。

むしろそのついでに見つけたヤツ
の方がが面白かった。

鳥追いには
スーパー爆音機


ネーミングがカッコよすぎ。
「スーパー」な「爆音機」ですぞ?
さぞかし「爆音」なんでしょうね。
聞きたくはないが(苦笑)

果樹園の鳥対策に
ショッカーミサイル


ショッカーミサイルですから。
東京都&幼稚園バス&ダムの水が
一瞬のうちに「毒ガス」に汚染されるのでしょうね。
なんと言っても「ショッカーミサイル
ですから。

え?小説?
何のこと(苦笑)



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2007年01月24日

「殺人勤務医」「死者の体温」大石圭

かなり前に同じ作者の
湘南人肉医」という小説を
ご紹介いたしましたが
ここへ来まして「大石圭」作品の
連続コンボしてしまいました。
まとめてご紹介します。
すべて「角川ホラー文庫」

殺人勤務医.bmp

「殺人勤務医」 大石圭
 〜この男の狂気はあまりに美しい…〜
主人公は35歳の容姿端麗な堕胎専門の
産婦人科医。人類が増えることに不愉快な
彼は若い女性を狙う連続殺人鬼になる。
そして、彼には50歳の恋人がいた。
猟奇と耽美…その外面からは、垣間見れない
2つの顔が交錯する。

・・但し妊娠中は読まないほうが良いかも
 (読まないか。フツー(苦笑))
  このあらすじ書いた人(たぶん出版社のひと)
  センス無いよね。恋人が50歳だから
  なんだってんだ?



「死者の体温」 大石圭
 〜史上最悪の連続大量殺人!〜
安田祐二は30歳。砲丸投げの元日本代表選手で、
いまはエリート会社員。ハンサムで温厚。
にこやかで職場や近所での評判もよく、
そして、次々と人を絞め殺しては別荘の庭に
埋めているのであった…。

・・作中で主人公が勤めている会社はいいなあ。
  あんなんで高給取りとは。

死者の体温.jpg

この二つは正直言って
あんまり内容が変らない。
主人公はいずれも
社会での表の顔をしっかりと持つ
淡々とした殺人鬼。
自分が悪であること、
まったく救いが無いことを自覚する
高知能、高社会性を保持しながらも
殺人がやめられない。
そんな傍メーワクなやつ。

犯人の視点からのみ物語が進む。
PONとフィーリングが合う
(内容ではなく文体が)のか
非常に読みやすかった。
多分、作者は湘南(平塚、もしくは茅ヶ崎)
在住と思われ、作中の犯人もだいたい
その辺の住人という設定。
行動範囲がけっこうPONと重なり
そんなところもPONには
この作品群をスルーできない
何かがありました・・が
やっぱり人には薦めません。



ちなみに最初に作者名を
「おおいしけい」と入力したら
IME君は「多い死刑」と
変換してくれたよ。
解っているね〜。IME君。

続きます。

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2007年01月21日

「郵便屋」芹沢準

「郵便屋」 芹沢準

<あらすぢ>
結婚をひかえ、平凡な幸福を満喫していた
萩尾和人の前に、ある日突然現れた不吉な影
―今日もまたあの郵便屋が、忘れていた
忌しい過去を配達にやってくる。
住所も宛名もない不気味な封筒を、
古ぼけた配達鞄にしのばせて…。
日常を蝕む超自然的な恐怖を丹念に描き切った、
正統派ホラーの力作。
第1回日本ホラー小説大賞佳作作品。

これはつまらなかった。
「中の下」といったところ。
正統派ホラーの力作」と文庫の
あらすじにも書いてある。
なるほど。
「正統派」であるから「力技」であり
なんも「ヒネリがない」し
更に「力作」であって「傑作」や「佳作」では
ないのである。決して。

結構びっくりしたかも。
「変化球」を待っていたら
「ヘロヘロ」のチェンジアップが
来てしまったというような。
まあ「ホラー大賞」佳作だわな(竹下風)



主人公の勤める会社の面々が
繰り広げる、際限なき「社内の噂」の輪の方が
よっぽど恐怖だ。
少なくともあんな会社では
自分は働きたくない。

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2007年01月16日

「呪怨2」大石圭

角川ホラー文庫」シリーズ連読も
いい加減、疲れてまいりましたが、
今回はこれ
呪怨2」 大石圭 です。

<あらすぢ>
 その家に関わった者は、行方不明になるか
悲惨な死を遂げると言われる「呪われた家」
ホラークィーンの異名をとる
女優の原瀬京子は、その家を取材する
テレビの特番に出演した日の夜、
交通事故に遭う。運転していた婚約者は
意識不明の重体となり、自分もまた
重傷を負い流産してしまう。
しかし、それは彼女が体験する
未曾有の恐怖の、ほんの始まりに
過ぎなかった…。
前作を遙かに凌ぐ、究極の悪夢!
映画完全ノベライズ版。

です。ハイ。
まーだやってんのか。
「伽椰子」さんは。
って感じです。

もともとのビデオシリーズを
作家が読みやすく書き改めたモノ。
さすがは大石圭さんの文章力なんで
読みやすかったですが
大石氏のオリジナル次作までの
食いつなぎ。アルバイトのような
モンでしょうかね、今回の仕事は。

そんなわけで彼的なオリジナリティは
今回あんまり感じられません。

文庫本の最後の方は「ミシン目」で
封印されており、びりびり破りながら
読みすすむのですが、正直
そこまでするほどの「オチ」でも無いんで
なんだかなぁって思いました。



ところでハリウッド版「呪怨」は
英語名「The Juon
ですが
The Junon」だと
武田 真治 とか 袴田 吉彦 
柏原 崇 とか 伊藤 英明
加藤 晴彦 かも知れない。

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完全ネタバレあり
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2007年01月15日

「ふたご」吉村達也

「だって遺伝子ってミーハーなんですもの」

角川ホラー文庫界の「赤川次郎」に
なりつつある「吉村達也」氏の書き下ろし。

<あらすぢ>
人気スターの安達真児は、美貌の妻・唯季を
殺した。資産家の娘に目をつけた彼は、妻が
邪魔になったのだ。しかし、妻にはユリという
名前のふたごの妹がいた。しかも彼女は、
瓜ふたつのレベルを超えた完全同一体。
その信じ難い事実を安達に告げた唯季の父は、
ユリとの再婚話を持ちかけてきた。半信半疑の
安達は、旧友の遺伝学研究者・村田和正を
訪ねるが、そこで衝撃的な仮説を示される。
染色体の世界に秘められた人類解体の設計図が
明らかにされる驚愕のラスト!

物語のラストが果たして「驚愕か?」と
言われると疑問が残るが。

「一卵性」と「二卵性」の違い。
我々が、日ごろ当たり前に思っている
「双子」と言う存在について
生物学的(遺伝子学)に改めて
「解かったような気持ちにさせる」本。
こんな話にでも出会わない限り
知りようも無かったであろう
「双子」に関する知識、
さらには「自己の存在」とは
「実在」とは?なんて哲学分野も
理解したつもりになれる。

人間が聞いている音は
耳にあるアンプの役割をする器官によって
22倍に増幅されている・・という
無駄な知識には感心した。
(騒音まみれの我々だが
 実は、かなりサイレントな
 世界で生きている)

物語の半分は、実際にある「双子の研究」とか
「遺伝子学」といった学術研究本の内容を
作者が解かりやすく書き下した上で
作中の登場人物に、状況に応じて
適度に話させている感じ。

単なる「軽薄馬鹿な色男」の主人公や
役所をフツーに早期退職したに過ぎない
「義父」が、時折すごいレベルの会話を
する科学者に平気で突っ込みすら
入れているあたり、凄いといえば凄い。

それから・・
この人が書く「女性」はPONにとって
ちょっと違和感がある。PONもそんなに
女性経験があるわけではないが
そんな言い回しはしないだろ?といった
「男」が考えた「女性」が結構
出てくるのにはちょっと。
(この作品に限らず)

遺伝子が、これまで営々と人類を発展させてきたこと、
そして、いよいよそのプロジェクトの方針変換を
至ることになった目的は、いまいちだったが
その発想(発展から集約へ)は面白かった。



吉村氏の作品は
一応、事件の原因をしっかりと書いてくれるから
(原因を納得できるものであるかどうかはさておき)
その点は好きです。
まあ、100円ならば買ってもいいかも。

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2007年01月14日

「美しき拷問の本」桐生操

「角川ホラー文庫」の嵐は
続きますよ。
今回はこれ「桐生操」氏の
「美しき拷問の本」です。

<あらすぢ>
断頭台の露と消えた悲劇の王妃たち、
魔女狩りの犠牲となった女たち、
ドラキュラ伯等の暴君たち…。
ギロチンや火あぶりなど、
歴史上名高い拷問・処刑方法をも詳しく収録した、
めくるめく戦慄の拷問世界。

人類の馬鹿さ加減と、
結局、「神だの仏だの」は
人類のためにいるわけではないんだ、
ということの再確認をして終了するのみ。

こんな本の内容よりも
「桐生操」氏が「女性二人の共同ペンネーム」
であることを知ったことのほうが
まだなんぼか「物を知った気が」した。

詰まらん。としか言いようがない。
話も聞いたことあることばかりだし
「ムー」関連とか
「世界の怪談奇談」とか
そういった類のオカルト本の孫引きを
一冊にまとめてみました・・
そんな感じです。
せっかく女性二人で
パリにまで留学、物書きをしているなら
向こうの原典を探し出してきて
翻訳&紹介するくらいまでやってほしい。

このレベルの内容ならば
ネット上で、その筋の方のHPのほうが
よほど充実しとるわ!



この本を読むことが
まさに拷問でしたって
ことでひとつ。
下の下。

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2007年01月09日

「レテの支流」早瀬乱

「記憶の忘却と死者。そして死者の復活。ありえない・・」

「角川ホラー文庫」より。
早瀬乱氏の「レテの支流」です。

毎度、どこかでの105円購入。
(買い取り価格は10円)
まあ、90円の期間無制限
長期レンタル本だと思えば腹も立ちません。

<あらすぢ>
その水を飲むと過去を忘れてしまう
忘却の川・レテ。怜治はS大医学部で
脳を研究している友人、山村が記憶を
消去する装置を開発中だと知り、
自分の記憶を消す決意をする。
それは一世を風靡したバンド「レテ」の
ボーカルとして活躍した栄光の二年間の
記憶だった。だが、過去と決別した怜治に
連鎖するように、次々と奇妙な出来事が
起きる!
 前代未聞のアイデアと圧倒的な
ストーリーテリングで読者を魅了する
驚愕の記憶ホラー。
第十一回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。
(「BOOK」データベースより)

レテ.jpg

面白かった。
話がどの方向で決着つくのか。
全然わかんない。
ハッピー?バッド?
結局原因は
心霊?宇宙人系?化け物?サイコ?SF?
早く見極めたくなるノンストップな面白さはある。

作者が小説を書く上で
思いついた壮大な「ネタ(オチ)」を
いかに文章として落とし込むか?
無理矢理とはいえ、いかに理屈をつけてゆくのか?
小説家の文章能力や知識量によって
毎度、そのあたりの手腕が試されるものだけども。

作品中で、主人公の友人である科学者が
「自分は科学者なので、こんなバカな話を
 唱えたくないのだが、「仮説」というよりも
「たんなる話」として聞いて欲しい・・と
しつこいほど前置きしたあとで
作品世界で起こった怪現象について
見解を述べるシーンがある。
「なんで?と言われても実際に世界が
 そうなっちゃってんだから仕方ない!

と言う感じの、素敵な強引さで押し切っている
あたりはさわやかですらあり、苦笑した。

他にも自分から見ても「そんなのあり?」と
いった強引さが結構あって
典型的な理系SFマニアあたりが
細かいところを突っ込み始めたら、
穴だらけなのでしょうが、ストーリーに
ついてゆくのが精一杯のPONには
充分楽しめました。

物語のキモになる、作品世界のロジックを
きっちり把握しようとPONは必死でしたが
その割に作品にあまりストレスを感じなかったのは
新人作品なのに、文体が読みやすかったからでしょう。

例えば「クローン技術」とか「人の脳」とか
その辺の技術が暴走すると、
「自己」と「他」の「境界」を
ぶっ壊す事になりかねない。

作品のような結末が待っているから
止めよう、とかそう言うんじゃなくて
「人が人であるために」
絶対、そのままにしておいた方がいい部分
(神の領域と言ってもいいかも)
は確かに存在し、それはそのままの方が
いいんだろうな。

中の上。
けど・・これ「ホラー」かな?

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以下は完全にネタばらし(見ないでクダサイ)
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2006年12月30日

「獣の夢」 中井拓志

「この世の災いをばら撒いたパンドラの箱、
 最後に残ったのは、なんだか知ってます?」
「希望?」
「いいえ「予兆」です・・・
 「希望」は意訳に過ぎない」


<あらすぢ>
 富山県宇尾島市氷上小学校。
一九九五年八月。この学校の屋上で
衝撃的な事件が起こった。六年生の
児童二十三名が日没を待って夏休みの
校舎に侵入。ふざけあうなどしている
うちに児童の一人がコンクリートに
頭部を強打、死亡するという事故が
発生。他の児童たちは所持していた
ナイフで遺体を損壊。その一部を
屋上から投下した。―そして九年後…。
衝撃の書き下ろし最新作。

「怖い」と言えば怖いが
いつもの「角川ホラー文庫」のように
いわゆる「超神秘的な」モノに
主人公達が右往左往、ワー、キャー・・
という展開を期待すると
ちと肩透かしを食う。

かなり実験的小説かも。

読み進めると、この話は果たして
「サイコ」モノなのか、
題の通り「バケモノ」系なのか
それとも超自然系?ミステリー?
何処に落ち着くのか
さっぱりつかめず、その不安定感が
怖さにも繋がっている気がする。

それから文体も多少変わった書き方で
自分には国語の勉強不足で
うまく書けないが
なんと言ったら良いのか
登場人物のモノローグが
いきなりセリフとかぶっていたり
セリフの「」(かっこ)外にも
セリフらしきものが続いていたりして
「このセリフは誰が言ってんだ?」
なんて慌てて文脈を追う、なんてことも。
ちっと読みにくい。

この技巧自体は、話の筋とは直接的に
関係なさそうなので
まあ、神経質にならずともOKだと思う。

けものゆめ.jpg

以下は、多少ネタバレ。

ネットこそは内弁慶のオンステージ。

古くは「一億総白知化」
そして「一億総評論家」と
誰かが表現したが
もはや「一億総オレ様」の時代である。
うまいコト言うね。俺。

何を隠そう、こういう所で
何の見返り真無く、つぶやき続ける
自分もその一人だ。

かつては相互になにも連携がとれぬまま
個別に朽ち果ててゆくままであった
社会から見たいわゆる「非適合者」達は
ネットにより繋がったそのとき
古の小説「人間以上」のように
「人間以上」の能力を持った
怪物に変化する。

言葉は怖い。

その言葉を安易に使い捨てる
ネットユーザーが怖い。

「祭りの対象を欲しがる大衆の無意識」が怖い。

何の展望も無く、ただ脊髄反射だけのような
感想だけで「報道」をするマスコミが怖い。

異端を許さず徹底排除する
ネット文化(日本国民)が怖い。
(平気で「氏ね」とか「ヴぉけ」とか
 書けるヤツが居るもんなぁ)

それ以上に教育関係者には
「ギャングエイジ」と囁かれる
小学校高学年の世代の
心理的不安定さ。自分の胸に
手をあて、改めて考えると結構怖い。



「角川ホラー文庫」
文庫: 285ページ
出版社: 角川書店 (2006/01)

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2006年12月17日

「夏の滴」桐生祐狩

PONは通勤時間が結構あるもんで
ブックオフの100円文庫コーナーは
素敵なお友達です。

最近ハマってるのが
「角川ホラー文庫」シリーズ
イイですよ〜。
「はよ着け目的地」が
「もう着いちゃったのかよ!この電車」に
変わりますから。

当たり外れも多いんですけどね。
今回のは当たりでした。

夏の滴.jpg

<あらすぢ>
僕は藤山真介。徳田と河合、そして
転校していった友達は、本が好きという
共通項で寄り集まった仲だった。
町おこしイベントの失敗がもとで転校を
余儀なくされる同級生、横行するいじめ、
クラス中が熱狂しだした「植物占い」、
友人の行方不明…。混沌とする事態のなか、
夏休みの親子キャンプで真介たちが
目の当たりにした驚愕の事実とは!?
子どもたちの瑞々しい描写と
抜群のストーリーテリングで全選考委員を
うならせた
第八回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。

ホラーを求めている読者には
この「あらすじ」読んでも
なんかツまらなそう・・とか思いませんか?
最初は自分もそうでした。
子供が主人公の作品には
あまりいいのがないし。

読み始めは「ぼくの夏休み」みたいな
地方都市を舞台にした
少年少女の夏の成長物語
だったんだけど・・
途中からは読むのやめようかな、とすら
思ってたくらいなのに
最終的にはトンでもない方向に
話が暴走してしまった。

少年の瑞々しい語りがつむぎだす
彼らの生活に、PONも主人公の少年に
感情移入したいのに、したいのに
後一歩のところで
この少年は「クソ餓鬼」と化す。

原因は折につけ出てくる
八重垣という少女への壮絶な「イジメ」。
止めないだけでなく
それに加担する事に
何の疑問も持たないあたり、
それまでがの描写が、
知性を感じる小学生であるだけに、
非常にアンバランスで
奇妙にリアルな「小学生」が
うまく描かれていると思った。

中盤以降、
「この作者はどのように話の収拾を
 つけるつもりなんだろう?」
と、
残ページと相談すらしてしまいましたよ。
だけに、ラストの力技はもう笑えました。
リアリティーとか細かいところでは
突っ込みどころ満載ですが
「角川ホラー文庫」ですから
楽しめたことでヨシとしましょう。

主人公に陰日なたと付き添い、助力してくれていた
ある登場人物がラスト近くで主人公に言います。
「残酷な子供たち。わたし、
 あなたたちのことが大っ嫌いなの」

この一言こそ作者は書きかったのかもしれない。

誇り高き少女「八重垣」さんの生き様
小説で、ぜひ出会ってあげてください。

日本語としては読みやすかった部類に入るよ。



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<以下少々、ネタバレ>
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2006年12月12日

「弟切草」長坂秀佳

「角川ホラー文庫」(KHB)
読破シリーズは続きます。

「弟切草」 長坂秀佳

<あらすぢ>
弟切草…その花言葉は『復讐』。
ゲームデザイナーの公平は、恋人
奈美とのドライブで山中、事故に遭う。
二人がやっとたどり着いたのは、
弟切草が咲き乱れる洋館だった。
「まるで俺が創ったゲームそのものだ!」
愕然とする公平。そして、それは惨劇の
幕開けだった…。
 PlayStation版話題のゲームを
乱歩賞作家の原作者がオリジナル小説化。

「あらすぢ」には
「惨劇の幕開けだった・・」
なんて思わせぶりに書いてありますが
結局、この作品に「惨劇」なんてあったのかな?
最終的にひどい目にあった
方々はほとんど「自業自得」だし。
仕方がないですけど。
ゲームの小説化作品ですから。

そもそも原作となったゲーム「弟切草」自体
「サウンドノベルゲーム」のさきがけとして

「話に理屈なんかないんだよ。
 とにかく主人公(プレイヤー)が
 怖がってくれて最後に無事に
 脱出できればいいの!
 俺らは「電子お化け屋敷」を
 作りたかったんだ
から」

というゲームデザイナーの開き直りが
聞こえてくるようなゲームだし。

作者の「長坂秀佳」氏もあとがきで
「ゲーム未プレイの読者」でも
「ゲームが大好き読者」でも
楽しめる小説を目指す!という
意気込みで書き始めたと
明らかにしているが

そのコンセプトこそ
ひとまず成功していると思うけど
そういう欲張りな作品に
結局付いて回ることになる汚名があって
要は「どっちつかず」な小説。

読ませるし、それなりに面白いが
怖くはないし、読後に何も残らない
不思議な小説




デキは「中の下」かな。
熱狂的な「オトギリ」マニアならあるいは。

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2006年12月08日

「感染」塚橋一道

PONの「ホラー小説」連読は
果てしなく。

角川ホラー文庫(KHB)より
「感染」塚橋一道

<あらすぢ>
 その病院は建物の老朽化に加え、経営危機から
薬や備品が圧倒的に不足している状況が続いており、
多くの患者が、生死の境をさまようことが日常と
化していた。医師や看護師たちの精神と肉体も
限界に達しようとしていた頃、些細なことから
医療ミスによる死亡事故が発生する。
 外科医の秋葉と内科医の魚住は保身から事故の
隠蔽を決断するが、そんなとき内蔵が溶け始めた
奇怪な急患が担ぎこまれてくる…。

<以下、軽くネタバレ>
なんつーか。そういう真相がアリなら
この日本に感染する人間が
果たしてどれだけ残っているだろうか?
ってことですよ。
少なくとも「ポンギヒルズ」族とやらに
感染者はおらんでしょう。
経営難により逃亡した院長にこそ
しかるべき「感染」があって
よいところなんですがね〜。

すんません。
ほとんどネタバレでした。

もともとはVシネマ感覚で作られたような
「ホラー映画」
の小説版ですので
ビデオを見て、医療系ホラーのグロさを
ビジュアル面から楽しむのが正しい作品の
楽しみ方なのかもしれません。

デキは「中の下」
物理的にも薄いし。



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2006年12月07日

「そして、またひとり・・・」幸森軍也

「角川ホラー文庫」(KHB)シリーズ
は続きます。恐怖の連鎖は続くのです。
ほほほのほ。

「そして、またひとり・・・」幸森軍也

<あらすぢ>
 百瀬貴彦、百瀬の妻・朋美、薬袋和久、
八木沢延明の4人は大学時代同じサークルに
属していた。卒業後10年ぶりの再会を機に
家族連れでキャンプへ出かけることになるが、
なれない地理での検問による迂回や、
天候悪化のための事故など、アクシデントが相次ぎ、
ついには水遊びをしていた八木沢の息子・貴史が
川に流され命を落としてしまう。楽しいはずの
キャンプが霧のなかで悲劇にかわっていく―。

・・なんなのか???
結局作者は何が言いたいのか?
書きっぱなしこそが恐怖なのか?
確かに「読者」置いてきぼりは
恐怖と言えるかもしれない。

リングシリーズのような
最終的にすべての真相が
理詰めで明らかになる
ホラーというのも、それはそれで
行き過ぎだとは思うが

まったく理由が最後まで
明らかにされないホラーというのは
果たしてどうだろう?
それはミステリー小説界において
「実は主人公が犯人」というぐらい
結構「タブー」なのではあるまいか??

それが認められるならば
「ホラー事象」っぽいエピソードを
単に並べて語るだけで
結局主人公たちが遭遇した出来事は
なんだったんでしょうね〜?
という小説でいっぱいになるでしょう。

作者には反省を求めたい。
文体は比較的読みやすかったけど
その「ホラー」をなめている作者の姿勢が
大いに減点。「下の上」

実はこの文庫は2部構成になっていて
表題の「そして、またひとり・・・」の他に
美人大学生をストーキングする
男の物語「闇の下」がある。

本編「そして、またひとり・・・」
に出てきた登場人物の
惨劇に巻き込まれる前の大学生活が
描かれているようでしたので
本編のアンサー小説なのかな?と
勝手に期待していたのですが

結局、なんの因果関係も
無かった
ようです・・。
(改めてよく読んでみたら
 微妙に名前が違うし?)

うんもー。なんなの?この小説。



それから、コレは関係ないけど
ホラーに限らず、小説に出てくる
人物名ってリアリティが無いよね。
百瀬・薬袋(なみい)八木沢だよ。
なるべく読者に同姓同名が居ないように
わざと避けてんのかな。

そだ。
ホラー小説で
登場人物名が買った本によって
ランダムに変わっていたら
結構面白いかも。

その中の一冊には
自分の名前が使われていたりしたら。

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2006年12月06日

「死者はまどろむ」小池真理子

PONのどとーの「ホラー小説」
連読は続きます。

同社が出す漫画よりも
とかく存在感が薄い「集英社文庫」です。
いつもの「角川ホラー文庫」(KHB笑)
シリーズではありません。念のため。

「死者はまどろむ」 小池真理子

<あらすぢ>
 美しい自然に恵まれ、村人は信仰心の
厚い人ばかりという、その名の通りの
「夢見村」に別荘を持つことになった
作家の間宮一家。それ以来、崩壊しかけて
いた家庭は復興し、全てが上手く
行くようになる。だが、ある日一家は、
謎の葬列と共同墓地を目撃してしまう……。  

一見幸福な日常生活に、
恐怖は足音を忍ばせて這い進む。
現実世界でも恐怖というものは、
実は常に表裏一体。

以前に「墓地を見おろす家」の
ご紹介
もしましたが
あの恐怖(モダンホラー)を再び、と
同じ作者のこの作品にトライして
みました。

(以下少々ネタバレ)
うーーむ。作品後半で
キーパースンが
結構ウェルカム的に真相を
明らかにしてくれるから
(それが手なのだけど・・)
そういう意味では「墓地〜」よりも
恐怖心は薄らいだかなぁ。
もっともそこへゆくまでの
ストーリー運びは
さすが「小池」さんで
非常に読みやすく、ホラー小説にありがちな
もったいぶった書き方で感じる
ストレスもない。

けどやっぱりかわいそうなのは
義妹のボウイフレンドだ。
視界が悪いので
想像力に頼るしかない
声だけは聞こえる「惨殺」シーンてのは
本当に気色悪い・・がPONには
ジャッキーチェンの昔の映画「木人拳」の
木人がボウイフレンドを
いたぶっている様に思えて
怖いやらおかしいやら。

オチは「それならそれで」
といった感じです。
デキは「中の上」かな。



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2006年12月04日

「処刑列車」「復讐執行人」大石圭

昨日に引き続き・・ですが

角川ホラー文庫(KHB)より
「処刑列車」 大石圭

処刑列車.jpg

syokei1.JPG
コレが「処刑列車」の舞台になった
「ダブルデッカー電車」

syokei2.JPG
この小説を読んで以来
このタイプの電車に乗るのが
ちょっと怖い。

あらすぢにもあったけれど、この
無差別な悪意
これが結構重要なキーワード。

それから大石作品全般に言えるんだけど
惨劇の「原因」が登場人物の
生まれる前にまで遡ることが多く
もし現在妊娠中の女性がいらっしゃったら
いろんな意味で彼の作品を
今は読まないほうがよいと思う。
それは「胎教に悪い」とか
そう言うのよりも単に
「妊婦の心のありように悪い」から。
・・まあ「胎教に悪い」でいいや。

syokei3.JPG
ダブルデッキ(二階建)ですから
車内はこんな風です。
ここであのような惨劇が??

昨日も書きましたけど
ちょうどこの本を読み始めたとき
「茅ヶ崎〜平塚」間を
PONの乗る電車が走行していたモンで。
こわいこわい。
ホラーファンにはお勧めです。
あと湘南地区にお住まいの方も。



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角川ホラー文庫(KHB)より
「復讐執行人」 大石圭

復讐執行人.jpg

<あらすぢ>
 香月健太郎は36歳。6つ下の妻と5歳と6歳の娘たちと
4人で横浜の郊外の住宅街に暮らしている。
明日からゴールデンウィーク、家族旅行でバリ島へ行く
という夜に、その事件は起きた--。

うーーん。
相変わらず読ませるのがうまい。
面白かった。
(反面、割とあっけなかったけど)

作品中にて歴史の女教師が言うセリフ。
「復讐からは何も生まれません
 それはただ憎しみの連鎖を生むだけです」

それは「パレスチナ問題」や「イラク情勢」を
見るまでもなく、おそらく人類の真理なのだろうが
もしPONの身辺にこんなことが起きたら
多分自分は人が変わる。
絶対に復讐するだろう。
「憎しみの連鎖」やら「歴史の真理」なんて
クソ食らえだ。

「復讐執行人」とは結局
誰の事を指すのか?
それが明らかになるのも
この作品における「ミステリー」のひとつ
かも知れない。

劇中の唐突に出てくる
「中年の娼婦」の存在と描き方が
ちょっと浮いていた気もするが
まあ許容範囲。
あと主人公の「妻」の作る料理が・・
こちらもちょっと浮いてる。



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2006年12月03日

「処刑列車」大石圭

「角川ホラー文庫」より。

syokei.jpg

<あらすぢ>
 朝のラッシュアワーを過ぎた頃、東海道本線、
小田原始発・東京行きの『快速アクティー』が、
茅ケ崎・平塚間の鉄橋で突如停止した。
 何者かによって乗っ取られたのだ。
『この電車は彼らが占拠した』。自らを「彼ら」と
名乗る犯人グループは運転手と車掌を射殺し、
すべての乗客を一部の車両に閉じこめた。
そして、殺戮が始まった―。
 無差別な悪意が暴走する戦慄のホラー。

syokei1.JPG
作品の舞台となった「列車」は
多分これ。

いやぁ・・。
読まなければ良かった。
非常に陰鬱になります。
いわゆる「大人の知恵」もしくは「事情」で
「そこはそういうことなんだ」と
社会の大部分の人達が
暗黙の了解をしているナーバスな
部分を敢えてほじくり返してしまった
事から起きる物語。

社会的に言えば下層に位置する
「一般民」達の
声にならない絶望、怒り、悲しみ。
いつの時代にも、そんな人間は
一定数存在するものだが
その凶暴なパワー(怨念)は
ほとんどの場合、個別に踏みにじられ
他の人々に向くことも無く
いつしか忘れ去られていく存在だった。

が、「ネット」という媒体が登場した時
個別に消えるはずだった怨念は融合し

純粋な悪意

となって炸裂する。

自分達をこの境遇に追いやった
漠然とした顔の見えない社会に
復讐する。

syokei3.JPG
ダブルデッキの車内は「血」に染まり
「鉄」の臭いが充満した・・はず。

犯人達には結構腹が立った。

「なぜ私が??」
単に「運が悪い」だけで
この世に出られなかった「彼ら」は
「生きとし生ける」すべての生命体を
恨み、根絶する「権利がある」と
彼らは決意表明をネットでアップしている。

百歩譲ってそういう権利もあったとしても
その根絶する権利とやらを
「彼ら」は犯人達に譲渡する
権利はさすがに無い。

犯人はいろいろと理由を述べていたが
結局、同情することもできなければ
納得もできない。
狂った彼らが勝手な理屈で
我々に危害を加えるなら
我々も彼らに抵抗(排除)する権利がある。

「彼ら」は単に狂っているだけだ。



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