2019年06月20日

「完全なる首長竜の日」 乾緑郎

「完全なる首長竜の日」乾緑郎


このミステリーがすごい!
(このミス)受賞作品。
選んだ理由はただそれだけ。

あらすぢ
少女漫画家の和淳美は、自殺未遂を起こし
意識不明の弟・浩市と、「SCインターフェース」
という機器を通じてコミュニケートする
最新医療技術「センシング」により、対話を
続けている。浩市がなぜ自殺を試みたかは
不明であり、その原因を探らなくては、仮に
浩市が意識を取り戻したとしても再び自殺を
繰り返す恐れがあると、担当する精神科医
・相原から言われていた・・。

************************

うーーん。
またこのパターンで申し訳ないのですが
つまらなかった。

なんだろ、この人の文の書き方が
ジブンには合わなかったのかもしれない。

以下少々ネタバレ。


うる星やつらなんかでもおなじみ?
「胡蝶の夢」がベースなんですけども。
ゆめかうつつか、ってヤツ。

むしろ、主人公の漫画家の親戚で
ラーメン屋ジジイが出てくるのだが
こいつが非常に悲しく(敢えて書くが)
むなしい人物として描かれており、
こやつの一代記を読んだほうがナンボか
よかったかもしれない。
そんなの読んだとしても
どよーんとした
読後感しか残らんだろうけどね。

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2018年04月20日

「Q&A」恩田陸

「Q&A」恩田陸

この人の小説は「月の裏側」を
読んだことがあるけれど、
アレよりは読みやすかったかな。
面白かったとは思うけど
読後には特に何にも残らなかった。

あらすぢ
これからあなたに幾つかの質問をします。
ここで話したことが外に出ることはありません――。

2002年2月11日(祝)午後2時過ぎ、都内郊外の
大型商業施設において重大死傷事故発生。
死者69名、負傷者116名。未だ事故原因を
特定できず――。次々に招喚される大量の被害者、
目撃者。しかし食い違う証言。店内のビデオに
写っていたものは? 
立ちこめた謎の臭いは? ぬいぐるみを
引きながら歩いてた少女の姿は? 
はたして、これは事件なのか、
それとも単なる事故か? 
謎が謎を呼ぶ恩田陸ワールドの真骨頂!

***********************

スーパーで原因不明の事件が発生。
主に老人と子供を中心に70名近くが
死亡する。読んでゆくうちに発生理由が
おぼろげながら見えてくるけど
ズバリの記述はないままに終わる。
だが重大事件が引き起こした波紋は
生き残った周囲の人間達の生活を
ザワつかせてゆく。

ネタバレですが、一応、PONが理解した
事件の原因を書いておきます。

今回、起きた騒動そのものは
さほどフシギな話じゃあない。

休みの夕方でお客のほとんどは
車で買い物に来た周辺住民。
平和なはずのショッピングモールで
よく解からんけどオレ(わたし)の周りが
急に逃げ出した!オレも逃げなきゃ!!わー!
多くの人はそんなナガレに身を任せるしかなかった。
突発集中大パニックに。

集団がヒステリー暴走を起こした結果、
弱いものは取り残され、
老人や子供を中心に圧死。
それは出入り口近辺だったり、吹き抜けの
ロングエスカレーターからの落下だったり
将棋倒しだったり、群集に踏まれたり。

小説は会話だけで成り立っており
現場のさまざまな場所にいた
(あるいは関係者)5〜6名からの
聞き取り調査が続く(だからQ/A)
ところが人によって証言内容が違う。

証言によれば、モールのかしこで、
パニックのキッカケになったと思われる
怪しい人に遭遇している。
証言者はみんな「あの時は
よく解かりませんけど、今思えば、
あの人がトリガー(原因)だったんじゃ
ないですかね・・」と話す。
ところが各々が話す”怪しい人”とは
時間も場所も性別服装すらもバラバラなのだ。
偶然、へんな人が同時多発ったとか?

結局、宇宙人や超能力や心霊現象といった
オカルト系じゃなかったみたい。
小説が指摘しているそれらしき原因としては
どうも”国の研究機関が極秘に実施した
大衆操作実験”ってことらしい。

この小説を、おそらく素直に読み解けば、
そんな説に落ち着いてしまう。
あくまで”噂”レベルでしか言及されていませんが。

読み返しはしないかな・・。

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ラベル:Q&A 恩田陸
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2018年03月11日

「天空の蜂」東野圭吾

「天空の蜂」東野圭吾

原発に関してネガティブな発言や
表現をしたら、たちどころに
有形無形の圧力がかかるような
かなり窮屈な時代であった
311大災害前に書かれた作品。

あらすぢ
奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が
満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、
稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質
にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の
決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき……。
驚愕のクライシス、圧倒的な緊追感で魅了する
傑作サスペンス。

************************
さすがの東野作品。
先を読み進めたくなるし
実際にさくさく読める。

物語の前半、主人公の同僚の子供が
事件に巻き込まれるところは
やや余計な気もするが
それは作品の映画化も視野におき
物語の平坦さを避けるため
とりあえず入れておいた
スペクタクルシーンと解釈した。
作者の戦略なのだろう。

「子供は蜂に刺されて
 初めて蜂の恐ろしさを知る
 今度のことが教訓となることを祈る」

「沈黙する群集に原子炉のことを
 忘れさせてはならない。
 常に意識させ、
 そして自らの道を選択させるのだ」

天空の蜂 (講談社文庫)
天空の蜂 (講談社文庫)

こっから一部ネタバレしてしまいます。

地震も大変だったけれど
それ以上に津波とフクイチの悲劇の事を
俺たちは忘れちゃならない。

この語はもちろんフィクションで
犯人は原発と原発を巡る人と組織といった
すべてが、いかにいい加減で、
いかにもろいものであるか
一般大衆に教唆するためにテロを起こす。

なのに我が現実世界は
小説内容に追いついてしまった。
物語中の犯人は、志半ばで終わったため
メッセージを隅々まで送ることが
できなかったけれども、リアル世界では
犯人に代わって自然界が、思い上がった
人間に対しての教育的指導にしては
ちょっとやり過ぎじゃないか?と
言いたくなるくらいの苛烈さで
フクイチを破壊してみせて今に至ってる。

なのに自分も含め
「社会の原発に対するイシキ」というものは
正直それほど変化がないように思う。
というよりも日本人お得意の
「喉元過ぎれば・・」ってヤツだ。

こんなんじゃ、小説の思想テロが
たとえば成功していたとしても
一般大衆への影響は変わらなかったろうな。

忘れないように転記しとくけれど
南相馬のある川底。
”2万8000ベクレル”だって。
当時やってたNHKスペシャルより。

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2018年03月01日

「黒祠の島」小野不由美

「黒祠の島」小野不由美 新潮文庫

前々から気になっていた作家さんだった。
「屍鬼」の作者だという程度しか知らない。
たぶん読み始めればハマルのでしょうが
「屍鬼」のほうは
まったく手をつける気配がない。
どうも作中の人間関係を
頭に入れるのが非常に億劫な気がして。
(しかも文庫サイズで全四冊らしい)

なもんで、こっちから手にしてみた。
全1冊だからね。
なのに読み始めたら
ページをめくる手が
止まらなくなりましてね
・・いや困りました。

黒祠(こくし)とは
明治維新で日本各地の神道が
天皇を中心に国家宗教として統合された中
ほそぼそと生き残り、おおっぴらには
信仰されなくなった宗教のこと。
邪教ってことでOKかと。

あらすぢ
調査事務所を営む式部剛は、懇意にしていた
作家の葛木志保が行方不明になったことから、
九州北西部にある彼女の故郷・夜叉島を
訪れることになる。しかし閉鎖的な村人からは
情報を得ることが出来ず、一旦は島を出ようと
するが、何か異様なものを感じ村に留まる
ことにする。その後、村の医師・泰田の協力を
得られることとなったが、泰田から伝えられた
ことは「葛木志保は死んだ」という言葉で
あった。

***********************

横溝正史作品が大好きな人が
私ならこんな風に書きたい
そんな感じかな。

この主人公も、その大先輩たる
金田一耕助もそうなんだけど
そろいもそろって戦闘力がナイ。

なのに、コトの深層をつかむため
己の頭だけを頼りに
敵も味方もわからない場所へ乗り込み
地方の人のココロの闇に
ずけずけと切り込んで行くわけですよ。

当然のことながら
犯人とのニアミスもあったり
また、こんな時に限り、
紛らわしくも余計なことをする輩に
半ば逆恨みのように命をねらわれたりする。

自分の身すら守れないキャラを
主人公に設定し、悪意だらけのトコロへ
配置する構図ってのは、
探偵モノを書く人間には
けっこうリスキーなんじゃないか。
(戦闘力のないルパンって話に
 ならないでしょ)

この話の主人公の場合
幸い、島内に協力者を得ることができ
夜になれば主人公が、昼間新しく入手した
情報を元に、二人、推理合戦に花が咲く。

読んでいるほうとしては
勝手に壁にぶつかったり
勝手に解決したりしているんで
読みススメつつ
推理しなくてもヨイから楽でした。

途中明らかになる、ある
”しかけ”には
さすがに、なんでわざわざ
あのようなメンドウクサイことを
するのか?とも思ったけれど
彼女達もまた、あのような
生きている化石のような島で
育ってしまったからには
どこか”マトモ”じゃなかったのだろう。

黒祠の島 (新潮文庫)
黒祠の島 (新潮文庫)

にしても、家系図とか欲しかった。
読んでてときどき思った。
話に突然でてくるキャラたち・・アンタ誰?

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2013年11月02日

「さまよう刃」東野圭吾

「さまよう刃」

さまよう刃 角川文庫 東野 圭吾 (著)

東野圭吾作品は読みやすくていいですね。
変な書き方で読者を困惑させたり
読者に解釈をゆだねて終了ってことが少ない。
宮部みゆき作品と一緒。

村上春樹作品を敬遠しまくってるような
読解力が少ないPONとしては
非常に助かります。すみませんね、

あらすぢ
蹂躙され殺された娘の復讐のため、父は
犯人の一人を殺害し逃亡する。
「遺族による復讐殺人」としてマスコミも
大きく取り上げる。遺族に裁く権利は
あるのか? 社会、マスコミそして
警察まで巻き込んだ人々の心を揺さぶる
復讐行の結末は!?

著者からのコメント  東野圭吾

 他人事ではない
 明日にでも、この物語の『誰か』に
 なるかもしれない
 その時あなたの『刃』は
 どこに向けられるだろう?

************************

ちょうど自分に娘が生まれた頃に
こんな作品を読むタイミングと
なってしまうのは、いささか・・という。
小説とはいえ、辛い。

俺だったら、地の果てまで追いつめて殺します。
余計な会話なんかしない。
チャンスが到来したら躊躇なく。

この小説の犯人どものように
人としての教育を受けずに来てしまったバカは
確かに存在するから。
吉祥寺で強盗のために
女子大生を殺したルーマニア人少年と
共犯の馬鹿男みたいに。
根本的には更生なぞ不可能だし、
たとえ更生したって、絶対表向きだけ。
社会的に使いどころ無いって。

「少年法」とか「刑法39条」とか不要。

山口県光市の母子殺人事件なんかもそう。
オレ、被害者の男性に全面的に味方する。
あれもなんだよ
死刑反対の人権派、安田弁護士って。
あんな馬鹿を弁護するために
我らが「ドラえもん」なんか持ち出すな。
犯人のことなんか少しも思っていねーくせに。
ただ反権力のネタとして弁護しているだけだろうに。

ああ、暴走してしまった。
つまりですね
「ついカっとなった、
 殺すつもりはなかった
 今は反省している」
ってイイワケは、こと「殺人」には通用しません。
一人でも死刑。

え、自分が冤罪に巻き込まれたらどうするかって?
そのときはそのとき。
せいぜい足掻くつもりでおりますけれど、
暴論承知で書きますが
自分、冤罪に巻き込まれる人ってのは
やっぱそれなりに理由があると思ってますので。

小説の最後にははっきり言ってムカついた。
余計なことスンなよ
ペンションの女!とか
マジにそう思った次第。
全然小説の感想になってませんでした。
スマンです。

 :
 :

こう書いておいてなんですけれど
「俺が法律だ」
を認めてしまうと、
遺族側のの認識と判断力が正しいならば、
そのようなやり方もあるかもしれないが
世の中マトモな判断力を持つ奴ばかりでもないから。
先ほどPONが連呼した「馬鹿」ドモが
カンチガイから「復讐する」権利を
主張しだしたら、どうすんの?という
コワサがあるんだな。

「バカ」ほど声がでかいのも一面の真理なんで。

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2013年11月01日

「Opローズダスト」福井晴敏

「Opローズダスト」

「ガンダムUC」「亡国のイージス」
「ローレライ」の作者「福井晴敏」氏
待望の新作。

長い。文庫本3冊。
週刊文春では毎週6Pづつ連載され
書籍化にあたり、オープニングやエンディングを
書き加えたものらしい。
こういう小説は基本的には
一気に読むものだよな〜とつくづく思う。
週刊誌連載中、6Pずつ、毎週
楽しみにしていた読者って
果たしてどれくらいいたのだろうか?
大きなお世話だが。



あらすぢ
2006年10月、ネット財閥「アクトグループ」を
標的にしたテロ事件が発生。警視庁
公安四課所属の並河次郎警部補は、
防衛庁から出向してきた丹原朋希三曹と
共に調査に乗り出す。並河は朋希と共に
捜査を進めるにつれて、朋希の正体や
犯行グループ「ローズダスト」の正体、
さらには朋希と「ローズダスト」との関係や、
彼らのテロ行為の真意へと徐々に近づいていく。

************************

基本的には
「映画版パトレイバー2+ガンダム」かな。
ロボットこそ、出てきませんけど。 
イージス艦も出てきませんけど。

「ローズダスト」とは「新しい言葉」の象徴。
「新しい世代」を代弁する組織だが、
真相はテロリスト集団。
福井作品には基本である
「防衛省秘密諜報組織」DAIS所属の
工作員グループが、国(防衛省)に
裏切られたので逃走。行きがかり上
グループから外れてしまった主人公
「丹原朋希三曹」が、元親友でライバル
でもある「ローズダスト」の首魁と対決する。
で、大人世代の代表としてパートナーになる
のが「並河警部補」と。そんな感じ。

話は「古い言葉」世代と「新しい言葉」世代が
対立する構図。

なにかってーと
「ヒトの死による世直し」=革命ばっかり考える
「古い言葉」を使う世代(30代より上)
ガンダムでいえばシャア。
であれば
「新しい言葉」を使う世代は
「そんな大人、修正してやる〜」
主人公はカミーユ・ビダンである。



【組織の論理】
イチ市民やペーペーがエリート官僚のもとに
迷い込んだりでもしたら、エリート官僚は
「組織の論理」をまったく理解せず、
理解するアタマもなく、ただ気持ちの
赴くまま行動する輩を一方的にさげずむ。
(バカは黙って俺の言うこと
 聞いていればいいのに・・)

つまり、現代日本の社会体制
外交と軍事はアメリカべったり、
ただ思いつきでその場しのぎの行動、
官僚、組織は「3ナイ運動」
「決断できない」「責任取らない」「考えない」
ただ単純に、センセーショナルにしか
物事を伝えないマスゴミ・・

そんな腐ったニッポンの性根を
いちど痛烈に叩いて目覚めさせよーと目論む
「古い言葉」を使う世代(30代より上)
  VS
難しいことはよく解んないけど
「世直し」のために簡単にひと殺していいの?
西欧文明は、打ち続く戦争が市民や
国家体制が鍛えられてきた歴史があるが
だからといってそれがエライとも言い切れない。
ニッポンが「平和ボケ」っつーけども
平和ボケでも60年間、戦争は
なかったわけだから、そんな日本だからこそ
打ち出せる方向性もあるんじゃない?
「新しい言葉」を使う世代

が阻止しようとするのが主軸。

何かと言えば難しい小理屈
=「古い言葉」ばっかりならべながら
結論は「ヒトの死による世直し」しか出てこない。
そんな世代が作ったアニメが、いうなれば
「映画版パトレイバー2」であり
あの映画は結局、若い世代が
状況を阻止するだけで終わるけど、
この小説は「新しい言葉」を使う世代が
「古い言葉」を使う世代から
「そんなの青臭い理想論に過ぎない」
とバカにされながらも
より良い生き方=「新しい言葉」を
見つけ出そうと苦闘する話だった。



【対案無き否定】
父親が存在しない世界に
父親を求める甘えた国日本。

その辺はガンダム世界に通じる。

理念なき、守るものを認識していない
組織、国家が下手に「力」を持ってしまうと
結局その時になっても使いあぐねる、
それを為政者に見せようと
新しい言葉の体現者「ローズダスト」は
「状況」を作り出す。

・・話の「FinalPhaze」では
もう手加減せず、その牙を剥き出しにした
ローズダスト達。

彼らが引き起こすテロによって
状況鎮圧のため投入された自衛隊員が
戦闘する前なのに搭乗ヘリを撃墜されてしまう。
この間挙式したばかりの
新妻を一瞬思い浮かべながら。

そんな「状況」を作り出すテロリストに
「正義」など断じてない。


結局、よく回る頭と口で後付理由を
述べているだけで、ローズダスト連中の
真の目的は「復讐」したかった、
ただそんだけだ。
どんなにカッコつけても所詮テロリスト。
黙って独りで憤死していただきたい。

ローズダスト内には、世直しとか正義とか
もうどうでもよくって、リーダーに惚れたから
絶対服従、ってノリでテロ活動を行う
女テロリストも。
学生のスポーツ活動じゃないんだからさ。
キミの行動で人が死んでいるワケですよ。
そういう思考停止人間て、どこにもいるな。

あるいは「組織絶対」で、人間としてよりも
組織人としてしか動けない思考停止人間や
難しい言葉と概念、理屈に勝手に縛られて
動けない奴、こういう思考停止人間もいる。

作者は本当にガンダムが好きなんだな。
それもZガンダム。
Zの最終決戦では、これまた
信じられないことに
主人公+敵ボス2名+元シャアが
MSを乗り捨て、劇場で罵り合うシーンがあるが
それの再現。

ギレンのように一見スゴイこと言っているようだが
要はオレのために死ね、と。
ヒトの死によってしか世直しができない
所詮ローズダスト連も古い言葉の世代。

世直しなんて大きなお世話。
愚民だっていいじゃないか
世直ししたかったのなら
だったら「集まり」の方の壊滅を狙いなさいよ。
(「集まり」とは日本国の若手官僚や
 ITネット長者などが自然と集まった
 日本を右的に革新しようとする非公然組織)

最後、並河警部補は
自分の家族、一筋の希望を見出す。

ヒト、一人一人が少しずつの善意を発露すれば
世の中、まだまだ捨てたもんじゃない
、という
ごくふつーの結論。

並河警部補は
ローズダストで一番年かさの男に向かって叫ぶ。
「なんで止めなかったんだ!
 若者が逸って死を選ぼうとしているのならば
 止めるのが、俺たち「オトナ」の役目だろう!


小難しいリクツよりも
自分の心の声が「それってどうなの?」と思ったら
人として出なさいと。


とにかくローズダスト達は急ぎ過ぎた。
逆シャアと一緒だ。

いろいろ理由づけしてたけど
どんなにカッコ良い男であろうと
ローズダスト首魁の「一功」は
単に連続爆弾魔のリーダーに過ぎない。

巻末にある文春文庫エンタテイメントとして
ラインナップ紹介されている。
その中に「Opローズダスト」自身の紹介もある。
そのアオリ文句に一瞬、思考停止。

Opローズダスト 福井晴敏 上中下巻
「連続爆弾テロのリーダーと
 防衛庁官僚の因縁の対決」


ええ?文庫本3冊分も読んでしまったこの話、
客観的にはこんな数行で
まとまってしまう話だったのか!?
・・そうかも。

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2013年03月23日

「6ステイン」福井晴敏

6ステイン 「講談社文庫」 福井 晴敏(著)

ローレライ、亡国のイージスそしてターンA。
あと機動戦士UCガンダム。
福井センセの作品。

DAIS(防衛省情報局?)所属の情報員
(要は日本人側のスパイ)が遭遇する
悲喜こもごも。いや喜劇はないか流石に。

この作品や亡国のイージスに出てくる
DAISってのは、作者の創作らしいが
あそこまで行かなくとも、日本も一応
近代国家である以上、情報
(インテリジェンス)に対して、もう少し
シッカリとしていて欲しいと思う。
だから、そんな組織の存在が
我々のところにまで流れてこないだけで
他国同様、情報機関のひとつくらい
持っていると信じたい。

であるから、某元総理大臣の娘が
外務大臣やってたってのは、
今からしても何の冗談?とか思う。
そういや国家公安委員長を
左翼のバカなオバハンがやってたな。
あ・・鳩とか空缶もいた。奴らなんか
その更に上のボスやってたっけ(怖い・・)

なお、「6ステイン」=原題「Traces of Six Stains」
ステインとは
1【名詞】(コーヒー・血などによる)しみ,よごれ
2【名詞】汚点,きず 〔on,upon〕
だそうです。

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
愛する男を待ち続ける女、隠居した天才的スリ、
タクシー運転手として働きながら機が満ちるのを
待った工作員。心に傷を持ちながら、独り誇りを
抱き続けた者たちの消せない染み。あきらめる
ことを知らない6つの魂が、薄明の世界に鮮烈な
軌跡を刻む。著者が織り成す切なく熱い人間讃歌
人生を戦うすべての者へ。

************************

昼間のタクシーの運転手は仮の姿・・
しかしてその正体は?
現代版ニンジャモノのような話が続く。

現代版ニンジャモノ。
昔の「忍者」にもいろいろあって
青い忍者服を着て、ニンニンなんていう奴は
かなり奇特な野郎に属する。
当時は「草」とか呼ばれ、普段は正業を持ち
命令があった時のみ、ちょっとだけ仕事する
存在が主流。それこそ一生仕事をすることのないまま
市井の一般人として死んでゆく忍者もいたらしい。
職業なんてのは、普段からやっていないと
板につかない、なかなか世間の目を
ダマくらかせないものなのだ。

一方物語では、情報機関の工作員は
やはり、様々な事情で退官した自衛官が多いようだが
同じく警察官、中にはスネに傷がある故
罰せられないのと引き換えに、国家にいい様に
使われてしまっている輩も。
DAISのリクルーターって凄い能力だ。

ギョーカイ用語を覚えたよ。
市ヶ谷といえば「防衛省」を意味し
赤坂=CIA(アメリカ)の隠語な。

何のために戦うのか?
この国にそこまでする価値なんてあるのか?
命令だからといって本当に実行していいのか?
国のためと信じて実行したのに
その命令を出した上層部が腐っていたとしたら
そんな時、下っ端に何ができるのか?
任務と己のプライド、最後の良心、親としての気持ち。
いろんな要素を天秤にかける情報員達の物語。

6つの短編からなるこの本。

「いまできる最善のこと」
「畳算」
「サクラ」
「媽媽(マーマー)」
「断ち切る」
「920を待ちながら」

ラストに、前5話の登場人物が
集約される流れなのか?と
ちょっと期待していたんだけど
そこまでではなかった。
でも「媽媽(マーマー)」と「断ち切る」は
リンクしてます。



その代わりじゃないが、
ラストの話(920を待ちながら)がよかった。
話の中身がというより
例の彼の、あの話以前のエピソードであるらしい。
「亡国のイージス」を読んだ方は、
こちらも読んでみてください。



途中で、こいつもしかして?と
思わなくもなかったんですけどね。

工作員とか情報局とかって嫌だねえ。
一生無縁で過ごしたいものです。
(はは、スカウトなんて来たら困る)

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2013年01月21日

「悪夢のエレベーター」木下半太

悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫)
木下 半太 (著)

本とブログのパラレル小説
なのだそう。古本屋で100円だったので。

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
後頭部の強烈な痛みで目を覚ますと、緊急停止した
エレベーターに、ヤクザ、オカマ、自殺願望の女と
閉じ込められていた。浮気相手の部屋から出てきた
ばかりなのに大ピンチ!?しかも、三人には犯罪歴が
あることまで発覚。精神的に追い詰められた密室で、
ついに事件が起こる。意外な黒幕は誰だ?
笑いと恐怖に満ちた傑作コメディサスペンス。

************************

ほとんど舞台が移動せず、密室で進行する話。
さらには一応「人が死んでいる話」だというのに
重さを感じさせない、妙に軽い文体。
学生の文化祭というか、大学生の演劇サークルのノリ。
仲間内でしか笑えない悪ふざけ。

もうちょっと短ければ
お笑い芸人の「アンジャッシュ」とか
「ラーメンズ」あたりがコントにでもしそう。

それもそのはずで、どこかの演劇団の
劇作家が書いたものらしい。

ラストのドンデン返し。
気の毒に殺されることになってしまった
バーテンが、実は生きていたとか、
そういうドンデン返しを期待していたんだが
結局彼は死んでしまったようだ。

この作者はこの後

「悪夢の観覧車
 悪夢のドライブ
 悪夢のギャンブルマンション
 悪夢の商店街
 悪夢のクローゼット」

と「悪夢」シリーズを連発したらしい。

短いからすぐ読めてしまうけれど
この人の作品はもう読まなくてもいいやと思った。

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2013年01月20日

「スピカ 原発占拠」高嶋哲夫

スピカ 原発占拠  高嶋哲夫 (著)

上司からいただいた小説。
311のフクイチ事故を目の当たりにした
今となっては、原発のキョーフ感というか
なんか描写が甘い。

著者はかつて「日本原子力研究所の研究員」
だったらしく、主人公の原子力科学者
「日野佑介」に思いを託し

「原発も、いろいろあるだろうし
 事故がおきれば大変だ。
 でも自分たち科学者だって全力で
 日々研究に取り組んでいるんだから
 そう変なことは起こるはずがない。
 万が一にも原発が人類の敵になるとしたら
 悪意を持った人間が
 そういうことを企んだ時」

と、基本的に科学万歳スタンスで書いている。

311が起こらなければ、ここに書かれている
科学的なウンチクは半分も
理解できなかったろうが、さすがに今は違う。

様々な意味で、311の前と後では
原発に対する「意識」にも「知識」にも
自分に変化がおきてしまったのは確かだ。 

あらすぢ
舞台は、運転開始を間近に控えた日本最大の
原子力発電所。科学技術の粋を集めたこの
原発が武装集団に襲われた。世界が認める
最新鋭の原発が、テロリストによって脅威の
「原爆」と化したのだ。
政府首脳はこの原発の生みの親である
科学者・日野佑介に協力を要請した。
原発の絶対的な安全性と人類への貢献を
強く信じて建設に取り組んできた
日野は、自分が行ってきたことが間違っていたのかと
苦悶する。圧倒的な武力と豊富な科学知識をもつ
敵から原発を解放し、未曾有の惨事を防げるか!?

************************

いきなりネタバレします。

原発を占拠した犯人は
行き場を失ったロシア軍人ドモ
+日本赤軍
+ロシアの原子力物理科学者連
なんですけど。

黒幕の一人であるロシアの原子力物理科学者さん、
おまえ馬鹿だろ?

なんかね、彼らはロシアの原発管理の
いい加減さと危機感を全世界的に訴えたかったらしく
たまたま「馬鹿=日本の原発へのテロ」を
実施しようとするテロリストに
便乗したらしいですよ。えらいメイワク。

この小説のようなテロを起こしたかったら
腕力はあるけど馬鹿な元軍人や活動家たちじゃ無理だよと。
科学者も協力しないとね。
なのに世界的に科学者に対する扱いがヒドイじゃん?
あんま科学者ナメテッといずれコワイことになるよ・・
そう訴えたかったのかも。作者は。

主人公の科学者が
美人ではないがよく見ると魅力的とされる
グリーンピースに代表される環境保護団体の
運動家女性(しかもひと回りちかく年齢差)と、
恋仲になるという設定にはとても無理を感じた。

また、この作者は、原子力の技術知識は
詳しいかもしれないけれど、
軍事と(特に)女性を描くのには慣れていないのが伺える。

最後に、自衛隊90式戦車にロシアのロケット砲
(RPG−7「携帯式対戦車擲弾発射器」ロシア語)
を正面からぶつけると、各坐しちゃうものなのか?

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2013年01月14日

「リピート」乾くるみ

リピート 乾くるみ 著
これは某古本屋100円コーナーで
たまたま手に取った一冊。

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
「リピート」―それは、現在の記憶を保ったまま
過去の自分に戻って人生をやり直す時間旅行のこと。
様々な思惑を胸にこの「リピート」に臨んだ十人の
男女が、なぜか次々と不可解な死を迎えて…。
独自の捜査に着手した彼らの前に立ちはだかる
殺人鬼の正体とは?あらゆるジャンルの面白さを
詰めこんだ超絶エンタテインメントここに登場。

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これは面白かった。作品紹介を読むと、
タイムスリップものの名作「リプレイ」と
有名なミステリー「そして誰もいなくなった」を
基にしていると明らかにしているんで、
話の流れはなんとなく読めます。

主人公の大学生は、ある日風間という男から、
電話で地震予知を知らされる。彼の予知に
驚いた主人公は、風間が誘う「リピート=時間旅行」
に半信半疑ながらも興味を抱き、同じくランダムで
選ばれた、全く見知らぬ男女8人とともに
過去(10ヶ月前)に戻ることを決意する。

うまい話にはウラがある。
「10ヶ月前に戻った人間は全員死んでしまう」

主人公はリピート旅行の前に10か月間に
何があったかをひたすらキオクして、
やり直し(リピート)に備えた。
リピートそのものはホンモノだったのだが
そのうち、記憶にない殺人事件が起きはじめ・・
ともにリピートする人たちも
ランダムに集められた(とされる)連中なので
心から信を置ける者なぞいない。
誰が味方かなのか、敵なのか?
そもそも独り占めしていればいい
「時間旅行」のヒミツを、風間は何故
見ず知らずの他人に打ち明けるのか。

主人公は、もともと某「死亡手帳」の
夜神ライトのようなスノッブ野郎で
最初からいまいち思い入れができない。
そんな彼が、タイムスリップという力を入手
特権意識が選民意識へシフトし、
鼻持ちならないキャラに変化してゆく。
だから彼が自業自得でだんだんと
状況に追い詰めれれていっても
それが何か?という気持ちは常に付きまとう。
(何度でもやり直せると知っていから
 人を人とも思わない行動に平気で出る。
 すべては自分にとって最高の未来を
 選択するため)



ラスト、主人公の突き放し方にビックリ。
確かにその可能性は常に有る。
(この話の「タイムスリップ(リピート)」には
いろいろ制限があって決して万能ではないんです)

作者もこの主人公、嫌いだったのかも。

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2012年12月04日

「震度0」横山秀夫

震度0 横山秀夫(著)

上司からいただいた文庫。
この横山さんの本は「出口のない海」
「半落ち」「クライマーズ・ハイ」を読んだ。
この人の作品は、いずれも
登場人物の背景がだいたい出揃って
面白くなってくる・・までが割と退屈、
結構ガマン、と記憶していたが。

あらすぢ
阪神大震災のさなか、700km離れたN県警本部の
警務課長の不破義人が失踪した。県警の事情に
精通し、人望も厚い不破がなぜ姿を消したのか? 
本部長の椎野勝巳をはじめ、椎野と敵対する
キャリア組の冬木警務部長、準キャリアの
堀川警備部長、叩き上げの藤巻刑事部長など、
県警幹部の利害と思惑が錯綜する。
ホステス殺し、交通違反のもみ消し、四年前の
選挙違反事件なども絡まり、解決の糸口が
なかなか掴めない……。

***********************

で、本作も、人間関係が頭に入ってくるまでが
タイクツであり、あとから何度も読み返したりと
結構大変だった。

地方の警察署。市民を守る正義のケーサツ
であるはずなのに、お巡りさんは
キヤリア組(中央から赴任するエリート)と
ノンキヤリア、準キャリア(地元採用)と別れ
職場も、刑事、警ら、交通に庶務、んで公安とか
詳しくは忘れたけど、我々から見れば全部
オマワリさんでも、いろいろあるらしい。

ノンキャリ組なんかは人生の半分を費やし
地道にがんばって、ようやく交通部長なのに
キャリア組は、中央に戻るまでに
ハク付けとして地方赴任。しかも30もそこそこで
署長に次ぐNo2だったり・・。

各セクションの部長クラス、幹部ともなれば
官舎があってそこに一家で住むことができる。

男が出世するたびに強くなる風当たり、
ねたみに嫉妬。噂話。
それぞれに家族があり、彼らの奥さんの存在が、
そのウザさに拍車をかける。
ダンナの組織の上下関係が
そのまま奥様方の微妙な人間関係につながって
そこから生まれる人間関係のサザナミが、
時には本業を疎かにし、
おいおい、キミらの存在意義ってなんだよ?
と言いたくもなる。

セクショナリズム

「知った顔」で組織の内情にのみ目が行き
いつしか目的を忘れ、プロセスそのものが目的と化す。
日本社会の悪い癖をそのまま描いてみた・・
そんな小説。

この社会的癖が悪い方向へ
見事に作用した集大成が太平洋戦争なんだと思う。
ご存知、「陸軍」と「海軍」の衝突。
海軍は、強硬に反対して陸軍と内戦となるよりは
外に敵を求めた方がまだいい・・そういった
アホすぎる考え(したり顔で「政治」なんていう)で
破滅に向かって突き進んだ。
日本国内いたるところで権力同士が牽制し合い
理知的に事態収拾出来なかった。

目的とプロセスが逆転。
あんたら、ナニやってんだ!と。

話はちょうど阪神大震災が発生した日。
自然災害の圧倒的な状況に較べて、
舞台のN県警では、ひたすらくだらない
パワーゲームに終始する。
小さな小さな世界。数千人が現在進行形で
死んでゆくなかキャリアとか
地方(じかた・・現場叩き上げの職員)だの
どうだっていいでしょ?って叫びたくなるような。



「警察」という、正義を見せつけなきゃいけない
職場なのに、地震にも同僚の失踪にも
正面から向き合おうとする者がいなかった。
一応、主人公格である準キャリが動き出すが・・。

「見て見ぬふりの人間になってはならない」

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2012年11月30日

「となり町戦争」(小説)三崎亜記

となり町戦争 (集英社文庫) 三崎 亜記 (著)

以前に原田知世と江口洋介映画版は
観劇済みであります。

毎度の事ながら上司にもらった小説。
(人猫さん、ようやっといただきましたよ〜原作w)

あらすぢ
現代的戦争の恐怖。
ある日、突然に始まった隣接する町同士の戦争。
公共事業として戦争が遂行され、見えない死者は
増え続ける。現代の戦争の狂気を描く傑作。
文庫版のみのボーナストラック短編を収録。
小説すばる新人賞受賞作品。
(以上文庫版あらすじ)

天才現わる!? 見えない戦争を描いた衝撃作。
ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。
だが変わらぬ日常に、僕は戦時下の実感が
持てないまま。それでも“見えない"戦争は着実に
進んでいた。「清澄な悪夢」「傑作」と選考会
騒然の衝撃作! 第17回小説すばる新人賞受賞作。
(以上ハードカバー版あらすじ)

************************

わざと<あらすぢ>を二つ並べてみたけれど
ハードカバー版のほうが的確かな。
「現代の戦争の狂気」もさることながら
放置して置くと暴走しかねない
日本の政治(と行政)のアホらしさに警鐘を
鳴らしているかんじ。カランカラン。

お役所仕事や公文書のデフォルメして
アホらしさを強調するって話は別に珍しくない。

書類には、独特なお役所言葉を用いて
読むのに時間がかかる多数の文字、
引用場所が不可思議な数字をちりばめ
市民に理解してもらう気持ちハナから無い。

市民から文句が来たら、
読まないあんたが悪いのだ、と
突き放す、なんたるオヤクショ仕事。

お役所とのトラブルは、たいていの場合
腹立ちつつも、確かに役所ルールを
よく知らない自分が悪いのかも、と
無理に自分を納得させて終了してしまいがち。

それが「戦争」というダイレクトすぎな形で
自分に跳ね返ってくる。

知らない間に状況に加担させられ、
自らの知らないところで人が死んでゆく
イメージしにくい現代の戦争。

ここは公共事業として戦争をする
静かにどこか狂った世界。

なんか、おかしくありません?と読者の声をも代表して
主人公(演:江口洋介)がヒロイン(演:原田知世)に
「違和感」を訴えるのだが
「私は公僕は粛々と業務を遂行するだけ。
 どんな政治であれ市民の皆さんが選んだ
 結果。投票に行かない人は文句を
 言うことはできない」
気色ばむ(あれ?映画版のほうだったか?)

江口洋介がノンポリであることを
差し引いても、
あのどこか静かに狂った世界の中で
(観客からみて)マトモな見識を
持っているというのは、ちょっと不思議だ。



原作は映画と違うオチ。

かくのごとくコチコチ石頭の典型的お役所職員
ヒロインが、江口洋介との交流を通して
少しずつ変化してゆく、というのが大きな流れ。
映画ではラスト、恋人同士となり
駆け落ちするかのように町を離れるのだが
小説では業務の一環として体を重ねる点は同様だが
そこまでの関係にはならずに終了する。

映画化に際して話の再構築はよくある話。
登場人物が女性になってしまったり
オチが変わったり、原作では軽んじられていた
キャラが重要な役に転じていたり、とか。

映画化は改悪になってしまうことが多いけど、
この作品に関していえば、映画版のほうが
一般人には判りやすく描かれているかな〜と思った。
どちらを選ぶかは、我らユーザー如何だが。

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2012年04月12日

「火の粉」雫井脩介

「火の粉 雫井 脩介」

彼の作品では「犯人に告ぐ」を読んだ。
非常に読みやすい文体で好きな作家である。

【裁判官に必要な資質は?と問われ・・】
― 人間が好きってことですね。

あらすぢ
「私は殺人鬼を解き放ってしまったのか?」
元裁判官・梶間勲の隣家に、二年前に無罪判決を
下した男・武内真伍が越してきた。
愛嬌ある笑顔、気の利いた贈り物、老人介護の
手伝い・・・。武内は溢れんばかりの善意で
梶間家の人々の心を掴む。しかし、梶間家の
周辺で次々と不可解な事件が起こり・・・。

***********************

面白かった。ほぼ一気読み。

読み進めるうちに意外な人物が
物語を引っ張ってゆくことになり
その辺にも驚いてしまった。
梶間勲君、キミなにやってんの?

【日本の制度は加害者に優しすぎるといわれ・・】
― 社会をひとつの大きな生物と考えた場合
 悪いところを切り捨てていっても強く健康な
 生物とはならないんですよ。生命力が一番
 大事なんです。生命力とは自浄能力であり
 再生能力であると・・。
(勲くん)

ほぼネタバレしますが、常にいい子ちゃんブり
高みから人を裁くうちに、どこかに人の心を
置いてきてしまった裁判官(勲くん)が、
圧倒的な悪意の前に家族を曝され、それでも
果たして「いい子ちゃん」でいられるのか?
そんなキレイ事言ってられるのか?というお話。

【かつてのライバル?の検察官に】
― つまりはこういうことでしょう。
 あなたは今まで裁判席という風上から
 下々で起こる事件をまさに他人事として
 裁いてきた。ところが今度、急に風向きが変わり
 自分のところに火の粉が降りかかってきた
 もんだから、びっくりして慌てふためいている
 わけです


裁判官も人の子。死刑判決=人殺しなわけで
できれば下したくないという思いがある。
法曹界の住人は裁判官も検察官も弁護士も
ムツカシイ言い回しを操っては、周囲を煙に巻き
自己を正当化することには長けている。
(それは「枝のん」を見ればよくわかる)

― はん、裁判なんてアテになるかよ。
 あんなの伝言ゲームなんだよ。
 最終的には、現場を見たこともない人間が
 人づての、証拠かどうかもわかんないようなのを
 参考にして判断するんだろ。


一方、人が人に何かをする、ということの裏には
完全なる見返りまでは求めていないにしても
せめて「有難う」の言葉くらいは
期待したいのが人の心というもの。

― 0円ならまだいい、なぜわざわざ3万円という
 価値をつけようとするのか?


よくできた昭和的妻である元裁判官(勲くん)の
奥さんが放つこのへんの恨み節は圧巻。
そしてこの恨み節は単にひとつのエピソードかと
思いきや・・後からボディーブローのように効いてくる。

ジブンには元裁判官(勲くん)の息子である
「俊彦」の存在がいちばん怖かった。
なぜかって、ああいう状況下でPONがいちばん
そういう役割を演じてしまいそうなキャラだからだ。
妻を馬鹿にし、母親を見下し、自己の判断力に
自信があるから、一度下した判断は変えようと
しない。そんなところは親父譲りかもしれない。
しっかりしている所も時々見せるが、その力を
発揮する場所を、てんで間違えてしまう男。

ヤツはいっそ死んでもいいとすら思った。
こういったノンキ野郎が法曹界を目指したら
いつかまた父の悲劇を繰り返すかも。



実際、法曹界の人間には司法試験合格
最優先で青春時代を費やし、自動車免許も
持っていないのに自動車事故を取り扱うような
例もあるというが。



このアホ息子(俊彦)に未来があるなら
これを機会にもう少しマシな人間になって欲しいものです。

文庫: 577ページ
出版社: 幻冬舎 (2004/08)
言語 日本語
ISBN-10: 434440551X
ISBN-13: 978-4344405516
発売日: 2004/08

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控訴について
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2011年12月07日

「転生」貫井徳郎

転生 (幻冬舎文庫)/貫井 徳郎

これはブックオフ100円で購入したもの。

著者名・・なんか聞いたことある
書名・・知らないけど厚みがあるし
    読みきりだし。
そんな程度で購入。これまでは結構
アタリが多かったのだが・・。
まずは読んでみる。すべてはそれから。

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
自分に移植された心臓は、ドナーの記憶を
持っているのか?移植手術を受けた大学生の
和泉は、これまでとは違ってきた自分の趣味
や嗜好に戸惑う。
突然夢に現れた恵梨子という見知らぬ女性の
存在も気にかかりながら心惹かれてゆく。
やがて和泉は夢の記憶だけを頼りに、
タブーであるドナーの家族との接触を図り、
恐るべき近代医学の闇に直面する。

************************

うーーん。可もなく不可もなく。

作者が一生懸命勉強した、心臓移植業界のアレコレ。
噛み砕いて、本として吐き出したいが、
それだけだと小説にならないから、取りあえず
主人公やヒロインをつくり、協力者キャラをつくり
ミステリーも仕込み、小説に仕立て上げた作品。

心臓移植の医療現状について、
お役所仕様リーフレットなぞは、ムツカシい事も
あいまってまったく読む気がせず、でもちょっと位は
知っておいてもいいかな?・・というのであれば
まあこんなのもアリでしょう。

しかしながらミステリーもしくはホラーを
じっくり楽しみたい方には、期待はずれ。
小説としてみた場合、残念ながら、駄作だろう。

基本的に強大な「敵」もいないしね。

もっとも、心臓を交換して元気になったとはいえ
主人公は大手術を乗り越えたばかりの半病人。
しかも一介の大学生に過ぎないんで、
強大な敵が出てこられても困るけど。

気になるキーワードが。
ゴッドコミッティー

要するに、老若男女人種金持ち貧乏を問わず
あとは心臓移植しかない患者は
多数順番待ちをしていて、
一方で、移植可能な心臓がそうそうは現れず
そうなると「必要悪」として誰かが、
救える命の順番を決めなければならない。

例えばボンクラの若人と、老い先短いかもしれないが
彼にしかやれない研究があり、人類のためにも
まだ生きていただかないと困るような老科学者が
同時に「心臓移植待ち」だとしたら・・
いったいどちらに移植(=延命)したらいいのか?

その逆もある。金持ちだけどゲスな老人と
貧乏だけど前途ある若い患者・・
どちらに移植したらいいのか?

そんな判定はどだい人には無理。
できるとしたら神にしかいない。
であるから判定組織のことを
「ゴッド」コミッティーと呼称するらしい。

そういうヤミの組織(ヤミで非合法だけど国の管轄組織。
法律者とか医療の権威などの有識者で構成。
予算も実行力もそれなりにあり、報道を捻じ曲げる
事くらいは可能な力を持つ。モノがモノなんで存在は
極秘)が、自らの存在を隠すため、
折角救った患者(=主人公)の真実追求行動から
逃げようとする話なのだ。

最後に主人公はすべてを知ることになるのだが
知ってよかったのだろうか?
そもそも自分は、他の人をさしおいてまでして
生かされる人間だったのだろうか?
組織を追っかける(≒自分の心臓の出所を探る)内に
主人公は、そういう苦悩と直面することになる。



ほんとにそんな組織があるのかは謎。
小説内だけだと信じたいが。

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2011年12月04日

「クローズド・ノート」雫井脩介

「クローズド・ノート」

クローズド・ノート(角川文庫)
雫井 脩介 (著)

某古本屋で100円。雫井 脩介氏の作品と
いえば「劇場型犯罪」ならぬ「劇場型捜査」を
描いた小説「犯人に告ぐ」を読んだんでチョイス。
本の厚みもそこそこあったし。読みやすかった
キオクもあり、ま、いいかなと思って。

あらすぢ
そのノートが開かれたとき、私の日常は
大きく変わりはじめる――。
『犯人に告ぐ』の俊英が贈る、切なく暖かい、
運命的なラブ・ストーリー。

堀井香恵は、文具店でのアルバイトと音楽
サークルの活動に勤しむ、ごく普通の大学生だ。
友人との関係も良好、アルバイトにもやりがいを
感じてはいるが、何か物足りない思いを抱えた
まま日々を過ごしている。そんななか、自室の
クローゼットで、前の住人が置き忘れたと
思しきノートを見つける。
興味本位でそのノートを手にする香恵。
閉じられたノートが開かれたとき、彼女の
平凡な日常は大きく変わりはじめるの
だった――。

************************

うーーむ。うむむ。
なんつーのか、予定調和でいっぱいの
泣かせますんで寄っといで的小説
・・つまりはラブファンタジー?
人によっては、その「泣かせる仕掛け」が
「Ξ」いや「ξ」チガウ・・くさい、
若しくは「あざとい」と感じるかもしれません。

それと万年筆について延々と述べるシーンがあるが
ちょっとクドい。おかげで万年筆欲しくなったけど。

今回、恋愛の対象になる、かけ出し芸術家の男。
こんな男がなぜモテる?と、フィクションで
あることをさておいても、と思うけど、まあいいか。

「女性は、男性が何か真摯に打ちこんでいれば
 惚れるというモンではなくって、気になる男性が
 何かに打ち込んでいるから、ますます気になる
 存在になるのだ」・・とか聞いたことある。

一見、朴念仁だが、それは芸術に打ちこむがゆえで
そんなアナタが素敵・・ってワケではなく、ベースが
元々カッコイイ男ってことなのだね。ふむ。

ラノベ感覚なラブストーリーで無理にでも泣きたい!
というなら読んでみて下さい。
私は二度読みしませんが。



それにしても「教育」ってヤツぁ、本気でやったら
アレほどワリに合わない仕事も無い。

<追記>
なんか映画化したらしい。さすが角川G。

文庫: 444ページ
出版社: 角川グループパブリッシング (2008/6/25)
ISBN-10: 9784043886012
ISBN-13: 978-4043886012
ASIN: 4043886012
発売日: 2008/6/25

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2011年11月28日

「向日葵の咲かない夏」道尾秀介

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫) 道尾 秀介 (著)

「このミステリがすごい2009年度1位」だそうな。 
某古本屋100均コーナーにて採用。

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、
欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。
妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。
だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と
消えてしまう。一週間後、S君はあるものに
姿を変えて現れた。
「僕は殺されたんだ」と訴えながら。
僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、
事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、
もう一つの夏休み。

************************

この作者の本は以前に「片眼の猿」を読んだ。
あの本もそうだったけど、要はこれも
「叙述トリック」モノ。
前知識抜きで読み始めたんで、事件の落ち着く先が
超常現象なのか、日常の規範内なのか、非常に
気になってしまい、どんどん読み進めたという点では
作者の術中にうまくハマルことができた。

でもってラスト。ファンタジー(オカルト)?なのか
ミステリーなのか?やっと核心に迫る・・と思いきや
微妙な境界線上に回答をおいて終了。

ややネタバレだが、作中の「生まれ変わり」って奴が
主人公の妄想なのか、それともホントの事なのか。

中学生、高校生ばっかりが「大人にもなりきれず
子供でもいられない」ってことで、マンガやらラノベやら
様々な表現のネタになったりするけれど、
実は小学生ってのも結構ビミョウな年代で、そんな時期が
6年間も続くのだ。人生を10年以上続けていれば、
純なことばかりでなく大人顔負けで汚れてくるものだし、
それでいながら行動力も資金力はまだまだなわけで、
不承不承ながら生まれついてしまった各家庭環境に
適応するしかない。
ヒドイ家庭に生まれてしまったら、これは相当な
ストレスなはず。中にはいびつな精神世界を
形成してしまう子供がいたとしてもおかしくない。

はやく続きを読みたくなる、そんな面白さはあるけれど
読み終わったらそのうち読んだことも
忘れてしまいそうな・・そんな作品だった。
「向日葵の咲かない夏」という題名も
雰囲気で付けてみたって感じだし。

「叙述トリック」モノだとしても
ちょっとズルイっていや、ズルイやな。
あんな3歳児いないだろう的ミカちゃんに
その推理力なんなのよ的S君と
急激に目覚める(本性をあらわす)ミチオ君。



角川ホラーに収蔵されていてもおかしくない作品。

作者は2011年 直木賞を受賞したらしい。
(2011年 『月と蟹』で第144回直木賞受賞)
それはどうもおめでとう。

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2011年11月25日

「無痛」久坂部羊

無痛 久坂部羊

「無痛」久坂部羊著 幻冬舎文庫

例の古本屋100円コーナーで購入。
即、読み終わりました。

mutuu.jpg

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
見るだけですぐに症状がわかる二人の天才医師、
「痛み」の感覚をまったく持たない男、別れた
妻を執拗に追い回すストーカー、殺人容疑のまま
施設を脱走した十四歳少女、そして刑事たちに
立ちはだかる刑法39条―。神戸市内の閑静な
住宅地で、これ以上ありえないほど凄惨な
一家四人残虐殺害事件が起こった。
凶器のハンマー他、Sサイズの帽子、LLサイズの
靴痕跡など多くの遺留品があるにもかかわらず、
捜査本部は具体的な犯人像を絞り込むことが
できなかった。そして八カ月後、精神障害
児童施設に収容されている十四歳の少女が、
あの事件の犯人は自分だと告白した、が…。
罪なき罰と、罰なき罪。悪いのは誰だ?

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罪なき罰と、罰なき罪。悪いのは誰だ?
といわれましても、悪いのは、婚期を逃し
ヒロインに勝手に嫉妬している同僚の女(サル似)
じゃないですか?半分本気で書いてますが。

「別れた妻(ヒロイン)を執拗に追い回すストーカー」
が出てきます。自意識過剰で妄想壁があり、今の
自分がどん底なのはすべて周りのセイ。順調に
ヨロシクやっているヤツラは単にラッキーなだけ。
いつか根絶やしにしてやる・・と主人公も
「こいつはどうしようもないまでに性格が悪い」と
言ってます。

そんな如何しようもない男と彼女(サル似)が
寝るシーンが出てきます。日本小説史上でも、
かなりのハイクラスで「どうでもいい」
実用性に欠ける濡れ場といえましょうが・・
この小説を読んでいて、唯一クスりと笑えた所でした。

それくらい、他は陰鬱で。
なんじゃこら?エライ嫌な小説読んじゃったなあ
ってのが正直な感想。「幻冬舎文庫」じゃなくて
「角川ホラー文庫」収蔵作品ですなあ。
作者はさすが医者だけの事はあって
解剖シーン(手術シーン)はウンザリするぐらい
丁寧に描写してくれました。
 みぞおちからまっすぐにスッとメスを引くと
 切断面には黄色いバターのような脂肪が見え
 腹膜が・・なんてイヤでしょ?嫌です。うんざりです。

次はどうなるんだろ?的なグイグイ引きこむ力はあります。
読後感の重さはイヤになりますけれど。

一部ネタバレしますと
どうしようもないまでに性格が悪い奴
VS
(理由はどうであれ・・)基地外
との激突がいやはやナントモ。

そこまでサレネばならん程、奴(性格悪)は
ワルだったかな?って気もします。ちと気の毒。

小説の冒頭・・
「登場人物の言動は病気ではなく
 その人物の資質に起因するものです。
の但し書きが、この小説を既に物語っております。



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2011年11月23日

「月の裏側」恩田陸

月の裏側 恩田陸

「月の裏側」幻冬社文庫。上司より受領。まいどっ。
恩田陸さん? 僕たちの七日間戦争とか?
それは「宗田理」さんでした。

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が
相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した
日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、
じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失
したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教に
よる洗脳か、それとも?事件に興味を持った
元大学教授・協一郎らは“人間もどき”の存在に
気づく…。

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月の裏側 (幻冬舎文庫) [文庫] / 恩田 陸 (著); 幻冬舎 (刊)

九州の水郷都市・箭納倉(やのくら)という町が舞台。
架空の場所で、モデルは水郷の町「柳川」と思われ。
どんよりとした灰色の雲が広がり、町には水路が
縦横無尽に広がる。

非常に叙景表現のとんだ作品。
もういいから、ってくらい、しっとりしていて
重くて、びしゃびしゃしていて・・
作者の卓越した文章力と感性は十二分に伝わる。

子供の頃に吸った梅雨の時期のジットリとした空気。
それでいて黴臭くはない。

PONの好きなSF漫画家「星野之宣」氏の
「宗像教授伝奇考」みたい。
宗像教授=元大学教授・協一郎ですな。

これはシリーズモノなんだろうか?
この話以前にも事件やらなにやらを乗り越え、
主人公と元大学教授との間に年齢を越えての友情が
既に存在しているような、そんな描写がみられる。

以下、少々ネタバレ。

小説の雰囲気が雰囲気なんで、諸悪の根源は
日本の伝統的なオカルトだったりとか
あるいは横溝正史バリに、やっぱり怖いのは
(田舎の)人間だとか、そんな結末をイメージしていたのだが
・・オチがあまりに剛速球だったのには驚いた。
この小説は、結局どのジャンルに落ち着くのか?
見極めることが、まさに「ミステリ」

毎度ながら「なんだそりゃ?」な所を
あげつらえばキリがない。
そもそも「なんでなの?」というギモンは
最後まで残るのだが
(最終防衛兵器が「ながぐつ」って、アンタ)

「盗まれた街」+「ブロブ」+「ちょっとエヴァンゲリオン」
LCLとか人類補完計画とか・・計画じゃなくって
こっちは自然現象?だけど。

「盗まれた街(SFボディスナッチャー)」↓
http://www005.upp.so-net.ne.jp/guillo/cnmgltsq/bodysnatc.htm

「ブロブ」↓
http://kyoto.cool.ne.jp/666_movie/mv032/index.htm



「自分だと信じていた自分は本当に自分なんだろうか?」

そんな堂々巡りと空気感を楽しむ小説。
それでよいのではないでしょうか?

結局なんにも解決しませんでしたし。

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2011年10月30日

「震える岩」宮部みゆき

震える岩 霊験お初捕物控 (講談社文庫)
宮部 みゆき 著

耳袋(怪談話集)を編纂した根岸備前の守という
奉行(江戸時代に実在)がつぶやく。

「都合の悪いこと、見たくないもの
 聞きたくないことを不思議話のなかに
 押し込めて自分も世間も嘘を突き通す。
 人間ほど恐ろしいものはないのだよ」


あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
ふつうの人間にはない不思議な力を持つ
「姉妹屋」お初。南町奉行の根岸肥前守に
命じられた優男の古沢右京之介と、
深川で騒ぎとなった「死人憑き」を調べ始める。
謎を追うお初たちの前に百年前に起きた
赤穂浪士討ち入りが…。
「捕物帳」にニュー・ヒロイン誕生!
人気作家が贈る時代ミステリーの傑作長編。

江戸文化をさも見てきたかのように伝える
伝道師「杉浦 日向子」さんは
若くして亡くなってしまったけれど
いやいやここに健在。宮部の姉さん。

普通の「華のお江戸捕り物帳」でなくって
主人公にちゃきちゃきの女の子
ある霊感を持った「お初っちゃん」を
もってくるあたり、さすが宮部の姉さん。
一筋縄じゃいかねえ。以後しりいず化。

そしてヒロインの片腕っつーか相方として
与力見習の「右京之介」が今作から登場。
一見、頼りにならなそうな
ヒョロヒョロメガネの「右京之介」。
話の中でも、真っ先に、当のお初が
つぶやいてしまっているんだけども
「いやいや、鬼と呼ばれる与力の息子。
 実は武に優れて、敵をバッタバッタと
 切り捨てたり・・とか、類稀なる
 陰陽師能力を持っていて・・」とか
 無いんですねえ。これが。
実は算学者の卵で、誰もが気がつかないところに
目が行き、捜査の整理も巧み。なんで賢明でない
読者に成り代わり、物語を整理してくれます。
そう、まさに「水谷=右京=相棒」ですね。
あそこまでイヤミなヤツではないけど。

半分ネタバレ

赤穂浪士のふるさと、兵庫は花岳寺に
「義士出立の図」が現存している。
吉良邸の東口と西口をそれぞれ急襲した
義士47人が半々に描写されている。
討ち入り寸前は、ある意味ハレの舞台なはずで
皆、見得を切るかのように描写されているか
そうでなくとも顔くらいは正面を向いているハズ。
なのにたった一人だけ、後ろ向きで
描かれている義士がいる。

宮部氏はそれにインスピレーションを
受けて話を展開していったらしい。
すげいぜ。小説家ってヤツは。

でちょっとネット検索してみたら

史実とフィクションが巧みに
組み合わさって、そういうことも
歴史のウラには実はあったのかもなって
気にさせてくれます。
ホントうまいね〜。
よっ稀代のストーリーテラー、宮部先生。
安心して読んでください。



「うそってやつは、たいてい
 耳あたりのよいオチに落ちつく。
 つくり話ゆえにな」

(創作であるが故、想像のつくオチになりやすい)

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2011年10月18日

「夜想」貫井徳郎

「夜想」 貫井徳郎(著)

あんだけ「バカ」なことをしでかした
オウム真理教(現アレフ)だけど
そもそもは中央線沿線にある
繁盛していた鍼灸院からスタートしたんだとか。
(治療士が麻原で心服した患者達が幹部に)

実は最近のPONなんですけど
「椎間板ヘルニア」と診断されてしまいまして
気持ち的に「手術」はいやだし、
これでも勤め人なんで、長期戦線離脱も致しかね・・
とにかく、妻が独身時代よりお世話になっている
鍼灸治療院へ駆け込み、助けを請いました。

なんかね、麻原のいた鍼灸院を核に
オウムを立ち上げた連中の気持ち、
ちょっとワカル気がした。

とにかく、痛さから逃れたい=救いを求める患者
(この場合、PONも含む)にとって
「治療院」の存在は、ほんと救い主だ。

なんといってもココの先生、聞き上手でね〜。
この「聞き上手」によって、患者の不安が
多少なりとも緩和され、それが回復に向わせてる
という線もアリだと思うし、
治療が引き出したジブンの自然治癒力の効だとしても
なんかもー全面的に先生を尊敬したくなる。

キャー、先生ついてゆきます〜てなモン。

そんな経験の最中に読んでしまった小説がコレ。

あらすぢ
デビュー作であり出世作でもある『慟哭』から14年。
『夜想』は、作者自ら「『慟哭』の主題に改めて挑んだ」
と語る作品。『慟哭』は新興宗教を扱った衝撃的な
ミステリーでしたが、貫井さんは「オウム以後、
新興宗教をどう描くかをずっと考え続けてきた」
とのこと。本作に賭ける並々ならぬ気合いが窺える。
事故で妻と娘を喪い、絶望の中を惰性で生きている
主人公・雪籐(ゆきとう)。ひとりの女性に出会ったことで
動き始める彼の運命は……。ミステリーの手法を通じて
“絶望と救済”を描き続ける著者の、
畢生の傑作。

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ひとことで言うなら、新興宗教が立ち上がる
プロセスのシミュレーション小説。

話は、ホンモノの超能力(触るとその人の内面を
理解する)を持つ、可愛い女子大生が、
迷える主人公(雪籐)と出会うところから始まる。
「救われた」とおもった雪籐は、殺到する相談予約を
さばくため、予約受付係をかってでる。
それが後の組織「コフリット」になる。

「力」がホンモノだろうとカンチガイであろうと
関係ない。「力」で人々を救いたいと思う気持ち。
純粋に「人助け」を旗印に立ち上げた集団だ。

まだまだ小さくて組織とも呼べないようなコミューン、
コフリット。人を騙したり、ましてや金儲けなんて
これッポチも考えていない。

でも、組織が拡大すればするほど、多様の人間が集まり
本来のイロや存在意義が揺らいでゆくもの。
これは宗教に限らず、人の集団にはどこにもある
仕方のない現象。

街のパート職場における人間関係にありがちな
オバサン信者同士のカクシツ、つーか低レベルな喧嘩。

さわやかで妙に組織に尽くしてくれるイイ奴だなあと
思ってたら、実はナンパしやすい女性を漁れるから、と
テニサー代わりだった大学生。

ハナから神なぞ信じることなく
組織など金ヅルにしか思っていない宗教ゴロも寄ってくる。
闇世界に堕ちずに、表社会にいたら結構な経営者に
なりそうな、妙なパワーを持っているもの。

以前に、ビートたけし原作の映画
「教祖誕生」ってのを観た事があったんで
ボヤッキーみたいな、このオッサンの正体を
「宗教ゴロ」だ!志村〜うしろっ、と
心でつぶやいた自分がいる。

ほかにも、王国などにありがちな、
オレが一番、教祖と教義を知っているんだ!という
「オレが一番」という意識の張り合い。
つまり、王(教祖)の寵愛を一番受けることができるか?
競争ね。

信者たちは、私を救ってくれるのは、この人(教祖)だッと
勝手に決めつけ、ジブンの理想を
勝手に教祖に押し付け、入れあげてゆく。

ジブンの救い主なんだから、こうでなきゃ困る、
こうである筈だ・・。
聖なる存在の教祖はセックスなどもってのほか
なのである。見た目可愛い女学生であればなおさらだ。

教祖と信者のめざすベクトルが一致しているウチは
これほど従順で頼れる信者もいないのだが
もし意にそぐわなくなると、思い入れるジブンが
オカシイのではなく、思い通りではない「教祖」が
イケナイのだ!という考えに至り、暴走を始めるバカも。
(この辺の心理は、偏執的なアイドルストーカーや
 一部の政治運動家にも通じる)

さらには、自分ではリクツに沿って動いている
つもりなのに、そのリクツが世間と乖離してることを
最後まで理解できず、どうにも人にメイワクをかけずには
いられない精神的に困ったオバサンも絡んできて・・・。
(↑無意識に最大メイワクなヤツ。
  ひとりで篭もって死んでくれればいいのに)

金と欲とエゴがこれほど全面に出てくる組織で
しかも教祖が「若くて可愛い女子大生」となれば
ドロドログチャグチャ、フラグが立つことは
もう決定な気もするが、この作者はいい人
(自分の作品世界を決定的に汚すことができない)
なので、教祖の属性は「聖」であり、読後感も
それほど陰鬱にはならない。

これが実社会のように「俗」だと麻原のような
末路になる。

読者としては、小説の主人公にマトモな
「判断力」と「行動」を求めたい所であるが
なかなかそうもいかない。

主人公雪籐の行動を読み進めるうちに
あれ?コイツの言動おかしくね?
ちょっとでもそう感じられたら、
まあまだあなたに救いは不要。

逆に共感しまくりだったりしたら、
現在ちょっとジブンはマズイ時期にいるのでは?と
自省してみるのもよろしいかも。



「あたしはずっと、夜の中にいました。」
救われる者と救われない者。

読者は最後に「夜想」とつけられた題の意味を知る。

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ラベル:夜想 貫井徳郎
posted by PON at 21:00| 神奈川 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書(ミステリ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする