2010年01月26日

「片眼の猿―One-eyed monkeys―」道尾秀介

「―犬の嗅覚が優れているのは
 顔の半分が「鼻」で出来ているから」


片眼の猿―One-eyed monkeys― 道尾秀介/著

片眼の猿と打ち込めば、毎度ながらIME氏は
堅めのさる」だそうです。バリカタ??

あらすぢ
騙しの大技・小技が炸裂! ミステリ界
最注目の新鋭が繰り出す、超絶技巧。

俺は私立探偵。ちょっとした特技のため、業界では
有名人だ。今はある産業スパイについての仕事を
している。地味だが報酬が破格なのだ。
楽勝、と思いきや、いつの間にか殺人事件に
巻き込まれてしまった――。

サプライズ・マジシャン道尾秀介が周到に
張り巡らす読書の罠。見逃すな! 
仕掛けは至るところに潜んでいる。

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うーんとね。面白いとは思ったけど
二度読みたいとは思わないレベル。
ちょっと中だるみのところもあったし。

それと小説(というか文章ベース)ならでは、の
伏線の張り方がなされているため、
この小説が映像化されることはないだろう。

もし、この小説の味をそのままにかつ忠実に
映像化実現できたら、その演出方法こそ
最大のミステリーだ。それは是非観てみたい。

それと途中でトランプを使ったクイズのような
ものが登場しますが、もし答えがわからなくても
そこはそのまま読み飛ばしてください。
作者が最後にしっかりとフォローしてくれますぜ。

セオドア・スタージョンのSF「人間以上」
ちょっとだけ思い出す。そんな内容。



それと、こういったミステリーには
どうしても付き物なんですが・・

基本的に犯人は頭のいい人達ばかりなんで、
周到に殺人計画を練ります・・が
それは結局、計画というよりも
希望的観測に基づく妄想に近い。

犯人達があまりに策を弄し杉。
それを推理、読み解きを楽しむのが
ミステリージャンルなのでありますが。



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2010年01月25日

「ホワイトアウト」真保裕一

ホワイトアウト 真保裕一 新潮文庫

織田裕二だかが主演で映画化していた気もする。
確かにフジテレビあたりが喜んで飛びつきそうな
原作ネタではあります。

 彼ら(テロリスト)が決まって標的として選ぶのは
 権力の比護の届かない弱い者ばかりだった。
 彼らはただ自分達の暴力衝動に、薄っぺらな
 理由づけをしているのだ―。


彼の作品では以前に「取引」も読んでいる。
毎度ながら、作者はすげー勉強家だなあと思う。

あらすぢ
日本最大の貯水量を誇るダムが、武装グループに
占拠された。職員、ふもとの住民を人質に、要求は50億円。
残された時間は24時間!荒れ狂う吹雪をついて、ひとりの男が
敢然と立ち上がる。同僚と、かつて自分の過失で亡くした
友の婚約者を救うために――。圧倒的な描写力、緊迫感
あふれるストーリー展開で話題をさらった、
アクション・サスペンスの最高峰。吉川英治文学新人賞受賞。

 人の本心を覗くには挑発してみるに限るだろう― 
 千晶は言った。

そうなの?フツーのOLなのにヤクザ並みの
交渉術をもつ千晶さん(テロ集団に拉致監禁される)
である。

 疲労感はあきらめと弱気を呼び寄せる。
 冬山の遭難では最後まで生き延びようとする
 強固な意志が何よりも必要だった。
 意思を失った時、人は人でなくなる。

山(自然)に負けてたまるかーっってことかな。
「意思を失った時、人は人でなくなる」
いいセンテンスですね。

 (山でひとり助かった者を)決して責めてはならない、
 何が遭難につながったのか、反省は反省として
 冷静に振り返らなければならないが、
 責めることは誰にも出来ない。
 けれどかけがえのない人の命を奪われた者にとっては
 あきらめのつけられるものではなかった。
 どうしてもっと早く下山しなかったのか?
 どうして・・

「山でひとり助かった者を)決して責めてはならない」
そのようです。

 多くの名だたる登山家たちがその自書の中で説いている。
 山で苦難に遭遇した時、心も体も疲れ果てた時、
 精神と肉体が分離するような一種恍惚感にも似た想いが
 訪れる瞬間がある―と。

コントで使い古されたパターンですな。
「寝るなー 山田!」パシッパシッ
確かにシチュエーションによっては
死を選んだ方がラクなこともあるんでしょうが。

 山で死ぬのは本望だ、という登山家がいないわけではないが
 最初から死にたいと思って山に向かう愚か者はいない。
 本望と結果は違った。覚悟と観念では意味が違う。

「覚悟と観念では意味が違う」
うむむ。その通り。

関口苑生氏があとがきで面白い事を書いている。
近年、日本の冒険小説(主人公が知力体力で絶望的な
状況からはい上がる、この小説のようなモノを
そう呼ぶらしい)は一時停滞した時期があった。
それはちょうど世界で冷戦終結した時期と重なるのだと。

つまり、普通に生きている普通の人間が
やむなく超人的な活躍をしなければならない、
そんなプロセスを楽しむのが「冒険小説」であるのに
冷戦終結のため、いまや各人が立ち上がるための
モチベーションが不足している世の中
なのだ。
家族のため、国家のため、転じて世界平和のためとか
そういうモノのために、あと一歩体を張って踏ん張る
理由が、正義?側に欠けているってことらしい。
悪のほうには相変わらず、大義だの革命だの
それ以前に「金」という理由は揺るがないのだけど。

まあ一理あると思う。

そんなモチベーション不足な現代において
どこにでもいるフツーの主人公が、
結果的に超人(英雄)になってしまった
理由はただひとつ。
雪山で親友兼ライバルを失ってしまったためである。
自らの油断(慢心と自分に負けたこと)が
取り返しのつかないことを引き起こしてしまった。



映画版を観たわけではないが、このへんを上手く処理せず
単に活躍を映像化してしまうと
ダイハードのマクレーン刑事のように
もともと超人的素養のある、あらかじめ用意された
主人公が、シチュエーションにおされ
イヤイヤ活躍するという話になって、イマイチになると思う。

彼(主人公)は、ただ死なせてしまった親友に対する
贖罪だけで行動するのだ。何度も何度も楽になろうとする
シーンがある。
また、彼の行動だけで事態がすべて解決した
ワケではないあたりも、非常にリアル。
(彼は、その時点において、超人的な想像力と体力で
 ベストと信じる行動をしますが、事態は常に
 彼の想像すら越えたところで推移します)

最後の方の(イヤな)オチはノーマークだったんで、
ビックリ。すっかり忘れてた自分が情けなかった。
やられたー。

アオリ文句には「圧倒的な文章力」とある。
確かに全般的には読みやすかったけど、
一部、ダムの構造とか制御システムとか、作者が
ダムについて事前によーく勉強したことは
充分過ぎるくらい伝わってきたけども、
そこまでづらづら記述せんでも・・と思うところもあった。



面白かった。PONスコープ中の上。
詳細を忘れてしまった頃を見計らって
もう一度読んでみてもいいかな。

真保裕一作品リスト

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ネタバレのメモがき
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2010年01月24日

「取引」真保裕一

「取引」 真保裕一

講談社文庫 1995 ISBN:4-06-263098-2

また、東南アジアのねっとりした熱気に
つつまれたカオスな社会の小説を読むのかと、
マフィア、麻薬、売春、児童売買に暴力
社会の腐敗、賄賂、色、欲、欲・・
正直ウンザリしたPONがおりました。

特に氏の「闇の子供達」を読んでしまった後
ですからね。キツイです。

でも上司が面白いよっと、PONの机の上に
投げ出していった小説ですから、読まないわけ
にも参りません。
それに作者の「真保裕一」氏ってどこかで
聞いた事あるような名前だし・・というわけで
ページを開いてみました。

あらすぢ
公正取引委員会の審査官伊田は汚職の嫌疑を
かけられた。何者の策略に嵌り事件に巻き込
まれたのだ。ある所からの誘いによって彼は
フィリピンへ行くことになる……。
ODA(政府開発援助)プロジェクトに関する談合
事件をマニラで調査する伊田の身に危険が
迫る。期待の乱歩賞作家が放つ長編推理
サスペンス。

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面白いんだけれど、ちょっと長いかな。

「マニラ」って読んだだけで生水禁止
ヒッタクリやボッタくり注意、ってな感じですよ
あたしゃ。

それじゃあまりに先入観ありすぎですか?
どーもスミマセン。

よくこのブログでお役人さんのことを
叩いておりますが、少なくとも小説の上では
そんなお役所世界に生きていながらも
決して、自分たちの棲息する世界を
「良い」と思う役人ばかりではないんですよ。
中には、ともすれば流されそうになる現実
のなかで、ひとつづつ高みを目指そう
(少しでも日本を良くしよう・・)と
ホンキで動く方もいるって話です。
少なくとも小説の上では。

「現実と妥協するか?己が正義を貫き続けるか」

主人公である「公正取引委員会」審査官
伊田は、社会正義をもっとも手っ取り早く
実現できそうな職場ということで現職についた。
彼なりにベストは尽くしてきたが、
生来器用な生き方は出来ない性格のうえ
「公正取引委員会」の追求から、
巨悪はつねに逃げ去り、末端部の力なきものへの
イジメだけで幕が引かれてしまう毎日。

政治家の横槍やそれにべったりな上司の妨害
いろいろある業界の大人のお約束などに
振り回される主人公は、見えない力に
ハメられ、失職してしまう。

正義感と無力感の間で苦悩し、なかば自棄に
なる主人公。題名は「取引」であるが、
もはや公正な舞台での「取引」が出来なくなった
伊田の下に、正義を貫くやり方は正面からだけ
ではない、という話が飛び込んでくる。
・・伊田は己の正義を貫き通せるのか?

彼は、この間まで役人だったその辺にいる
イチ日本人であり、知性と英語力はあるが
東南アジアの混沌社会にありがちな暴力などが
でてくると、007のような爽快な解決など
望むべくも無い。
そこで、というわけではないが、タガログ語も
話せない彼の前に、反発しつつも最後はヨイ相方になる
現地の男が登場する。強いていえばフィリピン人の
ドズル中将。(フィリピン警察所属なんで
中将ではなく警部か?)

国家間に厳然と存在する、経済格差にモノを言わせ、
シモの処理(性欲やらなにやら、とにかくイヤなこと)
を押し付けようとするとロクなことがない。
しかしドロドロした欲望を抑えることの出来ぬ人間の
なんと多い事か。
かくして発展途上国にはギラギラした欲望だけが
吹きだまる。

うーん。自分はあまりオススメしない。
面白くて最後まで読めてしまうけれども
たまたま入手でもしない限り
それほど無理に読まんでも・・といった感。

それにしても、海外駐在のビジネスマンって辛い。

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2010年01月22日

「無限連鎖」楡 周平

「無限連鎖」 楡周平

無限連鎖 楡周平 文春文庫

 アメリカの力の前に屈しない
 敵などいるはずがない・・
 (アメリカ大統領 マクレビー)


解かりやすくって面白かった。楡周平氏の本は
「フェイク」についで2作目。
最初に「フェイク」を読んでしまったのは
失敗だったかもしれない。
「フェイク」はどちらかというと
楡周平氏の小説にしては異端児だった様子。
(たしか、かる〜い感じの悪漢小説だったような
 あの小説だけ読んで、この作家の別の本
 読んでみよう・・という気にはなれませんでした)

なんだっけ?楡周平氏は
フレデリック・フォーサイスの熱量と
トム・クランシーの大胆さ併せ持つ
日本には稀有な国際小説が書ける作家だとか
どこかのアオリ文句にありましたけど。
なるほど。なるほど。

あらすぢ
全米各地で再び発生した同時多発テロ。その直後、
セレベス海で日本の巨大タンカーがシージャック
される。爆薬を積んだ船は、犯人らの指示により
進路を東京湾へ。
「一億ドルの現金を用意しろ」。謎のテロリスト
集団の要求を呑まなければ、東京湾は火の海になる。
刻一刻と近づく危機に、日米首脳は苦渋の決断を
迫られる。

************************
 
 かつて日本赤軍がダッカで起こしたハイジャック事件に
 際して「人命は地球より重い」という信じられない
 ようなコメントを吐いた―日本の首相の記憶が蘇った。
 目前に突きつけられた大きな問題に対し断固とした
 態度で臨むことを躊躇する傾向が垣間見られるのは
 今も昔もそう変らない・・。


 治安出動―それは国籍不明の武装ゲリラのテロ活動などを
 抑止するため、通常の警察力では治安維持が出来ないと
 考えられた場合、内閣総理大臣の命令により
 自衛隊がその任にあたることを意味する。
 しかしこれも現行の法解釈の下では、もともと暴徒鎮圧
 などを想定した「警察活動」と位置づけられたために
 警察官職務執行法が準用され、武器の使用は制限される


なんだろうね。
「テロによって歴史を停滞させることはあっても
 歴史を動かすことはできない」
ということです。ヤン提督じゃないけど。

それぞれに言い分はあるんでしょうが。
恨みつらみもあるんでしょうが。
オノレの勝手な思想、理由をもって
人を殺した時点で、もうどんな高邁な思想も
それを表す文章も演説もゴミくずと化すってこと。

ネタバレになってしまうけれど
状況すべてにリセットをかける兵器があって
それが活躍(=主人公の奮闘が無になる)
してしまうまであと何分!という
「時間と戦いになるって展開。

「ザ・ロック」の「プラズマ爆弾」
「亡国のイージス」の「テルミットプラス」
「バイオハザード」の「核兵器」とかとか・・

この小説にもやっぱそういう展開になって
ゆくのですが、渋く活躍する機関長の死に様が
異様に怖かった。その辺の下手なホラーよりも。

最後に、すべてを収拾して闇に葬り去る
隠密集団(SEAL)の隊長と隊員達がイカします。
軍事ロマンの自己満足といわれてしまえば
それまでで、彼らがどのように行動しようと
それで遺族が救われるわけではないのですけど。

その手の小説に毒されすぎ、と思われるかもしれませんが
実社会においても、闇に葬り去られた真相ってヤツは
案外多いと思うんですよ。
たとえば、こういった話が真実だったとして
その真相をなんかのはずみで知ってしまったとして
果たして幸せなんだろうか?
世の中には知らなくてもいいことがある・・
「そんなものなの」くらいに心の中で
納めておいた方が、幸せに暮らせるのかもしれません。

 この男は聖なる戦いの生贄として屠られるのだ。
 そう考えると、むしろ精神が高揚してくる気さえする。


「無限連鎖」ってのがこの小説の題名ですけど
コトの真相を知ってしまったら、この主人公の娘や
機関長の孫とかだって、テロリスト予備軍に
なってしまうわけです。まさに憎悪の無限連鎖

アメリカだけに限らず、どこの国だって、嫌われる
恨まれる心当たりは数知れず。
世界中に散らばるちいさな恨みの火種たちに
悪意を持つ組織が行動力と資金をかさね合わせた時
聖戦だの革命だの天誅だのといった人殺しが始まる。

 みろよ・・富と繁栄に満ち、平和を貪る国―あそこいるのは
 帝国主義のイヌとなって、その比護の下でのうのうと
 暮らす連中だ・・
 俺たちの国、同胞を蹂躙するものを倒すのは善で
 それに敵対するものは全て悪


でも、もし俺の家族に人為的悪意からきた
不幸が襲ったりでもしたら、俺もその原因を
放ってはおかない。

PONスコープ「中の中」
自分としては、もう一度読むほどではないが
読み出したら止まらない。



楡周平氏作品リスト

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ラベル:無限連鎖 楡周平
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2010年01月13日

「天国の扉」沢木冬吾

「天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア 」
沢木 冬吾 著 角川文庫

「償いの椅子」に続く上司からの貸与本。

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
11年前、抜刀術・名雲草信流本家を悲劇が襲った。
末の妹・綾が放火により焼死してしまったのだ。
犯人は、一年後、別の現場に残された遺留指紋が
決め手となって捕まった、飯浜幸雄。名雲家長男・
修作がつきあっていた奈津の父親だった。
修作の父・名雲和也は公判に出廷した飯浜に
襲いかかる騒動を起こし、その後、失踪。奈津は
母親とともに土地を離れて行った。そして飯浜には
その後死刑判決が出たが、執行はいまだなされて
いない。

************************

これも「償いの椅子」同様ハードボイルド小説。
主人公は弱冠24歳(たしかそんくらい)
20代の青年にしてはヘビーすぎることが
いろいろとありすぎて、剣の道も捨てて
引き篭もっていた男。

その辺のチンピラならどうとでもできる
スーパーな若者なのだが、なんといっても
引き篭もりな20代。自らの入り込んだ事件を
自力で解決しようにも
社会的なスキルや経験がぜんぜん及ばず。
だもんで、焦燥感ばかりが先行する主人公。

彼の周囲には出来すぎな一族や友人が
多数存在するため、なんとかフォローをもらってる。
それだけに、敵味方あわせて登場人物が多く、
かつ、各人の事情が描写され、
これが縦軸横軸と錯綜するため状況がつかみにくい。

お、いよいよ盛り上がってきたぞ?
さて・・突然の場面変換
え?この人だれ?
さっきの話は結局どうなったの??
主人公も読者も不完全燃焼・・

そんな負のスパイラルに、未熟さゆえに
状況を打破できない主人公の焦燥感を共感できる。
そして最後は、健さん映画のように爆発!
爽快なENDを堪能できる・・システムなのかも。

「真剣 VS 拳銃」の戦い

「奴らとコトを構えるなら、そのうち相手に拳銃が
 出てくるだろう。ひとつアドバイスしとく」
「弾を避けろなんて言ってない・・相手の目線
 肩や筋肉の動き、銃口を見て、
 標的を見極めろってことだ・・」(意訳)
・・んで実戦で避けちゃうんだけど。

真剣のように澄んで張り詰めた緊張感がありましたが、
この場面でも唐突な場面転換でブチ切りなのが残念。
もっと読みやすい小説に出来るのに
わざわざ構成に凝ってしまうため
結局、読みにくい。

「精神修養のために殺人の技を
 身につける必要がどこにある」」
「技を磨けば心も磨かれる・・そんなものではない」
(意訳)

以下ネタばれ。ゲームのシェンムー一家の
ようなイメージでいたので、主人公のパパ
(抜刀術名雲草信流家元)の言動行動には、
あらゆる点においてガッカリだった。
最後まで。
なにやってんの?パパわ。
爺さん(名雲草信流先代)は教育間違ったね。

だから・・
「技を磨けば心も磨かれる・・そんなものではない」
ってことになる訳ですよ。

題名は、なんでもボブ・ディランの歌から
転用したものらしい。おそらくは
天国の扉を叩くことができるのは
若くして純粋なウチに死んだ妹だけ。
残された人間は誰もがその資格を失ってゆく・・とか
言いたいのかもしれないけれども。

あんまり意味がないというか
この話一応現代日本だし、抜刀術家元本家での話だから
もうちっと和風テイストの方がよかったんでないか?
料理人が西洋好きだからという理由だけで
日本料理に「カタカナ」の名前付けちゃった
みたいな違和感。

とりあえず、シックリこない文章は、人名だけは何とか
押さえて、そこそこに読み飛ばし、最後まで
読みきってから、もう一度読めば、その張られた伏線や、
メインドラマの脇にある些細なストーリーを
楽しむことが出来ると思う。

久々に長い小説読みたいなあ・・とか
PONのように通勤時間中にブツ切りとかならず
まとめて読書タイムをキープできる方ならあるいは。

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2009年12月08日

「償いの椅子」沢木冬吾

「償いの椅子」沢木冬吾

「外道には二種類ある・・自覚した上でイザとなると
 鬼になれる外道と、自分のことしか考えない外道。
 能見、お前は前者なんだろ?」

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
五年前、脊髄に銃弾を受けて能見は足の
自由を失い、そして同時に、親代わりと
慕っていた秋葉をも失った。車椅子に頼る
身になった能見は、復讐のため、かつての
仲間達の前に姿を現した。刑事、公安、
協力者たち。複雑に絡み合う組織の中で、
能見たちを陥れたのは誰なのか?
そしてその能見の五年間を調べる桜田
もまた、公安不適格者として、いつしか
陰の組織に組み込まれていた。彼らの
壮絶な戦いの結末は…。

************************

ハードボイルド・ピカレスク小説
二度読むほどではないけど、面白かった。

内容は、ルパンで例えれば、ルパン一家の
大黒柱ルパンが死んでしまった後
残されたキャラがそれぞれに道を見出すまでの話。
主人公「能見」=手負いの次元かな。この場合。

この作者の持つ構成力、筆力はかなりの物。
個別の人物が持つエピソードを小さな単位とし、
ジグソーパズルでいえばバラバラのピースとして
各所に配置されており、
読者はそれをほぼタイムリーに入手できるので
ハナシがつながってくる。

この作者は自分の小説がというか、
自分がつむぎ出す世界がダイスキな人に違いない。
何度も何度も読み返し、推敲し、ブロックを
並び替えるかのように小説を完成させたのだろう。

一方、この手の小説にありがちなのが、
時間軸の前後や場所が変わったり、
なんの前フリもないままキャラが登場して
急に芝居を始めたりと、構成に振り回されてしまい
読みにくくなってしまうこと。
ひととおり、人物をアタマにインプットできれば
後はグイグイと引き込まれ、面白い小説になると思う。
その、人物インプット作業が面倒なんだけど。

登場人物は、それぞれの父親が外道であったために
家庭的にみな不幸な出自。そんな彼らが再び「父性」を
見つけ出し、また失なうまでの物語。

この小説における完全な「父性」こそが
主人公「能見」である。

そして「能見」のライバルである「南城」。
彼はこの小説で唯一、父性に当たる存在を
見つけ出すことが出来ず、また自らも「父性」に
なれない不幸な存在。

だからこそ能見のライバルくらいにしか
なれなかったのかも知れない。

そんな「能見」と「南城」だが、子供(特に女の子)
にはそろって調子が狂うってところは面白かった。

そして狂言回しの桜田。彼は警察側の人間で
正義感が空回りして南城にだまされるままに
行動していたが、そのうち自意識を持ちはじめる男。

小説に出てくるキャラは「能見」を
はじめ「南城」にしても完璧な男でありすぎて
読者はとてもあんなになれそうもなく

ああいった非日常的ドンパチに巻き込まれた時には
能動的に動いたつもりでも結局は、桜田のように
なってしまうのが関の山。
(この小説、能動的に動かないキャラ=警察官は
 名前が「カタカナ」です)

最後の最後になって、やっと舞台の袖まで
たどり着くことの出来た、エキストラのようなキャラ
「桜田」が主役の能見に言うセリフが素敵。

能「たしかアンタ?」
桜「・・いちファンですよ」

しかし「公安」ってあんなイヤーな団体なんだろうか?
今度知り合いに聞いてみようかな。
公安が嫌な団体というよりも、陰湿なインテリジェンス活動
(要はスパイ合戦)に対抗する組織となると、
自然と陰湿にならざるを得ないのでしょう。

対諜報活動部隊が「甘ちゃん」の集団だったら
そっちの方がよほどコワイ事態。



「怪物と戦う者は自らも怪物とならないように
 気を付けねばならない。 汝が深淵を覗き込むとき、
 深淵もまた汝を覗き込んでいるのだ」


フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ

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2009年10月15日

「闇の子供たち」梁 石日

「闇の子供たち」 梁石日(ヤンソギル)
 幻冬社文庫

梁石日氏の小説は、前に「カオス」を
読んだけれども、その内容があまりにも
ギラギラして、心が落ち着くことが無く
読んでいるほうの気持ちが
どこかギスギスしてきてとにかく疲れる。

爽快感もなければ、ほんわかした気持ちも残らない。
読んでいる間はずーーと、ゴミため、もしくは
痰ツボでも見せつけられている感じがする。
凄い力量の小説家だとは思うが、まったくオススメ
できない。
読むときは自己責任でお願いします・・。

あらすぢ
貧困に喘ぐタイの山岳地帯で育ったセンラーは、
もはや生きているだけの屍と化していた。実父
にわずか八歳で売春宿へ売り渡され、世界中の
富裕層の性的玩具となり、涙すら涸れ果てていた…。
アジアの最底辺で今、何が起こっているのか。
幼児売春。臓器売買。モラルや憐憫を破壊する
冷徹な資本主義の現実と人間の飽くなき欲望の
恐怖を描く衝撃作。


この本は、東南アジア某王国を舞台に
その厭なところ、普段日本人が目を背けまくっている
児童買春、臓器売買、殺人、暴力、ドラッグ、
エイズなど、語句を並べるだけでウンザリしそうな
ヤサグレまくったアジアの状況を、あくまで小説
として書きなぐっている。小説という形を取らないと
世の中に出せない内容だからだ。

全470ページのうち、200ページ近くを割き
ペドファイル(幼児愛好)の現場の実態を
さも見て来たかのように記述されている。
(ほとんどその手の方へのピンク小説!!ですら
 あるかも知れない)
主要登場人物(無論日本人)が動き出すまでに
200ぺージかかるのだ。

キツイ。エグイ。ホントにドラマ化したのなら
200ページ以降でないと放映もできないような
そんな描写が続く。

小説中に、心臓移植しか救える道の無い
10歳の男の子を持つ日本人家族が、
正規の順番待ちでは、間に合わないという
焦りから東南アジアの違法ルートを選択する。
「じゃあ、あなたが私の子供を
 救ってくれるんですかッ??」

「金さえ払えば何をしてもイイという資本主義」

小説に出てくる人間、特に最下層で犯罪に
関わるしかない人々のことを、ココで悪し様に
言うのは簡単であるが、もし自分がアノ国の
貧民層に生れ落ちてしまった場合、
青臭い学生じみた正議論からをぶち、
偉そうに闇勢力に対抗できるだろうか?
むしろ、中途半端に如才があった場合
「食べるため」と称して積極的に闇の側で
活躍してしまうかもしれない。

今の自分が、まがりなりにも人並みに教育を
受けて家族と暮らしていられるのは、
自分の能力というよりも、それを
(少なくとも表向きは)実現することの出来る
社会(国力)を持った国に生まれたからに
過ぎないのではないか?
そんな当たり前の事を再確認させられた。
日本をそういう国にしてくれた先人達に感謝。

小説のオチには(想像ついたけれど)ビックリ。
でもあれが現実だと思う。

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2009年10月06日

「半落ち」横山秀夫

「半落ち」横山秀夫

「人間 五十年 化天のうちを比ぶれば
 夢幻の如くなり・・」
敦盛

相変わらず、横山さんの小説は
とっても読みやすい。
気がついたらこの人の作品読むの
コレで三作目。
・クライマーズハイ
・出口のない海
そしてこれ。
昔「寺尾=ルビーの指輪=聡」主演で
映画化され、嫁さんと観に行こうかなんて
話しているうちに上映が終了してしまったヤツ。

「半落ち」・・犯人が己の罪を認め、なにから
なにまですべて自供する状態をギョーカイ
用語で「完落ち」というらしい。いつも、
こんな犯人ばっかりだったら世話ないが、
事件そのものについては協力的で積極的に
自供する、どこか引っかかる、何か隠している
事件の一番大事なところを隠すために
協力的なんではないか?プロの取調官が
そう思ってしまうような取調べ状態が「半落ち」

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、
アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。
動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首
までの二日間の行動だけは頑として語ろうとしない。
梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、
その胸に秘めている想いとは―。
日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。

************************

・「取調べ」から出世したエリート刑事
 「取調べは一冊の本だ。被疑者は自分の物語を
  読んで欲しがっている」
 
・教生時代からカミソリといわれた辣腕検事
 「検事さん、あなたは誰のために生きているんですか―」

・傭兵(中途採用)故、特ダネねらいの新聞記者
 「東洋の人間になりたければ書け・・」

・都落ちをしてイソ弁(居候弁護士)で燻る弁護士
 「外れちゃった・・」

・梶聡一郎と同じように介護で悩む裁判官
 「梶の行為が優しさなら、そんな優しさは
  この世にいらない」

・収監された刑務所の刑務官
 「死なせない・・」

さまざまな年齢の彼らが、それぞれの立場から、
事件に触れることになり、その中から、主人公
「梶聡一郎」の生き様が浮き彫りになってゆく。

エリートだろうと人を裁く身であろうと、生きてゆく
以上、いろんな事情を抱えており、背中で泣きながらも
感情をおくびにも出さず、日々の現場で戦っている。
そんなプロの(おとこ)達の、一つの事件を通して
感じ取った「想い」のリレーが、最後の最後に
収斂されてゆく様は圧巻。

「ひとつくらい・・(仕事での)自慢話くらい
 持っていたい―
 そうとも。自慢話すら持たない男の老後は
 憐れに決まっている」

いろいろある。
人生色々あるよ。うん。



・・まあ、主人公が多少「出来すぎ」という感も
否めませんが(まいどまいど悪い癖で申し訳ないw)

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ラベル:半落ち 横山秀夫
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2009年06月13日

「博多殺人事件」内田康夫

「博多殺人事件」 内田 康夫

上司からもらいました小説。
博多殺人事件 (講談社文庫)
内田 康夫 (著) です。
2時間ちょっとで読破。

あらすぢ
出版社/著者からの内容紹介
浅見光彦、デパート業界の連続殺人に挑む!
史跡調査で浅見光彦が見つけた白骨は、博多進出を狙う
新興流通グループ幹部だった。一方、地元デパートの
案内嬢が殺され、不倫相手と噂の敏腕広報室長に容疑が
かかるが、彼は殺された幹部の最後の目撃者だという。
「容疑者を救え」兄の刑事局長・陽一郎から
意外な命を受け、浅見はデパート戦争連続殺人に挑む。

博多といえば
・新幹線の終点
・ラーメン
・武田鉄矢
・博多華丸・大吉
・ガメラが来たとこ
・ダイエーの拠点
そんなとこですかね。

ことの起こりは、地元の経済界のやり方を
完全に無視して殴り込んできた
新興勢力VS九州経済界という構図から。
だれも何も書いていないけれど
だれがどう読んでも、ここでいう新興勢力ってのは
「ダイエー」のことです。

小さい会社の下っ端営業として、細々と営業活動
しているに過ぎないPONにとりまして、劇中に
出てくる「新興流通グループ幹部」の営業手法
新天地への浸透手口には、小説であることを
差し引いても素直に感心。
あれこそがやり手「ビジネスマン」の「営業」
なんだろうな。

電話で営業して、繋がった窓口の方とだけ会話して
営業した気になっていては、いつまでたっても
大きな仕事はできないようだ。

会長とか社長しか出入りできないような会員制クラブに
足繁く通い、キーパーソンがゴルフ好きならば
誘われなくてもゴルフ場に出向き、自らの出身学校閥を
最大限に利用、必要ならば愛していなくても
女性をものにして情報源とする。・・俺にはとても
できないけれど。

さすがご当地ミステリーの大御所、内田先生。
ミステリーの書き方のうまさは相変わらずです。
前にも書いたけれど、いつでもドラマ化
できるような小説。

美人は美人、おしゃべりな女性はおしゃべり、としか
形容していないから、役に誰を当てはめてもかまわない。
博多だって、ホテルも百貨店もどこでロケしてもOK。
ステレオタイプすぎる面もあるけれど、ほとんどの
役柄は期待を裏切らない。怪しいヒトは結局怪しいし
基本的に美人は被害者にはなるが悪いことはしない。

この小説の場合、犯人の動機はともかく
彼らの犯罪ネットワークにはちょっと無理がある
気もしたけれど、まあいいです。

それからこの小説は1990年初頭に書かれたので
今となっては陳腐化してしまった設定もあります。
電話なんかその例。携帯電話の出現と普及というのは
世のミステリー作家にとって非常に脅威だったんだなあ。

主人公、浅見光彦は水戸黄門みたいだ。
いざとなったら、お兄さんがいるしね。

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2009年05月06日

「呼人(よひと)」野沢 尚

「呼人(よひと)」 野沢 尚

上司からもらった小説を読み続けるシリーズ。
本日はこれ「呼人」野沢 尚 講談社文庫
野沢 尚さん、作者名は聞いたことがあるが
PONにはお初。この人は「TVドラマ」の
脚本家が主業務のようだ。

・・調べたら4年前に自殺されていました。合掌。

あらすぢ
少年は12歳にして「永遠の命」に閉じ込められた!?
僕はなぜ大人にならないのだろう。心も躰も成長を止め
純枠な子供のまま生きていくことは果たして幸せなの
だろうか。出生の秘密を自ら探る呼人が辿り着いた
驚くべき真実とは。感動のラスト、権力者の理想が
引き起こす現代の恐怖をリアルに描いた傑作長編。
内容(「BOOK」データベースより)

************************

自分、文庫裏にある「あらすぢ」(上記と同じ)を
まったく読まず、いきなりページを開き始めたんですが
それで正解だったと思う。

あらすぢは、PONも読んだ文庫の背表紙にも
記載されていたまんまなのだが

>権力者の理想が引き起こす現代の恐怖を
>リアルに描いた傑作長編。
「権力者の理想」→これは何?
作中に少なくとも「権力者」は出てこないと思うが
ああ「ミスター・ホワイト」のことか?
(↑作中に出てくるアメリカ闇の世界の帝王)

昔、記事にしました角川ホラーの小説「夏の滴」のように
1980年代の夏休み、瑞々しい少年物語の装いでスタート。

ところが、話が進むと主人公も含め、なにかいろいろ
「訳アリ」であることが明らかになってくる。

そうくるかあ・・

最後の方まで抑えられてきた主人公の母親の正体が
なかなかストレートだったので結構ビックリ。

登場人物
呼人:12歳で成長が止まってしまった主人公
   永遠の12歳→12歳といえばマッカーサーが
   日本のことをそう評価したが、この呼人ってのは
   日本の総体(日本人の平均的意識でいいと思う)
   の象徴と解した。
:呼人の親友その1、労働者階級出身ながら
   生まれつきの秀才。彼は主人公とは違い成長する
   ・・日本の経済面の象徴
厚介:呼人の親友その2、インテリ家庭出身
   ながら体力勝負派。もちろん彼も成長する
   ・・自衛隊にみることができるイビツな日本の
   軍事面の象徴。
小春:不倫やら、略奪婚やら、まあそういった
   日本の文化面の象徴。
  (「不倫は文化」とのたまったどこかのおバカもいましたな)

厚介を通して語られる自衛隊にしても
子供の夏休みの風景にしても
あるいは連合赤軍、ベルギーの風景など引用が
多すぎて、なんかイカにもヨソから引っ張ってきました・・
という、いずれも作者の血の通った文ではなく
書籍上の知識を引用して肉付けした感は否めませんでした。

つまり、読×新聞の記者が得意としているような、
「見てきたかのようなウソ」が書けていない。
小説の作者は、ぜったいに自分が書いている
小説世界を実体験していなければならない・・と
いうわけではないが(だったら宇宙戦争モノや怪獣・ホラー
モノなど書けなくなってしまうし)

エンターテイメント小説としては面白いと思います。
二度読むほどではないですが。

もくじには・・
第一章 1985 十二歳
第二章 1992 十二歳
第三章 1999 十二歳
第四章 2005 十二歳
第五章 2010 十二歳
とあるが、まあおおよそこのとおり。

1999年に書かれた小説なので、それ以降の世界描写は
氏の想像の産物ですが、はずれています。
はずれて良かったですけど。

自衛隊

連合赤軍と永田洋子

日本航空123便墜落事故

大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件

フランダースの犬

・・な小説でした。



いつまでも元気でいて」という
親が子供に向かって思う気持ちに
収斂されます。すべては。
 
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完全ネタバレ
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2009年03月29日

「カオス」梁 石日

言いたかないけど、早いねぇどうも。
そんなに急いでどうするよ。
月日さんよ。
日々「カオス」で生きる当ブログ。
とまあ、そういうことで。

マスライです。

************************

カオス」 幻冬舎文庫
梁石日(やんそぎる)著。

「女というのは、男が入れ込めば
 入れ込むほどつけあがり、逆に
 突き放すとしがみついてくる生き物なのだ」


上司からいただいた本。
当ブログで取り上げる本も、ホント「カオス」状態で
ありますが、

いやービックリ。いまどき冒頭に引用したような
内容が平気で出てくる小説ってのも。
いまさら、女性蔑視だ!なんて騒ぐつもりは
毛頭ないけれど、某福島氏や田島センセあたりが
見つけたら、どうなることやら。

あらすぢ
宗教、人種、性別…。秩序から解放された時、
誰もが正統にも異端にもなり得る-。現代社会の歪みを
凝縮させた街・歌舞伎町を舞台に、混沌に潜む
人間の業と希望を鮮烈に描く。
『ポンツーン』連載に加筆・修正して単行本化。
内容(「MARC」データベースより)


歌舞伎町が良くも悪くも元気だった
1990年頃を想定したお話。

民族学校(北朝鮮系)を卒業した在日、
日本人でも朝鮮人になることもできない
そんな何も頼るものがない腐れ縁
二人の男のピカレスクロマン。

身を守るためにとは言え切った張った
(早朝の歌舞伎町で発砲したり)する彼ら。
PONのような一般民からしたら、いったい
主人公と「極道」=やくざの何が違うのか?
とも思うけど、あんな主人公達ですら
極道でないとするなら、彼らの言う
本物の「極道」や「アジアンマフィア」とかって
どこまでバケモノ(非人間的)なんだろ?
という気もした。

なんつーか、主人公のガクとテツ。
彼らは生き抜くために、危ない橋を
渡らざるをえない存在であるに過ぎない。
そんなに選択肢のない彼らが、
ただこっちの方が幾分マシと選んだ道には
さらに酷い状態を招くきっかけとなり。

小説の主人公であるからには、爽快な
活躍をお願いしたいところであるが、
この主人公達は、自分達の手に入れられる
情報とコネだけを頼りにただ生き残るのみ。
神の視点なんか持つはずもないから、いつも
後手後手。

彼らが爽快な活躍をして、歌舞伎町の
片隅を掃除して歩く・・とか、嫌々ながら
最後にはついに立ち上がり、天に代わって
悪を討つ(敵組織壊滅)・・なんて、筋書きは
絶対出てこない。どこまで行っても、彼らは
単に生き延びるために目先の選択をし続ける。
恐らく自分達が死ぬときまで。
だから、このあらすぢの
「命と金をまもることができるのか?」
は、大げさでもなんでもない。

組織相手の喧嘩だもの。一個人だったらまあ
そんなものだろう。

そうだなあ、前に読んだ小説「千里眼」シリーズの
主人公「岬美由紀」が、戦局まで変えてしまう
万能選手「ガンダム」なら、こちらの主人公は
「MSのあしもとで、数少ない選択肢を行使
 ただ生き延びるためだけに頑張る歩兵」
って感じ。まさか敵(MS)を倒すなんて、
大それたことなど考えられない。
毎度解り難いたとえでスミマセンが。

かつては日本人の中にも、既存の価値観も組織も
権威も完璧に破壊された戦後の焼け野原で
全力で生きていた連中もいたんだろうな。

でも、戦争が終わって65年以上経ち、
社会の仕組みもたいてい確立してしまった今に
いちおう勤め人をやっているPONにとって
彼らの、動物的な生き方(意図的な殺人以外に
タブーなど存在せず、ただ、やりたいからヤル。
欲しいからムチャをして、旨い物をたらふく食い
人二倍裏世界の闇を怖がり、酒に逃げ、女を
孕ませる)には、少々、目からウロコだった。

ああいう生き方もあったのだ。
今の勤め人(日本人)には「タブー」が多すぎる。
PONも含めて、なんと自分は飼いならされて
しまったんだろうな〜と思わなくもない。
戦後の文部省の教育の成果だ。



在日の闇社会にはまだ残っていたようだ。
少なくともこういった内容が小説として
成立する時代があったということは。

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ラベル:カオス 梁石日
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2009年03月27日

「龍は眠る」宮部みゆき

「龍は眠る」

「ヘンね。超能力っていうとなんで
 スプーン曲げなのかしら。・・スプーンなんて
 いくら曲げたってなんにもならないじゃない?」


「宮部みゆきってヤベーよ」
十年前にPONなんかよりよほど読書家の
友人が騒いでいたことがあったけれど
今になると彼が騒いでいた理由が解かる。
なにがそんなに「ヤベー」のか?
仮にも読書家なら、もう少しマトモな
日本語をつかって説明してみろよと
当時のPONは言ったものだが
「・・読んでみなければわからんよ」
と一蹴されてしまったことを思い出す。

<あらすぢ>
嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう
道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた
少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、
稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。
その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した
死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ
…宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。

************************

「現実と非現実、合理と非合理は、それとよく似た形で
 共存している。永遠に交わることのない二本のレールだ。・・
 合理のレールに傾きすぎれば冷血漢になり、
 非合理のレールだけで走ろうとすれば狂信者と呼ばれる・・」


面白かった。お勧め。
ひとことで言えば「超能力者」の話なんだけどね。

話の展開が、主人公と少年が出会う、
前半の「マンホール」事件と
後半の「主人公脅迫とその一連の」事件に分かれる。
その両方の謎解きに読者はテンポ良く振り回される。
宮部みゆきさんは、その性格からか、事件の
理由と裏事情を、適度にじらせながらも必ず
種明かししてくれる(しかもわかり易く)ので
その辺は安心して小説に浸っていただいてかまわない。
とにかく次が読みたくなること請け合いだ。

小説は、犯人が誰なのかという軸に加えて
誰が嘘をついているのか?
敵なのか味方なのか?
そもそも超能力なんて存在するのか?
なんて疑惑が交錯して進む。

「ときどき人は致命的に無責任になる。
 悪意があってやったことならまだいいが」


「人間はな、大人は、自分が知らないうちに
 悪いことをしたと気づいたとき
 すぐに「スミマセン」と言えるほど単純じゃないんだ」


主人公というか狂言回しの「高坂昭吾」も
オトナとしてのキャリアをみせる。

その高坂の同僚記者で百戦錬磨の生駒氏もカッコいい。
硬軟あわせ持つ考えのできる大人だ。

「おまえは元彼女にえらく自尊心を傷つけられているからな。
 傷ついたプライドを取り返したいばっかりに、人に惚れるー
 惚れ続けるってことはある。敗者復活戦を狙うわけだ・・」

超能力者にはなれずともよいので、願わくば
こういうオトナになりたいものです。
自らはいわゆるオールドタイプ(一般人)でありながら
知力と経験に裏打ちされた洞察力で、主人公に
的確なアドバイスをする。この小説世界に
ニュータイプ(超能力者)が居なかったら
彼こそが、もっとも真相に近づくことのできる
人間だったろう。近づくことはできても完全解明は
できなかっただろうけど。

でも、実社会においてもたいていの人間は
わずかな手がかり、表面上の事象をもとに、
そして少しの考えだけで判断、行動するしかなく
ほとんど何もわからないまま、後始末に生きる
しかないのが本当のところ。

「俺は無神論者だよ。でも世の中がよくできた何か
 によって辛うじて回っているくらいは理解しているー」


「超能力なんて存在しない。あれは大人の夢だよ。
 だけど子供はときどき茶目っ気をだして、
 それをかなえてくれようとするときがある・・」


「過去に小細工は効かない。これは絶対だ」

小田原で隠居している元刑事。もう少し活躍するかと
思ったが、本人が話中で話していた姿勢のとおり
もう隠居したので結局アドバイザーどまり。しかも事後
で終わってしまったのにはちょっと残念。

この小説が「稲村慎司」を中心にシリーズ物と化したら
元刑事は良い後見人として結構話が展開しそう。
慎司はまだ若いから、この小説ではあまり
いい所がなかったけれど、織田直也が持つことができなかった
生きる前向きさを武器にして、今後も経験を重ねてゆけば
無敵のトラブルバスターになれそう。
っつーかこの小説では彼は真の主役ではなかった。

【少々ネタばれ】
主人公がヒロイン(三村七恵)と一緒になってしまう
ところと、○○がその能力をもってマンホール事件の
犯人を利用、事件の収拾にあたるあたりは、少々
無理矢理な感じもしたけれど。

「織田直也」の過去には明け透けな馬鹿ギャルが
出てくるが、明け透けなだけに能力者にはかえって
安心できる(脳みそツルツルで裏表がまったくないから)
存在という逆説は面白いものがあった。

「龍は眠る」っていったい何が「龍」なのか
最後の方になって突然判明するが、この小説のカラーには
(どんなカラーなのかといわれても困るが)
「龍」の文字はちょっとそぐわない感じも。



最後に、主人公を振り回したスーパー自己中な
元婚約者「青写真・小枝子」。
たしかに己の理想だけが中心のお嬢様で非常に
厭な奴ではあるが、あまりといえばあんまりな
ぞんざいな扱い。一応、被害者で妊婦なのですよ?
彼女のことがそんなに嫌いなのか?作者さんは(笑)
俺も厭だけど。そばに居たら。でも実際に居そうで怖い。

世の中、起こってからでないと他人に理解されないことの
なんと多いことか・・。

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ブロックバスターって・・
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2009年01月12日

「千里眼 メフィストの逆襲」松岡 圭祐

「千里眼 メフィストの逆襲」

松岡 圭祐 小学館文庫
上司からの頂き物シリーズであり
千里眼シリーズであります。
「洗脳試験」に続いて読んでみました。

今度は暗黒面に支配された「ダーク岬美由紀」
ともいうべきキャラが、北の国からやってくる!

人の家にあがりこんで大きな顔をする国の組織
【人民思想省】に所属する彼女。

対話を求めればはぐらかされ
対立せざるをえないと感じると
すすんで敵対関係を選ぶ相手。
本質的に異なる人生観を身につけた
異星人のような彼女(北朝鮮の工作員)に
対して・・

あらすぢ
シーズン・オフの日本海海岸。父親の目の前で、
十三歳のひとりの少女が忽然と姿を消した。
海上には、時を同じくして朝鮮民主主義人民
共和国(北朝鮮)の不審船が出没していた。
それから四年。北朝鮮人民思想省工作員と
思われる謎の女が、千里眼・岬美由紀の前に現れた。
同時期、岬は奇妙な銃器事件に遭遇する。
その陰には、かつて岬を苦しめた
“メフィスト・コンサルティング・グループ”の
密使の姿があった。北朝鮮とメフィスト―。
二大マインドコントロール集団が
岬を、そして日本を襲う。

内容(「BOOK」データベースより)

************************

前に読んだ「洗脳試験」がオウム真理教ネタなら
今度は北朝鮮拉致事件。
作者は、その当時のタイムリーでセンセーショナルな
事件を作品に絡めている様子。

相変わらず、Wikiで調べたのだが
どうもこの「千里眼」シリーズは
小説発表→単行本発売→文庫化と経るたびに
陳腐化する時事ネタを書き直したり
展開を少々変えたりしているようで。
しかも時期によって「角川文庫」から発売されたり
「小学館文庫」から出ていたり。
なんか色々事情があるのでしょう。まあいいや。

文体は、変にまわりくどい表現や展開もないので
スラスラ読めて、ストレスなし。

それにしてもすごい。主人公、岬美由紀さん。
ヤクザ、チンピラレベルなら
阿修羅のごとくたたき伏せ、
強権を持つ悪辣な政治家、官僚には進んで刃向かい
弱者(本当に困ったヒトや老人、子供)には慈母のごとく。
それでいて28歳、だれがまあ見ても「美人」と
断定できる風貌とプロポーション。
F−15イーグルも大型バイクも乗りこなし
簡単な爆弾くらいなら解体可能。カウンセラーとして
数々の読心術もあって、なお独身。

最強でしょ。

こちらの方が先輩なんだろうけれど、福井春敏氏の
「亡国のイージス」にそっくりなフレイバー。
妙にミリタリーに詳しく、日本の政治と国防を
憂い、一般民とマスコミの堕落振りを嘆く。
ましてや今回はベースが「北朝鮮による拉致」だもんな。
ますます似ている。

こういった小説をネトウヨと同レベル。
文才のある軍事マニアが書いた小説
と断定するのは簡単なんだが、
あくまでフィクションで「エンターテイメント」小説に
過ぎないことを差っぴいても、常日頃、あまりに歯がゆい
日本の政治・外交を見せつけられてしまうと、
つい、こういったミリタリー小説で、溜飲を
下げたくもなるよ。

けど、それじゃあ、ひと昔前に南朝鮮で流行った
天皇家の一人娘が南朝鮮の青年と恋に落ち
 日本という国のあまりの酷さに

(あくまで南朝鮮から見ての話ねw)祖国を裏切る」
って小説「百済書記」を楽しんでしまう
あの国の思考様式と同レベルになってしまうし。
難しいところ。

せめて、かかった火の粉を振り払うことくらいは
堂々と行える国であって欲しい・・と思う反面
戦前、戦中のような国に戻るのも勘弁して欲しい
と願う自分は小市民であります。

助けて、岬二尉。



〜信頼できるハズの上司のセリフ
「裁判所がダメでも、そこまであやしいなら
 外務省が何らかの手を打つんじゃないのか?」
これだ―美由紀は内心悪態をついた。
誰かがなんらかの手を打つ。どうにかしてくれるだろう。
日本ではそういう責任のたらい回しが常識となっている。
息を潜めて楽観主義に徹していれば救われるに
ちがいないと信じている

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今度調べておこう・・
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2008年12月06日

「グレイヴディッガー」高野和明

「グレイヴディッガー」高野和明

講談社文庫。これも上司にもらった文庫。
今度の話はなんじゃろな?と
事前情報なきまま、またまた読書開始。

あらすぢ
改心した悪党・八神は、骨髄ドナーとなって他人の命を
救おうとしていた。だが移植を目前にして連続猟奇殺人
事件が発生、巻き込まれた八神は白血病患者を救うべく、
命がけの逃走を開始した。首都全域で繰り広げられる
決死の追跡劇。
謎の殺戮者、墓掘人(グレイヴディッガー)の正体は?
圧倒的なスピードで展開する傑作スリラー巨編。

************************

あらすぢで散々煽っておりますが・・
>謎の殺戮者、墓掘人(グレイヴディッガー)の正体は?

・・正体は、なんだったっけw
半年くらい前に読んだ本なので忘れてしまいました。
読んでいるうちは、ジェットコースター的展開で
それなりに楽しめましたケド
主人公のおかれる状況(小説での設定)に
割とムリがあった気がします。

・元ワルで
 →もうこの時点で社会の善意は期待できない
・ワナにはめられ
 →組織を(具体的には警察を)頼れない
・捕まる訳にも、大怪我や死ぬわけにもいかない
 →ドナーとして白血病患者のため
・都内各地を体ひとつでとにかく逃げ回る
 →お金も移動手段もないので
 
主人公の行動を制約するために
色々と後付設定が付随していった感が。

っつーか、主人公は「自分の生き方を変える」
その第一歩として「骨髄移植」をすることにした。
まあ、それはいいけれど、自分が死ぬか生きるかの
瀬戸際にまで、とことん「骨髄移植」にこだわる
(→あらゆる障害を乗り越えて病院へ駆け込もうとする)
というのは、さすがにこだわりすぎだろ。
行動理由として弱く、納得できない。
それが男の意地からきているのだとしても。

権力組織(警察内部)に旧知の仲がいると
自分が何者にも頼れなくなったときに
なにかと重宝します・・ということで。
あと、ドナーを保護する役の病院側の方も
何かと頼りなるなあ。

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2008年11月03日

「千里眼 洗脳試験」 松岡 圭祐

「千里眼 洗脳試験」 松岡 圭祐
小学館文庫

上司からの頂き物シリーズでございますが
千里眼シリーズもこの作者も、知りませんでした。
どうもスミマセンね。

あらすぢ
東京・奥多摩山中に忽然と出現した白亜の六角形の
建造物。それは、主宰も目的も不明な謎の自己啓発
セミナー「デーヴァ瞑想チーム」のものだった。
防衛庁出身の元国家公務員で“千里眼”の異名をとる
カウンセラー・岬美由紀は、そこに4000人の人質が
捕らわれ、爆弾テロに脅かされていることに気づく。
その中核にはカルト教団教祖としてかつて日本を
震撼させたあの女の存在があった…。
岬の宿敵・友里佐知子は生きていた!
制限時間500分。増長する現実のテロリズム世界を越える、
史上最悪爆弾テロ成立の可能性を描いたシリーズ第四作を
緊急文庫化。
内容(「BOOK」データベースより)

>緊急文庫化
いや、なにも緊急文庫化しなくてもいいけどねw
小学館さんも。

「デーヴァ瞑想チーム」ってぶっちゃけ作者は
「オウム」の事件を書きたかったんだと思う。

面白かった。ノンストップアクション小説。
「千里眼」シリーズって総計400万部の
売り上げのあるエンターテイメント小説らしい。

ガンダムで言えば、ファーストを観ないで
いきなり「逆襲のシャア」から観てしまった
ようなので、いまいち消化不良な部分が残ったが
それは読む順番に無頓着であったPONの
責任であるのでまあ良いでしょう。

主人公、岬美由紀は、すべてのエエところを
盛り込みまくったスーパーウーマンで
あまりにも超人過ぎて、人間味にかけるのと
キャラがかわいそう。

あれじゃ活躍させすぎ。作者が用意した絶体絶命の
ピンチにすべて応じている
(だからこその主人公ではあるのだが・・)
少しは休ませてあげて。あれかな、作者は
主人公をいじめる為に小説を書いているのかな。

この主人公、PONの得意ジャンルで言えば
そう「ガンダム」。オールパーパス仕様なんで
とりあえず「岬美由紀」出しておけば安心・・みたい。
大抵のことはパーフェクトに後始末をしてくださる
彼女がいるおかげで、作者は相当ムチャな
シチュエーションを仕立てることができます。
大気圏突入も可能ですよ。彼女なら。

岬はパーフェクトすぎる女性なんで
この話でリベンジのためかえって来た
最強、最悪な悪役、友里佐知子のほうが
よほど魅力?的なキャラになっていた。
そんな意味でも岬美由紀というキャラは
少々かわいそう。

岬美由紀について言ってもいいですか・・

いねーよ。そんな奴。(笑)

作者は、文庫化、単行本化するたんびに
追加修正をしているらしく、常に最新の版を
お読みください、とか書いていたけれども
さもありなん。

けっこう実名で、当時の日本の文化風俗が
突然出てくるので、その点風化するのも早い小説。
例えば、作中で、死んだと思っていた人物が
生きていることが判明するのです。
最強の敵が生きていたことを信じたくない
対策本部の面々は、
生前のビデオが残っていただけだ!・・と
無理矢理、推測するんですけど
画面に、女性雑誌だか新聞の切れ端だかが
映っていて、そこには
「チューブの前田と飯島直子が離婚!」
と書いてあることから、
今wの話であることを嫌でも理解する・・だとか。

ネタバレですが、最後なんか
主人公、岬がガンダム=アムロならば
友里佐知子はシャア。
ただし、岬の方がアムロよりも弁が立つので、
こちらの話では迷走するシャアすら
説き伏せてしまってます。



ハリウッド映画のように深く考えず
楽しんだ後には、何も残らない・・
まあそれで良いのだと思います。
このシリーズは。
さて、つづきのシリーズを読むとしますか。

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ネタバレ
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2008年10月22日

「スメル男」原田宗典 

「スメル男」原田宗典

講談社文庫。上司にもらった文庫です。
事前情報なきママ、またまた読書開始。

原田宗典さんは、後書き解説でも
「言葉の魔術師」とか持ち上げられていますが
さすが、文体や話の展開は上手いです。
どこかで読者をおちょくり、肩で笑いながら
一応は、まじめに話をすすめる。ときどき
後ろを振り返りながら。
その間合いを楽しんでいる作者の姿が
見えたような気がしました。

あらすぢ
ぼくの体に、何かとんでもない変化が起きている。
東京全都を嘔吐させるような異臭がぼくの体から
漂い始めた。原因はわからない。気弱なぼくを
信じてくれる人はたった1人。
コンピュータを自在に操る天才少年たちも仲間だ。
八方ふさがりの迷路の中で、今、ぼくのとてつもない
青春の冒険がはじまる。
内容(「BOOK」データベースより)

作者にとって、長編小説はこれが
はじめてなのだそう。
(自分も意外に思ったが、この頃までは
 エッセーとか短編ばっかりだった様子)
傑作ではないが良作だと思う。

巧みに、伏線を張って丁寧に回収。
PONが感心したのは、主人公が
緊張したときにはドモるという設定に
なんでわざわざしたのか、というところ。

なるほどね。
いくら、賢いわりに不思議なところでは
ボケているヒロインでも、主人公側にも
何か「しかけ」がないと。
あのシーンで更に話がややこしく、
余韻のない終わり方になってしまうモンなあ。
うんうん。

ちょっと強引な設定や、ご都合主義的
展開もあるけれども、オヤジジュブナイル小説
だと思えば充分楽しめます。
そうか〜、そう来たか〜、と
最後までイッキに読んでしまいました。

この原田宗典さんは、いつも自分の作品名
ひと工夫、というか、必要以上にヒネろうと
しているようにみえる。あるいはカナリの
こだわりがあるのか・・。

今回の場合は「スメル男(おとこ)」
照れ隠しなのか、卑下なのか、あまりにもストレート
過ぎるあたりが、作者流の「こだわり」なんだろう
けれど、これが裏目に出ている気がする。
正直、あんまり読む気がおこらないんだな。
この題名。
その辺が少し残念。



自分もこういった出会いでなければ、
人生の限られた予算や時間を、
こういう題名の本をわざわざ振り分けたり
しなかった思う。
好きで損しているような小説。

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2008年09月24日

「シリウスの道」藤原伊織

「シリウスの道」 藤原伊織

「なにかを選べるだけで恵まれているさ。
 恵まれすぎてる。
 そういうことさえ、はなっから
 あきらめるしかねえ人間もいた」

あらすぢ
東京の大手広告代理店の営業部副部長・辰村祐介
は子供のころ大阪で育ち、明子、勝哉という二人
の幼馴染がいた。この三人の間には、決して人には
言えない、ある秘密があった。それは…。
月日は流れ、三人は連絡をとりあうこともなく、
別々の人生を歩んできた。しかし、今になって
明子のもとに何者からか、あの秘密をもとにした
脅迫状が届く!
いったい誰の仕業なのか?離ればなれになった
3人が25年前の「秘密」に操られ、吸い寄せられる
ように、運命の渦に巻き込まれる―。
著者が知悉する広告業界の内幕を描きつつ
展開する待望の最新長編ミステリー。
内容(「BOOK」データベースより)

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この「あらすぢ」ちょっと大げさ
特にこのヘン↓
運命の渦に巻き込まれる―。

ホンの脇役であるのだが、話中に「つまみ」が
ホットドックしかないボロな「バー」が出てくる。
この行を読むまですっかり忘れていたのだが
自分は以前も上司に借りて、藤原伊織さんの
テロリストのパラソル」を読んでいた。
テロリスト〜の主人公が生活の根城にしていた
のが、そのバーなのである。なんか嬉しい。
刑事くずれの気のいい?ヤクザである「浅井」も
健在。世界のクロスワールド。ガンダムとかで
たまに見られる手法。

前作「テロリストのパラソル」は、一筋縄でない
青春時代(過去)を持つ男二人が、奇妙な出会いをして
過去を清算しようとする物語。
ネタばれだが主人公は元学生運動過激派、
協力することになる「浅井」も、警官くずれのヤクザ。
清算する過去は、爆弾テロで民間人を犠牲にして
しまったことであり、
更に言うなら主人公以上にそれを未だ引きずり
彼なりの論理から今でも爆弾テロを引き起こす
元親友。

それに比べると、同じ世界観の話ではあるが
この小説「シリウスの道」は「ハードボイルド
サラリーマン小説」である。小説に出てくる事件も
ちょっと小さい。もっとも一般人世界としては
充分大きな衝撃だけれど。

主人公「辰村」は、大手広告代理店の副部長。
仕事も出来て、美人の女上司にモテ、筋が通らないと
上司(社長でも)に平気で楯突き、信頼できる有能な
後輩、情報通で協力的な同僚と、おおよそサラリーマンが
あこがれる?環境の中、競合他社と、無能な上司と
戦いながらも、この会社は腐っている、こんな仕事
なんか、いつだって辞めてやるよ的スタンスで
勝手にやさぐれているのだが・・根本的には勤め人
なのである。

それなりにダークな過去を背負っており、腕っぷしも
立つのだが、かなしいかな、どこまで行っても、
所詮は元気なサラリーマンに過ぎない。切った
張ったを演じてきた彼(浅井)には遠く及ばない
あたりがなんとも。浅井元ヤクザは「闇の世界に
生きる男」の凄みをまざまざと見せつけてくれる。
まあ、この辺はボコボコにされるなかで辰村も
充分思い知ってはいるのだけど。

広告代理店の仕事運びが覗けて勉強になった。
よき人財は人財を呼ぶのだそう。
ひるがえって、今の自分は・・。

今となっては「テロリストのパラソル」の最後が
あんまり思い浮かばないのだが・・主人公は死んだ
んだったっけか?もう一度、パラパラとめくって
みれば、この小説ももう一味違って楽しめるかも
しれない。

小説を書きたい方は見本になさったら?といった
感じの文体、話の運び方は非常に読み易かった。
なんにも知らない戸塚という新人にむけて話すことで
広告業界に無知な読者に説明を入れ
株(デイトレ)についての知識は、デイトレで社員を
首になった不思議な派遣、平野が対応する。

ケチをつけるなら、登場人物がみんな出来すぎ。
敵であっても味方であっても。それからこの作者は
女性の書き方が相変わらず古い。

shriusu.jpg
ドラマ化もされたみたい。

大岡裁きをする社長は、正義の味方ではなく
組織の味方なんだな。主人公に理のあるうちは
良いが、敵に回すとめんどくさそう・・。
それから新人「戸塚」氏。出来すぎ。
新人たるもの、かく有りたいものだけど。



この小説の中のビジネスのように目から
鼻に抜けるやりとり、敵との打打発止、エッジ
ギリギリのところでのビジネスをやってみたい
気もちょっとした。
(具体的にいえば、実世界において、XXをやらせるなら
 奴に任せればはずれはない・・と誰かに言われる存在に
 なりたいのう)
とても胃が持たなそうだけれど。

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ネタばれ覚悟の書き出し
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2008年09月17日

「鐘」内田康夫

火サスといった、ああいう類の2時間ドラマが
好きな人間にはおなじみのヒーローらしい。
私立探偵「浅見光彦」シリーズのひとつ。

このシリーズと主人公をこの小説で初めて知ったが
言われてみれば確かに「浅見光彦」って名前は
新聞のTV欄なんかで何度か見たことがある気がする。

あとで調べたら、水谷豊さんが「浅見光彦」を
シリーズで演じていたらしい。なるほどなるほど。

あらすぢ
始まりは、深夜不気味に鳴り渡った鐘の音だった―。
浅見家の菩提寺にある鐘に付着した血痕、その鐘の
模様痕をつけ、隅田川に浮かんだ男の変死体。
浅見光彦は、その死に秘められた人間の哀しい
愛憎の謎を追い、四国高松へ、そして越中高岡へと
向かう。やがて、被害者の美しい妹と共に辿り着いた
真実とは?浅見の推理が冴え渡る、傑作長篇。
内容(「BOOK」データベースより)

主人公浅見光彦は、名家の次男坊。
長男は警視庁でお偉いさんのルートを昇りまくっている。
一方、我らが浅見光彦は未婚でフリーのルポライター。
各地で探偵ごっこ(自称)をしている。
そんな次男を常日頃から歯がゆく感じている
気の強い母親。もともと争い事が嫌いな浅見光彦は、
母親に頭が上がらない。

(浅見は善意で警察に協力しているので、交通費の
 やりくりも一苦労・・)
「前借りなどと、みっともないことはおやめなさい。
 男子たる者が借金していいのは一生に一回だけです」
「はあ、それはどういう場合でしょうか?」
「決まっているでしょう、妻をめとるときだけです」

「―正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、
 国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、
 嘉村磯太三十七 ―これは太宰治の「津軽」の中に
 出てくる太宰の独白のような言葉だが、
 太宰は若くして逝ったそれらの文人たちよりも
 長く生き永らえることを恥であるかのように、
 そう言っているのである。
 あと数年もしないうちに浅見も彼らの死んだ年齢に達する。
 この世に何ほどのことも残さずに―」

野郎ひとりでは絵づら的に面白くないので、
2時間ドラマで事件を追う場合には
「いかにも」な相方の女性がつきものだ。

今回のやりそうでやらないキャラ、浅見光彦の相方は
被害者の妹「慧美(エミ)」。美人であるらしい。
結局小説ではプラトニックで終わるが。

なんていうのかな、小説自体は面白くてスッと頭に
入ってくるんだけど、人物描写と情景描写が
少々薄っぺらい感じに思えた。
こういった「地方巡業ミステリー」小説の
大家である内田康夫センセイに喧嘩を売っている
わけではなくて、センセイがワザとやっているように
思える。

つまり、TVドラマ化する時に誰が演じてもいいよう
最大公約数的書き方をしている。
今回登場するヒロインにしても、ひとこと「美人」であると
書いてあるが、どんな美人なのか、微に入り際に入り
「美人」を描写するわけはでなく、
例えば「誰もが振り返であろう「美人」である」
・・みたいな描写で済ます。
読者の想像に100%委ねているって感じ。
想像に委ねるわけだから、映像化して
ヒロインを誰が演じることなっても違和感がない。

同じく、主人公が泊まることになる宿泊施設にしても
単に「ホテル」としか書いていないから、ドラマの
プロデューサーがどこのホテルとタイアップして
映像化したとしてもまったく問題がない。
しかも高松なら「栗林公園」、尾道なら「因島」みたいに
映像にも困らない舞台設定。
なんてテレビドラマ思いの小説なんだろう!
最後には古都まで出てくるし。



2時間ドラマの原作はこう書くんだよ?と、
常に作者から問いかけらているような小説でした。
お手本。

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ラベル: 内田康夫
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2008年09月03日

「手紙」東野圭吾

「おまえ、ジョンレノンの「イマジン」を
 歌っただろ。ちゃんと想像してみろよ。
 差別や偏見のない世界をさ」

あらすぢ
内容(「BOOK」データベースより)
強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、
獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、
就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、
「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる
苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるの
だろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、
感動を呼んだ不朽の名作。

************************

読みごたえあった。

平野社長の出現が凄い。このヒト、
主人公がやっと就職した家電量販店の社長。
いわゆる、たたき上げの爺さんなのだが、
この爺さんのひとことひとこと、こそは
作者が、主人公を通して読者に提起したい問題に
違いない。
主人公がぶつかる、そもそもの”根源”について
社長は痛烈に問いかける。
時代劇小説だったらボロ寺の住職あたりがしそうな
役回り。社長かっこいいぜ。
ああいうジジイになりたいもんだ。

<以下ネタバレ近い>

「これまでにも君は、(社会の)不当な扱いに
 苦しんだだろう?
 差別に対して怒りもしたはずだ。」
「ありました。いろいろと・・」
「差別はね、当然なんだよ
平野社長は静かに言った。

 ―差別を正当化する意見を直喜は初めて聞いた。
自分の現在の苦境は、兄貴が犯した罪に対する
刑の一部なのだ。犯罪者は自分の家族の社会性も
殺す覚悟を持たねば
ならない。そのことを
示すためにも差別は必要なのだ。これまで俺は
自分が白い目で見られるのは周囲が未熟だからだと
勝手に決めかかっているところがあった・・。

そうだ。差別はなくならない。
すべてはここから・・。

普通の小説だったら、ここで終わってもいい。
まあ、順当な結論だと思っていた。
ところが、この小説はそうはならない。
加害者を身内に持ち、社会的に常に被害者側であった
主人公とその一家に、これまた”ある事件”が発生。
彼らが被害者側に転じた時、話が急変する。

再び登場。平野社長。
「逃げずに正直に生きていれば、差別されながらも
 自ずと道は拓けてゆく。若い君たちらしい考え方だ
 ―しかし」
「正々堂々が君たちのキーワードのようだから
 敢えて言わせてもらうよ。いついかなる時も
 正々堂々ととしている、というのが君たちに
 とっての本当に苦渋の決断なんだろうか?」

平野社長は、主人公夫婦の「差別する社会」へ
姿勢、対処法が、まだまだ甘いと言ったのだ。
差別の直接の原因は主人公達にはないにしても
「逃げずに正直に生きていれば、差別されながらも
 自ずと道は拓けてゆく」
という、一見、正しそうにみえる姿勢すら、
実は殺された被害者の遺族からすれば罪を許す
理由にはならない
のだと。
それくらい、殺人って奴は
簡単に許されるもんじゃないんだ、と。

では、どうすればいいのか?
「自分から気がついて、
 自分で決断しなければ意味がない」と
平野社長は主人公に答えを教えてくれなかった。

が、ある事件により、主人公は社長が言いたかった
ことをはっきりと理解し、実行することになる。
それが何なのか明らかになるシーンは圧巻。



違うよ兄貴。
 手紙がなければ苦しむこともなかったろうが
 道を模索することも無かった・・」

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これもネタばれ
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2008年08月14日

「日輪の遺産」浅田次郎

幽窓無暦日
(ゆうそうれきじつなし)
―監獄の格子窓に月日はない。使命という
 監獄の孤独にただ耐えよ・・ってことだよ。

またまた上司から借りた小説。借りてばっかり
ですが、「面白いよ」とひとこと。

「日輪の遺産」、日輪と言えば「ダイターン3
「日輪の輝きを借りて今必殺のサンアタック!」
ですよ。



まあ、順当に考えれば「ひのもと」日本ですな。
その遺産ですからね。しかもこの小説の発売当初、
副題に「消えたマッカーサーの財宝」とか
ついてたらしい。そんな副題考えた編集者はクビだ。
一部のコアな読者で、陰謀論とかM資金とかに
異様に興味があるヒト以外は、この時点で読みたく
なくなるよな。
いまどき「消えた財宝」なんて・・グーニーズかってのw
おかげで文庫版には、そんな副題無くなってますが。

あらすぢ
帝国陸軍がマッカーサーより奪い、終戦直前に隠したと
いう時価二百兆円の財宝。老人が遺した手帳に隠された
驚くべき事実が、五十年たった今、明らかにされようと
している。
内容(「BOOK」データベースより)

現代の「おとぎ話」ファンタジーってところか。
「おとぎ話」ってーと荒唐無稽で真面目に読むに
値しないな物語って感じに、思われるかもしれませんが、
さにあらず。読後になんかちょっぴり「元気」が
湧いてきます。そんな物語。

この小説を読めば、あなたも本当に「日輪の遺産」
の隠し場所を探しだし、生活がちょっと潤うことに
なるかもしれません。マジで。

海老沢という、社会的に潔癖症なボランティアが
でてくる。70年代の学生運動の学生がそのまま
90年代に生き残ってしまったような奴で、
ボランティアにのめり込むあまり奥さんを寝盗られ、
逃げられたかわいそうな男。こんなキャラは最後には
報われずに発狂(もしくは最初から発狂)して、
物語をめちゃめちゃにしかねない危うさがあるものだが、
この物語ではそうはならなかった。そのあたりは
やはり「浅田」流ファンタジーなんだなと感じた。

「太平洋の嵐」というマニアなら知っているゲームを
現代の子供が喜んでやっているシーンが出てくる。
きっと浅田さんが好きなんだろうな。
「これはね、日本が負けるとは限らないんだよ。
 カリフォルニアに上陸しちゃったりするの」
・・そう、そうなんだけどそこまでの道のりは
容易じゃないんだな。むしろ講和結ぶ方が早いくらい。

「老頭児」と書いて「ロートル」と読ませるらしい。
そういえば何気に使っていた言葉だけども
なんか字づら的に「大陸」から軍人が輸入した言葉
なのかも知れないな。あとで調べてみよう。

後半、読んでてこっちが恥ずかしくなるくらいに
マッカーサーが日本を評価するシーンが多発する。
出来すぎな気もするが、浅田次郎さんが歴史で実在の
人物のせりふを、ああまで好き勝手に改ざんするとも
思えないので、結構本当に言い残したセリフなのかも
しれない。改めて戦後の(文字通り戦争終結後)日本と
マッカーサーという人物に興味を持った。
時間があればマジに調べてみようと思う。

今の日本に少々うんざりで、戦中戦後史に興味が
ある方にはお勧めの本。



海老沢のセリフ。
「もういいですね、これで。
 僕ら、もう遺産を受け取ったみたいです」
「結論はもうとっくに出ているのではないかね?
 責任の自覚、そして勇気。結論はすでに君自身の
 うちにある―」
「自信は、ありませんよ・・」

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