2008年08月07日

「美濃牛」殊能将之

殊能将之著 講談社文庫です。上司に借りました。
飛騨牛を偽装した『丸明』の事件がありましたが
あそこの元社長の世間を舐めきった記者会見と
結局逃げ切ったしたたかさには感心します。
ちょうど、この本を読んでいたときに騒がれたんで。
そういった意味では、たいむりー。

「―あの逆説の村」

「最初の殺人をごまかすために、関係ない
 殺人を犯すって?そんな馬鹿がいるかよ。
 一人殺しても二人殺しても同じ、なんてのは
 言葉の綾だよ。刑罰も重くなって発覚する
 危険が増すだけじゃねーか」
(意訳)

いわゆる「悪魔の手毬唄」「獄門島」とか
「鵺の鳴く夜は恐ろしい」とか
「悪魔が来たりて笛を吹く」とか、角川のせいで
いくらでも書けてしまうPONの世代ですw

無知蒙昧な村の衆、名家、民承のわらべ唄、財宝、
からくり、何か隠している婆さん、洞窟、主人公に
協力的な若い女性、近親相姦、そして無意味に派手な
殺され方をする被害者、と要するにまあ、その手の
和風ホラーが大好きな方が、オマージュ、パロディ、
もしくは俺もその手の作家になりたいのだ!
と書きあげてしまったような作品。

この小説のキーワードは「牛」「泉」「俳句」。
はじめに書いておくけれど「美濃牛(みのうし)」とは
クレタ島の迷宮の王「ミノタウロス」にかけている。
この題だけ見ても、ああその流れかと急速に興味を失う
人もいそうだ。題名で損している。

あらすぢ
探偵小説のDNAが息づく傑作長編!

病を癒す力を持つ「奇跡の泉」があるという
亀恩洞(きおんどう)は、別名を〈鬼隠れの穴〉と
いい、高賀童子(こうがどうじ)という牛鬼が棲むと
伝えられていた。運命の夜、その鍾乳洞前で発見された
無惨な遺体は、やがて起こる惨劇の始まりに
過ぎなかった。古今東西の物語の意匠と作家への
オマージュが散りばめられた、精密で豊潤な
傑作推理小説。

************************

蟹面の「出羽」という男が出てくる。この男が最初は
カギを握っているのかと、じっくりと読みこんでみた。
その期待?はいい意味で裏切られたけれども、いいキャラに
出会うことができたと思う。この地方出身の元不良で
名古屋でチンピラをやり、一通り闇社会を見てきた末に
帰郷した人物。本来ならば、こんなキャラは村人から
恨みを買って殺されたり、殺したりする役回りでも良さそう
なのに、そうならなかったのは多分、作者の性格がいいから
だと思う。

*以下作品引用*******************

・人を人とも思わない目。顔色ひとつ変えずに相手を
 半殺しにできる目だ。アマチュアがプロにかなうわけ
 がない。出羽はかつて、いくら威勢が良く血気盛んでも、
 決してこういう目の持ち主とは喧嘩しなかった。
・青少年教育も実際、重労働だ。

「飛騨牛の輝かしい歴史は1981年に始まる。
 畜産業の低迷に悩んでいた岐阜県は、プロジェクト
 チームを編成、1000万円かけて一頭の種牛
(安福号)を購入した。安福号の遺伝子はすさまじく
 飛騨牛はブランドとなり、岐阜県に数十億もの利益を
 もたらした・・」

「岐阜県のどこでつくろうが、黒毛和牛なら飛騨牛や。
 肉質検査さえ通ればな。ABCは歩留まり、一頭から
 どれだけ肉が取れるかでAが最高。数字は肉質で5が
 最高。飛騨牛であるのはA5かB5に入ることが条件や」

「普通の和牛と飛騨牛では雲泥の差や。育てるのに1年多い
 3年かかるうえ飼料代が年間数十万かかる。大ばくち
 みたいなもんや。飛騨牛になり損ねた美濃地方の牛
 「美濃牛」や」 

*ここまで*******************

石動戯作(いするぎぎさく)という、なんでそこにいるの?
と、いつも場違いなところに現れ、皆が「不思議」に思いながらも
「変」には思わない自然体かつ飄々としたキャラが出てくる。
時に作者の意向を代弁すら行うような、こういったキャラ。
だいたい、話の終わりでは、極悪人として落ち着くか、何か
秘密使命を帯び目的意識を持って事件現場にやってきた人物で
あることが明らかになるか、だいたいいずれかであるものだ。
そしてそのいずれかであった。

彼の言動を見ていると、隆慶一郎先生の
「影武者徳川家康」に出てくる「風魔小太郎」を
思い出す。

文庫の厚みは3センチほど。作者がキャラに語らせる
音楽の趣味話や俳句の話など、作者の趣味に走りすぎている
ところ、なきにしもあらずだけども、特定分野について
ちょっと詳しくなれて、頭がよくなったように思える

例えば、詩篇や俳句を英訳することにキャラ達が
討論するシーンがある。

「菜の花や月は東に日は西に」蕪村

菜の花、つまりアブラナを英語では<レイプ>と
言うらしい。しかもスペルも強姦と同じ<RAPE>や。
「強姦や月は東に日は西に」と
なんとシュールレアリスティックな句だ!と欧米人は
思うらしい・・坪内稔典(としのり)氏出典

次がどんどん読みたくなる面白さと、妙に持って
回った書き方や、思わせぶりな伏線ってやつが
あまりない。平易な文章で書かれているので非常に
読みやすい。また話の合間に、作者が語りたい事も
さりげなく挿入されている。

*以下作品引用*******************

・ここではないどこかを求め、自分ではない誰かに
 なりたがる者は常に裏切られる。

・世の中には手間取っておいた方がいいこともある。
 情報化と効率化だけが正義やない

・生と死のあいだの宙ぶらりん、それが生きるという
 ことではないだろうか。だからといって死を超越する
 必要もない。

・根っからのワルというわけではないらしい。
 でもこういう奴が実は一番危ないんやと
 刑事は思った。ほんとうにその筋の団体に
 入るようなやつは、方向性は間違っているに
 しても自分に自信を持っているからつまらない
 ことで暴れたりしない。喧嘩慣れしていないから
 「キレた」とくだらない言い訳で平気で人を刺す・・

*ここまで*******************

「雷撃の恋」ってのもあるらしいけれども、それに
したってヒロインの恋の行方は、さすがに安易だった
気がする。だって主人公、最後まで居ただけ。
彼が一番オトクだったのでは?

「天瀬さん、人間にとって大事なことはふたつだけ
 なんですよ「考えること」と「愛すること」です・・」

面白かったんだけれど、読み終わって数年後に、内容を
思い出せるか(印象に残るものがあるか)と言うと
ちょっと??である。このあたり、一昔前のアカデミー出版
「超訳」シリーズに似ているかも。

「日常で気になる事はたくさんある。それが推理の出発点
 人は無意識であれ意味のない行動はしないものなのだ・・」



最後のページで、女優である池波志乃さんが、この小説の
解説を見事に書き記していること、それが一番ビックリした
ことかもしれない。

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何故か・・ネタばれ
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2008年07月07日

「理由」宮部みゆき

「理由 宮部みゆき」

ひとつのミステリーじみた殺人現場(小説では
これを爆心地と呼ぶ)の周りに、ある家族は濃厚に、
ある家族はほんのちょっとだけ関わってくる。
表面上はごくフツーのニッポンの「家族」。
その複数の「家族」を通して、ときには昭和初期まで
さかのぼりながら、「家族」ってなに?
「血のつながり」って?ついでに「日本人」って何?を
眺めてゆく作品。

あらすぢ
東京都荒川区の超高層マンションで起きた凄惨な
殺人事件。殺されたのは「誰」で「誰」が殺人者だった
のか。そもそも事件はなぜ起こったのか。事件の前には
何があり、後には何が残ったのか。ノンフィクションの
手法を使って心の闇を抉る宮部みゆきの最高傑作がついに
文庫化。

読んでいて爽快なヒーローは出てこない。
(極悪なヤツいるケド)

次が読みたくなる「面白さ」のテンションを維持しつつ
謎を読み解かせてゆく作者の圧倒的な「筆力」に
感心することしきり。

宮部みゆき作品では、以前に「火車」を読んだけれど
この小説と基本的な構成は似ている。

まずガツーーンとしょっぱなに、???な事件を持ってくる。
その事件の根底には、実は何かしらの「社会問題」が潜み、
読み進むにつれ、たまたま事件の関係者になったにすぎない
今も日本のどこかで実在していそうな一般市民が
「ぽつりぽつり」とインタビュー形式の証言を繰り出し
それはやがて事件の核心へと収斂してゆく。
事情を小出しにして、読者を焦らせつつもダラケることなく
読ませる文章力と構成力はさすが。

小説においてあんまり構成に凝ると、読者(少なくとも自分は)
読む気がしなくなってしまう。頻繁な場面転換、語る時間軸が
前後したり、語る人間が変わったりと、やりすぎると話の把握
が苦痛になってきて、正直うんざりするものだけど、
宮部さんのすごいところは、話の切り出し方がうまく
また、変に真相の出し惜しみをしたり、分かりにくい
言い回しなどをしないので、すんなりと頭に入ってくる
ところだ。

ここからネタばれするけれど、
「火車」は、あの頃問題になり始めた「キャッシング・
クレジット問題」が根底にあり、この小説「理由」は
バブル経済と土地にまつわる暗黒話、「競売と居座り屋」
の話である。

火車にしても理由にしても今より10年ほど前の
日本社会なので、内容が多少古くなってきているのは
仕方ないけれども、文庫の厚さ(3cmはあるかな)を
モノともしない面白さはすごい。
角川スニーカー文庫だったら、おそらく
これ1冊を3巻以上に分割して販売するだろうね。

なにか読むものはないかなあ・・と活字中毒の方には
お勧め。もっともそういった方は既に宮部作品を
読破されていると思うけれども。
良作。



「舅が嫁に手を出したというような大時代的なことで
 一人の女性の人生が歪められたなんて実感わきません
 けれど・・だって時代は続いているんだもの。
 どこかで一回まっさらになったわけではないもの・・
 女がそういうふうに苦しまねばならなかった時代は
 確かにあったんです・・薄皮一枚はいだ下には
 まだまだ昔の生活感が残っているですよこの国は。」
(意訳)

「核家族なんていうけれど、私たちの周りに
 純粋な核家族なんて一軒もありません。
 みんな、親を捨てたり面倒見たり、子供に捨てられる
 悪夢におびえたりと、家族の恐怖におびえているんです。
 そういったいじましい話は山ほどありますよ・・」(意訳)

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ネタばれありのフレーズ
ラベル:理由 宮部みゆき
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2008年02月05日

「犯人に告ぐ!」雫井脩介

自分と同年齢でありながら政治力で出世。
事件が未解決になってしまった責任を押しつけ、
冷や飯を食わせた張本人の元上司は
いけしゃあしゃあとこんなこといって迎える。

「本当に有能な人材は何かの責任を
 取らされたりはしない。
 社会がその能力を必要とし続けるからだ。
 お前は有能か?無能か?
 あの事件の責任をとったか?」

あらすぢ
犯人よ、今夜は震えて眠れ-。
幼児誘拐事件の捜査失敗の結果、
マスコミの対応も誤り、閑職にとばされた
巻島だが、6年後難航する新たな
連続幼児誘拐殺人事件の捜査のため、
特別捜査官として呼び戻される。
彼に与えられた任務は、テレビのニュース番組を
使った、日本初の特別公開捜査であった。
警察内での様々な思惑や、テレビ局間の
視聴率争い、愉快犯など、様々な妨害の中、
犯人「バッドマン」に行き着くことができるか。
そして、巻島は事件の捜査を通して、6年前の
事件とも向き合うようになる・・・
「小説推理」連載に加筆、訂正して単行本化。

劇場型犯罪」があるなら「劇場型捜査」が
あってもいいじゃないか!
そんな作者の思い付きを、素直に
小説化した作品。
PONスコープは上の下
文体のも読みやすく面白かった。

骨太のミステリー小説ではなく
純然としたエンターテイメント小説なんで
推理小説を期待すると、腹立たしくなる方も
居るかもしれません。そんな小説。

魅力的な登場人物(主人公の上司は除く)も
良く描かれており、特に、左遷されて
腐っていた主人公を立ち直らせ、
影から捜査を支える先輩刑事が
渋くていい。生きていたら
「いかりや長介」氏なんか良かったかも。

多少、ネタばれになりますが
獅子身中の虫をあぶりだす場面が
面白かった。ほぼ結果は想像つくのに
まんまと一杯喰わせるあたりは喝采モノです。

それだけに、どうやって犯人を
追いつめてゆくのか、「劇場型捜査」らしい
追いつめ方を期待していたのですが・・
結論を言えばあんまり緻密な推理は必要なかった。
主人公の冴えた頭脳も、自陣営で
敵味方を選り分けるために、ほぼ8割方使っていたり。

劇場型捜査は話が込み入ってくれば来るほど
敵も多くなってくるし、そもそも
TV局もそして身内の警察すらも
しっかりとした味方ではないので
(TV局は視聴率命、警察上層部は出世命)
仕方ないのかな。
そもそもは緻密なハズの警察捜査が
行き詰まり、その打開の苦肉策が
「劇場型捜査」だったわけで。
最初から運任せなんだな。これが。
放っておいたら日々風化してしまう事件を
興味本位でワザと騒ぎたて
そのリアクションに期待するという。

なんか、映画化したらしいですが・・
サウスバウンド」に続き
主役は「トヨエツ」さん。
納得のキャスティングですが
作者は最初から「映画化」を狙っていて
主人公も「トヨエツ」に決め打ち
していたのかもしれません。
それくらい、主人公キャラにハマっています。

最近の(昔から?)邦画は、映画の題材を
必ず原作に求めるんですな。
ある一定の観客が見込めるからでしょうか?
ハリウッドなんかじゃ、映画用に書かれた
オリジナル脚本を脚本家がプロデューサーに
売り込んで回っているようだけども。
そういう売れる作品を書ける才能が
日本では映画の周囲ではなく、
漫画、アニメ、小説分野(特にオタク系)に
偏っているんでしょうね。



堅いミステリーばかりで
疲れた貴方におすすめ。

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2007年10月05日

「修羅の終わり」 貫井徳郎

最近は、オフィスで事務処理に
せこせこ従事することが多く、
外回りの機会が減っているPONであります。
するってえと必然的に?
某三色古本屋からも
足が遠のいているわけでして。

そんなPONに有難いことに
またまた上司が貸してくれたのがこの本。
講談社文庫
「修羅の終り」 貫井徳郎 です。

51CKGM6DWKL._SS500_

あらすぢ
注目の新鋭が叙述トリックで描く三様の修羅
僕が、失った記憶を取り戻す過程で知った
修羅の世界。公安刑事、生活安全課の
悪徳刑事の生き様とリンクしながら、
自分捜しの旅がすすむ。書き下ろし長編サスペンス
〜出版社/著者からの内容紹介

「あなたは前世で私の恋人だったの」。
謎の少女・小織の一言を手がかりに、
失った記憶を探し始める。自分は一体
何者だ?姉はなぜ死んだ?レイプを繰り返す
警官・鷲尾、秘密結社“夜叉の爪”を追う
公安刑事・久我、記憶喪失の〈僕〉が、
錯綜しながら驚愕のクライマックスへと
登りつめる、若き俊英の傑作本格ミステリー。
内容(「BOOK」データベースより)

PONスコープでいえば
面白さは中の上。
読みやすさもまずまず。

文庫本だけど厚さ3センチほどもある。
それもそのはず、小説内では
三人の主人公が三者三様に話が進む。
単純に言って小説3本を同時に
読んでいるようなものだから。
厚みも増して当然。

・悪徳警官「鷲尾」の話
・秘密結社“夜叉の爪”を追う
 「良心的」公安刑事「久我」の話
そして
・記憶喪失の「僕」

実は「北斗神拳」みたいな小説なのだ。
それぞれの話は、互いに絡みそうな
絡まなさそうな・・ビミョウな距離感で
話が進む。そしてそのオチは
小説の最後の一行に集約される。
「ホアタッ!!」って感じ?
その最後の一行を求めて、読者は最後まで
この物語につきあうのだ。

それぞれの物語もよーーく
(登場人物の生活のディティールなんか)を
深く読み込むと、おぼろげながら作者の
意向が、オチがわかる前でも理解できる。

最近、続けて
「テロリストのパラソル」 藤原伊織氏 
「果てしなき渇き」    深町秋生氏
「火車」         宮部みゆき氏
そしてこの本
「修羅の終わり」     貫井徳郎氏

と読んできた。これらの本は皆
元や現役警察官が絡んでくる話。
(宮部さんの「火車」だけは、主人公の刑事と
 その周囲はいい人ばかりだったので 
 最後まで安心して読んでいられたけれど)

ジャンルに偏り過ぎなのかも
しれない。フィクションなのも承知している
けれど、警察機構の暗部、悪徳警察官の怖さ
公安警察の恐ろしさみたいなのを
インプットされまくった思いがする。

ガンダムのアニメを見ただけで、戦争の真の
恐怖を理解したつもりになっているくらい
本来はトンチキな状態であると認識しているけど
それでも怖いぞ警察。
おい、大丈夫か?我が弟。

見えないところではそう言うことがあっても
おかしくないかも・・ひょっとして極々
一部は真実なのかもしれない、ましてや
あの時代ならば。と
ちょっとした警察(というか権力機構・公安)不信に
なりましたよ。

まあ、物語を進めるうえで、
古来より「警察官」ってのは
便利な存在でして(あとは新聞記者)
「非日常に遭遇する機会が多い」
「一般人にはない特権(武器・合法調査可能)がある」
ということから、主人公が一般人であるよりも
バリバリと物語を進行してくれるし。

質・量とも読みごたえはありました。

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完全にネタバレ(未読の人は進入禁止)
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2007年10月02日

「火車」 宮部みゆき

上司から借りた本シリーズ
満を持して?登場
宮部みゆき さんの「火車(かしゃ)」です。

読書好きのなかで「宮部みゆき」の本は
ハズレがないとか聞いていた気もするけれど
なんかこれまでは縁がなかったPONです。

本人は「TVゲーム」なかでも
「DQ」や「FF」なんかが好きみたいで
自分でもジュブナイル小説みたいのを
書いていらした気がします。
そっちの方は、アニメ化もしていたかな??

火車【かしゃ】
火がもえている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に
運ぶという。ひのくるま。仏教語

―自分の身に降りかかったことを、そういう形でしか
 外に向けて「清算」できない人間というのは
 いるんだよ・・

kasya.jpg

あらすぢ
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に
頼まれて彼の婚約者、関根彰子(しょうこ)の
行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、
しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子は
そこまでして自分の存在を消さねば
ならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?
謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき
自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。
山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
内容(「BOOK」データベースより)

この本の存在はなぜか知っていました。
「火車ぁ?」
昔、「たぬきの糸車」って話があったけども
たぬきと言えばカチカチ山だし、たぬき燃えるし
どうせ日本民話風のミステリーだろ?
なんて勝手に判断。
「火車」という題名に、特に惹かれるものが
なかったんでスルーしていたようです。
宮部様。失礼いたしました。

PONスコープでは上の下。
読みやすさはかなりのもの。

またまた警察官(刑事)が主人公の小説で
ここのところ、読むと心がささくれ立つ
警察官主人公が多すぎたので
心配していたのですが、この主人公には
安心してついてゆけました。
そらそうだな。この話で主人公が
悪徳警察官だったらもう絶対に
話に収拾がつきそうにないものw

「火車」って小説冒頭にもあるように
仏教用語で、大変おどろおどろしい意味が
あるようだけれども、それ以上に
我々が日常でよく使う
「家計はひのくるまだァ」の
「ひのくるま」だったんですね。
読んでみて納得。

表紙の絵も読む前は、陰気な絵だなぁ
くらいしか感想を持ちませんでしたが
読んだ後なら、なるほどこの絵が表現
したかったことが理解できます。

この小説が書かれたのは10年ほど前のこと。
その間に「サラ金」関係の法律も
多少は進歩があり、少々古く感じる
記述もありますが、そんなことが
この小説の面白さを損なうものではなく
ここで描かれる日本社会の本質は
ちっとも変っていません。

―怒りは感じていなかった。これまで、捜査にたずさわり
 こんなことは一度もなかった。ただの一度も。

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2007年09月28日

「流星ワゴン」 重松清

上司に借りまくっている「文庫」
(安心してください。金ではありません)
シリーズ。今日はこれ講談社文庫
重松清氏の「流星ワゴン」です。 

「分かれ道はたくさんあるんです。
 でもそのときにはなにも気づかない。
 みんなそうですよね。気づかないまま
 結果だけが不意に目の前に突きつけられるんです」


<あらすぢ>
死んじゃってもいいかなあ、もう……。
38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死
した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。
そして・・自分と同い歳の父親に出逢った。
時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路に
なった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか?
「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

4062111101.jpg
〜38歳、秋。ある日、僕と同い歳の
 父親に出逢った・・。僕らは、友達に
 なれるだろうか?〜

時空を超えるのは「マクロス」と
昔から相場が決まってますが、この小説に登場する
車、橋本さん親子と主人公たちを乗せて
疾走する、バックトゥーザフューチャーでいえば
デロリアンに相当するのがこれ↓

オデッセイ ワインレッド.jpg
H9年式 18万だって。

現在、かわいい娘さんがいる上司が
「息子」も欲しいな・・とぽそりと言った
そういう作品です。前に紹介しました
東野圭吾氏の「時生」と同様
ひとことでいえば「父親」と「息子」の話。

世間にはありふれすぎているくらいの
関係でありながら、実はどれ一つとして
「定型」がない関係。それが「父」と「息子」

なぜなら、母子間は人生の一時期
密接不可分で運命共同体であった時期が
物理的に存在するのに、
すべての「父」と「息子」は生まれてから
あわてて関係を構築しなければならない。
そういった意味では、実の親子だろうと
義理の親子だとうと血のつながりは
あんまり関係ない。

「社会」ってどこまでも理不尽で、
子供にとって「母親」はその理不尽から
守ってくれる「家」ならば、「父親」って
奴はその「社会」の象徴なんだとか。
そんな「親父」と子供は関係を
構築していかねばならないのだ。

非常に微妙な関係。
わからんでもないな。

「親父って、ほんと、大変だよね ――」

PONのスコープ(面白さ)は
中の中。文体も非常に読み易い。
あえて言うなら「そつ」が無さすぎで
あんまり「ひねり」が無いこと。
この小説の魅力を損ねるものではないですが。

題名もね。「流星ワゴン」
たぶん、読前のPONが自発的に
手にしようとすることは無いと思います。
PONの好みが偏っていることを
差っ引いたとして「なんだろう?」って
興味を引くような題では無いなあ。
題名だけの話だけど。



でもいちいち登場人物達のセリフは素敵だ。
舞台劇向けかも。

「大のおとな」と父が自分のことを
 呼んでいた頃よりも、今の僕は年上なのに
 あの頃の父ほうがずっと大人に
 思えてしかたない。


U&ラゴン.jpg
これこそは「流星」と「ラゴン」
(写真は拾いモノ)

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いいねえ。
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2007年09月27日

「テロリストのパラソル」 藤原伊織

上司から借りた文庫シリーズ
今回はこれ、藤原伊織さんの代表作
「テロリストのパラソル」です。

<あらすぢ>
アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し
20年以上もひっそりと暮らしてきたが、
新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから
生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で
死んだ昔の恋人の娘・塔子らが
次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ
犯人を捜すことになった男が見た事実…。
史上初の乱歩賞&直木賞W受賞作。

51KAH4SG13L._SS500_

以前にご紹介した
「果てしない渇き」

あれも「元警察官」とか「ヤクザ」とかが
ひしめく裏世界に、やっぱり
「裏の過去を持つ主人公」が
事件に巻き込まれる「ハードボイルド」モノ
だけど、この小説の足もとにも及ばない。

やはり小説もゲームも、現実に限りなく
即して嫌な奴らしか出てこない作品よりも
多少ウソくさくてもいいから魅力的な
(この場合は性的意味合いに限らず)
キャラクターが登場するほうがイイ。

特にこのヤクザの浅井がいい。
カッコいい。こんなヤクザならば
是非知り合いに一人くらい欲しい。
そんな感じすらする。

けど、死んだ昔の恋人の娘〜「塔子」は
いかにもオヤジが「頭でこしらえた」
理想?女性って気がした。
(オヤジほど「単に嫌な女」を
 「小悪魔」と称賛しがち・・)
それくらいなんかウソっぽい。
広い世界でひとりくらいは
ああいった女性もいるのかもしれないケドも。

意外だったのは「直木賞」やら「芥川賞」
なんかを受賞する作品とは、もっと
「文学的」な作品でないとダメなのかなと
勝手に思っていたのだが
こんな「世俗的小説」でもアリなのか?
ということ。
時代は変わったのかもと勝手に納得。
そもそもそんなことを思うほど
自分は両作品受賞作品なぞ
読んでいないが。

この小説は史上初の
乱歩賞&直木賞W受賞作とのこと。
「果てしない渇き」という駄作ですら
江戸川乱歩賞くらいはとれるのだから、
この小説が直木賞を受賞できて
あの小説が取れなかったという違い、それが
そのまま「面白さ」の違いなのかもしれない。

PONスコープでは
面白さは中の上。
文体の読みやすさは
さすが「直木賞」です。

同じく「全共闘」に縁があり
とにかく自作品に絡ませている
押井守氏にこの作品を読んでもらって
感想を聞いてみたいもの。

いわゆる学生運動の実際は
「悲壮」かつ「滑稽」なだけで
結局何も社会的に寄与することなく
終結したわけで、彼に言わせれば
おそらくこんなにカッコよくないと
統括しそうだけれども。



文庫: 387ページ
出版社: 講談社 (1998/07)
ISBN-10: 4062638177
ISBN-13: 978-4062638173

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判る人にだけ書くけども
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2007年09月26日

「時生」 東野圭吾 

上司から借りた文庫シリーズ
(いつの間にかシリーズ化?)
今回はこれ、東野圭吾氏「時生」です。

〜明日だけが未来じゃない〜

<あらすぢ>
不治の病を患う息子に最期のときが
訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、
二十年以上前に出会った少年との想い出を
語りはじめる。どうしようもない若者
だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と
共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の
行方を追った―。過去、現在、未来が
交錯するベストセラー作家の集大成作品。
内容(「BOOK」データベースより)

510P2AS5Y8L._AA240_

面白かった。ほぼ一気に読んでしまった。
(正確にいえば3通勤片道分程。
 1通勤片道は1時間とお考えになれば
 目安となるでしょう)

たぶん、数多の読書ブログで
語られることと思いますが
ひとことで言うならば
(以下ネタばれ)・・



日本版「バックトゥーザフューチャー」
なんですけどw。
ま、これだけネタばらししてしまえば
あとは推して知るべしって感じです。
人によってはその辺りに多少「あざとさ」を
感じる人もいるかもしれませんが、
読後の感動は損なわれるものではないです。

現代日本→1977年頃の日本なんで
当時の日本の世相(サブカル)と
そのギャップが楽しい。

「ピンクレディー」「キャンディーズ」
「インベーダーゲーム」「ハイセイコー」

「駅のある場所で待ち合わせしたのに
 その人に会えなかったとき
 あなたならどうします?」

「そりゃ、掲示板に書いておくとか」
「駅員を電話で呼び出すとか」

「違うんだな・・」

この父親の若い頃がどうにも
「フーテンの寅さん」のように描写されてまして
タダでさえヤング父親は「根性曲り」で
結局は正体不明の若者である「トキオ」と
何かというと衝突するのですが
「トキオ」と会ったとき、初対面なのに
懐かしさすら感じ、けんかに巻き込まれたら
自分をおいてでも、まず他人であるはずの
「トキオ」を守ろうとした自分を発見、
「トキオ」の言葉に一旦は心では反発しても
彼の眼を見たら、最後は結局彼の言うことを
聞いてしまう・・。

作者のご都合主義とは取りたくないですね。
ここは「親子の血の結びつき」の素晴らしさ
ということに、軍配を上げておきましょう。

「あのひとの若気の至りを見るのはつらい・・」

どうしようもない若者が
最後にはできた父親になる。

ちょっと出来すぎ?な気もしますが
ま、ファンタジーとしてそれもアリです。

PONスコープでは
面白さは上の下、
文体の読みやすさも上々です。

映画秘宝だったかなんかで、
最近の日本映画にはもう
「鈴木京香」と「浅田次郎」はいらない!
それからモチーフとして
「タイムスリップモノ」
「難病モノ」
「死者復活モノ」

これらは当面の間全面禁止だッ!!と
痛快な暴言を吐いてたけど
それはそれで一理あるかもしれない。



文庫: 544ページ
出版社: 講談社 (2005/8/12)
ISBN-10: 4062751666
ISBN-13: 978-4062751667

「でかいことがしたい
 一発当てたい」

「そう言う台詞はね
 本当の馬鹿しかいわないんだよ」

「何しろ手がかりが花やしきだけだもんな。
 もうちょっとなにかヒントをくれりゃあ
 いいのにさ。」

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ネタばれ・・・
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2007年09月15日

「果てしなき渇き」 深町 秋生

またまた借りましたよ、上司から。
こういう本を読んで、こういう部下になれ!って
謎かけですかね?マスライです。

「果てしなき渇き」 深町 秋生 著
 宝島社文庫

<あらすぢ>
元刑事・藤島秋弘のもとに、失踪した娘の
加奈子を捜してほしいと、別れた妻から
連絡があった。家族とよりを戻したいと願う
藤島は一人、捜査に乗り出す。一方、三年前。
中学生である瀬岡尚人は手酷いイジメにあっていた。
自殺さえも考えていたところを藤島加奈子に
救われる。彼は彼女に恋をし、以前、彼女が
つきあっていた緒方のようになりたいと
願うようになるが…。二つの物語が交錯し、
探るほどに深くなる加奈子の謎、次第に浮き彫りに
なる藤島の心の闇。用意された驚愕の結末とは―?
『このミステリーがすごい!』大賞第3回受賞作。

全選考委員が圧倒された暗き情念の衝撃作!!
(「BOOK」データベースより)

kawaki.jpg

PONスコープでは中の下。
面白いか?ツマンナイか?と問われれば
面白いとは思う。
思うが、こういう小説(ノワール物)は
キライなんでもういいかなって感じです。
文面は比較的読みやすかった。

主人公の元刑事が、最後まで何も
いいところがないまんま、ただ堕落してゆく・・
そういう小説。
そういう意味ではビックリした。
その仕掛けこそが最大のミステリーかも知れない。

登場人物に感情移入できる奴が誰もいない。
(主人公の元後輩くらいかな。それも体制に
 飲み込まれたまま、いつの間にかF.O.してるし)

すごいよこの主人公。
読んでいる最中、ツッコミしまくりだもの俺。
「オイオイ、そんなことしたら元に戻れないよ?」
元警察官という設定に、最後の望み?
(主人公が更生するか期待)をかけてたが
最後まで裏切られた。

この男、困ったら覚せい剤を射つし
すぐに乱暴するし、効率よく使えないのに重武装
何も考えず現場突撃、味方になりそうな人を
どんどん撥ね退けてくし。
まあ、それが作者の手なのかな。

それから主人公の娘で渦中の「加奈子」氏
心中は察しますが・・・

そんな高校生いないってw

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作者コメント
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2007年09月11日

「マークスの山」 高村薫

またまた借りました上司から。
今回はコレ、講談社文庫
「マークスの山」です。
読んだ事のない方でも、題名くらいは
どこかで聞いたことがあるのでは
ないでしょうか?

ma-kusu.jpg

<あらすぢ>
出版社/著者からの内容紹介
全面改稿!!第109回直木賞受賞作

警察小説の金字塔
21世紀、33歳の新生・合田雄一郎、登場

「俺は今日からマークスだ!
 マークス!いい名前だろう!」――

 精神に〈暗い山〉を抱える殺人者マークス。
南アルプスで播かれた犯罪の種子は
16年後発芽し、東京で連続殺人事件
として開花した。被害者たちにつながりは
あるのか?
 姿なき殺人犯を警視庁捜査第1課第7係の
合田雄一郎刑事が追う。直木賞受賞作品。

 合田雄一郎は音一つなく立ち上がった。
33歳6ヵ月。いったん仕事に入ると、
警察官僚職務執行法が服を着て歩いている
ような規律と忍耐の塊になる。長期研修で
所轄署と本庁を行ったり来たりしながら
捜査畑10年。捜査1課230名の中でもっとも
口数と雑音が少なく、もっとも硬い目線を
持った日陰の石の一つだった。

上記は、アマゾンの本紹介をそのまま
カット&ペーストしたものですが・・
ちょっと大げさではないだろうか?

>警察小説の金字塔
>21世紀、33歳の新生・合田雄一郎、登場
この惹句は果たしてどうだろう?
大体「新生」ってなんだ?
それを言うなら「新星」じゃないのか?
しっかりしろ!講談社の人。
(全面改稿?だから「新星」なのか?)

さてひとしきり毒づいたところで・・
この小説は「第109回直木賞」だそうです。

この小説に描かれている警察の捜査風景が
実際の取材に基づいた本物の「捜査」に
近いのだとしたら・・ほんと警察は救われない。
迷宮入りの事件が多いはずだよ。

警察の面子、威信(そんなの、もはや無いのに)
意地、セクショナリズム、秘密主義、
本庁VS地方警察、公安VS警察、
その筋からのもみ消し工作、そして同僚すら
何を考えているのか解からない連中ばかり・・。

あんな環境では、解決した事件のほうが
珍しいだろう。ほんと息がつまるウンザリする。

ただ、やはり「直木賞」を取るだけのことは
あって、心理や情景描写は物凄い書き込み方。
単に「合田は苦悩した」という書き方で
済ませず、過去を引きずった彼の、切れ切れな
思いをダラダラと濃密に記述している。
すごい文章力だ。
中には、それがどうした?とか
結局何を表現したいのか皆目わからんまま
進んでしまうシーンもあって、その辺りが
「文学」に「エンターテイメント」を
求めてしまいがちな自分には、つらいところ
でもあったけども。

もう少し、暴力の具体的描写とセックスが
絡んでいたら、話的には「徳間文庫」か
「光文社文庫」に収蔵される作品だと思う。

映画化もしてましたね。



PONスコープでは中の下。
文学的表現・・というよりも
単に判りにくい描写が多かったのが
ちょっとマイナス点。

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2007年09月10日

「ハルモニア」 篠田節子

以前にご紹介しました
篠田節子さんの
別の作品
ハルモニア」 文春文庫です。

<あらすぢ>
脳に障害をもつ由希が奏でる
超人的チェロの調べ。指導を頼まれ、
施設を訪れた東野はその才能に圧倒される。
名演奏を自在に再現してみせる
由希に足りないもの、それは「自分の音」だった。
彼女の音に魂を吹き込もうとする
東野の周りで相次ぐ不可解な事件。
「天上の音楽」にすべてを捧げる
二人の行着く果ては…。

いやあ、やはり圧倒的な描写力。

「サヴァン症候群」と「音楽」を軸に
人にとって「普通」とは何なのか?
「芸術」とは何なのか?その辺に
するりと「切り込んでゆく」手腕は
さすが直木賞作家だと思います。

面白いかどうかといわれると
意見が分かれるところだと思いますが
よくぞそこまで話を広げますよ。

この本も上司にいきなりいただき
しかもまったく予備知識無しで
読み始めたものですから
物語の着地点がまったくわからず
(自分の読んでいる本がSFなのか
 ホラーなのかエロなのかシリアスか
 コミカルかまったく判らんですので
 かなり「ミステリー」でした)

ハルモニア」とは
ハルキゲニア」とか「アンモニア」とかとは
当然まったく関係がなくって、
「真の音」と訳されております。
「ハーモニー」の語源なのかな。
音楽芸術家の極ごく一部だけが
到達できる真の境地。

たとえば一握りの神に選ばれた人が
そういう境地に達して、表現できたとしても
その境地を一般人が理解できないとしたら
その境地になにか意味があるのだろうが?
もしくは一般人に理解できなくても
誰ががそこに達する事ができれば
それをもって良しとすればよいのか?

要はそういうことです・・
と思っていたら、そこに「超自然現象」まで
絡んできたから、この作者の小説は
相変わらず一筋縄では行かないのう。

それから、多少ネタバレですが
物語の後半でキーになる女性が
いきなり誘拐されます。
そのエピソードは、実は大して重要でも
ないのですが、一応話の上では
必要なので、取ってつけたような警察の
描写には笑えました。

PON的に、面白さは中の中。
(無理に読むまででは無いかなぁ・・・)



バッハ 無伴奏チェロ組曲6番

ヒロインが年をとってオバサン化した
綾波レイみたいなイメージだった。

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2007年08月07日

「八月のマルクス」新野剛志

「八月のマルクス」 
新野剛志 講談社文庫。

上司よりお借りした小説群の中の一冊。
どっちにしても出典は
某三色系中古本屋100円コーナーより。
そういう意味では中身がどうであっても
あんまり文句言えない。
言えないのだ・・

8gatu.jpg

<あらすぢ>
ショービジネス界の暗部に死の罠が――。
第45回江戸川乱歩賞受賞作

レイプ・スキャンダルで引退した
お笑い芸人・笠原雄二。今は孤独に生きる彼を、
元相方の立川誠が五年ぶりに訪ねてくる。
だが直後、立川は失踪、かつてスキャンダルを
書き立てた記者が殺された。いわれなき殺人容疑を
晴らすため、笠原は自らの過去に立ち向かう。
TV・芸能界を舞台に描く。
〜内容(「BOOK」データベースより)

いや〜。駄作。
こんなのが江戸川乱歩賞受賞作だってさ。
良くて駆け出しミステリー作家の習作ってとこ。

文体も無理に「文学」的表現を心がけ、
見事に失敗している。
ある店に何人入ってきたとか
そのうち何人が男だったとか
そもそも最初から店にいたのは
主人公なのか、相手なのか
そんな最低限の描写すら
いちいち読みにくい。

そもそも、元お笑いを主人公に
ハードボイルドを描くって
相当無理が無いか?
現代日本が舞台だから「拳銃」とかが
あるわけじゃなし。主人公が持っているのは
かつてのショウビズ界の人脈程度。

一応、言い訳のように書かれている。
お笑い界で成功するのは、実は
クラスの人気者やお調子モンではなくて、
私生活では非常にクールで
頭の切れる連中ばかりなのである・・
だから、元お笑い芸人の主人公は
「ハードボイルド」の主役を張れる!
そう言いたいのかも知れないケドも。

PONスコープで言えば下の上。
舞台設定とかミステリーのオチが
なんだそりゃ?って感じ。
登場人物に誰一人、感情移入が出来ない。
登場人物の女性の描写にも違和感。

主人公の元相方も思わせぶりな行動の割に
結局なんだそりゃ?だし。

「TV・芸能界」の闇とやらを
描きたかったのかも知れないが
だとしても、そんなことで普通、
人死になんか出ない。
この小説のように、もし出るとするなら
この小説は「ミステリー」ではなくて
「サイコホラー」を名乗るべきでしょう。

作者は野球が上手そうな名前だ。

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2007年08月03日

「フェイク」楡 周平

今日のお題はコレ。
角川文庫「フェイク」 
著者 楡 周平(にれしゅうへい)です。
本好きでPONと同じく
電車での移動が多い上司から
借りた本です。

さすがに作者の名前くらいは
聞いたことがありましたが
放っておいたら、人生の最後に至るまで
PONが手にすることは無かったでしょう。

なんたって、読後に表紙すら裏返された
状態で借りたもので、自分がこれから
何を読まされるのか?全く判らない
状態から読書スタートしました。

たまにはいいですね。
こんな読み方も。
とにかく話がどう変化するのか
皆目わかんないのだからw

<あらすぢ>
岩崎陽一は、銀座の高給クラブ「クイーン」の
新米ボーイ。昼夜逆転の長時間労働で
月給わずか15万円。生活はとにかくきつい。
そのうえ素人探偵とは誰にもいえない。
ライバル店から移籍してきた摩耶ママは
同年代で年収1億といわれる。
破格の条件で彼女の運転手を務めることに
なったのはラッキーだったが、
妙な仕事まで依頼されて…。
情けない青春に終止符を打つ、起死回生の
一発は炸裂するのか。抱腹絶倒の
傑作コン・ゲーム。

内容(「BOOK」データベースより)

・・以上はAmazonのHPから
コピペした「あらすじ」なんだけれども。
この記事のために改めて読み直していて、
ヘンに思った。

>そのうえ素人探偵とは誰にもいえない。

・・探偵ものだったっけ??

これね〜、「童貞」の間違い。
打ち間違えたのかな。オペレータの方。
「素人童貞」が正しい。
もし意味が判らない方がいたら
おうちの方に聞いてみよう。
しばらく無視されるぞ。

まあ、主人公が「素人童貞」であることが
物語に多大な影響を与えるって
程でもない設定なんで別にいいけど。
主人公が物語に出てくる女性達と
最後まで「異性交遊関係」とはならない・・
そういった防波堤にはなっている。

効果としては、響子さんに出会えなくって
堕ちるところまで堕ちた五代祐作君と
いったイメージを主人公に与えるってことかな。

でもそれでよかったかもしれない。
この小説は「拝金小説」、
つまり悪知恵を働かせ、自分達より
あくどく儲けている金持ちから
非合法手段で「金」をぶん取る物語。
(こういう話を「コンゲーム小説」
 というらしく、ミステリ小説の
 人気ジャンルなんだとか)

結局は主人公達も敵?も
目クソ歯クソなんだよね。
夜の歌舞伎町とか銀座から悪を
一掃するわけでもなければ
日頃、PONが読んでいるような
小説のように、突然バケモノに変化した
闇の住人どもを抹殺するような話でもない。

だからこの主人公が「島K作」か
「ジェームスボンド」ばりに
とっかえひっかえ、異性とやっちゃう奴だったら
勝手にやってろって感じ?
誰も主人公に感情移入できないだろう。
小説が単なる「生臭い詐欺モノ」に
なってしまうし。

彼が「素人童貞」であるという
その一点だけが、読者も主人公の話に
付き合ってあげてもいいかなと
許せるところなのかもしれない。

文体も非常に読みやすく
夜の銀座のシステム「永久指名」とか
競輪のシステムやノミ屋など
妙なジャンルに対して
局地的に詳しくなれます。
「夜の銀座」を飲み歩くのが大好きで
おまけに「競輪」も大好きな人間だから
作者にはこれしか書ける小説が無かった・・
そんな気がする。



「裏街道の間隙をついて一儲けするには・・
 要は悪さをするにも、それなりの
 「才」と「器」が必要とされる」んだなと
主人公が最後に納得してしまうシーンには
悲しくなりました。

面白さも含めると
PON的スコープは中の中。
結構、お気楽に読めます。

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2007年06月25日

「獄門島」 横溝正史

「角川ホラー文庫」シリーズから
脇にそれて、いつの間にやら
ミステリーの本流?を
激走中のPONです。

gokumon.jpg

<あらすぢ>
 瀬戸内海に浮ぶ獄門島-南北朝の時代、
海賊が基地としていたこの島に、悪夢の
ような連続殺人事件が起こった。
金田一耕助に託された遺言が及ぼす
波紋とは? 芭蕉の俳句が殺人を暗示。

またまた「見立て連続殺人」の嵐。
昔とは我々の感性が変わったのかな。
「おお、なんと恐ろしい!」
なんて、誰かが殺されるたんびに
金田一探偵自身が、ブルってますが、
よっぽどスプラッター、ミンチにでも
なっていない限り、絞殺されて口から
血を出している着物姿の若い女・・程度では
別に怖くは無いな。

また、名探偵には「防御率」って
モンがあるらしい。
つまり、後追いの理屈から
実はボク、犯人が解っていたんですど?
ばかりでは駄目で、いわゆる敵地において
敵と味方を見極め(無論、犯人も)
ターゲットになりそうな人物を
悪意から守り、かつ犯人にも
これ以上の罪を犯させないこと、
それが大事。

金田一探偵は、物語終盤にこそ
鮮やかに手口を解説するんですが
さまざまな理由から、犯人も死亡したり
結局、犯人の初期目的は
すべて達成させてしまったり、と
割りに良いところがありません。
そんな意味で「防御率」の
低い探偵のようです。

頭をがりがりかきながら
ああそうか!そうだったんだ!って
勝手に一人で納得してその場は終了。
それが結果的に更なる
被害の拡大を招いたり。

たった二作しか読んでいませんが
確かにその傾向が感じられます。
シリーズはこれからもボチボチ
読んでゆくつもりですが。
まあ、神様ではありませんで
ほんと、人間的ではありますね。

下記の三人姉妹は
物語においてのいけにえのごとく登場
いけにえのごとく殺されますが、
面白いHPを見つけました
 ↓ ↓
「獄門島 配役比較」

・鶯の身をさかさまに初音かな
・むざんやな冑の下のきりぎりす
・一つ家に遊女もねたり萩と月

平成2年9月28日 ドラマ 「獄門島」 
(金田一:片岡鶴太郎) バージョン
「持田真樹」「高橋由美子」「牧瀬里穂」

おお、自分の年齢もあるだろうが
三姉妹ラインナップはこのドラマが
結構、最強(と思われる)。
金田一が鶴太郎なのはどうも・・だけど。

話ですか?またまた読みやすかったです。
「上の下」かな。

それから「探偵」という浮き草家業は
必ず、国家権力(多くは警察)に
知己がいないと駄目ですな。
今とは比べ物ならないくらい
昔(1950年代まで)は
信用されなかったろうし、
身元保証も大変だったでしょうから。



「きちがいじゃが 仕方ない・・」

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2007年06月23日

「八つ墓村」 横溝正史

快進撃を続けておりました
「角川ホラー文庫」ですが
PONの近所のブックオフ100円文庫棚から
めぼしいものは読み尽くされつつあります。
誰かが早いところ売ってくれないと(苦笑)

そんなわけでいきなり手にしたのがこれ。
横溝正史氏の「八つ墓村

8haka.jpg

<あらすぢ>
鳥取と岡山の県境の村、かつて戦国の頃、
三千両を携えた八人の武士がこの村に落ちのびた。
欲に目が眩んだ村人たちは八人を惨殺。
以来この村は八つ墓村と呼ばれ、
怪異があいついだ…。

PONの中でのキーワードは二つ。
津山30人殺し
「たたりじゃ〜!!
 八つ墓村のたたりじゃ〜っ!」


特にこの「たたりじゃ〜!!」は
「志村けん」がこう叫んで
大騒ぎしていたことを思い出す。

これは作品に出てくる
「濃茶の尼」(こいちゃのあま)の
迷フレーズだったんですね。

「濃茶の尼」とは「八つ墓村」在住の
ちょっと気の触れたばばあです。
多少ネタバレなれば
彼女は結局話を「引っ掻き回した」挙句に
殺される役なんですが

彼女の「基地外」ぶりは
不気味な「日本の田舎」の象徴として
映画「エイリアン」で言えば
スペースジョッキー」の如く
当時の1977年版「八つ墓村」映画CMで
さんざん、放送されたようです。

おかげで
「なんやワカランが
 日本の田舎には、子供が触れてならぬ
 闇の部分(要するに化け物)が
 存在するんだなあ」
という、要らぬ先入観を、
我々ガキどもに植えつけてくれました。

ここまで「濃茶の尼」が
クローズアップされたのは
タダでさえ陰々鬱々な「日本的ホラー映画」に
少しでもお客が来てもらえるよう
解かり易い「モンスター」的要素を
前面に押し出したのでしょう。

ただ、PONが間違っていたのは
1977年映画版は
「角川映画」かと勝手に思っていたら
「松竹映画」だったことです。

小説自体は、実は1950年ごろの作品
ですから、時代背景も古く
文体も読みにくいのでは??と
これまで勝手に敬遠していたのですが
なんのなんの。
申し訳ありませんでした。
横溝先生。

最近のラノベなんかよりも
はるかに読みやすく、面白かったです。
自分が、この小説を理解できるだけの
知識を身につけることが出来た「証」
ともとれますが。

そうですね。
かまいたちの夜2」が好きな人だったら
アッサリといけるんではないでしょうか?

デキは「上の中」ですかね。
「怖さ」という点では今一歩ですが、
意図的に怪奇モノとして
映画でビジュアル化したならば
まあ、それはそれで。



「私が恐れたものは
 わけもなくそういう扇動にのる
 村のひとの心であった」

「殺人事件で動機がうまく隠せたら
 犯人の計画は半ば以上成功です」

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2007年06月13日

「世にも奇妙な物語」小説の特別編

おなじみ「角川ホラー文庫」の中から
「世にも奇妙な物語」小説の特別編です。

ご存知、「世にも奇妙な物語」とは
昔の8CHが放映していた
世界各国の「怪奇譚」を
少しも躊躇せずパクリまくった番組。
そのノベライズ化。
番組自体も放映時はそこそこ
人気はあったようですが、

今回はその映画版。

ノベライズと言っても
多くの映画の「ノベライズ」が
そうであるように、ドラマ用台本を
単に少しだけ書き直し
無理に小説体裁に仕上げただけに過ぎません。
作家志望の無名の新人には
取り急ぎ食いつなぐために
適した仕事かも。

「開けてはならないドアの奥で
 展開される四つの奇妙な物語」


「雪山」(作 鈴木勝秀・落合正幸)
 ・旅客機が雪山に墜落。
  生き残った美砂たち五人が山小屋で
  体験した恐怖の一夜とは…。

 コレとよく似た「怪談」を聞いたことがある。
 まあ、コテコテ。
 それに、ネタバレ覚悟だと
 雪山の「11人いる!」

「携帯忠臣蔵」(作 君塚良一)
 ・ある日、討ち入りを迷う大石内蔵助の
  足元に落ちてきたものとは…。

 素直に笑えた。この話はもっと掘り下げて
 書くことも可能だったと思う。
 (ネタバレ)だが各時代の歴史上の人物の元に
 落ちてきたものとは、ズバリ題名の通りのモノ。
 しかも時を越えての通話が可能。
 理由は解からないけれど、
 誰かにさらわれてこられた主人公達は
 ある部屋に閉じ込められる。
 この部屋をでて自由になるには
 自分が担当することになった
 各時代の人物(例えば明智光秀)とかに、
 口先三寸で、自分達の知っている
 歴史を実行させなければならない。
 彼らも人間。放っておいたら実は
 面倒くさいことは何にもやらない存在なのだ。
 さもないと自分の存在が消されてしまう。

 PONが気に入ったのは
 作中で「明智光秀」担当になった哀れな人。
 彼いわく、
 「・・真面目。クソ真面目。しかも彼は
  織田信長を信奉してる・・無理だよ」
 「あの人に本能寺の変を起こさせるなんて
  僕にはできない・・・」

 案外そうかもw

 さすが原作は「清水義範」さん。
 人を食った小説を書いたら日本一だ。 

「チェス」(作 中村樹基・星護)
 ・チェスの元世界チャンピオンに挑戦されたのは、
  現実の世界を盤とする死を賭けたゲームだった!?

 一番つまらなかった。
 それでもセレクトされたのは
 ひとつぐらい「救われる話」が
 あってもいいのでは?という
 バランス感覚からか。

「結婚シミュレーター」(作 相沢友子)
 ・お互いのデータを基に結婚生活を疑似体験する
  という結婚式場の新サービスを受けたカップルの
  運命は…。

 「恋愛」と「結婚」は実は別モノ。
 ほんと違うと思いますよ。
 結婚が生み出す男女間の「ありがち」な
 「すれ違い」が、これまたシミュレータ上で
 「ありがち」に再現されてゆきますが、
 「誰にでもよく起こりうる話」であるからこそ
 「ありがち」なんでしょう。
 それでも二人で乗り越えねばならないのです。
 うんうん。



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2007年06月11日

「宣戦布告」 麻生幾

浅間山荘に突入したり
某国から静かに宣戦布告されたりと
「日本よ、もっと頼もしい御国であってくれ」
キャンペーンの一環と申しますか
そういう映画が連作された、
何かと忙しい時期でした。この頃は。

映画化もしたようですけども
文庫しか読んでいません。

<あらすぢ>
 原子力発電所が並ぶ敦賀半島沖に
北朝鮮の潜水艦が漂着した。
対戦車ロケット砲で武装した特殊部隊十一名が
密かに上陸、逃走する。彼らの目的は何か?
未曾有の事態に政府はなす術を失い、
責任のなすり合いに終始する。砂上の楼閣の
ごとき日本の危機管理を問う。

自分も身内に「K察官」がおりますんで
彼が矢面に立たされたように思え
読んでいて辛い部分がありました。

「そんなバカな事起きっこない」
「何が起きても、いつも、どこかで
 誰かが何とかしてくれる」


漠然とそう思ってろくにニュースも見ず
日々の生活に身をゆだねる・・
自分も含めて日頃はそんなモンですが、
そんな「バカな事」が実際に起きてしまったとき、

「誰か」が何とかしてくれるといっても
日本の社会は、「適切な誰か」を
「適切な方法で」事態の収拾に
当たらせる事ができるのだろうか?

ホント考え込んでしまう作品。

悲劇は日常の延長上で突然やってくる。
日頃は、港町で釣り人相手の民宿経営している
その辺のおばちゃんが、山菜取りの
山中で何もわからないまま殺される。

小説では、相手は少人数ながら
重武装な「殺しのプロ」
そんなのを相手に
セクショナリズムやら、政治的風合いから
戦いのプロ(自衛隊員)」ではなく
世界一軽武装な日本の
おまわりさん」が
前線に出る!このミスマッチが
引き起こす惨劇。

じゃあ「自衛隊員」なら死んでもいいのか?
訓練は充分なれど実戦経験はなく
撃たれれば血を流す人間。
「機動隊員」も「自衛隊員」も
普通の日本人。子供もいれば妻もいます。

続出する死傷者に、現場はいつしか
異常な精神状態に支配され
中央からの偉そうな命令を聞かなくなって来る。
ムクムクとクビをもたげる
「現場の判断」と「暴走」

一度、引き金が引かれたら
いかにその事態収拾が難しいか。
上から停戦命令が出ても、
そんなこと相手に伝わるはずもなく
応戦をやめた瞬間
撃たれるかもしれないのだ。

K朝鮮の工作員も冷酷だし酷いが
決して意味不明の化け物でもなければ
血も流す人間で、比較的平等に
書かれていたのは良かった。
生き延びる為に、必要と判断していることだけを
たんたんと実行しているのみ。
エライ迷惑だが。

もしかして、銃器を使ってまでして
彼らをここまで追い詰める
自分達の方が悪いのだろうか?
とさえ思えてくる。

「亡国のイージス」よりも
この作品内の人々のほうが
良くも悪くもその辺の「日本人」だらけなので
(不死身の工作員も先任曹長もいない!)
よりリアリティが感じられ
「国防」や「愛国心」について
身近に考えるきっかけになりそうではあります。



講談社文庫

こんな世界が実現しないように。

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ラベル:麻生幾 宣戦布告
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2007年05月23日

「聖域」 篠田節子

上司から譲ってもらった本。
「講談社文庫」より
「聖域」 篠田節子さんです。

<あらすぢ>
 関わった者たちを破滅へ導くという
未完の原稿「聖域」。1人の文芸編集者が
偶然見つけるが、得体の知れぬ魅力を
秘めた世界へ引きずりこまれる。
 この小説を完成させようと、失踪した
女流作家・水名川泉(みながわせん)の
行方を捜し求めるその男は、「聖域」の
舞台である東北へ辿りつく。
 山本賞・直木賞受賞作家の長編サスペンス。

「神の領域」は存在するのか。かかわった
人間を破滅に導く未完の原稿。
失踪した女流作家。
 <BOOK」データベース>

「サスペンス」??
・・サスペンス - suspense 不安感。 特に
映画や小説などで、観客や読者が危機的な
場面にはらはらする感情。
(はてなダイヤリーより)

これはサスペンスなのか?
ちょっと疑問に思った。

オタクにとってちょっと嬉しい?シーンがある。
主人公は27歳。文学に関する思い入れは
かなりあるが、ちょっと生意気な「編集者」。
そういう男はえてして「もてない男」という
設定だったりするが、ご他聞にもれず
彼も女性は不得手な男。そんな彼の部屋へ
たった一回だけ遊びに来た
唯一の女性(フリーライター)が登場する。
二人は、唯一の共通趣味を通して
ガゼンいい雰囲気になる。
彼女との幸せな3時間(無論、エッチは抜き)
何を見てすごしたかといえば
ビデオ鑑賞。しかも「押井守」カントクの
「天使のたまご」そして「迷宮物件」なのである!

そんなことが結構、物語にかかわってくるんだな。 

角川ホラー文庫なんか
はじめからパスだけど
直木賞作家の小説でも読んでみたいな〜
なんていう「よい子」には
よろしいのではありませんか?
なんたって「直木賞」だし
「講談社文庫」収蔵ですから。



デキ(読み易さ)は「中の中」
しかし、面白さは?というと
もうちょっと下がるかも。

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2006年07月09日

Twelve Y.O.(小説)

「亡国のイージス」は映画版を
マスライでも取り上げた
ので
同じ原作者「福井晴敏」の
メジャーデビュー作
Twelve Y.O.
をご紹介。

Twelve Y.O..jpg

<あらすぢ>
沖縄から米海兵隊が撤退した。
それは米国防総省が、
たった一人のテロリストに
屈服した瞬間だった。
テロリストの名は「12(トゥエルブ)」
最強のコンピュータウィルス
「アポトーシス2」と
謎の兵器「ウルマ」を使い、
米国防総省を脅迫しつづける
「12」の正体は?その真の目的は?

軍事ミステリーという分野?
作者自身も「ガンダム」世代で
別の方向性で自分なりの「ガンダム」を
書きたいとか本人も言っていた位だから
まあ「軍事」「政府の陰謀話」とか好きで
もちろん「ガンダム」好きで
「亡国のイージス」
なんや細かくは判らんけれども
それなりに感銘
を受けることはできた・・
というPONのような人間ならお勧め。
(綾×レイのような
「組織に利用される、いたいけな美少女」が
 好きな御仁もどうぞ)

なによりこの小説「Twelve Y.O.」は
「亡国のイージス」の前日譚なわけで
「亡国〜」を楽しみ、もっとこの世界に
ひたりたいぞッ
て方には
その流れでGO!でしょう。

常日頃から小説を沢山読む
いわゆる読書家がこれらを読んだ場合、
むやみに「軍事」関係のみ細かく
熱く書かれていたり、作品全体に
漂うゲーム・アニメ臭が
鼻につくかもしれないです。

作りこまれた映画だと思って鑑賞したら
よくできたRPGのデモムービーだった・・
見たいな。

この小説のあとがき?だったかで
この作家、実の処女作である
「川の深さは」の存在を知った。
この作品で第43回(1997年)江戸川乱歩賞に応募。
受賞こそのがしてしまったが、ある選考委員が
「川の深さは」を絶賛したため
福井氏が発奮。焼き直しをしたんだとか。
それが「Twelve Y.O.

どんな高邁な理想実現が目的でも
「多少の犠牲は止むを得ない」
なんてほざいた時点で
大声で叫ぶ権利を失うと思いますが。
権力機構だって
結局は一般民の味方ではないし。
戦いは頼むから向こうでやってくれ。

講談社文庫
福井晴敏  本体 648円
2001/6 ISBN-4062731665

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亡国のイージスとかの世界が・・
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